魔法と光の使者   作:形右

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お待たせしました。

今回から数話にわたって、コスモスと由宇の新たなる力への道――成長物語のような流れを書いて行こうと思っています。

それでは、どうぞ!



復讐者 『――カオスの再来――』

 

 

 

 

 ついに地球へと帰還することのできた由宇。

 ここまでくる間の道のりで知り合った親友アスカと共に、ついに地球へと降り立った。

 再会できた友人たちに「ただいま」を告げ、父との約束を果たし……家族との再会を得ることができた。

 久しぶりに感じる故郷の風に、由宇は胸を躍らせ……その喜びをひとしきり味わった。

 そして、また再び――故郷での生活が始まる。

 久しぶりに通うことになった学校では、友達みんなが帰還を喜んでくれていた。ただ、あくまでも由宇の行方不明は生徒たちには伝えられていなかった。今回の留守中の出来事は、ちょっと長期の用事で海外に行っていた、ということになっている。

 なんともありがたい措置だなと由宇は思い、その措置をとってくれたリンディやクロノに感謝した。

 でもそんな由宇にとっても、なんとも意外だったことがいくつかあった。

 まず一つに、ユーノの不在だ。まだ何が何だかよくわからないが……あの砂漠の世界で助けたお姉さんとその仲間たちが何やら悪いことをしている、らしいのだが……。それについての理由はまだ述べられていない。そのため、一体何でユーノが現場を離れたかについては帰って来たばかりのドタバタのせいででまだ聞いてない。

 まぁ、帰って来られた日が水曜だったので、木曜からまた学校に復帰して……それから週末になったらこの件についての詳しい事情を聞かせてもらえることになった。

 そして二つ目はアスカの滞在先だ。

 由宇としては、普通い自分の家に泊まってもらいたいと思っていたのだが、アスカはこの星での由宇の学校の時間や一般認識を聞き、さすがに学校行っていない(というか正確には既に卒業していて行く必要がない)自分が現地の人の家に真っ昼間から居候、は事件やら何やらの時に動きづらい。とのことで、しばらくは元管理局員のよしみで(殉職扱いになっていたのをクロノが教えてくれた)テスタロッサ、ハラオウン家にお邪魔する形となった。

 そして三つめは、フェイトがこちらの学校に通っていたことだ。なんとなくユーノやクロノ、それにアスカとミッドの人たちは、皆既に学校を終えている様な話だったので、フェイトもそんな感じなのかなとなんとなく思っていたが、そうでもなかったらしい。

 まあこちらに関しては嬉しい誤算だった。好きな人と机を並べて、授業を受けられるのは中々に嬉しいものである。

 そんな訳で、意外だったこともいくつかあったが……それも含めて、由宇の生活が再び始まったのだった。

 

 × × ×

 

 私立聖祥大付属小学校にて――  AM 10:35

 小学校には昼休みのほかに、業間休み、あるいは中休みなどと呼ばれる一〇分休みより少しだけ休み時間がある。

 その休み時間の間、由宇は一人屋上でだらだらと久しぶりの学校で疲れた精神を癒していた。聖祥大付属小にはその時間は純砂休みとして与えられているので、特に用事が無い限りはただの休み時間として生徒たちに与えられる。

 そんな訳で、由宇は一人だらだらと短めの昼寝タイムを満喫していた。

(はぁ……アスカは授業無いんだもんなぁ……)

 少し前まで気ままな(――と言っても、もちろん地球に帰るために真剣ではあったが)旅をしていたため、自由な時間に慣れ過ぎてしまっていた。そのためか、非常にかったるいとでもいうような感じだった。

(はぁ……)

