魔法と光の使者   作:形右

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 はい、かなり久しぶりの次話投稿でございます。
 かなり他の小説に浮気しており、更新が停滞気味になっておりますが、少なくとも完全についえることは無いのでご安心……と言っていいかは分かりませんが、ともかく続きは書きあがり次第次々と上げていきますのでよろしくお願いします。
 では、ついに最終決戦第二ステージです。ファイナルラウンドまでこのまま駆け抜けていけるように頑張ります。

 それでは、どうぞ!


夜空晴れる時、夢の終わり 『――リインフォース――』

[序章 開けぬ夜はない Before_Sun_rise.]

 

 

 戦い、ぶつかり続ける者たちがいた。

 夢の内で、現実の空で、空の上で、それぞれがそれぞれにできることを精一杯やっている。

 

 誰しもが望む最高に大団円な結末(ハッピーエンド)を迎えるために、今日を全力で生きることで……これまで(今日)これから(明日)に繋げるために。

 

 それぞれの胸に宿りし決意のほどを、ぶつける時……闇は晴れ、夜明けの時が迫る。

 それぞれの想いの程を示すために、戦いは……まだ続いていく。

 

 明けぬ夜など、有りはしないのだから。

 

 

 

 

 

 

 * * * [夢、微睡み Side_Fate. Version_Second_My_Suffering.]

 

 

 

 少女が取り込まれた暗がりの中に差し込んだ、一筋の光。

 そこに映し出された光景は、……どす黒く、しかし艶やかな――黄金の記憶。

 

 それは、黄金の記憶に縋りついていた、……人形だった少女(自分)の過去の光景。

 

『痛い……、苦しい、辛い…………。助けて、助けて……かあ、さ……ん』

『〝アリシア〟』

『……私は、…………一体、何……?』

 

「……、」

 胃のあたりがキュッと痛くなるような、そんな光景の連続。古傷をえぐられるような、そんな感覚。

(あの頃の、私……)

 自分を押し固めていた、〝駄々っ子〟だった頃の自分。誰とも正面から向き合わず、母にだけ縋って生きていた……そんな自分。

 向き合うことを放棄して、〝幸せ〟にだけ縋りつこうとしていた――〝人形だった私〟。

 

 ――でもそこに、二つの光が差し込んだ。

 

『君は君だよ、たった一人の女の子だ』

『友達に、なりたいんだ……』

 この地獄を終わらせてくれた、幸せを教えてくれた二人。

 しかしその光もまた、再び淀んだ闇によって、真っ黒に塗りつぶされていき――その代わりに、〝辛い〟記憶が……彼女の周りを包み込む。

 〝苦しみ〟に囲まれた、少女に囁き掛ける声があった。

 

 ――――こんなに都合のいい現実なんて、あると思う?

 

 つまり、これは幻想だったということなのだろうか? いや、そんな筈は無い。

 

 ――――そもそも、代わりの〝模造品(レプリカ)〟だった貴女に、居場所なんてある訳、無いじゃない。

 

 囁き掛けてくる声は、フェイトの心を抉っていく。彼女の居場所は、無いと。これまでのことが全て虚像であり、『嘘偽り』だとでも言うように……。

 そんなもの、身勝手な願望(げんそう)であると言うように……。

「……、」

 その声に対して、少女はしばし沈黙する――だが、

「……それこそ、夢幻(うそ)だ」

 少女は小さく呟いた。

「たとえ、これまでのことが……全部嘘でも、それは違う。だって私は、その時に確かに一度は救われたから。温かい想いを、教えてもらったから。あの時、私は確かに感じとったから、温かい気持ちや想いを……」

 だから、と少女は手をかざす。するとそこへ、黒い斧が現れる。

「だから、私は……ここをぬける。皆の元へ帰るために」

 

 ――――そこに君の居場所が無くても?

 

「……たとえこれまでが、宇宙一優しい嘘(儚い夢)でも……私がその中で感じ取ったものは、確かに『本物』だと思っているから……。だから、だから私は――」

 少女は、斧を振るう。すると、リボルバーが回転し、斧は形を変えていく。

【Zamber_form.】

 黒い斧は、黄金の大剣へとその姿を変える。

「――帰るんだ、皆の元へ……っ!」

 彼女がその背にまとっていた黒いマントはまっさらな白へと色を変え、少女の心に迷いがないことを示すかのように暗闇の中に映える。

「…………」

 目を閉じ、これまでを思い浮かべる。

 これまでに感じた、色々な事。辛さ、苦しみ、痛み、悲しみ、喜び、温かさ、嬉しさ、楽しさ……それ以上に無数に感じてきたこれまでをのせて、彼女はこの暗闇を断ち切る。

「プラズマ・ザンバ――ッ!!」

 彼女が技を口に出すと、暗闇の中を金色の紫電が駆け抜ける。

 

 ――――そんな『依存』、いつかは壊れる。

 

「……字面だけで判断しないで。私たちは、互いに支え合って生きているんだから。たった一人きりじゃ、生きていけない。それを、私は教わったんだ……皆に」

 初めは、リニスにそれを教わっていたような気がする。幸せは、『家族』と……『誰か』と互いに支え合うことで生まれるものだということを……私は知っていたはずだった。

 

 でも、それをいつの間にか忘れていた……。

 

 でも、そんな私に、みんなが手を差し伸べてくれた。

 由宇が、なのはが、ユーノが、アルフが、リンディが、クロノが、エイミィが……。そして、お姉ちゃんにも、……母さんにも――――皆に、私は手を差し伸べてもらった。

 そこで知ったこの気持ちは、決して……『偽物』なんかじゃない。

 だから、もう一度ここから立ち上がる。膝を抱えることなく、前に進むための刃をここで解き放とう。

 

 

 

 その時、暗闇の空間に――黄金の一戦が撃ち放たれ、その『闇』を断ち切った。

 

 

 

 

 

 

 * * * [夢、微睡み Side_U. Appeal_sincerity_for_Fullmoonrect.]

