さてこの成長シリーズも大分大詰めに入ってきました。
今回割と短めですが、物語の佳境を意識して頑張って書きました。
それでは、どうぞ!
強さと優しさの意味を取り違えてしまった由宇は、命の重さを痛感した。
そんな由宇の動揺に付け込む様に、カオスヘッダーは次なる手を仕掛けてくる。
× × ×
カオスヘッダーを追い払ったことで、通信は回復し……ユウとフェイトは地球に帰還することができた。
しかし、由宇はあの後から一言もしゃべろうとはせず、次の日学校を休んだ。
そんな由宇の様子に、彼の友人たちは心配を募らせるばかりだった。
――由宇が休んだ日の学校にて、友人たちの会話。
「アレ? 今日ユーの奴どうしたのかしら?」
「ホントだ、どうしたんだろう。お休みなのかな?」
ユウの席が空白なのでアリサとすずかはそういった。
「う、うん……そうなんだ」
「へー……」
「そうなんだ……」
アリサとすずかはフェイトの肯定の言葉を聞き、何かがあったらしいことを悟り……それ以上は追及しなかった。
あの場にいたのはフェイトと、リドリアスたちだけでありユウの様子は外には流れていない為、皆はフェイトの証言をもとに彼の身に起きたことを知った。
――コスモスでさえ救えない命があった。
その事実に、皆は驚きと……なんでもできる者などいはしないのだという現実を――改めて知る事となった。
× × ×
自分の部屋の隅に座り、膝を抱えたまま呆然とした瞳で中を見つめる。
救えなかったことを、自分が仕出かした過ちを嫌という程思い知っていた。由宇はもう涙など枯れた目で、部屋の隅を動こうとしない。
自分の殻の中に閉じこもった。いつでも希望を信じていたはずの彼は、いつの間にかその心を失おうとしていた。
しかし、そんな彼の下を……また、再びカオスヘッダーの仕掛けた策略が襲う。
それは、単なる知らせだった。遠慮がちな念話で、「カオスヘッダーがまた、リドリアスに憑りついた」という知らせが入って来た。
――正直……どうするか、迷った。
でも、行かない事がリドリアスを救うことにつながるわけではない。一度救えなかったのなら、二度と同じ間違いを犯さないように……今度こそ、必ず。
――どうか……もう一度だけ、この身に優しさを……救う為の、チャンスを…………。
今一度、再びカオスリドリアスと対峙するコスモス。
今度こそは、必ず……救って見せる。
――コスモス、もう一度だけ……弱い僕に、〝やさしさ〟を示す……チャンスを…………。
少年の、優しさを掛けた戦いが幕を開けた。
× × ×
カオスリドリアスと対峙したコスモス――由宇は、戦い方を考える。
――前回、『ルナエキストラクト』は効かなかった。
だとすれば、残る選択肢は『コロナエキストラクト』しか…………。
それを思い出した瞬間、震えが由宇の体を駆け巡る。
――恐い、恐いのだ。また、あの力を使って、相手の命の灯を消してしまうことが。
コロナモードは、使わない。
そう決めて、『想い』で『心』でカオスヘッダーに打ち勝つのだと決めた。
「シュアッ!」
「ギュルゥゥゥッ!」
ルナモードで構えを取り、カオスリドリアスに向かって行く。その様子を見ながら、本部の方ではこんな会話がされていた。
「アスカ……もしもの時は頼むぞ」
「……ああ、分かってる」
もしも、コスモスが倒れたら怪獣たちの進撃を食い止められるのはダイナしかいなくなる。
それにもし、今出て行って由宇の身に対して起こる「もしも」の事態に備えなくてはならない。
加えて、今は……この状況で手を出すのは彼がこの出来事を乗り越えられるかどうかを妨げることになりかねない。
今自分たちにできることは、見守ることだけだ。
自分達では支えることができても、今あの場に立って戦うことは出来ない……かえって足手まといだ。
今できることは、信じて待つだけだ。あの少年が、今度こそまた優しさを取り戻せる事を……そして、彼が自分の中に作り出した恐怖を乗り越えられるかどうかを。
そして再び、由宇の方に移る。
「シュッ!」
「グィアァァッ!」
躱しながら、傷つけないようにして隙を作るために受け流し続ける。
――今度こそ、優しさを伝えられるように。
そして、今の自分の『想い』のありったけを込めた『フルムーンレクト』をカオスリドリアスへと向けて放つ。
リドリアスを癒し、そしてそこを狙って『ルナエキストラクト』を放てば……今度こそ傷つけることなく、リドリアスを救えるはずだ!
