このシリーズの、決戦のファイナルラウンドをどうにか書き終えることができました……。無印に比べてA'sは全然終わらなくて、ホントにここまで来れて良かったです。
今回は、本当はもっと明るめのトーンだった筈なのですが、書いているうちに思ったよりも暗いトーンになってしまい……少し暗くしすぎたかなぁとは思いますが、それでもこのラストバトルにはただ勝った・負けたよりも、別な意味を持たせられないかと一人画策して辿り着いたものなので、どの程度かと聞かれれば拙いとは思いますが……それでも、このシリーズのエピローグ手前のバトルのラストをできる限りのことをしてこの構成にしました。
それでは、どうぞ
* * * [集いし者たち、未来を掴むために To_tomorrow.]
遂に復活した『夜天の魔導書』の守護騎士、『ヴォルケンリッター』と、その主である少女八神はやて……。
――そんな囚われた定めから抜け出した彼女らの前に立ち塞がる……『闇』。
呪われた魔導書と呼ばれた、その『呪い』の根底となるもの……それが、《自動防衛プログラム》――通称・《ナハトヴァール》。
『闇の書』の『闇』を形作り続けた……、負の遺産。歴代の主達を苦しめ続けたもの。
その連鎖を断ち切らんとして、今――若き勇者達が立ち上がった。
自分達の住む世界の、明日を守る為に……みんなと共に、これからを歩み続ける為に。
――――彼らは、『運命』に戦いを挑む。
* * * [最終決戦、皆の想いを乗せて Final_Round.]
『闇の書』の〝闇〟と対峙した魔導師たち。目の前に佇む巨大な怪物をどのようにして攻略するのか、それを一同は決めあぐねていた。
「なんとかする――といった手前申し訳ないんだが、守護騎士の皆に少し聞きたい。あの暴走体を止めるには、どのような手段で攻めるのが効率がいいか、それについての意見をくれないか?」
クロノの用意した手段は、主に二つ。
一つ、〝デュランダル〟による凍結封印。
二つ、軌道上に待機中の時空航行船『アースラ』の砲撃―〝アルカンシェル〟による完全蒸発。
以上二つから……というところだが、この二つには少々の問題点が存在している。
クロノはそう守護騎士・ヴォルケンリッターの面々に問いかけるが、守護騎士一同は少し困ったような表情をする。
「ええっと……たぶん最初のは難しいと思います。主なき防衛プログラムは魔力の塊みたいなものですから……」
そうシャマルがいう。
事実。あの《自動防衛プログラム》は、超巨大圧縮魔力獣と怪獣のような呼称を付けて差し支えないレベルの魔力を有しているからだ。
そして、シャマルに続き、
「それに、コアがある限りはあのプログラムは再生し続け、止まることはない。それと……すまないが、あまり力にはなれそうにない……」
そうシグナムがすまなそうにいう。
それに続き、
「なにしろ〝暴走〟に遭遇した経験は、我らにもほとんどないのだ……」
と、ザフィーラもいった。
それを聞き、クロノは「そうか……」といって、少しその場には静寂が流れるものの、その直後に軌道上に控えるクロノの母・リンディらを始めとした人達が乗っている次元航行船『アースラ』のオペレーター主任のエイミィから『はーい、皆ーっ! 「闇の書」の《自動防衛プログラム》、作戦上のコード――《ナハトヴォール》暴走臨界点突破まで、あと十五分切ったよ。作戦タイムは、お早めにっ!』と制限時間についての忠告が入る。
それを聞き、再び会議モードに戻るが……ユーノやリィンフォース達もそう簡単に作戦は思いつかない。
逆に、ヴィータやシャマルはここで『アースラ』の砲撃――〝アルカンシェル〟を放たれたくないとか、家がなくなっちゃうとか、ちょっとホワホワした感じに危機感不足なことを言い、ユーノやクロノは苦笑する。
