ですが、いよいよA'sも大詰めとなってまいりました。
今回は本格的な決戦の前の行間的な感じの回になっております。
それは本編をどうぞ!
海鳴の空を覆う黒雲。そして、それをさらに覆う「湖の騎士」の湯繰り出した深緑の結界。そんな暗天の下で対峙する、魔導士と騎士と、光の使者。それぞれの想いをぶつけ合わんとしていたその時、さらなる来訪者が……黒天を、さらにもっと暗く、暗い……〝真夜中の空〟を作り出そうとするのだった。
ぶつかり合わなければならない、そんな定めの柵のなかで……今にも崩れ去ろうとするほどに脆い、ほんの一時の間に……わずかな言葉を交わす。
『どうして……『闇の書』なんて、呼ぶの!? ――どうして、〝本当の名前〟で呼ばないの!?』
『本当の……〝名前〟?』
誰もが、自分たちの大切なものを守りたいという願いは同じなのに……それでも、ぶつかり合うその手を、止められない。
止まってしまったら、それが――一気に崩れてしまいそうで。
そんな不安を抱きながら、ぶつかり合うしかないのかと……迷いながら、戸惑いながら、悲しみながら、それぞれの〝譲れない矜持〟の為に戦う。
「ハァッ!!」
「うぅっ!!」
ぶつかり合う、桜と紅の光。
互いに――止まれない、譲れない。
「……邪魔、すんなよ……立ちはだかるなよ……この、悪魔が……ッ!」
「…………悪魔でも……いいよ。それなら、悪魔らしいやり方で……絶対に、話を聞いてもらうから! ヴィータちゃん達を、必ず……ここで止めて見せるから……何がなんでも、助けて見せるからっ!!」
「助けなんていらねぇんだよ! テメェらに何ができる!? もしそれがあるっていうなら、それは……それはぁぁぁッッ!!!! テメェらがあたしらの前に――――立ちはだからないことだけだぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!」
紅と、桜の光が激しくぶつかり合う傍ら……静かに、激しくぶつかり合う閃光と剣士。
「シグナム……っ! 話を……ッ!!」
「最初に言ったはずだ……もう、止まれんのだと。それに、以前にもいったはずだ――もう、殺さずに済ませることができそうにないと。お前たちが、我々に本気でかかってくるというのであれば……それはつまり……そういうことだ」
「……っ!」
ぶつかり合う、斧と剣。その鍔迫り合いの後、いったん距離をとる両者。
黒衣の少女は、自身が得た〝新たなる力〟の一つである……彼女の二つ名にふさわしい姿へと、自身の姿を変化させる。
【Sonic foam.】
「……防御を捨ててまで、〝速さ〟を追求するか……。捨て身だな、先程の言葉を忘れたわけでもあるまい。当たれば……死ぬぞ?」
「……かまいません。それよりも〝早く〟、反応します。そして、あなたよりも……誰よりも〝速く〟攻撃を当てます。そして、必ず――私が勝ちます……!」
「……いい度胸だ」
再度ぶつかり合う、両者。
勝つのは、「速度」か「斬撃」か……戦いは、次の段階へと進んだ。
それを見守るような形でいた青き守護獣にも、同じように主に仕えし誇り高き橙の獣が迫る。
「……久しいな」
「あんまし会いたくはなかったんだけどねぇ……」
その両者の闘いは、ぶつかり合いというよりは……寧ろ両者が獣であることを語るかの如き、まさに〝威嚇〟だった。
そして……光の使者たちが、その戦いを見守る。
「チッ……手を出せねぇっていうのは……気分悪いな」
「仕方ないよ……これは、彼女たちの戦い。僕らが手を出したら……」
片方に、確実な勝利をもたらしてしまう。それにあくまでも、ウルトラの力は〝守るための力〟であり、他の星や世界に干渉を行う際に……その世界が有するものの争いには手を貸してはいけない……というなんとも御都合主義と 捉えられなくもない決まりごとがあるし、それにヴォルケンリッターは悪ではない。それを〝力〟でねじ伏せるのは、してはいけないことだ。
「それでも……」
「分かってる……見守る事しかねぇことくらいはなぁ…………」
しかし、その時。
その戦いを引き裂く新たなる使者が現れる。
戦う者たちを、見守る者たちを、拘束する。
新たに現れた、その者たちは……これまで何度かヴォルケンリッターを〝手助け〟していた仮面の魔導師だった。
だが。
しかし、彼は……いや、〝彼ら〟は……〝助けた〟訳ではなかったのだ。
彼ら、いや……彼女らは……あるたった一つの目的の為の、〝準備〟に過ぎなかったのだ。
