魔法と光の使者   作:形右

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遅くなりましたが、次話投稿でございます。

成長までの道のりの組み立てをどうするか、若干悩み中ですので少し時間がかかるかもしれませんが、そこに関してはどうかご容赦を。

今回は、その成長の為に主人公が折れる前の穏やかな時を書いてみました。ほのぼのしている……と思いますが、そうでもないと思ったらすみません。


それはともかく、本編をどうぞ!



安らかな時 『――Before losing it.――』

 

 

 

 

 カオスウルトラマンとの戦いを終えた数日後のこと――

『ヴォルケンリッター』という騎士達について、説明を受けるためにテスタロッサ、ハラオウン家を訪れた由宇とアスカ。

 以前彼とアスカが助けたあのお姉さん達についての情報を聞き、現在ここ海鳴市で起こっている事件の全容を聞いた。

「――ということだ。理解できたか?」

「うん。説明ありがとうクロノ」

「ああ、おかげでよくわかったぜ」

 大体の説明を受け、納得した二人はクロノに礼を言った。

「それにしても、どうしてこの街にはこん何強力な力が集まって来るんだ?」

 ある意味、この街そのものが危険遺産みたいだ、とアスカはこぼす。

 それに対してこの街の元々の住人たる由宇やなのはは苦笑せざるを得ない。

「ともかく、とりあえずこれで大体の説明は済んだ。あとは、この件に関する情報だが……」

 そう言ってクロノはモニターを操作し始める。

「情報は、僕の師匠であるリーゼ達の協力を得てユーノが行っている。そろそろ定期報告がてら進行状況も聞かなくてはな。ついでに君達にも『闇の書』についての補足説明をユーノにしてもらおう」

 そう言ってクロノはユーノに通信をつないだ。

「じゃあユーノ、頼む」

『うん、わかった』

 そう言い、ユーノが『闇の書』に関する情報をいくつか由宇とアスカに示し、その性質について語る。

 《蒐集》について、《守護騎士ヴォルケンリッター》について、『闇の書』のもたらす厄災について――

『基本的な性質はこんなところかな……』

「ユーノありがとう。すごく分かりやすかったよ」

「ああ、ぼっちりだぜ!」

 由宇とアスカがユーノに賛辞を送る。

「ユーノ、じゃあ早速本題の方……新しい情報が見つかっているなら頼む」

『うん。じゃあ、早速見つけた情報の重要そうなものをいくつか、大まかにだけど口頭で説明するよ。その他の情報と詳細はあとでみんなにデータ化して送るから』

「わかった。では早速だが、頼むよ」

『まず最初に、『闇の書』の正式な名称から』

「正式な、名称……?」

『そうなんだ。実は『闇の書』っていうのは本来の物じゃないらしいんだ。元々の名前――魔道書の題名とでもいうべき名称は……『夜天の魔道書』』

 ユーノの報告に皆口々に新たな……いや、本来の『闇の書』の名をつぶやく。

 そしてユーノの説明は続いていく。

『それでこの魔導書の本来の目的は、各地の偉大な魔導師の技術を蒐集・研究するために作られた――主と共に旅する魔導書……。

 破壊の力を振るうようになったのは、歴代の主の誰かがプログラムを変更したから見たいんなんだ』

『ロストロギアを悪用して、むやみやたらに莫大な力を得ようとする輩はいつの時代もいるって訳ね……』

『もとは健全な資料本が、「改変」――いや寧ろ「改悪」だねこりゃ……。勝手な変更で未来に負債を残すとはねぇ』

 ユーノの説明に、リーゼ姉妹もそう零す。

『それにどうやらその「改変」せいで、《旅をする機能》と《破損修復》の機能が暴走して……今の『闇の書』の《転生機能》と《無限再生機構》に変わってしまっているらしい』

「なるほど……、まさに【暴走】だな……」

 そうクロノが言うと、その横で聞いていた由宇たちも口々にその改編の被害い付いて語る。。

「暴走……」

「それにしても、古代魔法だからってなんでもあり過ぎねぇ?」

「それは……なんとも言えないね」

「でも、何だか……酷い話だよ」

「シグナム達も、好きで『闇の書』の暴走に手を貸してるって訳でもないみたいだし……」

「……もうこれは何が悪い、なんてレベルの話じゃないわね……」

「……ですね」

 由宇とアスカの言葉に続き、なのはとフェイトあ守護騎士たちに課せられた運命に対しての滞りを漏らし、リンディとエイミィがこの事件の根底がどれだけ深いかについての見解を述べた。