 

 

 

 取り込まれた闇の中で、激しくぶつかり合う両者。止まらない、拳と拳。

 何方も一歩として引かないこの戦いの中、黄金の勇気の光を宿した少年は――迷っていた。

 どうしようもないほどに、迷っていたのだ。

 もしかしたら、分かり合えるのではないだろうか――という、これまで〝切り捨てていた〟はずの、その途方もなく「甘い」可能性に……。

 その〝もしも〟の思いに魅かれて、そしてある意味で……信じたかったのだ。どうしようのないほどの、その甘すぎる幻想(希望)を……信じたかったのだ。人間の『心』を知ろうとした、彼らのその〝心〟を……。

 

「信じ切ること」――この勇気の姿が持つ、信頼の光を放つ際に必要な条件。

 

 ならばそれを今、『愛』の形で……証明しよう。

 伝えなくてはならない。もう一つの、『人の心』を……彼らに。

 そのために、今一度『青き月の光(やさしさ)』を、この身に……。

 ここからの戦いは、力じゃない。

 勿論正義の為でもない。

 今ここにいる、自分の――この身に生まれた、もう一つの『思い』の証明のために。

 

 さあ、伝えよう……自らの誠意の証を。

 そして共に生きよう、分かり合う為に。

 今この身に宿った、やさしさを贈ろう。

 

 そして、彼らに伝えられるように、分かってもらえるように……もう一つの『人の心』を、その心に宿る『無限の可能性(希望)』を。

 

 ――――『愛』を、伝えよう。

 

(想いを伝えよう、コスモス。今の僕らのありったけの想いを……)

 

 さあ放て、『やさしさ』の月の光と、自分自身の『誠意』の心の証である――フルムーンレクトを。

 

 それと同じ刹那、黄金に輝く雷光の一閃が――闇の底で煌いた。

 

 それを感じて彼は微笑みながら、「やさしさ」の光を――――黄金の光を、その手から……放ったのだった。

 

『ナンダ、ナンナノダ……!? コノ、〝ヒカリ〟ハァァァ……ッ!!!?!?』

「カコスヘッダー、人の心は〝そんなもの〟ばかりで出来ているんじゃないんだ……。受け取って、僕たちのこれまでに感じてきた、『人の心』を……。そして、知ってほしいんだ。あたたかな心を、人の持つ、〝無限の可能性(希望)〟を」

『ウぉぉぉぉぉぉオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォガァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァッッッ!!!???』

 

 静かに煌くその光を、カオスヘッダーたちはこれまで〝知ろうとしなかった〟その『感情(こころ)』に……もがき、抗いながらも……確かに、『それ』を――――その身に感じていたのだった……。

 

『コノ、ヒカリ……「あの時」モ、カジンジタ……コノ、ヒカリハ――ナン、ダ…………?』

 

 そして、思いは……ほんのわずかずつではあるが……シンシンと緩やかに降り積もる雪のように、彼らの『心』の記憶の中へと確かに沁みていくのだった……。

 

 

 

 

 

 

 * * * [眠りの中、選び取るもの In _dream, your _dream _select.]

 

 

 

 

 

 

 ――――あれ……? 私、何してたんやったかなぁ…………?

 

 考えてみるが、思い出せない。

 その代わりに、頭の中に靄の様なものが掛かる。

 まるで、それらを思い出してはいけないというように。

 少女は、その感覚を不思議に思ったが……少女が今いるこの場所は、とても居心地がいい。

 もうこのまま、そこへ沈んでしまっても……いいかもしれない。

 そう。この、安らかな場所で眠りにつけるのなら……それはきっと、心地よく――〝幸せ〟……なのだろうから。

『――我が主。どうか……その「微睡み(ゆめ)」の内で、安らかなお眠りを』

 ここで安らかなままでいられるのだとしたら、それでいいのかもしれない。〝現実〟は、いつだって辛く苦しい事ばかりだった。なら、今なら――一人きりなら、いっそ……ここで終わりに手を伸ばして、そのまま……【終わり()】へと。

 そして、少女の瞳は……段々と、段々と――閉じて行った……。

 だが、

 

「――まだだ……っ! まだ、終わりじゃない!」

 

 声が、聞こえてきた。

「――はやて! こんなところで、終わるなんていうなよ……! そんな、悲しい道を選ぶなよ! 皆、はやてを助けたくて頑張ってる。はやては、独りなんかじゃない! 目を、覚ましてくれ……!!」

 誰だろうか、と『はやて』と呼ばれた少女はぼんやりとそう思った。

 そして、

(――私の……名前…………?)

 この中で、名前を呼んでくるこの人は……誰なんだろうか?

(でも……知っとるような、温かいような……そんな、光が――)

 

 温かな光が……彼女の目の前に……少しずつ、少しずつ、広がり始める。

 

 ――私の名前を呼ぶのは……いったい誰や?

