魔法と光の使者   作:形右

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今回から数話にわたって、強さと勇気の意味を追い求める過程を頑張って描写していきます。

強さと優しさの意味を、僕なりに描写していきます。


求めすぎたもの 『――消失――』

 

 

 ――とある無人の次元世界にて。

 

 ヴォルケンリッターの反応を追って、由宇とフェイトがこの地に降り立った。

 前回の世界同様、ここも『文化レベル〇』の無人世界。魔導生物からの蒐集、ということなのだろうか?

「フェイト普通なら二手に分かれるところだけど……無人世界じゃ何があるかもわかんないし、一応一緒に行こう」

「うん」

 そう言って二人で反応の会ったポイントに向かうが――そこにヴォルケンリッターの姿はなかった。

「いない…………? っていうより、移動した後?」

「分かんない。エイミィに聞いてみるね」

「よろしく」

 そう言ってエイミィに連絡を取ろうとしたのだが――

「あれ……? 通じない」

「えっ?」

 どうやら通信ができないようだ。なら念話はどうか? と試してみるが…………応答、無し。

 これは一体……?

 しかし、この状態で取り乱すほど二人は無知ではない。通信不良が起こっているなら、少しばかり時間を置いてからかけ直し回復していなければ戻る、それでいいと考えた。

 第一、元々の目的である『ヴォルケンリッター』の捜索はまだ済んでいないのだ。

 二人は特に迷いもせずに、森の中へと足を踏み入れた。

 しかし、森の中に魔導師の魔力反応は確認出来ず……二人はしばらく森の中をさまようように歩き回っていたその時――

「キュゥゥゥウィッ」

 ――ある怪獣の群れに、出会った。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 二人が出会った怪獣は、鳥のような姿をしており群れを作って生活しているらしいが、それが渡り鳥の様な旅の途中の休息のためにここにいるのか、それとも元からここに住んでいるのかについては分からない。

 まぁ、それはともかくとして……さすがに怪獣の群れに出会ったので、由宇とフェイトは一瞬警戒したが……その心配はいらなかったようだ。

 それは何故かというと、その怪獣たちは非常におとなしいらしいからだ。

 どうも彼らは、自分たちの住処である森の中にある渓谷を吹き抜ける風が奏でる音が好きなようで、その音に合わせて歌のような鳴き声でリズムを刻み始めた。

 その間にも、由宇とフェイトに危害を加えようとするそぶりは全く見せない。

「へぇ……おとなしいんだね、この怪獣たち」

「うん。そうみたいだね、ユウ」

 二人はそうつぶやき、少しだけその怪獣たちを眺めていた。しかし、ヴォルケンリッターの方を放っておくわけにはいかない。

 このままではいけないので、広域サーチでヴォルケンの反応を見つけようとしたのだがどうにも見当たらない。

「どう言うことなんだろう?」

「分かんないけど……多分この世界にはもう、ヴォルケンリッターはいないのかもしれない」

 この状況から見れば、確かにそれが正しい見解だろう。

「じゃあ、通信もまだ回復しないし……一度アースラに戻ろうか?」

「うん、そうしよう――えっ?」

 その時、フェイトはすり寄って来た存在に少し驚いた。そのすり寄って来た存在は、向こうにいた怪獣の子供だった。

 子供の体長はそれほど大きくはなく……とはいっても、もちろん大人が40~50mと言うところなので、子供の方も10mくらいは有る。

 かなり大きいので、二人はびっくりしたが……襲って来たわけではなく、ただ単に遊びたいだけの様だ。

「キュゥゥゥ」

「人懐っこいんだねぇ……」

「うん……そうみたい」

 二人は驚いたが、その人懐っこい仕草が可愛かったので…………ついつい遊ぶような感じの流れになってしまった。

 

 遊んでいて分かったことだが、どうにもこの怪獣たちは渓谷の風の音……というよりも、綺麗な『音』が好きらしい。

 なので、試しにフェイトと一緒にこの間学校の音楽の授業で習った歌を一緒に歌ってみたところ……怪獣たちも一緒になって歌い始めた。

 そんな穏やかな時間が流れ、和やかに流れた時間は――あきらめの悪い、尚且つたちの悪い復讐者の〝歪み切った執念〟によって崩される。

 

 ひとしきり遊んだあと、怪獣たちは空へと飛び発って行こうと翼を広げ始めた。どうやら、彼らは渡り鳥のような習性をもっているらしい。

 この広い世界のあちこちをその翼で自由に飛んでいる彼らの姿は、きっと優雅で美しいものなのだろう。

 由宇とフェイトは、この世界に存在する……ある一つの形の美しさをここに見た気がした。

 由宇はなんとなくあの怪獣たちの名を考えていた。彼らはまるで『明日へ渡る鳥』、『未来への翼』なんていうところだろうか?