その事実が、この場においてようやく分かり……だからこそ、ヴォルケンリッターたちは驚愕した。
その者たちが、寄りにもよって自分達の〝知り尽くしている〟はずのそれを使い……それが、まるっきり自分達に牙を剥く様にして動き出すのを……ヴォルケンリッターの面々は目の当たりにしたのだから……。
「き……貴様らは……いったい……ッ!?」
『…………』
仮面の魔導師たちは、何も言わない。
ただ、その沈黙の間にも……守護騎士たちの体を、闇の触手が情け容赦なく縛り付け、その力を『闇の書』に還元していく……。
「今こそ……」
「因縁の……」
『……終焉の時だ……』
夜空を染めた闇が今、再び出現する。表に姿を現したその闇は、これまでと同じように、ただ淡々と……この世界を滅ぼし、とこしえの静寂と――滅び荒廃した瓦礫の山を……作り上げていくのだった。
* * *
囚われたなのはたちが見たのは、先ほどまで戦っていた騎士たちが囚われる姿。
そしてその仮面の魔導師が、自分たちに姿を変える様を……目撃したのだった。
その仮面の魔導師たちは、守護騎士たちを『闇の書』の
それをただ見ているしかないことに歯噛みをした。そして更に彼らは……もう一人、この場に呼び出した。
魔法陣の上に召喚されし、今代の『闇の書』主。
「……?」
自分の置かれた状況を未だに呑み込めていない彼女に、友人の姿の姿をもって……絶望を見せつけようとする仮面の魔導師たち。
「な……に…………? ――――ッッッ!!!???」
――――そして始まる、滅亡の時。
――君の病気……『闇の書の呪い』は……もう解けない。
――『
友の声で告げられる、歪められた事実と覆せない事実。これまでに、幾千……幾万の人々が虐げられた『闇の書』の「負の歴史」に幕を下ろすために動くものたちの声が……少しずつ、少しずつ……「傷」刻んでいく。
これまでの全ての柵を終わらせるために。
これまでの悲しみに終止符を打つために。
これまでの全ての憎しみを凍結させよう。
〝闇の定め〟を完全に終わらせるために。
――そのために、この騎士たちには……『
――『闇の書』に、終わりの時を……。
「な、なんで……ッ!? ……なんでやねん……っ!?」
――……〝終わらせるために〟だよ……。
――もし嫌なら……〝力づくで〟どうぞ?
「なん……で…………ッ。……なんっ……でぇ…………ッ!?」
――……知ってる? はやてちゃん。
――〝運命〟って……残酷なんだよ?
「い、いやっ……やめてぇぇぇええええええええええええええええええっっっっ!!!!!!」
主の心に、絶望が刻まれたとき……再び滅亡のスイッチが切り替わる。
【Freilassen.(開放)】
――――「自動防衛プログラム」……起動――――。
【自己防衛プログラム「ナハトバール」、起動】
――――滅亡の時は、
その滅亡は、はやての叫びと共に……始まる。
深い絶望が、彼女の白銀の魔力光が絶望の混沌の色に染まっていく。紫電が走り、すさまじい爆発のようなものが周囲に巻き散らかされ、周囲の人々に風を送る。それと同時に、彼女の足元の魔法陣は……彼女の騎士たちと同じ……見慣れたベルカの三角形を模したものへと変わり、闇が解放されていく……。
この世界を、人々を、夢や希望と言ったものまでもがその中に溶けていくように……。
「――また、……全てが終わってしまった」
混沌に染まった夜空を流れる風が、再びその姿を現す。
* * *
『闇の書』の『闇』――それがついにこの地球において目覚めた。
「――また……全てが終わってしまった」
悲し気に告げたその
彼女が「ナハト」と呼んだそれは、彼女の左腕に装着される。
「ナハト、お前はもうしばらく大人しくしていろ……。我は魔導書……我が力の全ては、我が主の為に……そして――」
そして、彼女は……天にその手を掲げる。するとその掌の上に紫の魔力の塊が浮かび上がる。それと共に、彼女は拘束魔法から脱したなのはとフェイト、そして彼女らに変身し……その返信魔法が解けてしまった仮面の魔導師たちを、真っ直ぐに見据える。その様子はまさに、獲物を狩る狩人のごとく。
「――忌まわしき敵を、打ち砕くために……!」
紫電を走らせる球体の魔力弾は、その大きさを増していく……かと思えば、一気に収縮する。だが、それが攻撃の中止によるものではないことなど、誰の目にも明らかだった。
「空間攻撃……!?」
金の髪を夜風になびかせる黒衣の魔導師の少女は、目を見開きじきに放たれるであろうその広域攻撃に備えるそぶりを見せる。その声をきき、彼女の隣のいる純白の魔導師の少女も、屋上に残っていた少年たちも皆、防御の体勢に入る。