『それと、もう一つの変化がある。これがある意味一番酷いんだけど……もう一つの変化は、魔導書が持つ、持ち主への性質の変化。これは、かつて旅する主を支えるはずだった魔導書は一定期間の収拾が無いと持ち主の魔力を食い始める。逆に、完成しても無差別破壊の為にその力を使わせる……だから、これまでの主は完成してすぐに――』

「……酷いな」

 クロノの言う通りだと誰しもが思った。

 かつて、誰かが「莫大な力」の為に……自分の為に行った改変は、自分たちの――主となる者の命すら喰らいつくすような、ただの自爆システムと化してしまった……。

 これでは主となった人間も、もちろんヴォルケンリッターたちも、ただただ破壊をするためだけに使い潰され続けるだけだなんて…………。

「どうすればいいのかな……」

 由宇がそう尋ねると、ユーノはこう答えた。

『今のところ、完成前の停止は難しい……というのが現在の調査した分での見解だね』

「何故だ?」

『完成前だと、主に与えられる「管理者権限」が使えないんだ。『闇の書』が、「真の主」として認識した者でなければ「管理者権限」が使えず……システムの停止・改変ができないんだ』

 つまり、止められない。おまけに、ユーノの探し出した資料の一節には外部から無理な改変の際には主を飲み込んで転生する機能すらあるという。

 それでは、確かに手出しができない。このまま手をこまねいているしか……無いのだろうか。

『だから『闇の書』の永久封印が不可能って言われてる所以は、この辺りからなのよね』

『なんだよなぁ……』

 リーゼ姉妹もそう零す。

『これが、今のところ調べ上げた情報の大まかな概要です』

「そうか……では引き続き調査を頼む」

『うん。でもさすが『無限書庫』、探せばちゃんと出てくるのがすごいね。これから調査スピードを少しでもあげられるように頑張るよ』

 そういいながら、ユーノは編纂したデータをクロノたちの元へ送る。

「? ユーノこれは……」

『あ、うん。これまでに調べた分のデータだよ。きちんとまとめたつもりだけど、どこかに不備があったら言ってね。すぐ直すから』

 クロノは――いや、その場にいた〝全員〟が、そのデータを見て表情が引き攣った。

 ――そのデータの量と正確さに。

(コイツ……この短期間でここまで集めたのか……!?)

『? クロノ、やっぱりどこかに不備あった?』

「い、いや……。別にそういうわけではないが…………」

『そうだよユーノ君。クロノが驚いてるのはそこじゃないよ?』

『? じゃあどこに…………?』

『気にしなくていいって、クロ助は~ただユーノに感心してるだけだから~』

『はぁ……感心、ですか?』

 じゃあなんで、あんな引き攣った笑みの様な表情で固まっているんだろう? とユーノはコテンと首を傾げた。

 そんなユーノの様子にアリアはこめかみを抑え、ロッテはそんなユーノを撫でている。

『ちょ、ちょっとロッテさん!?』

『ふふふ~照れるなって~』

 ユーノは赤くなっているが、ロッテはそんな反応が面白いのか、単に可愛いのかユーノを撫でる手を止めない。

 ロッテはなんだか知らないが、ユーノのことが割と気にいったようで……ユーノのことをクロノと同じように可愛がっている。そんなロッテに、ユーノは毎回されるがままだ。今回もその例にたがわないらしい。

 そんなパッと見微笑ましい光景が展開されるモニターの向こうの様子に、クロノの次に早く我を取り戻した。

(なんだか…………ものすごくムカムカするの)

 何だか桜色の光が、背後から少々禍々しくこぼれだしている様な感じがした。そのムカムカの元が何なのかいまいち把握できないが…… ともかく、なんだかロッテがユーノに絡んでるんが、その……端的に言えば気にくわない、とでもいえばいいのだろうか? 

 ともかくだ、何かこう…… 申し立てたいような、意義あり! みたいなことを言いたかったのだが、所詮彼女はまだ小学生である故に(加えて彼女は文系教科が不得手である)言い返しが思いつかず、ただモゴモゴと言葉を探す。

 その間にも次々と周りも正気に戻りだした。その全員のユーノに対する感想は――

((((ユーノ /君…………恐ろしい子!!))))

