宇宙人の侵略を食い止めるといったお話の前編、という感じです。
それでは、どうぞ!
次元をものすごいスピードで移動していく二つの影があった。
その二つは、青と紫の光を放ちつつ……次元の先にある、とある世界へと突き進んでいく。
その世界の名は、『第97管理外世界』と呼ばれる管理局が管理している所謂『管理世界』と呼ばれる時空にある世界の一つ。その世界にある「地球」と呼ばれる星に二つの光は向かっていた。
時空を移動している紫の光を放つ影――こちらの〝彼〟の出身地がその星……「地球」である。
彼の名は、秋宙由宇またの名を――ウルトラマンコスモスという。
彼は、先のとある戦いで自らの世界から、【M78時空】と呼ばれる、彼のあこがれの存在達のいる世界へと飛ばされてしまった。
そこで、そのあこがれの存在の一人――ウルトラセブンことモロボシ・ダンに助けられ、時空を超えるためのエネルギーを託される。
それをありがたく受け取り、時空を移動していた彼とコスモスはその途中で怪獣に襲われてしまう……。
その怪獣との戦いで、宇宙への適応を高めることに成功し新たなる力を得た由宇とコスモス。しかし、彼らが、その怪獣を倒したときに、〝もう一体〟怪獣が背後から彼らを襲った。
その時彼らを助けるため、颯爽参上した光の戦士。ウルトラマンダイナこと、シンドウ・アスカ。
同じくらいの年齢だったこともあり、由宇とアスカは直ぐに打ち解け、友人となった。
由宇の世界へと彼の戦っていた敵が進行しているらしいことから、由宇と共に地球を目指すたびに同行をすることにしたアスカ。
こうして二人は、宇宙を駆けながら、着実に地球への道のりを辿っていた。
その間に、由宇が元の世界を追われたあの日から……由宇にとっての、というよりは彼の世界での時間の感覚として、既に時は四ヶ月近くも経っていた……。
――四ヶ月。
途方もないほどの距離を課せられた立場としては、途中で手にした新たなる力も手伝って現在に至るまでに元の世界への道のりの内、約三分の一を渡ることができている。
これは驚異的すぎるスピードだと言える。
しかし、元の世界に残してきてしまった色々な事柄から考えると……由宇は非常に滞りを覚えざるを得ない。
宇宙では時間の感覚が変わる、と宇宙飛行士やSFの主人公たちは語るが……。由宇にとってはそうはいかない。
何故か? と聞かれたらこう答える。
――だって、宇宙に飛ばされたのは自分だけで……残してきたものに手が届きそうだというのに、帰れないジレンマを抱えながら進むことしかできないのだ。これで、滞りや焦りを感じずになどいられるだろうか? そんな筈がない。
結局のところ、自分が生きていて……守りたかったものを確認できないから、焦る。ただそれだけのことだ。
これ以上ないほどに旅は順調で、且つ状況は恵まれすぎているほどだ。
失ったかと思った命はまだ、セブンに救われ……自分の中に繋ぎ止められた。
帰れるかどうかさえ分からなかった道のりは、セブンの助言とコスモスの協力、そしてコスモスと二人で戦いながらつかんだ新しい力がその攻略方法をより効果的なものにした。
そして、孤独な道中になるはずだったのに、コスモスがいる。セブンと会えた。アスカがともに旅をしてくれている。
仲間が、いる。
こんなにも恵まれているのに、それでも……贅沢だと分かっていても。
やはり由宇は、焦る気持ちを捨てきれることは出来ないのだった…………。
× × ×
シンドウ・アスカと共に、次元を超える旅を続けるコスモスこと由宇の二人は、由宇の焦りを感じ取ったらしいアスカの[[rb:提案> 気遣い]]により、その途中にあった星で休憩をとろうということになった。そして二人は、手近にあったとある星へと降り立ったのだった……。