それに合わせたのか……はたまた、防御など意味をなさないとでも言いたいのか……そのどちらかは定かではないが、収縮した先ほどの魔力弾は……一気に膨れ上がり、彼女の手より放たれた。
「闇に、沈め――〝デアボリック・エミッション〟」
【Diabolic Emission.】
瞬間、爆発的に広がったその攻撃の余波が、一気に少年少女に迫る。
桜色の障壁が、金の閃光を庇う。だが、その余波は強大。
彼女の師匠をほうふつさせるような強度を誇るその盾でさえ、完全には威力は殺しきれてはいない。ダメージ、とまでは行かなくても……吹き飛ばされること請け合いであろうかと思われたその時、一筋の光がその二人を更に庇うように立ちふさがる。
「シュアッ!」
その光はそのまま迫りくる攻撃を吹き飛ばしたその光は、そのままふたりを庇いながら地面に一度おり立つ。
「あ、有難うユー君」
「有難う、ユウ」
「うん、それはともかくとして……アスカ、分かった?」
「ああ、あの攻撃……ただの攻撃、ってわけじゃあなさそうだ」
「うん、さっき弾き飛ばしはしたけど……それでもあれは、これまでの魔導師のそれとは全然違う」
あんな怪物レベルの人と彼女らを戦わせないといけないのか……。そうでなくても、彼女らの片方……この少年が恋い焦がれている彼女は、防御が〝薄い〟ことで知られているというのに……。
「フェイト、ソニックは解いた方がいい。あの攻撃、なのはの砲撃と同じ……いや、それ以上かもしれないから……そのままだと、本当にまずいよ」
「うん……分かってる」
【Lightning form.】
付け焼刃、焼け石に水、そんなところかもしれないが……それでもまだ、ソニックフォームよりはライトニングフォームの方がましだろう。
フェイトの背に、再び黒衣のマントが現れる。
ユウと呼ばれた少年、秋宙由宇は自分の中に宿る相棒に問いかける。
(コスモス、どうしても……ダメなのか? このままじゃ……はやての命が……。)
――すまない……。この世界の技術の「人間」同士の争いに……私が干渉するわけにはいかないのだ。君とともにいられる私は、君と共に得た圧倒的すぎる力を、振るうわけにはいかない……。
彼は……確かに、とどこかで納得してしまう自分が情けない。それは、まだどこかで傲慢になっていることの証でしかない。コスモスと一緒なら何でもできるという錯覚を、まだ捨てきれていないのかもしれない。
魔導師同士、もっと突っ込んだ言い方をすれば「人間レベル」の争いでしかないそれに〝ウルトラマン〟の力を投入するとなると……それは、子供のケンカに核兵器を投入するのと変わらない。
それでも期待を込めてアスカの方を見てみるが、アスカは首を横に振る。
当たり前だ。ティガやダイナ、ガイアには一見ウルトラマン側の意志がないかのように見えなくもないが……それははっきりいって傲慢以外の何物でもない。端的に言えば……彼らは、どちらかというと「人間寄り」のウルトラマンなのだ。
彼らは人であり光である存在に力を貸し、自身の意志を宿主に託しているに過ぎない。
だから、過ぎたる力の行使にはストップをかけるのは必然である。
今のこの戦いは……まだ、「人間レベル」だ。
となると……他に頼れるとすれば、とそこまで考えた彼の思考は一同の下へと降りたった二人の人影によって中断される。
「「皆!」」
「「「ユーノ(くん)、アルフ!」」」
そこに現れた二人は翡翠の瞳を持つ金髪の少年ユーノ・スクライアと橙の髪と犬耳をなびかせたアルフ。
「ユーノ、無限書庫で調べものしてたんじゃあ……?」
「実はね――」
そしてユーノの語った、とある情報。
それは、驚愕の事実。
しかし、悲しき事実。
いつまでも終わらない負の連鎖を……ここで終わらせようとしたが故の、もう一つの可能性を求め貫いた人々の、決意の行動の足跡であり……一人の少女の命を犠牲にすることを選んでしまった物語のワンページ。
* * *
そこから少し離れた場所で、闇の書の機動が始まったことを確認した上で、一度その場を離れた……はやてを追い詰めた二人の仮面の魔導師。
「『闇の書』は起動した、後は――あれを凍結封印させるだけだ。〝デュランダル〟の準備は?」
「当然、既にできている」
「よし……機会は暴走の開始直後だ。しくじるなよ」
「分かっている」
そう言って一枚のカードの様な状態のデバイス――ストレージデバイス、「デュランダル」を取り出した仮面の男の片割れ。