 である。

 しかし、当の本人であるユーノはそれを自覚してない。

 その様子を見て、アスカはなんだかデジャブを感じた。

(ホント…………。無自覚は、罪だよなぁ……)

 そんな皆の様子に、ますますユーノは戸惑う。なんだか分からないが、どうも自分のせいでこうなったらしいことを感じたユーノはオロオロと、どうしたらいいかと視線を彷徨わせる。

 そんなユーノに対し、ロッテはますますじゃれ付くように振る舞うので……。

 ――桜色の炎が彼女の背後でゆらゆらと揺れている様にさえ見える。

 そんななのはの様子を知ってか知らずか……クロノは止まってしまった話を先へと進めようとする。

「……すまないが、話を先へ進めよう。ユーノ君も早く検索に戻りたいだろ? 何せ、まだ情報が〝少ない〟んだからな……」

 少々……いや、かなりの皮肉を込めてユーノにそういうクロノ。しかし、ユーノは別にいつものようにからかわれたわけでも何でもないので、特に怒りもせずに……あろうことか「うん、もっとペースあげられるように努力するよ」と答えた。

(このフェレットモドキが…………!!)

『く、クロノ……なんでそんな睨むのさ? 情報が少ないのが気に入らないの? だ、だからこれからもっと頑張ってペースあげる――なんでもっと睨むの!?』

(このフェレットモドキ……よっぽど僕をおちょくりたいんだな……必ずその減らず口を閉ざしてやる。今に見てろよ……ふふふふふふ)

 かなり理不尽な怒りを買ってしまったユーノだが、時には謙虚さも罪ということを知るには良い機会なのかもしれない。

 ユーノ君、相変わらず苦労が絶えませんでしたとさ…………。

『僕の、何がいけなかったんだろう?』

『気にすんなって、その分慰めてやるからさ~』

 

 ――ユーノ君。少し、頭を冷やそうか…………?

 

 ちょっと、その出番はあとワンシリーズ早いですからもう少しお待ちを魔王様。

 

 ――誰が魔王なの?

 

 すみません、天使様。

 

 

 

 そんなこんなで、時間は過ぎ…………事件説明も無事(?)終了。

 どんどん事件の調査は進み続けることがよく分かる一日だったと、由宇はのちに語る。

 

 

 

 × × × 『行間』

 

 

 

 結局報告の後も終始不機嫌ななのはに、ユウとフェイトは苦笑してた。

 恐らく、二人はかなりお互いのことを〝好き〟何だろう。

 勿論、本人たちはまだ分かっていないのだろうけれど……。

 きっと、それは二人の間にあるものが恋よりも少しだけ近いからなのかもしれない。

 方や、幼少期に甘えることを知らないままに育ち。

 方や、天涯孤独のままに早熟に生きてきた。

 互いにあるその『孤独』の形が、少し似ていた。お互いにそれが分かってしまう。

 そこには、【愛】は確かにあった。

 でも、それでも……どこか空虚な心の穴のようなものが、常にあった。

 それが分かるから――きっと二人は、距離をすぐに埋められた。

 それは、『友情』であり『こころ』であり、そして――『愛』といった様々な形を作るものだったのだろう。

 

 だから、二人の関係はどちらかと言うと『家族』に近い。

 

 友情も恋も吹き飛ばして残る友愛や、家族愛であり尚且つ何処かしらに異性同士の愛もある。

 

 紡いだ絆は、決して消えない。

 それは二人が生きる限りきっとそうだと、由宇とフェイトは思った。

 

 

 桜と翡翠の愛は、深い故に浅はかであり……何処が拙く、それでいて温かい。

 

 

 × × ×

 

 

 

 週末にユーノの説明を受け、週が明けた月曜日。当然のことながら、由宇たちは学校へと登校していったのだが……。

 ここに、一人、暇を持て余した人間がいた――

「……暇だ」

 ――シンドウ・アスカその人である。

 彼は元々、管理局に努めていたのだが……スフィアの襲撃を受け彼の属していた部隊は全滅。加えて彼はダイナと出会い、スフィアを追ってそのまま別次元へと飛んだため、彼自身も殉職したものだと管理局が処理してしまった為、所属が消えてしまっている。

 なので、今の彼はなのはたちや由宇と同じように嘱託・民間協力者の形になっている。

 そして、彼はなのはたちと同じ非常勤状態且つ緊急時の控えな立場の為……まぁ、端的に言って――暇である。

 加えて彼はユーノと同様に既に魔導学院は卒業したので、特に学校へ行く理由は無い。(そもそもこの世界の住人ではない、加えてフェイトやアリシアと違い戸籍を準備する時間がなかったこともある)