 明日へ渡る鳥、アスへワタリドリ……リドリ、アス。

 

 

 ――リドリアス、なんてどうだろうか? ちょっとばかり安易である気もするが、なかなか良い名ではないか? と、ちょっぴり自画自賛してみる。

 

「じゃあね……『リドリアス』」

「リド、リアス……?」

「うん、名前……会った方がいいかなぁって、でも勝手につけられるのは嫌かなぁ……?」

「いいと思うよ。リドリアス、私は……何だか好きだな」

「ありがとう、フェイト」

 

 そんな風に、穏やかな笑みを浮かべた二人だが――その飛び立とうとする彼らの上空に光の渦が唐突に発生し、リドリアスの一体に憑りついた。

「キュィィィッ!?」

「リドリアス!?」

「あれはッ…………カオスヘッダー!?」

 なんでこんなところにいるのだ!? と由宇は驚愕したが、考えて見れ場別に驚くようなことではない。だって元々、カオスヘッダーは〝別の宇宙〟から来たのだから――。

 

(ということは、先ほどのから起こっていた通信不能のジャミングの原因は――カオスヘッダーだったのか!?)

 

 どこまでも執拗に迫る宿敵の影に、友好を結んだ友が襲われた。それを救う為に、由宇は光に身を包み……友を救わんす。

 

「コスモース!」

 

 しかし、これが…………残酷な定めの序章だったということに気づいたものは、まだいなかった。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 訪れたとある無人の次元世界で由宇とフェイトが出会った友好的な怪獣――リドリアスに憑りついたカオスヘッダーは、リドリアスの身体を使ってコスモスに戦いを挑む。

【コンドコソ、オマエヲ…………殺ス】

「何故だカオスヘッダー……どうして、リドリアスを巻き込む!? この戦いは……僕とお前の物だろう?」

【ソウダ】

「だったら、何故……ッ!?」

【トクニリユウハナイ。タマタマオマエヲミツケタトキ、ソバニイタ「ソザイ」ガ〝コレ〟ダッタ。タダソレダケノコトダ】

「ふざけるな! 命は……命はそんなに軽いものじゃない!」

 そう怒りをあらわにして、カオスヘッダーに食って掛かる由宇だが……カオスヘッダーは、前回よりももっと人間に近ぢた流暢な言葉でこういった。

【『命』カ。ダガ、オマエタチモ家畜ヲ自然ヲ『喰らって』イキテイルデハナイカ? ソレモマタ『命』ダロウ? 〝我々〟トタイシテカワラン】

 と、そういうカオスヘッダーに対する由宇の答えはこういったもだった。

「…………確かに、僕らはそうしないと生きていけない罪深い生き物だ。でも、だからこそ……命の尊さを知ってる。それに対する『感謝』を知っている!」

【ソンナモノハ『詭弁』ニスギナイ。ツゴウノイイ『言い換え』トイウヤツニスギン】

「それでも、今僕は……目の前で苦しんでいるリドリアスを救えないなんて道は、選べない!」

【ソレデイイ、ドンナリユウデアレ、ワレワレトキサマハ『戦う運命』トイウヤツナノダ。イマコソ、オマエヲ――殺ス】

 対峙するコスモスとカオスヘッダー……――いや、カオスリドリアスはしばしの静寂ののち、激しいぶつかり合いを繰り広げる。

「シュアッ!」

「ギャァァッ!」

 ルナのまま、リドリアスを傷つけないようにして戦いを続けていた由宇――コスモスは、カオスヘッダーが思ったよりも決定打にかける戦いをしていることに違和感を抱いた。

 この間の様な激しさが無い。

 まるで何かを待っているかのような、そんな違和感がある。

(何だろう――この、〝違和感〟は……?)

 だが、その違和感に対する疑問は一気に薄れてしまった。

 由宇の捌き手が、カオスリドリアスの動きを上手い具合に押しとどめられた為である。

 ここだ! と、ルナモードの光線技の一つであるカオスヘッダーを切り離す光線『ルナエキストラクト』を放つ。

 光の粒子の織り成す蒼き波が、リドリアスに憑りついたカオスヘッダーを分離する…………はずだったのだが――

「フゥアッ……? ――ッ!?」

「ギィィャアアアォォォッ!!」

 ――バギィンッ! と、カオスリドリアスは何と……『ルナエキストラクト』を弾き飛ばした。

 

『ルナエキストラクト』が――効かない?