だが、かといってここでがむしゃらに攻めてしまっても、それこそ魔力の無駄でしかない。そうやってあれこれと考えていると、
「あーもう! なんかごちゃごちゃ鬱陶しいなぁ!! 皆でずばーっとぶっ飛ばしちゃうわけにはいかないの!?」
『そーだよ! フェイトになのはにはやてちゃんまでいるんだからサクッとドッカーンってやっちゃいなよ!!』
「『というか、由宇とアスカもいるのになにを迷うのさーッ!』」
そんな風なアルフと、何故か『アースラ』の方からフェイトの姉・アリシアの声が皆にそう投げかける。
そんな単純な話ではないんだが……、とクロノはいうが、そのワードがかえって思考の歯車を押し進めた者達もいた。
「――ずばっ! と……ぶっ飛ばす……?」
「ここだと、被害が大きいから撃てへん……だから、〝アルカンシェル〟もウルトラマンである二人も闘えない状況……なら」
「――――ここじゃ、なかったから……?」
『そうだ……!!』
何かを思いついたように顔を見合わせる少女達。
「ねぇ、ユーノ君、クロノ君。〝アルカンシェル〟ってどこでも撃てるの?」
「どこでも……って?」
「例えば――」
そういってなのはが空を指さす。
「ここで撃つことが出来ないなら……!」
「被害の出ない宇宙空間――軌道上で!」
「お、おい。まさか……!?」
クロノはなのはたちの言わんとすることを理解した。ユーノもそれには気づいたようで、目を見開いて「ま、まさか……」と呟く。
――つまり、なのはたちの考えとは……ここで弱らせてから、『アースラ』が控えている軌道上の、被害が最小限で済む宇宙空間にまで……あの怪物を転送しようという事。
その作戦は、無謀だとは言えない。
というか、これまで出た案の中ではピカイチだと言って差し支えない。
その作戦に、一同は――乗ることになる。
* * * [行間 一]
さて、準備は整った。
今こそ、全ての『終わり』と『始まり』の時……。
――今こそ、呪われし『闇』と向き合うとき……。
弱かった、皆の『心』の果てに。
つかみ取った『意志』の果てに。
誰かと重ねた『想い』の果てに。
誰かの為の『優しさ』の果てに。
未来を始める『今日』の果てに。
これから先の『明日』の果てに。
たった一人では成しえない、『未来』の果てに――。
さあ、世界を救おう。
そして、友と歩もう。
自らの『心』を伝えたい誰かの隣に立とう。
伝えたい『想い』を胸に……夜を抜けよう。
その為に、皆は手を重ねる。
失わないために、守るために……だからこそ、立ち上がり、拳を握り……そして闘う。
『運命』という不確かな名を冠する怪物に、立ち向かう。
今を生き抜く若人たちが――抗った先にある、一筋の『
* * * [行間 二]
「提督、見えますか……?」
『ああ。よく見えるよ……』
クロノは、管理局本局の方でことの結末を見ているグレアム提督とリーゼアリア・ロッテの姉妹使い魔に通信を繋ぐ。
そして、ここに至っての自分の決意を……今一度、この『呪いの運命』へと立ち向かっていた先人に告げる。
「『闇の書』は、呪われた魔導書でした……。その『呪い』はいくつもの人生を喰らい……、それにかかわった多くの人々の人生を狂わせてきました。僕も母さんも、他の多くの被害者遺族も、〝こんな筈じゃなかった〟人生を歩むことになりました。勿論、貴女やリーゼ達も……。そして、はやてたちもまた……色々と与えられました」
『……』
グレアムは沈黙する。
だが、クロノは、今一度……こんなはずじゃなかった運命へと立ち向かう決意を告げる。遥かなる明日へと向かって行く、決意を……!
「……失くしてしまった『過去』を変えることは出来ません。だからこそ――――」
――――今を戦って……、『未来』を変えます!!
最終決戦の幕が上がる。
* * * [撃ち放て、思いの一閃を Triple_Breaker.]