 何かをするにしても、彼に今できることは大分少ない。

 エイミィ達の手伝いはどうか? はっきり言って『アースラ』チームには自分は足手まといだ。

 ユーノの手伝いはどうだろう? 読書や資料探しは苦手ではないが、マルチタスクが元来苦手なため、ウルトラマンと融合したのものの彼のマルチタスクはそれほど高くはなっていない。

 クロノの手伝いは? それこそ意味がない。人では十分、非常勤なのだから緊急時に出動できなければ意味がない。

 そんな訳で、彼は今暇をつぶすべく海鳴市におりてきていた。

 元来じっとしているのは苦手な人間だ。何かをしていた方がいいという考えの元、彼は地球の街を探検気分で歩いていた。

 本来こんな時間に子供一人で出歩いていたら何かを言われそうなものだが、あいにくミッド出身のアスカの容姿は割と日本人らしからぬものなので精々外国から日本とは違う休暇で来ているのだろうと思われる程度で済み、アスカは特に呼び止められることもなく街中を散策するのだった。

 それにしても、地球もなかなかいいところだとアスカは思った。そんなことを考えながら街を歩いていると、一つの建物が目に入った。

「図書館、だな」

 そういえばこの世界の歴史や文化など雀の涙ほどの知識しかないな、とアスカは思いその中に入ってみることにした。図書館ならきっと歴史や文化に関する資料なんかもあるだろうと思ったらしい。

 ――図書館内にて。

 ひとまずこの世界の文字がよく分からないので、ミッドの文字と似ていて尚且つ意味がかなり近いという英語とやらからちょっと見てみようと思いそれっぽいのを探し、辞書コーナーらしい場所に足を踏み入れた。

(ふむふむ……へー、結構似てるもんだなぁ……)

 そんなことを考えながら英語に、というより地球のアルファベットになれるために辞書をあさりながら意味の間違いがないかを確かめつつ読み進めてみた。

(うん……文字の違いさえ気にしなけりゃそこまで違いはないな)

 アスカは決して地頭は悪くない。なので意味や文法が程同じなら慣れるのにそう時間はかからなかった。だが、問題は――

 ――日本語の方だ。

 喋っている言葉は日本語だが、あいにくと地球の、というより日本のひらがな・カタカナ・漢字をほとんど知らないアスカにとってこれはかなり苦労した。

 此方に関しては、人目につかない程度にこっそりと翻訳魔法を照らし合わせながら慣れていった。(とはいえ、もちろんそれでもかなり早いのだが……)

 そんな感じで慣れてしまうと、地球の文学や文化というのは中々に面白いということが分かった。ミッドにも地球出身の魔導師は何人かいるが、こうして直に触れてみると随分と印象が違う。

(面白れぇなぁ……)

 物語に関してはかなりアスカはドはまりしていた。昔話なんかもこれで中々馬鹿にできない。と地球の文学とそれに準ずるサブカルチャーに畏敬の念を送るアスカはすっかり夢中になってそこら中の物語を読み漁っていた。

(それにしても、この漫画やラノベってのはかなりいいなぁ……。ミッドにもこういうのもっとあってもいいのに)

 少し残念そうにしているアスカだったが、その時ふと窓の外を見ると少し空が色づき始めていた。

「もうこんな時間かよ……」

 アスカはそうぼやくと、ここの閉館時間は何時かと辺りを見回す。

 その時だった――

「ん?」

 ――その少女目に留まったのは。

 その少女は下半身が不自由らしく車いすに座っていて、本棚の上の方にある本を取ろうとしているのだが……。付き添いの保護者ぐらい居てもよさそうなものだが、いないのだろうか? そのあたりを見てみたが、誰もいないようだ。

 じゃあ、手を貸すかなとアスカはその子に歩み寄り、彼女がとりたかったらしい本をとると彼女に差し出した。

「ほい、これでいいか?」

 そう言って渡したのだが、その少女はポカンとしている。違ったかな? と思いそう聞くと、それですと答えたので、ハイと言って手渡す。するとその子はほんわかと笑みを浮かべ、アスカにお礼を述べた。