 何度目か分からないため息を吐きながら、ふと寝返りを打った時……。

「あ、ユウ……ここにいたんだね」

「あれ…、フェイト……?」

 そこにいたのはフェイトだった。アリサたちとお喋りをしていたものと思ったが、フェイトは何故か屋上に来ていた。

 業間は名が様で短いため、遊びたい者は急いで校庭に飛び出して遊具やグラウンドでサッカーなどでメンバー決めも早々に終わらせて遊び始める。

 そんな訳で、べつに昼食の時間でもないためめったに屋上に人が来ない時間でもあるのだが、フェイトは違ったようだ。

「どうしたの?」

「いや、そんなに大したことじゃないんだけど……ユウが普段学校でどんな風に過ごしてたのかなぁって、思って」

「どうって言われても、普段からこんな感じだったよ? ここ業間だとひとこないから静かでなんかいいんだ……」

 空を独り占めできるみたいでさ。と由宇が言うと、フェイトは由宇の見上げている空を見つめてみる。

 その日の空は雲一つない快晴、とってもいい天気だった。

「……あんまり空を見つめたことってなかったけど、なんか良いなって由宇が言うのも分かる……。何だか、凄い感じがする」

「うん……。なんだか、吸い込まれちゃいそうだよね」

「そうだね、そんな感じがする」

「そうだ、フェイトもこっちおいでよ。横になると、もっと眺めがよくなるからさ」

 そういった由宇のアドバイスを実行してみるフェイト。

 確かに、こうして横になってみるとさっきまでとはまた違う感じになるから不思議だ。体勢が少し変わっただけで、案外印象は変わるものだということをフェイトは知った。

「どう? 少しは変わって見えたかい?」

「うん……さっきとちょっと違う感じに見える。なんだか、包み込まれてるみたいな感じがする」

「そっか……。じゃあそれをもう少し楽しもうよ……」

 あくび交じりにそう言う由宇につられて、フェイトも小さく可愛らしいあくびをすると、とろんとした気分でこの不思議な感覚を味わうことになった。

 

 これは、なんてことない〝日常〟の一片。

 されども、大切で、安らかな時間なのだった……。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 由宇とフェイトがそんなのんびりとしたひと時を過ごしていた頃、時空管理局本局に有る『無限書庫』では――

「へぇー…。器用なもんだねぇ……、それで中身が分かるんだぁ」

「ええ、その……まぁ」

『無限書庫』の無重力の中で、ユーノが座禅の様な姿勢で魔法陣を展開しながら十冊程度の本を一度にマルチタスクを使って閲覧するユーノの様子にリーゼロッテは感心していた。

 それに対してユーノは苦笑いをしながら、曖昧に返す。彼の性格からして自慢ということのも、誇ることもないので……どうしてもそっけなく聞こえてしまう。

 しかし、ユーノはそのことよりも……ここに来てからずっと気になっていたことをロッテに尋ねる。

「あの……ロッテさんたちは前回の『闇の書事件』の時のことを、ご存じなんですよね?」

「……、ああ…ほんの十一年前のことだからね…………」

 そう語るロッテの表情は、とても悲しげなものだった。今になって聞いたことを後悔したユーノだったが、聞きたいことはそこではないのだ。こちらから聞いた手前、相手が答えてくれそうな雰囲気に一応してくれたのだから何も言わないのも失礼だろう。

 なのでユーノは本当に聞きたかったことを、ロッテに尋ねた。

「その…………本当なんでしょうか? その時、クロノのお父さんが亡くなったって……」

「……本当だよ。私とアリアは、その時父様と一緒にいたから…………すぐ近くで見てた」

 曰く、封印されていたはずの『闇の書』が、突然その輸送中にその力を開放した。

「封印されていたはずの『闇の書』の護送中、急に解放されてしまった『闇の書』を……クライドくん、ああクロノのお父さんね?」

「あ……、はい」

「クライドくんが、暴走を始めた『闇の書』を護送艦から遠ざけようとして……『闇の書』を乗せたコンテナを護送艦から引き離そうとして…………沈んでいったところを、私たちは見てた」