だから、由宇は『フルムーンレクト』を長く浴びせる。リドリアスを少しでも癒せる様に、リドリアス自身がカオスヘッダーに打ち勝つ力を持てる様に……願いを込めて。
そして、遂に――コスモスのカラータイマーの音がけたたましく鳴り響く中――リドリアスは落ち着きを取り戻し……おとなしくなった。
その様子に、誰もが「やった……!」と思った――その時だ。
急にカオスリドリアスの周辺が歪み始める。
そして、その歪みはカオスリドリアスを別の何かへと変えていく。
いや、違う。あれば元々、リドリアスじゃ……ない!?
【フフ、カカッタナ……コスモス】
「何っ……!」
【モウ、オマエニ〝タタカウチカラ〟ハナイ】
まさか……カオスヘッダーは初めからこれを狙っていた?
コスモスをおびき寄せ、どうにか救おうと躍起になるだろうリドリアスの姿を使い、エネルギーを使わせる。
この状況を、待っていた――というのか!?
その驚いた様な反応をしている由宇をあざ笑う様に、カオスヘッダーは以前のイブリースよりも……更に禍々しい姿を作り出す。
『カオスヘッダー・メビュート』――コスモスを倒す為に再び自らの身体を作り出した、新たなる実体カオスヘッダーの姿。
――まさに、〝邪悪の化身〟。
――倒すべき、〝悪魔〟の姿。
打ち倒すべき悪を前にして、灼熱の太陽を身に纏わんとするコスモス――ユウ。……だが……。
「ウゥ……ディアッ! …………ホゥアッ!?」
――コロナモードに、なることができない!?
【フハハハ……! 〝憐れ〟ダナ、コスモス】
戦う事に臆病になっている上に、エネルギーが不足している。悪条件の重なるこの状況で、これ以上戦うことが――できない。
その事実に焦る由宇だが、カオスヘッダーにはそんな事はどうでもいいことである。
この状況こそ、カオスヘッダーが待ち望んだ光景。
策略の内に、自分たちを倒してきた〝ヒーロー〟を地に伏せさせる絶好の機会が今…………訪れた。
【モハヤキサマモ……ココマデダ!】
『シュッ!? デュアァァァッ!?』
そうやって放たれたメビュートの一撃を、由宇は避けきることができなかった。その凄まじい威力に、地面を擦るようにして吹き飛ばされた。
そのあまりの威力に、呻くように苦しみもがくが……どうにか起き上がり、フラフラのままメビュートに向き合った。
しかし、そんなコスモスにメビュートは光線を放ちダメージを与えていく。
「ホアァァッ!?」
その攻撃に膝を折り、崩れそうに名てしまうコスモスに、メビュートはとどめを刺そうと地鳴りを上げながら向かって行く。
その追撃に対し、由宇は最後の力をふり絞り立ち向かったのだが…………二人の姿が衝突した瞬間、すさまじい閃光が発生し……コスモスの姿は消え、勝ち誇ったように笑い声を上げる『カオスヘッダー・メビュート』の姿が会った。
【フハハハッ!】
その二人の激突が会った場所では、由宇が倒れていた。
体中に痛みが走るが、このままではまずいと言うことは分かっている。メビュートをこのまま放っておくわけには――と思い起き上がろうとしたとき、彼の目には信じられない光景が映った。
――ユウ…………。
「コス、モス…………?」
初めて会ったあの時のように、透けるような姿で彼の目の前に横たわっているコスモスの姿があった。
コスモスとの同化が、解けた……?