「おおきに」

「オオキニ……?」

 何だが聞きなれない単語が出てきたので、アスカはついつい無意識のままに聞き返していた。

「あ、有難ういう意味ですよ? 関西の方言、訛りいうやつです」

「なるほど……これが方言というやつか、さすがちky――じゃなくて日本。言葉の意味が深いなぁ……」

「あ、外国からいらしたんですか?」

「え、あっと……まぁ、そんなとこですね、ハイ」

 さすがにアスカでも別世界から来ました、なんて言えない。思わず受け答えが固くなってしまったほどだ。

「へぇー日本語お上手ですねぇ」

「まあ……割と慣れてたもんで」

 これまたまさか「これが普通に公用語の世界ですから」とは言えない。

「へぇ……」

 何だか感心されている。

「私と同じ位やのに凄いですねぇ、さっきはほんまおおきに。私八神はやて言います、貴方は?」

「俺? シンドウ・アスカ、年は九歳」

「あ、やっぱり同じや」

 そう言って朗らかに笑う彼女は、ものすごくアスカの幼き心(ハート)にビシビシと何かを訴えてくる。

(可愛いなぁ……)思わずそう心の中でつぶやく。

 はやてにはなんとも儚げというか、静かながらも心に訴え掛けてものがある気がする。管理局にいたころ、子供のくせにませていたアスカは同じくらいの子によくナンパモドキをしていた。(そのたびに姉貴分に制裁を喰らっていたが)

 そんな軽めのアスカだが、はやてにそれをしたくはないと思った。だが、もしかするとこの出会い方がもう少し違った形だったら「それにしても……君、可愛いね! 今度デートしよっか?」なんて聞いてた可能性も無きにしも非ずだが。

「はやてか……なんだかこう風を思い起こさせる感じだな」

 そんな訳で、こんな感じでおとなしめに思ったことを素直に言う方向にしてみた。

「そーかなぁ? 女の子の名前にしては少し変とちゃう?」

「いやいや、いいじゃん『風』。いろんなものを運んでくるんだぜ? 風ってのはさ――」

 ミッドにも風に関する話、地球でいうところの神話やおとぎ話のようなものはたくさんある。

「確かに風には力強い感じはあるけど、優しくやわらかに包み込むような風ってのもあるし……きっとはやての親だってそう思って間が子に向けての『祝福』で付けたんだって俺は思うけどなぁ」

「なるほど、男の子と女の子でそういう考えの違いもあるちゅうわけかぁ……」

 そう思っても差し支えはないだろう、とアスカは思う。

 別に『颯』と言っても疾風怒濤というだけではないだろうし、風のイメージは中々に良いものだと個人的には思っている。

 傍らに寄り添うようなやわらかな風、そんな印象をアスカははやてに重ねていた。

「でも、祝福っちゅうのは……あんまり私にはあわへん様に思うなぁ」

「え?」

「私――あんまり世界に歓迎されてへんから……」

 言った後ではやてはあっと言って、今のは忘れてくれへんか? なんだか愚痴みたいになってもーたから……と言った。

 何だか、そのはやての言葉が引っかかり……というか、本当は……そんな彼女の様子が――昔の自分に似ていたから様な気がして……。

 アスカはもう少しだけ、話そうぜと言ってほかの日音に聞かれないようにはやてと共に人気のない静かな休憩コーナーに移動した。

「世界に歓迎されていないってどういうことか、よかったら話してくれないか?」

「…… いや、そんな大したことやないし、聞いてもそんな面白くあらへんから……」

 はやては、同情でもされてると思ったのだろうか? とアスカは思い、聞こうと思った理由をはやてに正直に伝える。

「……、べつに同情して聞こうと思ってるわけじゃないんだ。ただ、なんていうかその……少しだけ、本当に少しだけ――はやてが、昔の自分に似ていたから、っていうだけなんだ」

「昔の、アスカ君に……?」

「ああ」

 あれは、父が宇宙に消えた――今よりももっと幼かった日の出来事だった。

 

 あれが、ある意味アスカの始まりと終わりの日。夢が始まり、何かが終わった日。

 

 光を継ぐ者の、過去の出来事。

 

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 

 それは、アスカがまだ三歳くらいの頃の話だった。

 その当時、幼くして母を失ったアスカは父と二人暮らしをしていたのだが…………。父であるシンドウ・カズマは何かと忙しい。

 管理局の提督をしていたのだが、ある時最新鋭の次元航行船0ドライブ搭載型『プラズマ百式』のテスト航行をしていたのだが……。そのテスト航行にはある問題があった。

 次元航行船としてこれまで以上の性能を追求した『プラズマ百式』は、これまでが管理世界間の次元航行しかできなかったが、これはそのさらに先までの航行を可能にするというものだったが――