 

 そう呟くはやて。

 はやての微睡みの時が、少しずつ軋んでいく……。

『我が主……もう少し、もう少しなのです――どうか、どうか……』

 もう一つの……声。

 慈しむ様でありながらも……言い表せない様な悲しみを、苦しみの様な色を孕んだ――懇願にも似た声。

「駄目だ……ダメだ、はやて! まだ、何も終わってないんだ。()()()()()()()()()()()!! 皆、ユウもフェイトもなのはもユーノもアルフもクロノもエイミィもリンディさんも……皆、皆がはやての事を助けたいって、願って闘ってるんだ!! この、運命と……!!』

 なのは、フェイト……。

 その名前を、覚えている。

 とても……嫌な、辛い響きと胸を締め付ける痛みと苦しみとともに。

 

 ――……っっ……っ!

 

 喪失、消失、呆然、憮然、驚愕、怒り、憎しみ、苦しみ、悲しみ、敵意、殺意、悲鳴、絶叫――――何一つとして、既存の言葉で表し切れる範囲を超えて生まれた……心の亀裂は、その主の叫びとともに、世界に『闇』と『破滅』をもたらす。

 

 それらを全て引っ括めた感情。世界に対する〝滞り〟とたった独りの〝寂しさ〟――子供の、幼き心を汚す様にしてはじまったそれが……この世の終焉(終わり)の始まりでもあった。

 

 だが、それをまた止めるのも……同じ子供の心が、なのだ。

 

 だから、少年は……少女を無理やりこの世界から出すのではなく、自分の意志で立ち上がる手助けをするために、友人たちの意志を、自分の気持ちを――伝えるのだ。

 

「まだ……眠る時じゃない。なのははそう言ってた。抗えない運命でも、助けたいんだってフェイトは言った。ユーノは一つの活路を示してくれた。難しいってわかっていても、可能性がゼロじゃない事を、目の前に〝示した〟んだ。そして、ユウは抗うことを止めないと。これまでの様に。俺も、そうだと思った。だがら、最後は俺自身の気持ちを言葉にする』

 

 

「はやて――――帰ってこい!!!!!!」

 

 

 より一層強まったその『声』が、少女を元の世界へと導く。

 

「…………アスカ……君…………」

「やっと、思い出してくれたか……」

 はやては、彼の名を呼ぶ。

 

 そこは、この「微睡み」の様に、夢の様な……安らかなものだけで出来上がっているわけではない。

 

 辛さも、苦しみも、痛みも、悲しみも、確かに存在するような……そんな『現実』の世界へと……。

 

 ――――だが、救いがないわけじゃない。

 

 そこに、何も生まれないわけじゃない。

 辛さが生まれて、苦しみを感じて、痛みを受けて、悲しみに身をよじれば、それと同じだけ……喜びが生まれて、嬉しさを感じて、幸せを受け取って、愛に身を震わせる。

 相反するそれらの要素がそろってこそ、そこに確かに『人』も、『心』も、もっと別の何かも生まれてくるのだから――。

 

 

 ――――自分の中にある、『弱さ』を乗り越える時は――きっと、今!

 

 

 自分の足で、これからへと向ける第一歩を歩みだせ。自分という存在を、ここに示せ。たった一つ、守りたかった『夢』を取り戻すために……こんなところで、立ち止まっていてはいけないのだから。

『我が主……』

「……ゴメンな。でも、これは……ただの『夢』や。ここには、何にもあらへん。なぁ、私は……〝家族〟を、取り戻したいや。だから、私は、貴女も救うよ。この本の今の主は……私なんやから、貴女も、家の子や。だから、教えてくれへんかなぁ? 変える方法を、そして、どうやったら……貴女を、笑顔にしてあげられるかを――」

 そのはやての優しい笑みに、顔をくしゃくしゃにして……はやてに涙ながらに伝える。

『ですが……ですが……ッ! ナハトが止まりません! もう、どうすることも……出来ません……ッ!!』

 だが、

「心配ねぇよ」

 もう一つの救いの使者は、何一つとして心配などしていない。

 何故なら、外にいる自分の『仲間たち』を信頼しているから。

「さっき言っただろ? 〝道を示す者達〟が、外にいるんだって」

 

 そう言って不敵に笑むと、外へと向けて声を発する。

 

 何せ、脱出の手立ては――――既にできているのだから……。

 

 すぅ、と息を吸い込み、アスカは友達に反撃の時であることを伝える。

「おぉぉぉおお――――いぃぃぃッッッ!!!!!!」

 

 

 ――反撃、開始だァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁッッッ!!!!!!

 

 

 その叫びが、これからの始まりを告げたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 * * * [脱出、夢の狭間で Escape.]