自分がまた結局コスモスを傷つけてしまっただけの結果に終わってしまったから、心が離れてしまったのか?
というより、自分では…………コスモスの力になるに足らないのだろうか?
そんなことを思った瞬間、コスモスと自分の間に転がっていた変身アイテムの『コスモプラック』が完全に金色にさび付き、徐々にその形を変え、蒼い輝石に変わってしまった…………。ある意味でそれは、コスモスと
それが、心が離れてしまった合図だったのか、コスモスが由宇に愛想をつかしたのか、それとも……由宇自身が、夢や希望を信じ切れなくなってしまったからか……由宇の視界から、コスモスの姿が〝消えてしまった〟。
――ユウ……、すまない……。
「ま……待って……! コスモス…………ッ!」
必死に手を伸ばすが、今までいくつもの〝大切なもの〟を守って来た少年の幼き手は、この時……何にも届くことはなかった……。
「コスモス……もう、僕じゃ…………駄目なのか? 僕は必要に値しなくなってしまった…のか……?」
その悲痛な言葉を最後に、少年の意識は途切れ――その様子をニタニタと笑うメビュートだけが見ていた。
× × ×
コスモスが倒され、メビュートはついに由宇自身に止めを刺そうとした。だが、それは由宇を庇うように立ちはだかったダイナによって防がれる。
(間に合った……って訳でもねぇが、ギリギリだったのは確かみてぇだな……)
【ジャマヲ、スルナ!】
「ふざけんな! 友達が殺されそうって時に黙って見てる馬鹿はいねぇだろうがッ!」
【…………オマエニハ、ヨウハナイ。ソコヲ、ドケ!】
「嫌なこったッ!」
そういって激突を開始するダイナとメビュート。そして、両者は激しくぶつかり合う。
そしてそのぶつかり合いは……最終的には光線の打ち合いによって引き分けとなった。というより、メビュートはこれ以上ダイナの相手をすることを無駄に思ったのか自ら引いた。
【コスモスハ、必ズ…殺ス。タノシミニマッテイロ、トイッテオケ……】
そう言い残し、メビュートは消えた。
消えてしまったメビュートに等もはや用はないダイナ――アスカは、すぐさま元の姿に戻り、由宇の姿を探す。
「ユウーッ! どこにいるんだー!」
そういって、あたりを探し回り、ようやく由宇の姿を見つけた。
「ユウ!」
その姿を見つけた瞬間、友の下へと駆け寄りその体をゆする。
「しっかりしろ! おい、ユウ!」
しかし、彼は起きない。ダメージは思ったよりも深かったらしい。もっと早く駆けつけられていれば……と今更後悔しても仕方ない。ともかく彼を早く連れて戻らなくては……治療を受けられるように手配は済んでいるのだから――と、由宇の体を抱えて立ち上がろうとしたとき、アスカは彼の横に転がっている青い輝石に気が付いた。
「これは……? !? まさか!」
まさか、と思い由宇の中にいるはずのコスモスの気配を探る。だが今、コスモスは……由宇の中にはいない。
ただ、どこからかその気配を感じられるので……消えてしまった、というわけではないようだ。しかし、その気配も弱々しく……アスカにもどこにいるのかまでは分からない。
「クソッ! 俺がもう少し早く来ていれば、こんなことには…………ッ!!」
そう苦々しく自分への嫌悪を言葉にするが、そんなことに意味はない。ともかく今は、由宇を早く連れて帰らなくてはならない。
下の世界へと飛ぶ途中、アスカはずっとコスモスが消えたあたりを見つめていた。