 何もできずに、ただ見ているしかなかった。

 しかし、クライドの勇気ある行動によって……その時護送艦に乗っていたリーゼ姉妹、その主ギル・グレアム提督、そして……その妻、リンディ。

 ――クライドの行動によって、彼らの命は救われた。

 だが、その大切な人の命が失われたことによって、彼らは救われたのに――それをまるであざ笑うかのように『闇の書』は復活した。

 ユーノは、こういう時なんて言うべきか分からなかった。大切な人を失う痛みを与えられ、それでも命が救われて……生きていられることになったはずなのに、その命を奪った憎き代物が再び蘇り……またその猛威を振るおうとしている。

 何という運命だろうか…………。

 前にクロノの言っていた、世界はこんなはずじゃなかったことだらけだ――という言葉の意味が、その真意が、やっと理解できたような気がした。

 ユーノが申し訳なさそうな顔をしたので、ロッテは気にするなというようにユーノの頭をなでる。

 

 ――辛き運命は繰り返され……大切な人の命を、見境なく奪おうとする。

 しかし、それは――どちらの側も同じなのだということを、彼らはまだ……お互いに知ることはないのだった…………。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 その頃、学校から帰る途中。由宇と、フェイトは一緒に家路をたどっていた。

「残念だったね、なのはたちと一緒に帰れなくて……」

「うん……。でも、その代わりユウと一緒だから、私は嬉しいな」

「そっか…有難うフェイト」

「ううん」

 そうやって二人は一緒に歩いていたのだが、二人がなんてこのない粗大ごみがいくつか置かれていた不用品の置き場の横を通りかかったとき――

「!?」

「……ユウ?」

 ――突然、の襲撃者……いや、〝復讐者〟の発した声が…二人の歩みを止めさせた。

【ヨウヤク、ミツケタゾ…………コスモス…………!】

「カ、カオス……ヘッダー…………なのか……?」

【ソウダ――ワレワレハ『カオスヘッダー』……オマエタチガ、ソウナヅケタノダロウ?】

 カオスヘッダーは、由宇にそう告げ……近くにある液晶から、かつて由宇と戦った時の『イブリース』に近いおぼろげな姿を映し出していた。

「今更……何の用だ? もう、この世界には、ジュエルシードはないだろう? それとも、人間を滅ぼしたいのか?」

 由宇は、カオスヘッダーにそう問う。

【イマサラ、カ……。タシカニソウダナ。ダガ、ワレワレハモハヤ『ジュエルシード』ニモ、ニンゲンナドニキョウミハナイ。ソレニ、ワレワレハ……『ニゲタ』ワケデモナイ】

 ――マッテイタノダ、オマエヲ。

「僕、を……? だったらそれこそ、今更――何の用だっていうんだ?」

【…………ナンノヨウカ、カ。ソウダナ……ダガソレハ、オマエガイチバンワカッテルハズダロウ?】

 一番、分かって……いる…………? どういう事だというのか?