 ――それはある意味未知の領域であり、相当な危険が伴う為、テスト航行への志願者はいなかった。

 そこでアスカの父・カズマに白羽の矢が立った……というより、エース級のパイロットたちの中から選別されるという話を聞き、カズマは自分が志願することでそれを打ち切らせた。

 自分の部下たちももちろんその中に含まれている、なら上官である俺が行かずしてどうする? とカズマは言った。

 しかし、カズマはその航行中順調にデータを集めながら航行を続けた。だが、その途中……原因不明の事態が発生する。

 カズマは未知の光と遭遇し、その中に消えた。消える直前にカズマが残した言葉は、「あの光は、どうやら俺を読んでいる様だ……」というものだった。

 そのまま光の中に消えた父・カズマは、管理局でこう語り継がれることになる。

 ――『光に消えた、優しき名パイロット』と。

 しかし、当時のアスカにとっては……ただ理不尽に父を奪われたようにしか思えず、それからしばらくふさぎ込んでいた。

 そうしてふさぎ込むことで……周囲の同情の視線は、ますます強くなる。

 それだけで済めばまだよかったのだが、父・カズマの消失がカズマ自身の過失事故だという風潮も強まり今度は同情ではなく哀れみや侮蔑の視線も強まってくる。

 ――無能な上官。

 ――部下に役割を取られたくなくて出しゃばった結果がこれか?

 ――役立たず。

 いわれのない誹謗中傷が世間を埋め尽くし、幼きアスカにも容赦なく降りかかる。

 今でこそ、父の名声だけが残るが、当時は本当にひどいものだった。

 そんな中で押しつぶされそうになっていた彼を引き上げてくれたのは、姉貴分であるリサ・マリエに救われた。

 その時、リサがアスカに告げたのはこんな言葉だった。

「アスカ、そんなとこで燻ってるくらいなら管理局にでも入って周りを見返してやればいい。アンタの父さんがすごい人だったは知ってる。でも、だからってそれが折れたからアンタが折れるなんてことじゃ意味ないでしょ? アンタはアスカ何だから。アンタは、アンタの道を突き進んでアンタ自身が周りを買えちゃいなさい」

 立ち止まって腐ってしまうくらいなら、燃えカスになるくらいなら、進んでみたらどうだ? 自分自身を誇れるほどに磨き上げられるなら、それでもうしがらみは消える。

 どうせならそれくらいの事目指した方が楽しいだろうと言ってくれた。

 それが、アスカが立ち上がるきっかけになった。

 ――ありきたりかもしれない。無責任な言葉に乗せられただけだというかもしれない。

 でも、それでも……その時の自分が立ち上がれたのは、前に進むことを選べたのは間違いなくリサのおかげであるから…………。

 

 結果として、アスカは魔導師として管理局に入局。航行船に乗るには経験を積まなくてはならない為、魔導士としてリサの口利きで管理局に入ったアスカはめきめきと力をつけていく。そんなアスカの姿に、もう誰も同情も哀れみも侮蔑も中傷も何も言えはしない。それどころか、真っ直ぐに突き進む彼の背に魅せられるものまで出てきた。

 しかし、その矢先に――スフィア襲来。

 身につけられたと思っていた力は、通じずに……仲間たちを守ることさえできなかった。

 それどころか、自分だけが都合のいい偶然(ダイナ)に救われて生きている。この現実に滞りを感じることは今でもある。

 でも、失った時間は取り戻せない。それは、あの辛い日々がアスカに嫌という程教えた――突きつけてきたものだ。

 ――だからこそ、また前に進むことを選んだ。

 こうしてアスカの時は、また別の方へと流れていき…………父がかつて次元の果てで出会ったらしい『光』を、彼は今……確かに自分の中に感じて生きている。

 

 ――誰かを守れるように、彼は進み続ける。

 

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 

「――まぁ、大体そんなわけでさ…………」

 はやてに、魔法や管理局という部分を伏せながら、自分のこれまでをなるべく地球の常識に合わせて語り、だから、なんとなくだけれど……はやての気持ちもわかるとアスカは言った。