 

 

 

 紫電が奔る。

 少女の周囲を、現実で待っている人たちの色を纏った雷光が照らす。

 優しき桜と翡翠。

 強き紺碧と蒼天。

 慈愛の紫と橙。

 そして……勇気の黄金。

「疾風迅雷…………〝プラズマ・ザンバー〟!!」

 雷光、一閃。

 幻想との決別の一撃が、その微睡みを断ち切った。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「カオスヘッダー……帰ろう、外の世界へ。そして、お互いを知ろう……知って、それから始めよう。過ちを謝って、思いを伝え合って……そして、始めよう」

『コス……モス…………ッ!?』

「――ッ!?」

『闇』は、『闇を望んだ光』を放すことはなかった。

「カオスヘッダーッ!」

『……コスモス。…………温かかった、あの……「光」は――――』

 これまでより、いっそう人に近づいた声で……そう最後に告げ、一欠けらの輝きをコスモスに託す形で『闇』の中に消えてしまった。

 そして、決して『闇を望まぬ光』は『闇』の外へとはじき出される。

「そん……な…………っ!」

 手を伸ばす、しかし届かない。

 それでも足掻く。

 決してあきらめたくないと、思ったから。

 

 そして、その意志は……決して、途切れない。

 一つずつ、一つずつ……人の心を繋げていくものだから、断ち切るわけにはいかない。

 

 そして、その時聞こえた……一つ目の糸がつながった、合図。

 

 

 ――反撃、開始だァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁッッッ!!!!!!

 

 

 ――反撃の時が、来た。

 

 

 苦しみの運命など、ひっくり返してしまえ。

 

 

 ――もう、夜は終わりだ。

 

 

 

 

 

 

 * * * [行間 一 運命を託す者、切り開く者]

 

 

 

 ――貴方がたのしたことは、許されることではありません。

 

「ああ、分かっている……」

 

 

 そして、自分がつかんでいたことを踏まえたうえで、もう一度……それについての見解を、致命的な『問題点』と呼べるだろうそれを……クロノは述べた。

 

 

 ――それに……いつかはきっと、溶けてしまいます。どれだけ、冷たく硬い檻に閉ざしてもいずれ……。

 

「…………」

 

 ――凍結の解除は、そんなに難しい事じゃ無いハズです。どこに隠そうとも、どれだけ守ろうとも、いつか……きっと誰かが手に再び使おうとしてしまう。怒りや憎しみ、悲しみや苦しみ、欲望や羨望や野望に切望。何かの些細なきっかけで、その『願い』が導いてしまう……封じられた、『力』へと。

 

 そしてその時、また再び……あの魔導書が目覚めの時を迎えてしまう。

 

 グレアムやリーゼ達が企てていたもの……。

 それは――『闇の書』の永久封印。

 それが、『凍結魔法』による……主と、『闇の書』本体をまとめて氷結させることで、《転生機能》を無効化させること。

 主が〝死んでいない〟故に『闇の書』はどこにも《転生》しない。

 

「これまでの主だって……『アルカンシェル』で蒸発させたりしたことのあったんだ! それと、何にも変わらない……!」

「今からでも遅くない……クロノ、あたしたちを開放して」

 

 確かに、それもまたある種の柵からの開放……。

 

 そこで、終止符を打つ。たった一人の……〝孤独〟な少女の『死』と引き換えに……。悲しみが少なく、『これまで』を考えた場合――これ以上ない、ベストな条件と状況。

 

 ――――これから先、二度と来ないであろう最大級の……『チャンス』……。

 

 

 誰もが、本気で……誰かを苦しめたいと願うことなど、決してないはずだ。

 そういった性を背負うものもいるだろうが、そこにだってその者の、その者なりの『理由』が、等しく存在する。

 

 ――そう、必ずそこには、そこに至らしめる理由が存在するのだ。

 

 過去の柵……深く、深過ぎるほどの因縁。

 喪失故の、悲しみや……行き場のない怒りの行先。

 何かを得るために、何かを切り捨てねばなかったとき。

 そんな、運命の気まぐれや……偶然に左右されて、人は彷徨い続ける。

 

 そして、いま訪れているここにおける『運命』というやつは、皆を惑わせ、人々の繋がりを断ち切らんとその牙を振るう。

 これまでに、その身で過ごした長き時の中で、様々な絆を断ち切り続け……人々を苦しめ続けていたはずのそれが、そういったものを何も知らない無垢な少女の下に流れ着き……その身に苦しみを与えた。

 そのたった一冊の本が、一人の無垢な少女を孤独に至らしめ……その身体を蝕んだ。

 しかしそれと同時に、その本はその少女に〝家族〟と温かな『温もり』を与えた。

 

 だが、その温もりをよく思えない、〝割り切れない悲しみ〟を抱いてしまった者たちもいた。

 それは、これまでの彷徨い続けた時の中で犯した罪科のツケであり、両者の共生を妨げた。

 

 それでも、そんな少女を救いたいと……そう願い続け戦った、彼女の騎士たちがいた……。

 その行為が、少女の『破滅(終わり)運命(定め)』を加速させることになるなど……夢にも思わないままに。

 

 誰もが、誰かのために動いたが故に……この事態が起こった。

 誰もが誰かのために、救いたいと、分かり合いたいと、止まって欲しいと、願い続けて……そして、決別にも似た形での、その引き裂かれた事態に滞りを感じている。

 

 だから、

 

 ――ここで、終わらせます。これまでを、そしてこれからを始めます。

 

 運命を断ち切り、皆で明日を歩むために……今宵の夜闇を抜け出そう。

 

「……」

 

『運命』なんてものが、本当に偶然起こるからこそ……柵が生じる。そこには、自分の大切なものがたくさん詰まっているのに、そこに足を踏み入れてくるその『運命』とやらにはそれが分かっていないのだから。

 だからここで、これまでを断ち切るのだ。

 決別を望むのではなく、『これから先』の時を……皆と共に歩みたいと願うからこそ。

 

「……」

 

 