《ナハトヴァール》と対峙する一同。
そして、その光景を見て……それぞれが思ったことをつぶやく。
「《自動防衛プログラム》……『闇の書』が、『闇の書』たる理由……《暴走》の根底」
「『闇の書』の……〝闇〟……」
「〝暴走〟は、その広がりに伴って周囲にある物を手当たり次第に『侵食』しながら、やがては世界すら飲み込むことさえある……」
「そんなこと……させない」
「僕たちが、皆で止めよう」
「ああ、止めてやるさ……」
「では、行こう……!」
空へと飛び立たたんとする魔導師たちと、その場に控え出番を待つ二つの光。
だが、
「あ、その前に……シャマル」
「あ、はい。はやてちゃん。皆さんの治療ですね?」
「なのはちゃんとフェイトちゃん、ユーノ君、ユウ君、アスカ君」
「「「?」」」
皆はキョトンとする。
「〝クラールヴィント〟、本領発揮よ?」
《Sim, Mestra.》
「風よ、癒しの恵みを運んで……」
柔らかく吹く緑の風が、傷ついた体を、そしてなのはたちのバリアジャケットに至るまで、全てをあっという間に〝治して〟いく……。
「湖の騎士・シャマルと、風のリング〝クラールヴィント〟。癒しと補助が本領です」
そういってにっこりと微笑むシャマルは凄く綺麗だったと、のちに男性陣は語るが……この時のぼーっとしていた三人を、なのは、フェイトそしてはやての三人ともがそれぞれが気になっている男の子たちに女の子からのメッセージ(制裁気味のツッコミともいう)を入れた。
――決戦はついに最終局面へ……。だが、作戦自体は、非常にシンプルである。
(まずは、ユーノ君たちが本体を拘束!)
(そしたら次は防壁突破の部隊導入!)
(『闇の書』の自動防衛プログラム、《ナハトヴァール》のバリアは物理・魔法のそれぞれ複合四層構造……そこをまずはなのはちゃんとヴィータで突破!)
(それでまずは第一層を突破したら……)
(次いでシグナムさんとフェイトが第二陣を撃って……なのはたち三人の砲撃魔法で、外装を完全にはがす!)
(そして、クロノの凍結魔法で本体を完全凍結!)
(そしたら軌道上へユーノたちの転送魔法で一気に送り込んで……!)
(とどめは……)
(〝アルカンシェル〟と、コスモス&ダイナってとこか!)
(そこまで分かれば残りは……)
(我らの悲願を果たすのみ……!)
(俺たちの……ラストバトル。ファイナルラウンド、開始だぜ!!)
全身全霊の――。
「オッケー皆。……管理局の技術力、舐めてもらっちゃあ困りますなぁ~……いつでもどこでも、最高のサポート体制、及びバックアップは完璧ですよ!」
「〝アルカンシェル〟――チャージ開始!」
――――全力、全開っ!!
――――バトルスタート。
* * *
飛び交ういくつもの光……たとえ、泣いても笑っても、これで――全てが決まる……世界の命運をかけた戦いが、今ここに始まった。
「コア露出までの間、あたしらの役目はみんなのサポートだ」
「うん!」
「うむ……!」
橙髪の女性・アルフと亜麻色に近い金髪の少年・ユーノ、そして青がかった銀髪の男性・ザフィーラが空に浮かび皆が戦いやすいような準備を始める。
「ケージングサークル!」
「チェーンバインド!」
翡翠の柵と橙の鎖が《ナハトヴァール》を囲い、そして縛る。
そしてさらにそこへ、
「縛れ、鋼の軛……ッ!」
白い鋭い支柱の様になっているいくつもの〝軛〟が、《ナハトヴァール》に突き刺さりその触手部分を串刺しにする。
だが、しかし――。
「……!?」
《ナハトヴァール》は、止まらない。アルフとザフィーラの拘束をあっさりと砕き、ユーノの『ケージングサークル』までもビキビキと砕き、その拘束ケージから逃れようとする。
『あれは、もうこれまでの《ナハトヴァール》ではない……。カオスヘッダーを取り込んだことで、彼らの中にあった「憎悪」といったものを吸収して更なる「闇」の中に沈み込んでしまっている……』
リインフォースがそう言い……それに続いて由宇が、
「じゃあ、あれはもう……《ナハトヴァール》じゃない。なら、あれは――カオスヘッダーの『
と、言った……。
《ナハトヴァール》……いや、《ナハト・ダークネス》は、咆哮をあげる。
「グぅぅぅオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオぉぉぉッッ!!!!!!」
その姿は、まさに……煉獄の混沌より、
――『闇の化身』……誰しもが、そう思った。
だが、そこで恐怖に身を震わせて逃げだそうとする者は一人としていない。
だからと言って、誰しもがあの存在を〝恐れないのか?〟と言えば――それは否だ。
それでも……自らの震えを抑え込み、目の前に迫る『恐怖』から目をそらさずに、ただひたすらに勝利を信じて――明日への道を目指している。
だからこそ……彼らは折れない。
――――決して……!