【――ワカッテイナイノカ。ソウダナ……ナラバ、オシエテヤル。ツキナミ、トイウイイカタナラ、フクシュウ…………ソウ、〝復讐〟ダ】

「ふく、しゅう……?」

【ソウダ。オマエハ、アノトキイッタナ――ソレガ、ワレワレノゲンカイダ、ト】

「…………」

 確かに、それはあの時由宇がカオスヘッダーに告げた言葉だ……。

「それが、どうしたっていうんだ……」

【キサマニタオサレタトキ、ワレワレハイタミヲシッタ。『憎しみ』ヲ、カンジタ】

 ――ダカラ、とカオスヘッダーは続ける。

【コスモス……オマエニモ、『痛み』ヲ――オシエテヤル…!】

「ッ!?」

 そうカオスヘッダーが言った瞬間、由宇とフェイトの前に……光の粒子が渦巻く。

 グゥォォォオオオッ!! カオスヘッダーの叫び声が海鳴市に響き渡る。そして由宇に、カオスヘッダーはこういった。

【ワレワレハ、モハヤ『限界』ナドハコエタ…………ソシテ、コスモス。オマエニハ、モットモフカイ『絶望』ヲアタエテヤル!】

 そういった瞬間、カオスヘッダーは前に戦ったような実体を持っていた。だが、それは……カオスヘッダー自身の姿ではなかった。もっと〝別〟の『何か』を形作っていく。

【コスモス……オマエニハ、「お前自身の力」デ、ワレワレガアジワッタ『絶望』ヲオアタエテヤル!!】

 コスモス自身の力――まさか!? と由宇がその恐ろしい考えに至ったときには……既に遅かった。

 カオスヘッダーは、対象を〝模倣〟して自分の姿を作る。

 これが彼らの基本だ。

 だが、その理を外れて『実体』を自ら作り出したのが『実体カオスヘッダー』だが――

 ――今回は、実態ではなく模倣。それも……コスモスを模倣して、挑戦を仕掛けてきた。カオスヘッダーは、以前のデータをもとにして、自分たちをコスモス――ウルトラマンと同じ体を構成し、『カオスウルトラマン』を作り上げた。

【コノ「チカラ」デ、オマエヲ――殺ス!!】

 カオスウルトラマンが地上へと降り立つ。

 ――憎しみの元に……、再びコスモスに対する挑戦を、カオスヘッダーは開始した。

 ヴォアッ! カオスウルトラマンが、由宇に対して小規模の光線を放つ。

(まずい!)

 自分の隣には――フェイトいるのだ。

 咄嗟にコスモプラックを取り出しかざす。

 コスモプラックの花弁の様な部分が展開され、蒼い輝石が輝きを放つ。

 シュアァッチ! コスモスになると、その手にフェイトを庇いながら、その光線を空へと弾き飛ばす。

 ――フェイト! 逃げるんだ、早く!

「ユウ…………」

 ――お願いだから、早く! このことを、皆にも伝えて!

「! 分かった……!」

 そういうとフェイトは即座にセットアップし、自慢のスピードを生かしてその場を離脱する。

 それをカオスウルトラマンは子虫でも払うように撃ち落とそうとするが、コスモスがそれを妨害するために『コスモストラック』を放つ。

 それはカオスヘッダー――カオスウルトラマンに直撃し、その動きを止める。その隙をつき、コスモスはカオスウルトラマンを宇宙へと連れだす。

 カオスウルトラマンはもがくが、コスモスは強引に大気圏を無理やりに突破し…… 宇宙空間での戦いを挑んだ。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 月周回軌道にて――

 激しくぶつかり合う二つの巨大な影、コスモスとカオスウルトラマン。

 ルナのコスモスはモードチェンジの隙を与えられずに、少々苦しい戦いを強いられている。

「ホォアッ!?」

「ヴォォアッ!」

 組合ながらだんだんと月へと引き寄せられるようにして二人の闘いは続いていく。

 そして、ついに月面に達しそうになった瞬間。コスモスはカオスウルトラマンを下にするようにしてそのまま月面に叩き付けた。

「ディアッ!!」

「ヴォォオッ!?」

 その隙を利用し、コスモスはカオスヘッダーが知らない『新たな姿』へと変わる。

 紫の光がコスモスを包む。

「!? ソノ、スガタハ……ナンダ!?」

「進化していたのは、お前たちだけじゃない!」

『スペースコロナモード』に変わったコスモスと、カオスウルトラマンが対峙し仕掛けるタイミングを探り合っている。

 じりじりと互いに間合いを詰めて行き……ぶつかり合いの第二幕が始まる。

「フゥアッ!」

「ヴォアッ!」

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 コスモスとカオスウルトラマンが月面での戦いを開始したころ、フェイトの知らせを受けたリンディたちは指令室でその戦いの様子をモニターしながら、どうすればコスモスに――由宇に対して援護ができるかを模索していたが、どうすればいいかすら分からない。

『アースラ』に新たに装備された『アルカンシェル』を使えば恐らく勝てるとは思うが……それは、コスモスの死を意味している。

 しかし、ほかにカオスヘッダーに対する対策手段など……無いのが現状だ。

 一体どうすればいいのか……、一同は月面での戦いの様子を見守るしかない……。

 全員が、モニターの向こうに映る二人の巨人の戦いを見守るしかない。

 しかし、その時もう一つの戦いの反応をキャッチした。

「この反応は……?」

「これは……ダイナ――アスカ君の戦いの様です!」

「アスカ君……ユウ君を助けようとして……」

 しかし――

「艦長、どうやらアスカ君も交戦中の様です!」

「何ですって!?」

 そう、カオスヘッダーの波動を感じたアスカはコスモスを――由宇を助けに行こうとしたが……そんなアスカの進行を妨げるもう一つの影が……大気圏上空で月面へと向かうアスカを待ち構えていた――

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 地球の大気圏上空にて、アスカ――ダイナは交戦を開始した。

(くそっ、なんでこんな時に……!)