 ――まだ、今この時点では……彼女は、『八神はやて』は、犯罪者などではありません。僕らと同じ、『闇の書』の運命に苦しめられ、その所為で虐げられてしまっている……ただの普通の女の子です。

 

 だから救う。

 誰しもが笑って帰れるその結末を、今自分たちで積み重ね、運命を切り開くのだ。

 

「……」

 

 納得は――すぐには出来ないだろう。でも、それでも分かってほしい。

 あの子には、何一つとして罪はない。

『魔法』の無い世界で、孤独に過ごしてきた彼女に与えられた〝家族〟の温もりを……切り捨てろと強制するなど、してはならない。自分たちが、その温もりを知っている者であるのならば、なおさらだ……。

 自分たちが知っている悲しみを、苦しみの連鎖を、彼女にまで与えてはならない。

 誰かがどこかでその流れを止めることができなければ、世界にはその爛れた心の柵だけが残り続けてしまう。

 これまでのことがどこぞへ消えるわけではない。

 でも、それを……その苦しみに対して歯を食いしばって誰かがどこかで耐えなくてはならない。

 だから……ここで。

 

 ――終わりに、します……。今度こそ、必ず。

 

『奇跡』でも起こすつもりか、と鼻で笑われる程度には馬鹿げているし、尚且つ甘ったるい決断であることは重々承知している。そして、自分でもそうだと理解して、そのうえで受け入れたいのだ。

 あの少年は、そうやって……一つの〝家族〟を救って見せた。

 それを、知っているから……。

 だから、今度は……自分たちもまた、その運命に抗って見せようとする。彼かが見せてくれた、そんな優しい『奇跡』を……今一度。

 あの時、一歩を踏み出しても……自分たちには何もできないことを分かっていた。

 だからあの時は、由宇が結末を変えた――変えて見せた。

 しかし、今回は違う。

 全員の力が、必要なのだ。

 個人や、一人二人ではどうしようもない。

 たったいくつもの世界に散らばっていたその力を、今たった一人の少女の苦しみの時を迎えているあの世界に集める事、それが……今何よりも必要なのだから。

 そのために、今……誰しもが力を合わせなくてはならない。

 

 自分たちの住む世界を、守るために。

 大切な人たちの笑顔を、守るために。

 苦しみを抱える誰かに、手を差し伸べるために。

 これまでを終わらせて、明日へと歩みを進めるために。

 

「……アリア。〝デュランダル〟を、クロノに」

「父様……でも……ッ!」

「もはや、私たちの〝チャンス〟は無い。ここからは……彼らの道」

「……」

「……これは」

 

 託された、一つのデバイス。

 元は、運命を凍り付かせるだけの、冷たい檻の象徴。

 非情を貫くために使われるはずだったそれが、明日を望む少年の手に……未来を生きる者達の側へと渡った。

 

「どう使うかは……君に任せる。氷結の杖・〝デュランダル〟だ」

「……、はい」

 

 

 現場へ……仲間たちのもとへと戻るべく、その部屋を出て『第九七管理外世界・地球』へと戻ろうとするクロノは、部屋をでる寸前に、こういった。

 

 

 ――必ず、『運命』を変えてきます。

 

 

 歩み出した若人たち。

 滅亡の果てをつかみ取るために動き出す。

 その果ての、『これから』だけをつかみ取るために。

 

 ――『奇跡』を、起こすために……!!

 

 

 

 

 

 

 * * * [運命を壊せ、前へ進むために Breakthrough.]

 

 

 

 アスカの『声』。

 反撃の狼煙は上がった。

 そして、ついに闇の外へと抜け出した、由宇とフェイト。

 再び揃い踏みの五人の少年少女。

 そして、ついに……待ち望んでいた状況が訪れた時、翡翠の瞳の少年が皆に目の前の少女を解き放つ術を伝える。

「皆、今ならはやてを魔導書の防衛プログラムから引き離せる!」

「ホント!?」

「ユーノ、どうすれば……!?」

「具体的には、どんな……!?」

「その方法ってなんなんだい!?」

 翡翠の少年――ユーノは、闇の中にまだとどまっているアスカとはやてにも聞こえる様に伝える。

「どんな方法でもいい。まずはあの人の腕についてる黒い塊、あれが防衛プログラムの本体なんだ! だから、皆にやってもらうことは、たった一つ! あの、黒い塊を取り除くために、目の前の人を純粋な魔力ダメージでぶっ飛ばして! 全力全開! 手加減なしで!!」

 その言葉に、皆笑みを浮かべる。

「さすがユーノ!」

「分っかりやすい!!」

「まったくだね!」

『最高だぜ!』

 そしてユーノは、最後に一言、 

「大丈夫、中にいるはやてやアスカ、それに管理人格さんにもダメージはいかないから!」

 と告げた。これを聞き、皆はもう遠慮が必要ないことを理解して……一同は完全に臨戦態勢に入った。

「なるほど!」

「じゃあ、いっくよ~! 私たちの、全力! 全開で!!」

「それなら……カオスヘッダーも大丈夫だね」

「えっ?」

「どういうこと……?」

「さっき……あの中で少し話したんだ。カオスヘッダーと……」

 それを聞き、みんな驚く。

 確かにカオスヘッダーらしきものがあの中へと入っていったのは見た。だが、まさか〝放していた〟とは想像もしていなかった。

 皆が呆然としている間にも、由宇の話は続く。

「その時、彼らも『心』を知って……その意味を少しずつではあるけど、理解してくれたみたいだってことに気づいて…………それで、伝えようとしたんだけど、思ったよりもカオスヘッダーとあの闇の書の闇が密接になって、あの中に取り込まれてしまった。だから――」