 

 カオスヘッダーの進化は、既に自身を切り離し『ものに憑りついて暴れさせる』特性を〝奪う〟技である『ルナエキストラクト』を克服するに至っていた。

 

 その事実に動揺したコスモスにできた、完全無防備な隙をカオスヘッダーが見逃すわけもなく…………カオスリドリアスが口から放った光線がコスモスに直撃した。

「ギュァァァッ!!」

「ディアァァッ!?」

 そのまま吹き飛ばされたコスモスに、追撃を仕掛けるカオスリドリアス――カオスヘッダーはコスモスを容赦ない追い打ちを見舞う。

 追い詰められていくコスモスは、どうにかして打開策を見つけなければと体制の立て直しを図るが、それは決して許されない。

 ――一体どうしたら、どうすればこの状況を変えられるのか!? と、由宇は降りかかる攻撃に必死に絶えながら考え続ける。

 

【コレデ、終ワリダッ!!】

 

 というカオスヘッダーの声が周囲に響き渡った瞬間、カオスリドリアスにどこからか放たれた二つの攻撃がヒットした。

 一体誰が? とその攻撃の方に視線を向けると、そこには先程自分たちと遊んだ子供のリドリアスとフェイトが空中に制止していた。

 どうやら先ほどの攻撃は二人の放ったものだったらしい。

 二人のくれた逆転のチャンスを逃すまいと由宇は起き上がろうとするが、先ほどまでに受けたダメージのせいで身体の動きが鈍くなっており直ぐに起き上がれなかった。

 そんな由宇――コスモスに時間にすれば一秒にも満たないコンマ何秒といった瞬間のみ視線を向桁カオスヘッダーは、コスモスよりも先に二人を打ち落としてからコスモスに止めをと考えたらしく。

 二人に高速の光線を放つ。

 だがもちろんフェイトと子リドリアスはそれを交わすが、光線を乱射に変えたカオスリドリアスの光線がフェイトに当たりそうになった瞬間子リドリアスがそれを庇うが――二人はその攻撃の余波によって落とされてしまう。

 子供の怪獣と、人間には怪獣の光線はたったそれだけでも相当のダメージを与える。それは勿論――いかにバリアジャケットに守られていようとも、だ。

 

 二人に光線があたった瞬間、由宇の中で何かが切れた。先ほどまでの自分のふがいなさと。、二人を傷つけられたことに、由宇はもう冷静さを大幅に欠いていた。

 由宇は動きが鈍った体を無理やりに動かし即座に攻撃行動を移り、カオスリドリアスの体をしたから足の裏で思い切り蹴り飛ばし、体の上から〝邪魔者〟をどけると二人の下へと行こうとしたが――今回カオスヘッダーの憑りついたリドリアスは空を飛べる為、空中で体制を立て直しコスモスに攻撃を仕掛けてくる。

 その追撃に、普段の由宇からは考えられないほどに語調を荒げ……叫んだ。

 

 

「邪魔を……………………するなァァァあああああああああアアアアアアッッッ!!!!!!」

 

 

 ――なりふりかまうな。

 

 ――早く倒せ。

 

 ――二人を〝助ける〟為に!!!!

 

 ――救う為の、力をっっっ!!!!

 

 

 その時の由宇の脳裏には、何故か敵となるはずのカオスヘッダーではなくルナとコロナの二人のコスモスが戦っている光景が浮かんだ気がした。

 そして二人のぶつかり合いの末に残ったのは、炎の中にたたずむ太陽の赤き光――だったように思った。

 

 

 失うことを恐れた彼は、それらをかき消してしまう程の〝力〟を振るうことになってしまう。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 コロナにモードチェンジし、カオスリドリアスへと突撃していく。相手の仕掛ける攻撃をかわし、相手を硬直(スタン)させる様に一撃一撃が先ほどよりも重くなってしまっていることに――由宇は気づいていない。

「ダアッ!!」

「ギュィィィッ!?」

 元々の素体が戦闘向きでないリドリアスを選んだ時点で、なりふり構わない戦いを行う今のコロナモードにかなうはずもなく、攻撃を仕掛けるごとに、カオスリドリアスの動きがだんだん鈍くなっている。

(よしっ! いける!!)

 だが、それが…………単なる硬直(スタン)ではない事に由宇は、まだ――気づいていない、〝気づけない〟。

(早く……早く…………手遅れになる前に!!)