「アルフ、もう一回拘束行くよ! ザフィーラさんも!」
「おう!」
「承知……!」
再びアルフとザフィーラの魔法が《ナハト・ダークネス》にかかる。だが、それもまた砕かれそうになる。
だが、そこへさらに……よりいっそう強固に更生し直したユーノの『ケージングサークル』が、ナハトの周りを三重に取り囲む。
「皆、今ならいけるよ!!」
ユーノがそういうと、皆がそれに頷いた。
そうやって《ナハト・ダークネス》が拘束されたのを確認して、先陣を切った紅と桜色の二人の魔導師が《ナハト・ダークネス》へと迫る。
「合わせろよ――――高町なのは……」
「……うんっ!」
ぱぁぁぁっと、なのはの顔がほころび――二人の攻撃が始まる。
ナハトへと飛ぶヴィータに迫る拘束を逃れた触手が迫る。
だが、
「アクセルシューター・バニシングシフト……シュ――トッ!」
なのはの放った桜色の誘導弾がそれらを総て吹き飛ばす。
そしてヴィータに笑みを贈るなのはに少し見とれるヴィータだが、彼女には負けていられないと気合を入れなおして鋭く《ナハト・ダークネス》を見据え、彼女のデバイスである〝グラーフアイゼン〟を構え、足元に紅のベルカ式魔法陣を出現させ、ガコンッ、ガコンッ! とカートリッジをロードし……〝グラーフアイゼン〟の、そして彼女自身の二つ名の所以であるその姿を顕現させる。
「行くぞ、アイゼン……ッ!」
《Explosion. Gigant form.》
その姿は、幼い容姿にそぐわないが……まさしく彼女の『鉄槌』の二つ名にふさわしい出で立ちであった。
「……行くぞ。轟天、爆砕!」
巨大なハンマーに変形した〝グラーフアイゼン〟の柄がしなり、ヴィータの掛け声とともに一気に振り下ろされる。
「ギガント・シュラークッ!!」
その一撃は、《ナハト・ダークネス》のバリアをまさしく『力』で突き破っていく。
そしてさらに、暗闇が覆う空に桜色の星の光が煌き、天使の如き羽を広げる。
「高町なのはとレイジングハート・エクセリオン――行きます!」
《Lord cartridge.》
〝レイジングハート〟から広がった光の羽、そして集う星の光。
「エクセリオーン・バスタァ――ッ!!」
《Barrel shot.》
迫る触手を吹き飛ばし……集いし星光が、光の奔流となって放たれる。
「ブレイクシュ――トッ!!」
二人の攻撃により、《ナハト・ダークネス》の表面のバリアが崩されていく。
だがしかし、ものすごい速度でそのダメージを回復しようとする《ナハト・ダークネス》の《自己修復機能》……。
それをさせないために、第二陣が次いで動く。
「フェイトちゃん、シグナム!」
シャマルの声を背に受けながら、シグナムとフェイトが第二陣として空を翔る。自身へと向けて放たれる混沌とした色を放つ光線攻撃をかわしながら、二人はそれぞれの一撃を放つために一言言葉を交わす。
「行くぞ、テスタロッサ」
「はい、シグナム……!」
そして二人は相対するようにして《ナハト・ダークネス》を挟み、それぞれの剣を掲げる。
フェイトの金色の光を放つ『ザンバーフォーム』の〝バルディッシュ〟。
シグナムが掲げし炎の魔剣・〝レヴァンティン〟。そして彼女もヴィータ同様――自らの相方に隠されたもう一つの姿を、この場に顕現する。
「剣と連結刃に続く、もう一つの姿……それを今、ここで見せよう!」
鞘と剣本体を合体させ、カートリッジを二発。鞘と本体に備わっているロードアクション部分でロードし、もう一つの姿――『弓』の姿を形作る。
《Bogen form》
「翔けよ、隼!」
カートリッジが再び二発ロードされ、シグナムの魔力光と同じ輝きを放つ魔力の矢が形成される。
《Sturm falken.》