 分かり合えないかと思っていたそれは、また……変わった。

 抱いていたその認識が、また一つ。

「――だからこそ、助けるよ。……これから始まる……全ての心を!! 独りよがりじゃない、皆の力で助けたいんだ!! だから皆僕は、カオスヘッダーも救う。絶対に!」

 それを聞き、驚きの表情ではあったが、皆すぐに「うん!」と一斉に頷き、目の前の敵であって敵でない者たちを見据える。

「それぞれの役割は……そう、ユーノに頼むよ。状況分析とサポートを」

「了解。でも、今の子の状況だと、さっきの説明とやることはそんなに変わらないよ。まずは、防衛プログラムを引き離さないと。はやてたちを外へ出さないと、この暴走の原因を止められない」

 ユーノのその指示に、皆はまずやるべきことを念頭に置く。

 そして、

「皆、行こう!」

「「「了解!!」」」

 その声を合図に、宙へと飛び立つ魔導師たち。

 ユーノとアルフが拘束の鎖を放ち、彼女を捉える。バンドブレイクを使おうとするが、今彼女の中では表に出ている方の彼女と、「ナハト」がせめぎ合っている。そのため、その動作にもさっきまでの切れなどは無くなっている。

 

 ――隙など……それだけで、もう十分だった。

 

「行くよ……フェイトちゃん」

「うん……なのは」

「N&F、中距離殲滅コンビネーション!」

「ブラスト・カラミティ!」

 金と桜の魔法陣が重なる。

 その魔力の轟きに呼応するように、表に出ているだけの〝管理者人格〟を侵食しようとする『ナハトヴァール』が表に出ている彼女の顔を苦痛にゆがめていく。悲鳴のように苦痛の声が響き渡る。

 その苦しみから、今……解き放つ!

「「ファイアァァァ――ッ!!」」

 桜と金の魔力の奔流が、彼女を打ち抜く。だが、それを止めようとするバリアがいくつも展開されたのだが、それ見越したかのようになのはとフェイトの周囲に無数のスフィアが浮かびあがり、一気に畳み掛ける――が、それを苦し紛れながらも防ごうとするためにユーノから『蒐集』した防御魔法の「スフィアプロテクション」を展開するが……。

 今〝彼女〟の中では、いくつもの要素がせめぎ合い……運用に支障をきたしているのだ。

 そんな状態では、元がいかに優れた魔法であろうとも……まともに働くはずもない。

「うぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁッッッ!!!!!!」

 二つの魔力の奔流が、完全に黒い塊――『ナハトヴァール』ごと、ユーノが提示した指示通りに、全力全開でぶっ飛ばされた……!

 暗く、深い闇は……ここで晴れる。

 

 

 ――さぁ。夜明けの始まりだ……。

 

 

 

 

 

 

 * * * [行間 二 呪い解けし、祝福の風 Reinforce.]

 

 

 

 

 

 

 ――名前をあげる。もう、『闇の書』とか、『呪われた魔導書』なんて呼ばせヘん……私が呼ばせへん……!!

 

 そう言って、はやては段々と崩れていく「微睡み」のなかで、目の前にいる彼女を頬に手をそえながら、優しく微笑んだ。

 

 ――ずっと……考えとった名前や。

 

 〝強く支える者〟……〝幸運の追い風〟……〝祝福のエール〟。

 

 ――リインフォース……。

 

 

 そして、少女の傍らでそれを聞いていた少年も微笑み、「良い名前だな」と言い、その場にいた三人は崩壊するその空間を包んだ光と共に、夢の外へ――。

 

 

 

 そして、暗闇の漂う海上の闇を裂くようにして――真っ白な一つの光の塊が浮かび上がった。

 

 

 

 

 

 

 * * * [行間 三 家族の、思い Be _concerned.]

 

 

 

 

 

 

 軌道上に待機中の『アースラ』内にて――。

「闇の書の主と、その融合機……防衛プログラムから完全に切り離されました!」

「凄い……!」

「これなら……」

 士気が上がりだす『アースラ』スタッフ一同。

 だがしかし……まだ、終わってはいない。この艦の提督であるリンディは皆に今一度気を引き締める様に告げ、我が子であるクロノに準備は良いかと問う。

「皆、暗資するのはまだ早いわよ? ……クロノ、準備はいい?」

『はい! もうすぐ現場に復帰します』

 その答えを聞き、頷くと……彼女は、自身の手の中に有る一つの鍵を見つめる。

「――〝アルカンシェル〟……使わずに、済めばいいのだけれど……」

 そんな彼女に、後ろから声を掛けてきた人影が二つ。

「大丈夫よ……リンディ」

「そうだよ、リンディさん」

「プレシア……。それにアリシアさんまで……」

 そう、今現在療養中であるフェイトの母・プレシアとその姉・アリシアだった。二人には、この作戦中は、一応この艦の中に避難・待機してもらっていることになっているのだ。

「ごめんなさい。作戦中というのは分かっていたのだけれど……」

 モニターに映るフェイトの姿に、プレシアは少し顔をしかめる。

 彼女もまた、優秀な魔導師であり……それ以上に科学者なのだが、今彼女はこれまでその体を蝕んできた病の後遺症を治療するために少しばかり魔法の使用を制限されている。本当なら、彼女もあの場に飛んでいき、フェイトやアルフを抱きしめ「大丈夫だ」といって共にいたいだろうに……。