 コスモスの助太刀に行きたかったのだが、突然現れたスフィアがそれを邪魔する。

 カオスヘッダーとスフィアは、まるで示し合わせたかのように二人のウルトラマンをそれぞれを別々に倒すべく、戦いを挑んでいた。

 とはいえ、勿論スフィア単体ならダイナの敵ではない。

 だが、どこから連れてきたのか……スフィアは一体の宇宙怪獣を引き攣れていた。

 

 灼熱合成獣『グライキス』――金星のバクテリア「アイスビーナス」がスフィアによって一体の怪獣として作り上げられた姿。頭部のスフィアによって形が保たれており、それを外されると元のバクテリアに戻る。

 

 グライキスは、その素早い動きでダイナを翻弄する。

 ダイナもミラクルタイプにタイプチェンジし、対抗するが……。

「ディアッ!」

「ギィアァァッ!」

 グライキスはダメージを受けても、頭部のスフィアを通して周囲のスフィアによってダメージは直ぐに回復されてしまう。

 頭部のスフィアは、まるで一つのユニットのようにグライキスを自在に操っている。あれを壊さない限り、ダイナに勝機はない。

 グライキスとダイナは大気圏上空にて、コスモスとカオスウルトラマンと同じくらい激しいぶつかり合いを始めた。

「デュアァッ!」

「ギィィィッ!」

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 再び月面での戦いへと、場面は移る。

 コスモスとカオスウルトラマンのぶつかり合いは、さらに激しさを増していた。

「ディィアッ!」

「ヴォォオッ!」

 その激しいぶつかり合いの中で、由宇は内心驚愕していた。

 何故か? それは――カオスウルトラマンが、スペースコロナの動きにしっかりと〝ついてきている〟からである……。

(カオスウルトラマン、なんて奴だ……!)

 改めてカオスヘッダーという存在の進化速度に舌を巻くが、へこたれてなどいられない。

 この互角な状況を打開すべく、光線技に勝機を賭けてみることに決めた由宇は、カオスウルトラマンにスペースコロナ最大の光線『オーバーループ光線』を放った。

 しかし、カオスウルトラマンも負けじとコロナモードの必殺技である『ブレージングウェーブ』を模した『インベーディングウェーブ』を放つ。

「ホォォアッ!」

「ヴォォオッ!」

 蒼天の光と混沌の光がぶつかり合い、せめぎ合う。ぶつかり合った光線は、均衡を保ったように見えたが……コスモスの光線の方が威力は上だった。

「ディィアッ!」

 コスモスの気合を込めたその一撃は、カオスウルトラマンの光線を押し返してカオスウルトラマンに直撃した。

 それに苦しむカオスウルトラマンだが……まだ、消滅までは至らなかった。ならば、と止めに『オーバーループ光線』を放つが――

「ヴォアッチ!」

「!?」

 ――何と、カオスウルトラマンは……形を作り出した後で、再び粒子の状態に戻り攻撃を回避した。

 その突然のカオスヘッダーの新しい戦い方に、コスモスもそれを見ていた皆も驚愕した。その間に、カオスヘッダーは再びカオスウルトラマンの形を取り戻し、コスモスへと攻撃を仕掛ける。