 だが、そんな中でも由宇は《全てを救う》ことに執着している。理想にしがみついている。

 

 ――これまでにだって、救ってきた。今度だって――救って見せる! と。その優しいはずの心が〝思い上がり〟として降りかかりつつあることに〝気づかせない〟のは何という皮肉だろうか。

 

 故に、そのことに気づけない由宇は、《全てを救う為》いまだに攻撃系の光線技を〝一切〟放つことなく、全てを打撃で押し続けている。

 実は、コスモスの技に有る『エキストラクト』には〝ルナ〟と〝コロナ〟のそれぞれ異なるバージョンが存在している。

『ルナエキストラクト』は弱っている怪獣を庇うように使われるが、『コロナエキストラクト』はそれよりも強力にカオスヘッダーを切り離す。

 それこそ通常であるなら、放っただけで切り離してしまう程に。

 だから、由宇はこう考えた。

(『コロナエキストラクト』なら、きっと! カオスヘッダーを切り離せる!!)

 と、そう考えた。

 フルパワーで放てば、カオスヘッダーウィルスを切り離せる。もしかしたら、〝消滅〟にまで至らせ、これから誰も傷つかずに済むようにできるかもしれない。

 戦っている内に、激高し――同時に、高揚しつつあった……そんな、理想の夢に盲目してしまった由宇は、その勢いのままに…………『コロナエキストラクト』をフルパワーで放ってしまっていた…………。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 由宇の放った『コロナエキストラクト』に、苦しみもがくカオスヘッダー。

 往生際の悪い抵抗をしてリドリアスから離れようとしない。由宇はさらにエキストラクトのに力を集約させ、より強い光を放った。

 その結界ついに、カオスヘッダーは切り離され……その場には元の姿に戻ったリドリアスが残った。

 しかし、カオスヘッダーはリドリアスから離れる際にリドリアスの残りの力を吸収して、切り離されるのと同時に襲い掛かるが……もう切り離した諸悪の根源に対する手加減を考えられるほどの『心の余裕』など、由宇は既に持ち合わせてなどいなかった…………。

「邪魔をするなって――――言っただろォォォッッ!!!!」

 先程の『エキストラクト』のフルパワー放射により、ピコピコとけたたましく鳴り響くカラータイマーの音等無視したままに、由宇は襲い掛かるカオスリドリアスに『ネイバスター光線』を叩き込み、その圧倒的なまでの破壊力を以て……一撃の内にカオスリドリアスを吹き飛ばした由宇は、焦る心のままに子リドリアスとフェイトの元へと歩み寄る。

 そして傷ついた二人に治癒の光を当てて、傷を治す。

 幸いにも傷はすぐに治り、二人は直ぐに正しい呼吸音を取り戻し……目を開ける。

「良かった……」

「ゆ、う…………」

「キュゥィ……」

 二人が目を覚ましたのを確認し、次はリドリアスの傷を治すためにとリドリアスの方を振り向こうとしたとき――由宇はズサッ…、という妙な音と共に、地面に崩れ落ちる影を視界の端にとらえた。

 

 

 その咆哮に視線を向けたとき、そこに見えたのは――崩れ落ちたリドリアスの姿だった…………。

 

「えっ…………?」

 

 

 何が――起こったのだろう…………?

 

 

 その理由を、由宇は直ぐに認識することができないでいた。

 

 その場には、ただピコン、ピコンと点滅が遅くなり始めたコスモスのカラータイマーの弱々しい音だけが鳴り響いていた…………。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 崩れ落ちたリドリアス。

 

 その姿に我を失った由宇は、呆然としてしまったが――直ぐに自分が何の為に戦っていたのかに気づき、急いでリドリアスのもとに歩み寄る。

「どうして!? 何でこんなことに……ッ!?」

 急いで蘇生を施そうと、由宇はリドリアスに蘇生光線を浴びせる。

 

 しかし、そんな由宇の行為もむなしく……リドリアスが目を覚ますことは――決して無かった…………。

 

 ――何故だッ!?

 

 ――どうしてなんだ!?

 

 由宇は、叫ぶ。

 

 リドリアスに光をどれだけ浴びせても、どれだけ祈りを込めても……救えない。

 

 命を――自分の生命エネルギーさえ使うことを惜しまなかった……なのに、リドリアスは目を覚まさなかった。

 

 

 ――フェイトを助けた。

 

 ――街を守った。

 

 ――イブリースを倒した。

 

 ――プレシアを救えた。

 

 ――アリシアだってもう一度目覚めさせることができた。

 

 ――ジュエルシードも、次元震だってどうにかした。

 

 ――スコーピスを倒した。

 

 ――ダイナと一緒にサヴィールを、管理局の支部を守った。

 

 ――シグナムを助けた、魔獣も助けた。

 

 ――カオスウルトラマンだって倒したのに…………。

 

 ――なのに…………、救えない。

 

 

 これまで守ったもの、皆で起こした奇跡も…………今この瞬間には、何の役にも経たない。

 

 

 ――どうして救えなかったのか?