 それは、いまは叶わない。いかにSSランクと言えども、由宇の光であらかたが治ったとはいえ、元々が不治の病。そこに残る影響はかなり大きいのは必然である。

 加えてアリシアもようやく長い眠りから目覚めたばかりなので、体中がまだガチガチに近い。リハビリを重ねる期間が必要であるがゆえに……二人は〝家族〟が戦っているのをここで見ているしかない。

 そして、それはリンディも同じ。

 クロノ自身が望んだ道とはいえ、母親としての気分は正直この状況において相当に複雑である。しかも、それが自身の夫を奪った因縁ぶかきロストロギアであるというのだからなおさらだ。

 しかし、そんな母親二人を安心させるようにアリシアはこういった。

「ママたち、きっと大丈夫だよ。フェイトも、アルフも、お兄ちゃんも、すごく強いんだから。それに、あそこにはなのはもユーノも、ユウもアスカいる。それに、はやてちゃんも目覚めた……皆、強いんだもん。きっと……大丈夫」

「……そうね、アリシア。今は……フェイトたちの無事を祈りましょう」

「そうね、アリシアさんとプレシアの言う通り。今はあの子たちが、どうやって未来へと進むかを見守るのが――〝親〟の務め……なのかもしれないわね」

 そう言ってリンディは手の中にある鍵を握り締める。

 今は悩むときではない。子供たちが、いかにして進むのか、それを見守り、崩れそうになったら支えてあげる。それが〝大人〟の……〝母親〟としての義務であり、役割なのだ。

「皆、頑張って……!」

 そんな願いを込めた呟きが、夜明けの空に漂っていく。

 

 

 

 

 

 

 * * * [夜空の下に集いし者 Wolkenritter.]

 

 

 

 

 

 

 光に包まれながら、ついに目覚める夜天の王たる少女。

 少年に抱えられて、安らかに目を開ける彼女は落ち着いており……これから始まる戦いにすら臆していないことがはっきりとうかがえ、そんな彼女は、もはや聖母の如き美しさを有しているとさえ少年は思った。

 そして、そんな二人に『闇の書』の管制融合機だった――はやてにより名付けられし『夜天の魔導書』の管制融合機――『祝福の風』・リインフォースが二人に向けてこういった。

「夜天の魔導書と、その管制融合機――〝リインフォース〟。この身の全てで、御身をお守りいたします……ですが」

「……、」

「〝ナハトヴァール〟の暴走は止まりません……。切り離された膨大な力が、じきに暴れ出します……」

「うん。まぁ、なんとかしよ? なぁ?」

「ああ。そのために、俺たちがいる。そうでなけりゃ……何のために立ち上がったんだか」

「ふふふ。私の為にーとかゆーてくれてもええんよ~? 君だけを守りたいって、アスカ君ゆーてくれたもんなあ?」

「あ、そうだった。じゃあ少なくとも俺の望みは大方達成できたって訳か……。じゃあ、はやて。あとはわがままの領域だけど、一緒に行こうぜ。この世界と、友達皆を守るためにさ?」

 そう言ったアスカに頷き返したはやては、宙を指さし一冊の魔導書を手に取り、それを胸に抱く。

「そーやね。ほんなら、早速行こか……リインフォース!」

「はい……! 我が主」

 そう言って、アスカの手から離れ、白き光の中に浮いているはやてはリインフォースとはやての姿が重なった。

 はやてのリンカーコアに、再び光が集まっていく……。

 

 

 それと同調するように、輝きを増す白き光の球体に……外の方にいるなのはたちは、まばゆい光が暗く染まった夜空を照らすのを目撃する。

 

 

 勢いよく捲られていくページ。

「管理者権限発動。リンカーコア復帰、守護騎士システムの破損回帰。……おいで、私の騎士たち……」

 リインフォースと共に、再び自分たちの家族を呼び寄せる。はやての声に合わせ、五つの光が彼女の周りに浮かび上がった。

 そして、その光はその中心たる彼女の白き魔法陣を取り囲む様にして、四つの魔法陣となりて……空に浮かび上がる。

 翠、紫、紅、青。

 そしてそれぞれの光より、四人の騎士たちがこの世界に再び姿を現す。

 

「我ら……夜天の主の下に集いし騎士」

「主ある限り、我らの魂尽きる事なし」

「この身に命ある限り……我らは御身の下にあり」

「我らが主……夜天の王、八神はやての名の下に」

 

 そう言い放ち、完全に目覚めを遂げる夜空の雲の下に集いし騎士たち。

 

「シグナム……!」

「ヴィータちゃん!」

「上手く行ったみたいだね……!」

「うん!」

 その姿を見て、上がる喜びの声。

 そして、その中心に闇を砕くようにして光球を砕き、杖を手に現れたはやて。

 

「はやてちゃん……!」

「はやて……!」

 