「ヴォアアッ!」

「ディアァァッ!?」

 その攻撃とその追撃を受け、コスモスは吹き飛ばされ山のようになっていた部分に叩き付けられてしまう。

 倒れ伏したコスモスに、今度はこちらが止めを刺してやると言わんばかりにカオスウルトラマンは邪悪な笑みをたたえるかのような面持ちでコスモスに近づいていくが…………。

 その時、不思議なことが起こった。

 コスモスの叩き付けられた山のようになっていた場所から漏れ出している光を目にしたとたん、カオスウルトラマンは唐突に後退した。

「…………?」

 いまいちこの状況が理解できない由宇とコスモスだったが…………その漏れ出している光の根源を見てみると、何やら蒼い鉱石の様な物が露出している。

 コスモスの掌程もあるその巨大な鉱石は、蒼き光を発しながらそこに鎮座していた。

 その鉱石とカオスウルトラマンを見比べて……由宇はふと思った。

(もしかして……カオスヘッダーはこれが〝苦手〟なのか?)

 カオスヘッダーは光のウィルス。地球に有るウルトラシリーズの敵大部分とは異なり、光を嫌ってはいない。というより、寧ろ自分自身が光であるかの様な性質を持っており、現に今……彼らはコスモスの力を真似、自分たちにそれを当てはめてさえいる。

 闇の力や、ただ姿をまねるのではなく――本当の意味での『模倣』(コピー)を実現している。

 だから、なんだか由宇には意外だった。光を嫌わないカオスヘッダーが、光が苦手だなんて…………と。

 それはともかく、どうやらこの不思議な鉱石にはカオスヘッダーが嫌いな〝何か〟があるらしい。

(なら……!)

 と由宇は、その鉱石を掴み……手元に引き寄せ、それを持って立ち上がりそれに光を当ててみた。

「!? ヴォォォオッ!?」

 どうやらその試みは当たったらしく、この鉱石から発せられるエネルギーを乗せた光をカオスウルトラマンはものすごく嫌がっていた。

(やっぱり、この鉱石……というか、この鉱石の発するエネルギーが嫌いなんだ!)

 この時、由宇とコスモスの二人は逆転の為の大きなチャンスをつかんだ。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 コスモスが逆転のチャンスをつかんだ頃、ダイナは――

 ――どうにかスフィアとグランキスとのコンビネーションを突破しようとしていた。

(どうすればいい……? 何か、攻略の糸口を見つけねぇと……)

 しかし、そのための隙が見当たらない。

 突破にためにはミラクルのスピードと、それに伴うパワーが必要だ。

 しかし、ダイナのミラクルタイプはスピード特化。コスモスのコロナのように両方というわけにはいかない。あくまでもこれは、スピードと超能力を最大に引き出すタイプなのだから……。

 ダイナはタイプに一芸特化を重点的にしている傾向があり、バランスではなくあくまでもその時点の最強なスタンスである。

 そのため、一度別のタイプにチェンジするとそのタイプと基本形態の『フラッシュ』にしかなれなくなってしまう。なので、慎重に選択をしなくては苦戦を強いられることになりかねない。

 今回は、選択は間違いではない。だが、グランキスはスピードとパワーの両方を兼ね備えている。

 だからミラクルタイプでは、一撃一撃の威力が足りないのだ。

 このジレンマが、ただでさえ少なく設定されてあるスタミナがどんどん減っていく。

「くっそぉ……!」

「ギォォォアッ!」

(…………こうなったら!)

 アスカは、何かを決心した。グランキスの攻撃をスピードを最大にして躱し、そしてできた隙をつき――根性の一撃を叩き込んだ。

「ウォォォオッ!!!!」

「ギィィィオオオッ!?」

 その一撃はグランキスの頭部のスフィア・ユニットをたたき割り、グランキスを元のバクテリアへと戻した。

 その光景に恐れをなしたのか、スフィアは逃走しようとするが……。

「逃がすかっ!」

 ダイナの放った必殺光線『レボリューブウェーブ』がスフィアを次元のかなたへと吹き飛ばし、その先にダイナの作り出した小型ブラックホールによって圧殺された。

「はぁ……はぁ……。アスカ様をなめるなよ……!」

 とのたまって見せたものの、アスカは既に相当疲労している。当然だろう、無理やりにもほどがあるやり方で強引に倒してしまったのだから。

 ホント、常識に縛られないというか……無茶苦茶な奴である。

 ダイナはコスモスを助けに行く分のエネルギーを残せるほど余裕のある戦いは出来なかった為、悔しいが……救援には、向かえない……。

(クソッ……! ユウ、負けるなよ……)