そしてその反対側でもフェイトが一撃を放つ構えをとる。
「貫け……雷神!」
黄金に輝く大剣を掲げるフェイト。
するとその大剣に雷が纏うように降り注ぐ……その光は、紫と空色。
彼女の大好きな……〝家族〟の色。
《Jet zamber.》
フェイトは微笑みながら、雷を纏わせた大剣を構えながら、《ナハト・ダークネス》を見据える。
「「はぁぁぁあああああああああっっっ!!」」
フェイトとシグナム、二人の声が重なり……炎の矢と雷光の一閃がともに《ナハト・ダークネス》を撃ち抜き、貫く。
それに合わせ、ユーノの『ケージングサークル』が消える。ヴィータの打撃となのはの砲撃とは違い、フェイトとシグナムの攻撃を阻害するからである。
そして攻撃の爆炎が静まると、皆が《ナハト・ダークネス》の様子を窺う……ここで終わるならばいう事はないが、さすがにそうは問屋が卸さない。
「……!? まだ!」
「はやてちゃん!」
ユーノの声で、迫る攻撃から皆は飛散し、ヴォルケンの司令塔・シャマルの声に続き、第三陣の攻撃が《ナハト・ダークネス》の上空に佇むはやてより放たれる。
「彼方より来たれ……宿木の枝――」
『銀月の槍となりて、撃ち貫け――』
はやてとリインフォース。二人の詠唱が重なり、はやての間良好である銀に近い白色の魔法陣と、上空にいくつもの光の槍が展開される。
それは、まだ『闇』の中に捕らえられていた時にリインフォースが放った〝ブラッディ・ダガー〟とは真逆の、純潔の白を象徴するかのような……『血染めの短剣』に対する『白き純潔の光の槍』。
「『――石化の槍、〝ミストルティン〟!』」
二人の詠唱が重なり、そして一気に放たれる光の槍は、《ナハト・ダークネス》に直撃した部分を次々と石化させ、固めていく。
自身の体が固まっていくことにもがくようにして抗う《ナハト・ダークネス》。自身の石化した部分を砕いて捨て、逆に《再生》で体を取り戻そうとする。流石は『呪い』とまで謳われた《自己修復機能》と言ったところだろうか……。
そのサイクルでも、一切パワーダウンを感じさせることなく……むしろよりいっそう禍々しさを増したような姿で、一同の前に『異常』とまで言えそうなほどの邪悪さを見せつける。
だが、それでも……《再生》するまでには若干のタイムラグが生じることだけは、決して避けることは出来ない――。
『クロノ君、やっちゃえ!』
『行っちゃえお兄ちゃん!』
軌道上の『アースラ』から、エイミィとアリシアのそんな声が聞こえてくる。
「……行くぞ、デュランダル……ッ!」
《Ok,boss.》
「悠久なる凍土、凍てつく棺の内にて……永遠の眠りを与えよ」
クロノの詠唱と共に、周囲に冷気が漂い出す。
「――――凍てつけ!!」
《Eternal cofin.》
クロノが〝デュランダル〟を振り下ろすと、込められた強烈な魔力が一気に解放および『氷結変換』され、四つの『リフレクター』により反射され、より強力に――《ナハト・ダークネス》に直撃した。
周囲の海、果ては自分自身の顔や髪さえも凍らせるほどの莫大な魔力の開放。それを加えられた《ナハト・ダークネス》はぎぎっ……! と、軋むような動きはするものの――まだ完全に動ける状態ではない。
――――御膳立ては、十分に整った。
* * * [〝誰も救えないもの〟と、それに伴う悲しみの狭間で]
届かない……『思い』と『願い』。
この時ばかりは、決して誰も手を届かせることは出来なかったもの……。
――ゴメンなぁ……お休みな……………………ッ。
少女は、〝救えなかった〟ことに対する自身の不甲斐無さと涙の味を噛み締めながら――『身勝手な別れ』の言葉を告げた…………。
* * * [放て、三つの光を Triple_breaker.]