(消えたわけじゃないだろ? コスモス、由宇にはアンタが……アンタには由宇が……、必要なはずだ。必ず戻ってきてくれよ……今度は、必ず俺も支える――だから、戻ってきてくれ……! いや、俺にこんなことを言う資格がないのは分かってる! 間に合っていれば、二人を助けられたかもしれないのに、本当にすまねぇ……ッ! でも、それでも……、戻ってきてくれ……頼むッ)
その切な願いは、伝わるのか……。戦いの後に残った消失感は、どこまでも、誰もを苦しめていく。
悪魔の挑戦は、心に深い傷跡を残していったのだった……。
× × ×
そしてその戦いから一日経った後、由宇は目を覚ました。
そして、自分がまたチャンスを逃したことを知り、自分の不甲斐無さを嘆いた。
今は誰もが必死に自分たちのするべきことをやっている。なのに、自分はするべきことを、そのための機会を逃してばかりだ。
そして、結局自分はコスモスにも傷を負わせた……失望させてしまった。
――何て、情けないのか……。
悔しさに顔を歪め、悲しみに涙し、情けない自分に対して歯噛みした。
(――何も守れなかった。僕がしたのは、ただ相手に傷を負わせ……苦しめただけだ。そして、リドリアスの命も、コスモスという素晴らしい人――友を……皆、失ってしまった……)
そして何より、今の自分は――無力だった。
――何の力もない、ただの子供。
それが、今の彼の姿だった。
コスモスが与えてくれた力で救ってきた『命』。しかし、コスモスがともにいなければ……由宇にはどうすることもできなかった。
無力な、ちっぽけな子供。その程度の存在が、これまで何かできていたことの方が……おかしかったのだ、と由宇は考えた。
そして、失ってしまったものは……とてつもなく重いものだった、ということを改めて思い知った。
『命』も『友』も、自分の手では救いきれなかった。零してしまったのだ、そのものの尊さを受け止めきれなかった自分が。
どこまで行っても、自分はその『器』にはなれなかった……ということなのだろうか。ヒーロー気取りではなく、誰かを守れる『本物の勇者』になりたかった。
コスモスが教えてくれた優しさも、強さも――真の勇気も、結局自分の器では収めきれないものだったということなのだろうか?
『器』不足……結局、それだけなのだろうか?
でも、だからと言って……実際のところ、今由宇が誰かにあげられるものなど――何一つとして……〝無い〟のだから……。
× × ×
そして、どれ位の時間が経っただろう。
由宇が横にさせられた医務室のベットの上で目を覚ましたのは夜中で、今はだんだんと日が昇りつつある。
そんな朝日の輝きさえ、今の彼には失ったものを突きつけられている様で、気晴らしにもならない。
そんな時だった――
誰も入ってくるはずのない病室のドアを、誰かが開けた。
そして入って来た誰かは、目を覚ましている由宇の姿を見ると、ホッと息をついて由宇に話しかけてきた。
「良かった。目は覚めたみたいだね……」
「…………ユーノ…………?」
そこにいたのは、現在時空管理局・本局の超巨大データベース『無限書庫』で『闇の書』の情報を集めているはずのユーノ・スクライアだった。
思わぬ友人の来訪に由宇はちょっと驚いたが、意外な人物だったためか特に拒否感は無かった。
「本当に、目が覚めたみたいでよかったよ。これでフェイトも、きっと安心するよ」
「……どうして、ユーノが……?」