二人の降り立ったその星の名は、『サヴィール』。
とても美しい星だということを、由宇はこの星について少し聞いたことがあるというアスカから教えられた。確かにその通り、[[rb:紅>くれない]]と[[rb:藍>あお]]のコントラストが美しい星だが……その印象は二人が街に入ったときに二人の目に入って来た光景は、その印象とは程遠いものだった……。
「なんだか、良い雰囲気――って訳じゃないみたいだな……」
「アスカの言う通りみたいだね……」
そう、町はどことなく暗い雰囲気を纏いながら……一見不備の内容に動いている。しかし、明らかに〝普段通り〟というわけではないことは、初めてこの星を訪れた由宇とアスカにもよく分かった。
そんな雰囲気ではあったが、二人は食事の為に所謂「定食屋」や「バー」といった感じの
類とでもいえばいいのか、軽めの食事を提供する店に足を踏み入れる。
そこで久方ぶりの食事をとった二人は、食べ終わったころにはすっかり満足しておりご機嫌の表情だ。(ウルトラマンになっている間や次元を超えている間は飲食の必要なく、光のみをエネルギーとするエコな仕様だが、あくまでもコスモスとダイナになる彼らのベースは人間であるからして、マンやセブンのように光の国スタイルというのもなかなかに堪えるらしい。『一応光の国のウルトラマンたちも食事をとりたくなる時もあるが、べつにこれは必須ではないらしく一種の嗜好品の類だと言える』)
そんな訳で外に出た由宇たちだが、しばらくは先程食べた料理の話をしていた。(由宇はこの星の野菜で作ったサラダサンドが気に入ったらしいく、アスカは魚とポテトのフライのような料理が気にいったそうだ)
そんな感じでご機嫌だったのだが――
「いやっ!放してください!!」
――どうもヒーローというのはこういう場面に出くわしやすい傾向にあるようだ。
× × ×
「いやっ、放してください!!」
どうにもこの星は美しい外見とは裏腹に、治安の方は完全にグレーのようだ。とアスカと由宇はぼんやりとそんなことを思っていた。
とはいえ、放っておくわけにもいかない。
大の大人が、自分たちと同じ位の子供に複数人で取り囲みながら無理やり連れて行こうなんて卑怯もいいところだ。
最初に声を掛けたのは、アスカだった。
「ちょっと、ちょっと……大の大人が、三人掛かりで子供を虐めるなんて……趣味が悪過ぎるぜ」
そんなアスカの言葉に押さえつけられていた子供は、黒服たちの腕を振り払いアスカの元へ駆け寄り助けを求めた。
「助けて!」
しかし、黒服たちはそんなこと意にも介さずにアスカと由宇を見下ろしながらこう言ってきた。
「君達、そのお方をこちらへ渡したまえ」
「笑わせんな! この子、嫌がってるじゃねぇかよ!!」
黒服たちにそう強気で言い返すアスカはいかにもヒーロー、といった感じでかっこよかったが……。
黒服が仕方ないな、と言って無線機のようなもので仲間を呼び出したとき、アスカの威勢が失われた。
そしてぞろぞろと現れた増援を目の当たりにしたとき、アスカはなんだか心なしか青くなっていた。
「? アスカ……?」
由宇が少し心配そうに声を掛けたとき、先ほどアスカにこの少女を渡せと言った黒服のリーダーらしい男が部下たちに指示を飛ばす。
「多少手荒になっても構わん、あの方をお連れしろ」
「「「了解」」」
そういってじわじわと迫ってくる男たちを見ながら、アスカは突然「はっはっはっ!!」と高笑いをし始める。
その様子に黒服の一人が「何がおかしい!」と怒鳴りつけるが、アスカは全く気に留めず(?)笑い続ける。その様子を不気味に思った男たちは先程とは逆に、じりじりと後退を始める。
そしてアスカは由宇にこう問いかけた。
「ユウ、準備はいいか?