「なのは!」
「フェイト!」
「はやて!」
ユーノ、由宇、アスカの声。
「いけるぞ……!」
「やっちまえーっ!」
「今だ……ッ!」
「今なら!」
「行け……!」
クロノや『ヴォルケンリッター』たちの声。
「いっけぇぇぇえええっ!」
「今だよ!」
エイミィがアリシア、そしてリンディやプレシアも拳を握り締める。
皆の声援を背に受けながら、なのは、フェイト、はやての三人はそれぞれの最大の砲撃魔法を発動する……。
「全力、全開! スターライトォ……」
――決して折れぬ不屈の心を持つ天使の下、光に集う。
「雷光一閃! プラズマ・ザンバ―!」
――何度でも立ち上がる優しき閃光の下に、雷が舞う。
「『響け、終焉の笛……ラグナロク!』」
――夜天の王が奏でる、終焉を告げる音色が響き渡る。
――――三人の光が、『闇』に降り注いだ。
『――――――ブレイカァァァアアアアアアアアアアアアアア――ッッッ!!!!!!』
三つの光が、放たれた。
降り注いだ、光の奔流。
眩い程の、その『光』。
それは……長い、長い、聖夜の『夜』の終わりを告げる――――夜明けの光だった。
* * * [閑話 一 終わりと始まりの狭間で]
――――注がれた光は……深く、どこまでも深く……『闇』に刻まれた――――。
* * * [行間 三]
そして三人の光――〝トリプルブレイカー〟が《ナハト・ダークネス》の外装を総て削り取った。
――ここから、彼らの本番が始まる。
「来た……!」
「シャマルさん!」
「はい! 捕まえ……たっ!」
シャマルの〝クラールヴィント〟が作り出した『旅の鏡』により、《ナハト・ダークネス》の〝コア〟に完全に狙いを定める。
――――
「行くよ! アルフ、シャマルさん!」
「おう!」
「ええ!」
三人の魔法構築が始まり、シャマルが捉えた《ナハト・ダークネス》の〝コア〟をユーノとアルフの魔法陣が挟みこむようにして、一気に軌道上へと『強制転移』させる。
「長距離転送ッ!」
「目標、軌道上!」
『――〝転送〟ッ!』
三人も魔力光が重なり合い、鮮やかな虹色の光に包まれながら……一気に軌道上まで送られた《ナハト・ダークネス》。
そして、それを追う……二つの光。
「行くぜ……」
「ああ……!」
「ダイナァァァアアアアアアアアアアッッッ!!」
「コスモォォォオオオオオオオオオスッッッ!!」
――――二人の叫びと共に、総ての決着の時が……終焉の幕が、また一つ降り始めた……。
* * * [全てを救えるほどの〝愛〟をその手に Miracluna.]
トリプルブレイカーにより、コアを露出させるまでに至った《ナハト・ダークネス》は、ついにユーノ、アルフ、シャマルの三人により、軌道上に待機する『アースラ』前まで送られる。
だが、〝アルカンシェル〟はまだ放たれない。
これは、由宇が作戦前に「させて欲しいことがある」と、念押ししたが故である。
だが、長くかかると〝アルカンシェル〟で消し飛ばす前に《再生》を果たし、転移とまではいかないにせよ……宇宙空間を侵食しだすかもしれない。
故に、与えられた
だが、〝ウルトラマン〟である以上、そして何よりも自分の想いを貫くならば、その猶予は十分すぎるほどである。
自らが背負う
その時間に、全てを賭ける。
その決意の下、光の速さで軌道上へと移動したウルトラマン二人。
そしてそこへと現れる《カオスダークネス》は、ついに二人――コスモスとダイナ、そして更にその後ろに控える『アースラ』の与党乗員たちと、損お様子をモニターで確認しているなのはたちの前に……その禍々しく、痛々しい姿を晒した。
「来たぜ……ユウ」
「……うん、分かってる」
そして目の前に現れた《ナハト・ダークネス》に対し、コスモスと由宇は再び、自分たちの思いのたけを込めた『フルムーンレクト』を放った。
――――『闇』の中に囚われてしまった、『彼ら』を……今度こそ、救う為に。
「グぅゴぉぉぉオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアガガガガガガガガガガガガガガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアぁぁぁッッッ!!!???」
凄まじいうめき声をあげながら……まだ《再生》しきれずに、ろくに稼働できる部分すら残っていないその身をよじるようにして苦しみもがく《ナハト・ダークネス》だが――――少しずつ……少しずつ、〝ズレ〟の様なものが生じ始める……。
慈愛の光――『フルムーンレクト』は、『心』を持たない相手には効かない。
だからこそ、今……『心』を知りながら、その中にある〝温かい想い〟を感じることができる様になり始めたカオスヘッダーたちが、由宇とコスモスの『心』を乗せた『フルムーンレクト』に共鳴し、反応して抵抗しているのだ――自分たちを捉えている、『枷』となっている『闇』に……。
――――そう、それはまさに……、囚われてしまったカオスヘッダーたちの『心』の救出だった。
「あと、少し……もう一度――――届いて……!」
――大丈夫。きっと、届く。君と私の……そして皆の想いを乗せて、カオスヘッダーたちにもう一度届けよう。
「……うん!」
『想い』は、必ず届く……。
だから、今度こそ伝えよう。
もう、邪魔なんてさせるものか。
自分たちの心の中にある輝きの素晴らしさを、これまでそれを知る事が出来なかったカオスヘッダーに必ず届けて見せる……!