「もちろん、はやての生きてきたこれまでと俺のこれまでは違うものだから、完璧に理解はできないけど……それでも、わかるんだ。弱者みたいにみられるのは嫌だって気持ちが――父さんたちがいないから、これまでに残してくれたたくさんの宝物の時間が……なくったみたいに言われることが嫌なこととかが」

「…………」

 はやては、ただ静かにアスカの話を聞いた。

 自分と同じように、一度弱者という殻に閉じこもったことがあり、家族の温かさを失ってから再び与えられた時のことを知っていて、与えられたものが残ることを知っているこの少年の話をただ静かに、聞いた。

「………… でも、アスカ君は自分から前に進んで行けたんやから私とは全然違うよ。私は、もう諦めてしもとった」

 生きることを、希望を持つことを、自分自身の価値を、全てを放棄して楽になりたいと願っていた。

 だって彼女は、『あの日』与えられた〝家族〟に出会うまで……進むことを放棄していたのだから――

「私は偶々、新しい家族ができて……改めて生きることを教えてもろたような気分やった…」

「俺も偶々だったんだ。こうして、生きていることが…………あの時、本当は死ぬはずだったんだ。でも、俺も偶然生き残った……事故に会ったのは俺だけじゃなかったのに、俺はどうすることもできなかったんだ……」

 そう言って拳を強く握るアスカ。

「でも、失った時間は取り戻せなかった。だから、今できることを精一杯やれるように生きたいって思ってる」

「そうなんや……」

「だから、はやてが世界に歓迎されていないって言ってたのを聞いて、俺も悲しくなった。その気持ちが……全部とは言わないけど、それでもほんの少しだけなのかもしれないけど……それでも、わかるから」

 だからはやてが気持ちの全部をさらけ出しても、幸せに笑っていられるようだったら俺も嬉しいなって、そう思った。きっとその方が、可愛いぜ? とアスカが言うと、はやては赤くなって顔をうつむかせる。

「もぉ……おだてても、何もでーへんよ?」

「別にそういうわけじゃねぇんだけど……」

 そう言って頭を掻くアスカにはやては、苦笑する。

「でも、ありがとーな。なんや元気出てきたよ」

「ならよかった」

 そう言って、二人は微笑み合った。

「そうだ、一つ約束しようか?」

「約束?」

「ああ。はやてを守ってやるっていう約束」

「…………意外とませてるんやねぇアスカ君」

「たぶん元々なんじゃねぇかな?」

 そう言ってはやてに小指を差し出すアスカと、それにおずおずと習うはやて。

「きっとはやてが危なくなったら助けるよ。そして、きっと守りぬく」

「……なんや恥ずかしーなぁ……」

 そう言って二人は、小さな――それでいて固い約束を交わしたという。

 

 夜空を統べる主と、宇宙を駆けし戦士はこうして――出会った。

 

 

 

 × × ×

 

 

 一人の少女と、一人の少年の出会いが果たされた数日後――

 

 ――『闇の書』事件の対策本部であるテスタロッサ・ハラオウン家に有る反応が示されていた。

 

 それは、再びヴォルケンリッターが見つかったという知らせだった。別次元の世界での蒐集をまだ続けているらしく、また蒐集の為だろうということは分かっているが今度の世界も以前の場所と同じく無人の世界で魔導生物・魔獣のみが生息している場所だという。

 そんな訳で、魔導生物を傷つけないようにということで由宇に白羽の矢が立った。

 むろん由宇も殺されまではしなくても、傷ついた魔獣たちを放っておく気はさらさらなく「分かりました」の一言で了承した。

 コスモスと彼のコンビなら、色々な物から命を守ってくれるようなそんな信頼がある。

 むろん、それも絶対ではないが…………『二人なら』と誰もが思っている。

 

 

 そしてその『信頼』という名の、本人たちも無意識な『傲慢』は…………いづれ、ツケとして降りかかる。

 

 

 しかし、その残酷な定めを由宇たちはまだ知らない、知るはずがない。

 

 たとえどれだけの力があっても、人は決して万能ではないのだから――

 

 

 

 

 次回、求めすぎたもの『――消失――』

 

 

 





どうでしたでしょうか?

次回予告なんかも調子乗ってつけてみましたが、果たしてよかったのかどうか……。

まぁともかく、次回もお楽しみにしていただければ幸いです。

ちなみに何かリクエストやご意見があるようでしたら、どうぞお寄せください。

それではまた次回にお会いしましょう。
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