 

 認めたくない現実に抗うべく、リドリアスを抱き起したとき…………由宇は、自分の起こした過ちを知った。

 

 リドリアスの体はボロボロだった。

 

 カオスヘッダーによる強制的な身体変化だけによるものだけではない。それのほとんどは、コスモスの……つまりは――由宇自身の攻撃によるものだったのだ。

 

 力のままに、相手のことを考えているつもりで――ただただ追い詰めただけだったことに、今更気づかされた。

 由宇は、自分の仕出かした過ちに――恐怖した。

 その時、由宇の弱り切った心に比例するかのように弱り切っていたカラータイマーの点滅は途絶え、コスモスの姿は銅像か何かの様に固まり――その場で砕け散った。

 

 そして、コスモスが消え去った地点には由宇がバタリッ! と放り出される様に、倒れ堕ちた。

 

 ――「なんで…………いや、僕が、僕が――力に頼り過ぎたから…………?」

 ――「コスモス…………返事をしてよ…………ねえっ!!」

 

 由宇は金色にさび付きかけたかのようなコスモプラックに、自分の中にいるコスモスに語り掛ける。

 その間にも、リドリアスの体は……まるで光に変わるようにして消えていく。

 由宇は涙を流しながら、叫ぶ気力もないまま絞り出すような声をコスモスに語り掛け続ける。

 

 ――「ねぇ……コスモス。…………力は――〝強さ〟は……〝優しさ〟を消してしまうの?」

 ――「〝強さ〟は誰かを守れるものだったのに…………僕はその使い方を、間違えてしまった…………?」

 

 それはもう半ば自分への問いかけだった。

『コロナエキストラクト』は、元々守るための助けるための物であったはずなのに…………傷を深めさせてから放ってしまった為に、その負荷に耐えきれなかったリドリアスは蘇生もできないほどに、傷ついて――いや、〝傷つけて〟しまった……。

 

 ――「僕はどうしたらよかったの……? 何が、どうするのが……正しかったんだ……?」

 

 それとも、

 

 ――「両方救うなんて、ただの傲慢な…………勝手な願望だったのか!? 初めから、〝出来もしない〟ことだったっていうのか!?」

 

 これだけ叫んでも、コスモスからの応答はなかった。

 金色に、先程の砕け散る前のように〝くすんだ金色にさび付いた〟コスモプラックを眺め――その時、由宇はやっと気づいた。

 自分がコスモスに対して、どれだけの負荷をかけていたのかを。

 カオスヘッダーを切り離すことができれば、全てを救えると思い込んで――その傲慢な思い込みのままに、プルパワー技の連続。そのうえ、自分の過ちを認めたくないからといって、未練がましくリドリアスに光を浴びせ……コスモスのエネルギーを無駄に浪費させた。

 

 結局、悪かったのは――由宇自身がいつのまにか抱いていた、思い上がった心だった…………。

 そのことを再認識した由宇は、この世界の夕暮れの中で――叫んだ。

 

「うわぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!!」

 

 少年の悲痛な叫びは、次元世界の夕暮れの中に響き渡り――夕暮れの世界は、彼の過ちを知らしめるような静寂を貫いたのだった…………。

 

 

 

 × × ×

 

 

 

 しかし、自分を追い詰めるようなサイクルに陥ってしまった由宇は気づいていないが…………そんな中でさえも、救われた『命』もあるのだ。

 

 叫び続けている由宇の痛々しい姿を、遠目に見ることしかできないでいる大小二つの影があることに…………今、由宇は気づけていない。

 

「ユウ…………」

「キュゥゥ……」

 

 少年に対して、襲撃者のもたらした――失う恐怖は、少年に力だけでは解決しないことを…………優しさを消してしまう傲慢な思い込みを…………少年に思い知らせた。

 

 失わせてしまったもの、救えたもの。

 

 そこにあるものは、同じ命であるはずなのに…………足りなかったものは、一体何だったのか?

 

 優しさと強さは、決して相いれることは出来ないものなのだろうか?

 

 ――その答えは、一体……どこにあるのか?

 

 ――その答えとは、一体何であるのか?

 

 

 

 次回、重ねるもの 『――Answer――』

 

 





原作でのエリガルの立場をリドリアスに変えて話を作りました。

コスモスの怪獣で、味方サイドに登場させる怪獣はやはりリドリアスにしたかったので、こんな風にして話を作りました。

暗いトーンの話でしたが、主人公が前進できるようになるまでの過程を自分なりに描写していきますので、よろしくお願いします。
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