「実は、もし目が覚めたら色々と伝えてほしいって言われてね。皆は今地球にいるし、現場を離れると『ヴォルケンリッター』の人たちが出てくるかもしれないから、一番近くにいる君の友達の僕に、ってことで――白羽の矢立った――っていうんだっけ? まぁ、そういうことなんだ」
「そっか……ゴメンね、ユーノ。忙しいのに……」
この間のやり取りからユーノが現在誰よりも多忙であることを知っている由宇はユーノに申し訳なさそうにそういった。
「ううん、良いんだ。僕も君のことが心配だったし、実際のところ今一番君の傍にいるのは僕だからね」
――まぁ、ユウはフェイトの方が嬉しいんだろうけど。と付け加えたので、由宇は少し苦笑気味に笑った。でも、ユーノの方がよかったという気持ちが大きい。
アスカやクロノともまた違った、ユーノ独特の包み込むような雰囲気。
これがユーノ・スクライアという少年が持つ、独特の雰囲気と言えるのではないだろうか。
ユーノは優しい。人の心をよく理解している……この年頃の子供としては異常なほどに。
それはきっと彼自身の生い立ちも関連しているのだろうが、それは置いておくにしても、今のユーノとのこの距離感は心地よかった。ただの心配でもなく、どこか相手を落ち着かせるようなこのひと時。今はこれだけでもどこか空虚だった〝隙間〟が埋まっていくような気がした。
「ユーノだって、なのはの傍にいたかったんじゃないの?」
「ははは、そうかもね。でも、僕は彼女の横には並べないから……。空を華麗に舞うなのはには、僕は付いて行けてない。僕じゃ力不足なんだよ」
「そんなこと無いよ…………」
「有難う。でも、今僕にできることは
「……ユーノ……」
「ふふふ。さて由宇、本題に入ろうか。本当はまだ目を覚まさないだろうから、これだけを置いて行こうと思ったんだけどね」
そう言って、何かの端末とメモリーチップを取り出す。
「それは?」
「これはね、由宇。コスモスの居場所を探すためのものだよ」
「えっ……」
「コスモスと君が、あの実態カオスヘッダー――『メビュート』と呼称されているんだけど、あいつとの戦いに敗れたときの周囲の記録を検証したんだ」
「どうして、そんなことを……?」
「アスカがね、コスモスと由宇が分離してしまっているって言うから気になってあのあたりを調べてみたんだ。そして、ある種の特殊な信号があのあたりに存在していることが確認された。それはあの世界独特の物でも、ましてや自然にどこでも発生するなんてものでもない」
つまり、それは――まさか……。
「つまりその反応を出していたのは、コスモスだった……って言うこと?」
「その通り」
そのユーノの言葉で、由宇は目を見開く。
まだコスモスが、あそこに――いる……?
「で、でも、なんでそんなことを……」
「きっと、君はあそこに行くだろうと思ったから。もちろん確証なんて何もない、僕の勝手な思い込みだけど、それでも僕は君が立ち上がる可能性を潰したくなかった。だからこれを君に渡すために、そして君に皆の気持ちを伝えるために……ここに来たんだ」
「……………」
「フェイトから聞いた話だけど、君はあの星で最初に戦ったとき、とりのような怪獣――リドリアスを死なせてしまったって聞いた。見ていなかった僕たちには、君の心の痛みは想像もできないけど……でも、フェイトはきっと分かってたと思う。あの時、一番君の傍にいたんだから。それで、きっと君が思い詰めてしまっているから、こう伝えてほしいって頼まれたんだ」
フェイトが、伝えてほしい事……?