「え? あ、あぁうん。良い……よ?」
唐突に聞かれた為生返事を返してしまう由宇。
「よっしゃ……なら、早速――」
そしてアスカがとった行動とは――――
――――逃走だった。
「逃げるんだよぉオオオオオオ!!!!」
「えぇえええっ!?!?」
少女を抱えて逃走を開始するアスカの後をあたふたと付いて行く由宇だったが、黒服たちはアスカのとった行動を脳が理解できるまでしばらく時間がかかったらしく、アスカたちが路地を飛び出していった後になって漸くリーダー格の男が正気を取り戻し、部下たちに発破をかける。
「――ハッ…! な、何をしている貴様ら!? 追え! 追うのだ!!」
「「「りょ、了解!!」」」
そうして黒服たちが動き出した頃、アスカたちはとっくに逃走を成功させており……バレにくそうな場所をと考え、近くにあった公園のよう場所の一角に逃げ込んでいた。
「はぁ……はぁ……どうやら、ここに逃げ込んだのは分からないらしいな」
アスカはそんな風に言うのを見て由宇は同じよう荒息をつきながら、アスカにちょっと文句を言う。
「アスカってば、逃げるなら逃げるって最初からそう言ってから行動に移して欲しいんだけど……? いきなりでびっくりしたよ、もう」
「あのなぁ、それじゃあせっかく逃げるための演技だったのに意味なくなっちまうだろうが」
これを聞き、結果的にはその通りだが……絶対あの時、啖呵を切った時点ではアスカは本気交戦上等だと考えていたのは由宇にも分かる。
「…………」
ジトーッ、とアスカを疑わし気に見る由宇にアスカはこう言った
「おいおい、何そんな疑うみたいな目で見てんだよ? あの俺様の超ファインプレーのおかげで見事、逃走成功だっただろ?」
悪びれずにそう告げた後、アスカは「それに」と付け加え……。こんなことを言ってきた。
「俺たち子ども。相手は大人、しかも大人数。勝てない=逃走=勝利・生存。オーケー?」
ぐぅの音も出ないド正論だった。単純明快、ユーノもびっくりの分かりやすさで言ってのけるこの友人に……由宇はある意味感心・尊敬の念を抱くと同時に、なんとも開いた口が塞がらないという複雑な思いを感じざるを得なかった……。
そんな悶々とした、どうにも腑に落ちないような気分の由宇の考えを遮るように先ほどアスカが庇い、抱きかかえ連れてきた少女がおずおずといった感じに由宇とアスカに話しかけてくる。
「あ、あの……その……。た、助けて頂き、有難うございました」
「ああ、べつにいいよ。俺も助けたくてやったことだし」
アスカがそう答えると少女は再び「有難うございました」と礼を述べる。しかし、そのあとの二の句を告げようとすると……なんだかもじもじとしだした。
「そ、それでその……そ、そろそろ、降ろして頂けないでしょうか……?」
「ん? ああゴメン。そういや抱えっぱなしだったな。悪いな、横抱きにされっぱなしで嫌だったか?」
「い、いえ! 決してそのようなことではなくて……。た、ただちょっとだけ……その、は、恥ずかしくって…………」
アスカに降ろされながら、どこか名残惜し気に見えなくもない少女の様子を見て、由宇はかつてフェイトに初めて会った時の自分となんだか反応が似ているなー、と呑気にそんなことを思い出していた。
「それでは、あの改めまして……私はフィア・サヴィールと申します」
それを聞き、アスカはなんだか怪訝そうな顔をする。
「おいおいお嬢ちゃん、『サヴィール』って確かこの星の名前だろ? 確かに俺たちは別の星から来たけどさ、本名を名乗れなくても偽名はもう少し凝ったほうが――」
アスカがそういうと、少女は「い、いえ違うのです。名乗りたくないとかではなくて……」とアスカの推測を否定してこう言った。
「こ、これが私の本名なんです……」
「「えっ?」」
思わず疑問の声が重なる。
由宇はいまいち二人が何を言っているのか分からなかったが、由宇たちに何らかの理由で本名を告げられない故に、少女が別の星から来たらしい自分たちに随分と安直な偽名を使ったと思ったアスカがそれを窘めている――のだと思ったのだが……。