だが、その二人の背後から紺碧の如き魔力光を放つ……青い拘束魔法が二人を捕らえる。
『――なっ……!?』
「――ストラグル・バインド……。相手の強化魔法なども封じる中々に強力な魔法だが……起動も発動も遅いこれは普通ならそれほど効果を持たない……だが、他の拘束との合わせ技や、〝こういう状況〟では……非常に役に立つ」
――何故なら、
『うっ……うがぁぁぁッ!?』
この拘束魔法は――
「――対象の魔法を〝全て〟解除するからね……」
黒衣の魔導師の少年の言葉が一旦区切られると同時に、二人の男の魔導師は……二人の女性の姿に〝戻って〟いく……。
「リーゼ・アリア、ロッテの両名を……これまでの魔導士襲撃と、ロストロギアを故意に起動させた容疑で拘束する。本局まで、ご同行願おうか。二人の主、グレアム提督も……〝既に話は通っている〟」
そう、これでいい。
私情は、挟まない。
もう決めたことだ。
例えそれが、……嘗ての師を自らの手で逮捕するような、こんな状況であっても……。一切の手抜きはしないと、決めている。
自分の――「時空管理局・執務官」としての責務を全うするのみだ、と少年は再度自分にそう言い聞かせる様に決心を新たにする。
それでも、どうしても胸に残る「悲しさ」を心から消せないのは……人の温かさを捨てきれないからなのだろうか?
これまで――それこそ、大好きだった父が死んでからずっと……強く生きて来ようとしていた。残された母を、今度は自分が支え……そして守らねばならないと思いながらずっと生きてきた。
――でも、そんな風に張り詰めた日々を送っていった日々の中で、一人の少女に出会った。
彼女は、自分よりも二つ年上で……いつもまるで自分のことを弟か何かのように扱うが、その遠慮を感じさせない態度と物言いに、いつの間にか救われていた……ほぐされていた。緊張の糸を張りっぱなしだった自分の心の結び目をあっさりと解除してしまうような彼女に魅せられていた。
だから、もしもこの甘くなっている部分が自分の中にあるのだとするならば、きっとそれは彼女のおかげであり、それはきっと自分が捨てようとしていた……〝それまで〟の大切さを、彼女に教わったからだと、少年は思った。
――――ならば少し……考え方を変えてみようか。
私情を捨て去るということは、完全なる冷徹に徹することだけではない。
自分の尊敬する人が犯した過ちをただすために、今自分にできることを精一杯するだけだ。
そう、彼がこの世界で初めに魅せられた彼女と同じような雰囲気を持っている……あの純白の少女の言葉を借りるならば――「全力全開」で、だ。
さあ、尊敬する人たちの「過ち」を正したのなら、……次はどうするのか?
それも、きっとはなっから決まってる――いや、きっと……決めていた。
そしてそれはいま、この戦いを目の当たりにしている誰もが思っている願いでもあるだろう。
――悲しき運命に、幕引きを。そして、明日へと繋がる「希望」を紡ごう。
――――今日という日を、全力で生き抜くために……!!
* * * 『閑話 それぞれの想いの狭間で』
誰も心に抱える「願い」の根本となる形は、きっと全て同じ誰かへの「想い」から始まる。
友への想い。
主への想い。
今は亡き人に対する想い。
悲しみに終わりを告げたいという想い。
同じであるのに、決して交わることのなかったそれぞれの「想い」、「願い」はついに交わる。
闇に染まった薄暗い夜空にかかるその闇を晴らし、満天の星が煌く夜空へと変えるために。
――悲しみに、終止符を。
託されたのは強大な力。
――これは、〝夢〟だよ。
〝悲しき夢〟に決別を。
――眠るときは、今じゃない。
示すのはその鋼の決意。
――助けられるかもしれない。
告げられたのは可能性。
――今君だけを守りたいから。
貫くは自分自身の想い。
闘いは、続く……。
止めるために……そして、止まるために。
条件はたった一つ。
――――貴方に今、何に変えても叶えたい「
条件は、胸に刻まれた。
後は、己の心のままに……全てに、立ち向かえ!!
* * *
次回、『暗いまどろみの中を抜けて ――ナイトメア――』
いかがでしたでしょうか? いよいよ次回から最終決戦の火蓋をワンラウンドずつ落としていきます。
なので次回以降も楽しみにしていただけれが光栄です。
今回はどちらかというとクロノくんのことを書いてるのが多かったような気がしますが、見直してみるとそうでもないのかな……?
まぁともかく、次回以降もまたお会いできるよう頑張ります。