すると、その思いが、そしてその決意が……星空の紫に映えるコスモスの青い体を黄金の光で輝かせる。
「これは……?」
日食の……『勇気』の光ではない……これまでに、見た事の無い輝き――――いや……違う。これは、ずっと……皆の傍に、心の中にあった『輝き』だ。
そう……これこそが、
――〝奇跡〟の光……人の、『希望』の輝きだ。
その光が、コスモスと由宇に〝奇跡〟の光を与え、また一つ……新たなる姿へと変わる。
【ウルトラマンコスモス・ミラクルナモード】――慈愛が生んだ、〝奇跡〟の力を体現する姿だ……。
「カオスヘッダーを救おう、コスモス。僕たちの……皆の光で、今度こそ!」
――ああ、必ず……!
そしてついに、互いのそう反する意識が生じさせていた〝ズレ〟は、再生にすら支障をきたし……互いをつなぎとめることさえもできなくなっていく。
そうして……どす黒い『闇』の部分と、輝きを増す『光』の部分へと別れていく《ナハト・ダークネス》の中から聞こえてくる、声。
――こす、もす……。
弱々しく発せられる『カオスヘッダー』の声……。
ナハトヴァールとの融合の為か、嘗て創造した実体の時よりもさらに禍々しい姿なったりしながらもかんじた『輝き』を纏っていく。だが、既に力のほとんどを失いながら弱ってしまっている……。
由宇とコスモスは、その手より注ぐ『フルムーンレクト』をいったん止め、今度は両手から透明で青い光の波動をカオスヘッダーに対して放った。
『ルナ・ファイナル』――互いの想いを通い合わせ、相手の邪気を祓い……そして救う技であり……そしてそれは、自分の『想い』のたけの全てを伝える技だ…………。
そして……その光が、また一つ……。
――――この宇宙の片隅において、また一つの…………〝奇跡〟を引き起こしたのだった。
――コスモス……私を包む、この『光』……この『想い』は…………?
「それが……人の心が持っている、輝き」
――全ての
――こ、ころ…………? き、ぼ、う……………………?
「そう、それが……本当の、本来の……『心』だよ。カオスヘッダー」
そしてこの日――『カオスヘッダー』はついに……『心』を、知ったのだった……。
そして彼らは、自らの意志と力で、《ナハトヴァール》からの完全なる分離を果たすことができた……。
そうして現れたのは……まるで、天使の様な黄金の輝きを纏った翼を広げた……光の女神の如き姿となるカオスヘッダー。
【カオスヘッダー・0】――すべての柵を乗り越え……人の心を知った、カオスヘッダーの本来あるべき《秩序》と《平和》を体現した姿だ……。
――心の……輝き…………。
奇跡が巻き起こる時、終劇は……すぐ目の前まで近づいている。
――――また一つ、物語の幕が下り始めた……。
* * * [閑話 二 幕引き、ひと時の夜に別れを告げて]
――有難う……。
――いいんだ。僕も、色々酷いことしたから……。
――それでも、『感謝』を告げることができる……。
――うん。そうだね……忘れちゃいけない、心の形だった。
――だから、私の力を……二人に託したい。
――え……?