 友人たちに微笑みを返すと、彼女は杖を上げ、その胸に彼女の相棒をその身の内に宿す。

「リインフォース……〝ユニゾン・イン〟!」

 はやては『甲冑』を身にまとい、リインフォースと完全な融合を果たす。

 ここからが、ユニゾンデバイスとの融合。それが、この夜天の書の主の戦い方の一端である。

 はやての茶髪はクリーム色の様な色となり、青みを帯びていた可愛らしい瞳ももっと澄んだ蒼天の……青空の様な色となる。

 そして、杖と、魔導書を携えて……はやては再びこの世界の地に、彼女自身の足で降り立った。

 そして彼女の目の前には、彼女の家族である優しき守護騎士達が……。

「はやて……」

「うん。ただいま、ヴィータ」

「……はやてぇ……っ!」

 はやてに駆け寄り、涙ながらに縋りつくヴィータの頭をはやては優しく撫でた。

 そんな様子に、申し訳なさそうに謝罪を口にしようとしているが、言葉が上手く見つからないシグナムやシャマル、ザフィーラにはやてはただ優しく微笑み返す。

 大丈夫だ、というように。

 そして、そんなはやての後ろからアスカが出てきて、彼女の頭に手をおき……彼女頭を優しく自分の顔の方へと抱き寄せ、彼女に今一番言うべき言葉をいった。

「おかえり……はやて」

「うん。ただいま……」

 はやても笑みを浮かべ、目を閉じてアスカに顔を寄せる。

「ヴォルケンの皆もさ……大切な人が、〝家族〟が帰ってきたら、いう事があるんじゃねぇの?」

 その言葉を聞き、ヴォルケンリッターの面々ははっとしてその言葉を口にする。

「おかえりなさい、はやてちゃん……そしてただいま戻りました。我らが主」

「重ね重ね、申し訳ありませんでした。我ら守護騎士一同……ただいま、帰りました。そして、おかえりなさい……」

「おかえりなさった事、この上なく喜びを感じています。我らもまた、ようやく帰還しました。これまでは、ご迷惑を……」

「ホントに、良かった……はやてぇ…………! ただいま……それに……おかえり……っ!」

「ありがとなぁ、皆。もう……大丈夫やよ皆。もう、それはここでいったんお終いや。〝家族〟の犯した罪は……〝家族〟皆で背負う……。でも……その為には、その為の明日を生きる為に……今は戦うよ、準備はえぇかな? 私の、可愛い騎士達?」

「はいっ!」

「勿論です!」

「おうっ!」

「何なりと!」

「ええ返事やね!」

 はやては騎士たちの言葉をこれ以上なく頼もしく感じた。するとそこへ、なのはたちが駆け寄って来た。

「はやてちゃん! 良かったぁ……!」

「はやて、大丈夫? それと、お帰りなさい」

「アスカもおかえり」

「おう、帰って来たぜ」

「これで、後はクロノがそろえば全員集合……かな?」

「そういやぁ……クロノなんか遅いねぇ。どうかしたんかね?」

「グレアム提督との話が長引いてる……とか?」

「いや、そうでもないさ」

「お兄ちゃん!」

「待ってたよ、クロノ」

「ああ、すまない。でも、それについてはこの後で謝罪しよう。今は、迅速に対処しなくてはならないからね……。そこで、主はやてとその守護騎士たちにいくつかアレについて確認したいんだが――」

 そう言ってクロノは、海の中でまだはっきりとした形を見せずにうねっている『ナハトヴァール』を指さす。

「あれは、『闇の書』の『闇』の部分……《自動防衛プログラム》、でいいのかな?」

「うん。あれは……闇の書の中に眠っていた……壊れてしまった部分。自動防衛プログラム、『ナハトヴァール』……」

「そうか……なら、停止手段は既に用意しているから、後はこちらで何とかする――と言いたいところだが」

 とそこまで言って、クロノカード状の形態で待機モードになっているデバイスを起動させる。槍の様な形状をした杖が形作られ、四つの〝リフレクター〟も共に展開される。

 彼の新しいデバイス、氷結の杖・『デュランダル』だ。

 その杖を起動させ、地面にガンッとつくと、その周囲に冷気が漂う。それだけでも、そのデバイスがいかにすさまじい力を持っているかが垣間見えそうだ。

 だが、勿論個人の力だけでどうこうするような規模の戦いではないことをクロノ自身よく理解している。だからこそ、彼はこの場にいる全員に問う。

「協力者は多い程良い――協力してもらえるか?」

 勿論、皆の答えは決まっている。

 

 一同は、力強く首を縦に振った。

 

 長きに渡る因縁の、終焉の時が今――来る。

 

 

 

 

 

 

 * * * [全ての終わり、そして始まり To _be _continued.]

 

 

 

『闇の書』の『闇』と対峙する魔導師たち。

 

 ついに決戦のときが幕を開けた。

 

 これまでの呪いに別れを告げ、そしてこれから始まる未来と共に歩んでいこう。

 

 さあ、運命の鎖を引きちぎれ。

 

 

 

 ――夜明けの時は、近い。

 

 

 




 いかがだったでしょうか? ついにいよいよA's編も終わりが見えてまいりました。いやー……ここまでくるまでが長かったです。無印は割とあっさりと完結したのに、A'sの方はなんだかあまり進まなくて、何度書き直したり、色々描写を付け加えることが多かったです。
 まぁいい訳臭くなるのでこの辺でそこら辺の話は終わりにしておきます。
 それではいよいよ次回は本当にラストバトルの回になります。A's編の締めくくりの話なので、なるたけいいものにできるよう頑張って書くのでぜひともご覧ください。
 それではまた次話でお会いしましょう。
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