どうも、違うらしい。
「えっと……じゃあ君は、何者なの?」
由宇がそんな風に質問すると、少女はこう答えた。
「えっと、私は――フィア・サヴィール。この星の第二王女、です……」
「な、何ですと……?」
「王女……ということは――お姫様…ってこと?」
「は、はい……そうです」
「何ぃいいい――――ッ!!!???」
「ええぇええ――――っ!!!???」
何と、ヒーローたちが助けたのは……何の因果か――いや、寧ろこれが本筋なのだろうか? ともかく、二人が助けたのは…………この星の、お姫様だった。
× × ×
ヒーローらしく、それはもうヒーローらしくお姫様を救出しちゃった光の戦士二名は現在、自分たちのやってしまった行動について振り返り、尚且つそれがどういった影響をこの星にもたらすことになるのかを再確認していた。
「なんだか、ありがちな展開だが…………俺たちは王女を助けてしまった」
「別に再確認しなくても……フィアがなんか困った顔しるからね? アスカ」
確かにそのアスカの確認で元々控えめで大人し気な彼女は完全に委縮している。それに気づいたアスカはフィアに謝ると、話を先へ進めるべくフィアに事情を聞き始める。
「それでえっと……なんでフィアは逃げてたんだ? あいつらに誘拐されてそれで逃げてた、とか?」
「いえ……そうではないんです」
そしてフィアは自身が課せられたものから逃げだしてきた顛末を語る。
――ここ『サヴィール』は宇宙の中でも美しい星として有名で、地球や滅んでしまった獅子座L77星と並び「宇宙の宝石」と称されている。
そこへ、つい一ヶ月前にとある宇宙人がこの星へと進行してきた。
その宇宙人の名は……『マグマ星人』。
そう、かつて「宇宙で最も美しく、穢れ無き星」、「宇宙のエメラルド」と称されていた獅子座L77星を滅ぼした凶悪な宇宙人。完全な独裁主義を掲げる者たちであり、基本的に彼らは従わない者に容赦はしない。奴隷や星を手に入れるため、日夜他人の星を侵略している。
このサヴィールに来たのも、この美しい星を手に入れるためであり、加えてこの星の王女たちにほれ込んだマグマ星人は彼女らを自らの妻に迎え入れようとした。
フィアの姉は、せめて妹であるフィアは自由の身にさせてあげてほしいと懇願したが、それを受け入れる耳を持っている様な者達でないのは火を見るより明らかで……事実マグマ星人たちは彼女たちの意志を無視し自分たちの気のすむように勝手気ままに無理やり王女たちを連れていくことを押し通した。
しかし、フィアに逃げ出されてしまい……どうしてもフィアを逃したくないのか、フィアをとらえるべく手下たちを彼女の元へ送り込んできた。
しかし、フィアはどうにか逃げ続けたが……ついに今日、捕まりかけてしまう。
そこへ偶々由宇とアスカが通りかかり、フィアを救った――というわけだ。
× × ×
「なるほど……大体の事情は分かった。それにしても最低だな、マグマ星人ってやつは……」
「うん、まったくその通りだよ……許せないね」
憤慨するを通り越して、既に怒りMAXな二人は……既に行動を起こすべく、動き出した。
身勝手な侵略者の、身勝手な思惑を粉砕するために……彼らは動き出す。
戦いの幕は上がる。
その理由はごくごく単純なもので、それを行使することを躊躇しない者が彼らだったというだけだ。
救いたい。そんな当たり前の真心を……自分たちの目の前で困っている人に手を差し伸べられるだけのを持っている。
それはある意味、究極の自己満足だろう。
傲慢で身勝手だと罵られることもある、そんな『正義』を掲げる者。
しかし、それを成し遂げられるならば……決してそれも間違いとは言えない。
ある意味残酷で、最も優しい。
それもまた――
――ヒーローなのだろう。
マグマ星人を今回は悪役に起用してみました。
人型の宇宙人だから、同じ人型に求婚してもいいんじゃないかなぁ……? ということで起用してみました。
なんとなくそういった感じで、お姫様を掻っ攫うクッパ的なポジに据えてみました。