 月面で戦う親友にエールを送るので精一杯だが……それでも、心は一緒だと伝える様に。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 再び月面――

 由宇は何やら正気の様な者をつかみ取り、加えて何かこう――心が燃えるような力強さを感じた。

「カオスヘッダー! 僕は、お前に勝つ!」

「!?」

 カオスヘッダーに先ほどの鉱石の光を浴びせ、その光に乗せる様に光線を放つ!

「ディアアアッ!」

「グゥッ……ヴォオオオッ!!」

 カオスヘッダーも決死の抵抗を見せる。

 しかし、彼ら自身もどうやら知らなかったらしいその弱点となるものを使われて、カオスヘッダーは思うように力が出せていない。

 ――だというのに……それでも尚、コスモスに〝抗っている〟。

 恐るべき力と執念、そして生命力。

 しかし、それでも限界は来た。

 コスモスの光線についに耐え切れなくなったカオスヘッダーは、最後に置き土産代わりに小光線をコスモスにクリーンヒットさせ、消えていく……。

【コスモス……! コンドコソ……カナラズ、オマエヲ――殺ス……!! …………カナラズ…………!!】

 そう言い残して、カオスヘッダーは月面から姿を消した。

「ディ、アァァッ……」

 コスモスは膝をつき、かろうじて勝利したことを認識した。

 それにしても……カオスヘッダーの進化速度は恐ろしいほど早い。

 今回の勝利は、運が良かっただけ。偶々起こったその偶然が、勝機を由宇とコスモス、二人の前に転がしたのだ。

 カオスヘッダーの力はもはや、以前とは比較にならない。

 このままでは、次に出会ったときは確実にコチラが負ける。ダイナと力を合わせれば勝てるだろうが……もし、次もダイナが来れないような事態が起こったとしたらどうだろうか? その逆もしかりだ。

 恐らく、今のままでは自分たちには勝ち目はない。

(カオスヘッダーに勝てる、強さが……必要なのかもしれない)

 優しさだけでは、おそらく勝てない。

 

 ――何しろ、カオスヘッダーには【優しさ】が、〝決して通じない〟のだから……。

 

 どうすればいいのか……。成長すべき力の方向性を今、由宇はどちらかを選択することを迫られていた。

(一体、どうすればいいんだろう……)

 

 ――〝優しさ〟と〝強さ〟……。

 

 この相反するような二つの力を、どう使うのか?

 

 それを知る為の闘いが今、始まろうとしていた…………。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 由宇とアスカの勝利を受け、ほっとした指令室の一同だが…………どちらも苦戦を強いられていた事に変わりはない。

 今後は、ウルトラマンに頼るだけでは駄目である、ということを強く認識させられることになった。

「ホントに敵には限りがないわね……」

「ですね……」

 一体どうするべきなのか、どうしたらいいのか。それすらわからない、まるでそれは出口の見えない迷宮にたった一人で閉じ込められたような…………そんな気分だった。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 必要なのは――〝優しさ〟か〝強さ〟か……。

 

 突き詰めるべきなのは――『力』か、『愛』か……。

 

 

 その答えは、一体どこにあるのだろうか?

 

 争いをどれだけ乗り越えられたら、その正解に辿り着けるのだろうか?

 

 

 もしかしたら答えは無いのかも知れない。

 

 それでも進むしかないのは、人の性か……はたまた、無謀な希望にしがみつきたいからなのか――

 

 

 ――その答えすら、誰もまだ…………知りはしない。

 

 

 





いかがだったでしょうか? 楽しんでいただけたのであれば幸いです。

これからも頑張って書いて行こうと思っていますので、よろしくお願いいたします。
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