「良いかい? 言うよ――ユウがリドリアスを死なせてしまったことで、悲しいのは見てて痛いほど分かった。でも、それで由宇が押しつぶされてほしくないって、思ったの。だって私は、あそこにいたのに何もできなくて……結局全部を由宇に任せちゃって、何もできなかった。その上、ユウにまた助けてもらっちゃって……今度は傍にいて、一緒に戦いたいって思ってたけど、私じゃまだ届かなかった。でも、これだけはいいたいんだ。あの時、私〝たち〟は、間違いなくユウに救われて……これまでもたくさん助けてもらった。
だから忘れないで、貴方に救われた人もいるんだってことを……だって、私たちは貴方に救われたからこそ、こうして生きていられるんだから――」
それを聞いて、由宇はどういう反応をしていいのか分からなかった。
まだ分からないのだ。どうしていいのかも、どういう風に考えていいのかも。
未だに迷っている由宇に、ユーノがその答えを示した。
「ユウ、後は君次第だよ」
「僕、次第……?」
「そう、君がこれからどうしたいのか? それが、今の君の迷いに対する答えだと思う。辛かったら、逃げてもいい。君に〝背負わせすぎた〟僕たちにも非は有る。だから、君がこれ以上戦うことを選ばないなら、誰も反対しない攻めもしない。ただ、もしも、君が立ち上がるなら……僕は勿論、皆が君を今度は支えるよ。だから、僕はこれを渡しに来たんだ。君を〝支える〟第一歩の証として」
そう言って差し出されたそれを由宇はじっと見つめる。
「僕は……たぶん力も何も足りないんだ。結局救えなかったし、守れなかった。そして、負けてしまった」
こんな風にくすぶっている自分に、これ以上何かができるんだろうか? と由宇は思った。
「それを言うなら、僕は地球にジュエルシードをばらまいてしまった上に、それを現地の〝普通の女の子〟に手伝ってもらってやっと封印することが出来た馬鹿で弱い魔導師だった」
「でも、それは別にユーノのせいじゃ……それに、ユーノがいなかったら――」
フェイトもアリシアもプレシアも救えていなかっただろう。なのはもただの女の子のまま、魔法という彼女にとってかけがえのない絆をつないだものを手に入れられず、新しい友人も得られないままだっただろう……。
それに、そもそもユーノが先行して回収を行おうとしていなければ、地球自体がどうなっていたかもわからない。
勿論、コスモスは地球に来ていただろう。でも、だからと言って全てを救いきるあの奇跡のような結果は、あの時あの場にいた人の誰が欠けても実現はしないだろう。
そうユーノの存在の重要性を口にしようとしていた由宇をユーノ制止てこういった。
「なら、君も同じだよ。あの時、救えなかったのは、決して君だけのせいじゃない。カオスヘッダーがやって来たことも、君に僕たちが頼り過ぎたことも、決して偶然じゃない。全てが重なってあの結果が生まれたんだ。それはきっと、ユウがアリシアを救ったときの軌跡と同じことの筈さ。色々なものが重なって、あの奇跡が起きた。だから、ユウ。救ってきたものの重さを考えよう。失ったものを、もう二度と同じようにして失わないように、先に進んでみよう。それを教えてくれたのは、ユウ……君なんだから!」
「……ユーノぉ…………っ」
「だから、君が選ぶんだ。君の進む道を、誰にも拒ませることなどない君だけの
「…………うん!」
この時、少年は……翡翠の輝きを宿す少年に、前に進む勇気を教わったと後に語る。
だが、この時、彼が少年に告げたのは、ただ一言。「有難う……ッ!」という感謝の言葉だけであり、翡翠の少年もまた……「頑張って」という声援を送るのみだった。
そして二人はそれぞれの戦場へと戻っていく。
――この時、まだ幼い二人ではあったが、二人の間には……これまで以上に固く、熱い……『男の友情』が芽生えたのだった。
× × ×
少年は走る。あの時負けてしまった敗北の地へと向かって。
自分の大切な友――相棒があそこでまだ〝待ってくれている〟のだから……!
教えられたのは、前に進むための『勇気』。誰かを守るために、これまでを受け入れることを、それを『未来』へとつなげていくための『勇気の心』を、由宇はユーノから、フェイトから、そして〝皆〟から、確かに受け取っていた。
優しさと強さを未来へとつなげるもの――
――その答えは、『勇気』。
新な心を目覚めさせた少年の闘いが、閉じられていた幕を再び開け――始まる。
次回、強さ優しさ、重ねて 『――ECLIPSE――』
いよいよ次回、主人公が…………?
コスモスの代名詞ともいえる『勇気』の証明を、次回……主人公がやってのけます。
それと、今回ユーノ君を出しました。このシリーズというか、このパワーアップまでの間だと出せるのはここしかないと思って出しました。
こういう役としてはユーノ君はかなりいいかなと思ったんですが、結構よくできたものになったと思います。
実は結構お気に入りのキャラでして、前から一度『男の友情』的な展開をやってみたかったんです。
さて、では次回またお会いしましょう。