――私も、嘗ては……『光』であり、《秩序》を…………《平和》を作るものだった……。だから……頼む、コスモス。
――カオスヘッダー……。
二つの光が、秩序の光を受け取る。
そして、争いを止めたいと願う心が……一つに――。
暗闇の夜空に別れを告げて、悲しみの晴れた紫天の朝日を迎えよう。
そのための第一歩は、既に踏み出しているのだから……。
* * * [夜明け、戦いが終わる時 THE_LAST.]
――夜明けの時だ。
輝く〝光〟を受け取った勇者たちの必殺技が、《ナハト・ダークネス》を――いや、もはやただの《ナハトヴァール》となったそれを――この次元から吹き飛ばさんとする……。
しかし、カオスヘッダーが切り離されて尚、《再生》して暴れようと足掻く。しかし決して元の《ナハト・ダークネス》には……戻れない。
その証拠とでもいうように、ボロボロと破片の様に散らばるその自身の『欠片』――もはや『残骸』と呼べそうなほどに崩れているそれら――さえも元に戻せないほどに《再生》能力は衰えている。
それを見て……ここで、終わりにする――――と、二人は構えをとる。
――――黄金と、青き光が、二人の腕に集まり……そしてそれぞれの纏ったその『光』が、放たれた。
――コズミューム光線!!
コスモスの放つ『勇気』の光が、《ナハトヴァール》のコアと本体に直撃する。
しかし、光線を受け……砕けても、砕けても尚、どこまでも悪あがきを続けようとする《ナハトヴァール》……。
――その姿に、誰も皆……一瞬だが、手を止めた。
『生きる』と望んでいる訳じゃない。
そもそもあの中には、『意志』となりえるものすらない。
でも、それでも。その姿が、……泣いている子供……帰り道を見失った迷子になってしまった子供の様ですらあり、『心』が――締め付けられる。
でも、今――その苦しみさえも救うことができるとするなら、その道があるのだとするならば――それは……静かな眠りにつかせることだけなのもまた、一つの『現実』。
そんな事は、とっくに認識は出来ていたはずだ。
とりわけ、管理局員をしていたこともあるくらいなのだから……。
――――だがそれでも、この世の理を素直に受け止められるほど……戦いに関わっている誰しもが、『大人』ではなかった……。
この世界には――『現実』には、救いがないわけではないが……時には残酷にも、〝届かない思い〟も〝救えない命〟も、あるのだと……。
――自分に宿る、〝ウルトラマン〟達ですら……決して『神』ではないという〝当たり前〟の事も。
「……ゴメンな。今の俺たちには、これくらいの事しか、出来ねぇ……。すまねぇな……こんな結末しか、終わり方しか、選べなくて…………ッ」
涙が流れるほどの迷いの末に放った、ダイナの最後の技――『レボリュームウェーブ』が、《ナハトヴァール》を……その周囲にある欠片ごと……次元の
その痛々しさから、目をそらしたいと思えども……目をそらしてはいけないのだけは、この戦いを見守るすべての人々が分かっていることだ。
人の『思い』――『願い』が、『欲望』が、『悪意』が、『憎しみ』が、『嫉妬』が――『心の闇』が、歪めてしまったものだからこそ……。
――――目をそらすわけには、いかないのだ。
だが、これ以上苦しめても……意味がない。
どこまで行っても……このままでは終わりがない……。
だから、『大人』でなくてはならないこともある。……〝大人〟であるからこそ、『子供』の心を抑え込み……〝子供〟の、〝子供たち〟の――心を守らなくてはならない。
『二人とも……離脱しなさい。〝アルカンシェル〟を、使うわ……』
「……、了解」
「……了解しました……」
返事を決めかねたが、これ以上の引き延ばしに伴う『意味』など……誰にもわかりはしなかった。
そして二人は……離脱する。
――ただ、目だけは……決してそらさないままで。
『〝アルカンシェル〟――バレル展開!』
『ファイアリングロックシステム――オープン』
キューブ上のキーシンリダーが、リンディの前に現れる……。それを見守る、スタッフ一同とプレシアとアリシア。
そしてリンディは、手のひら大の魔法陣を浮かべると……それをそのシリンダーの前に会わせ、ロックを解除する。
『〝アルカンシェル〟――――発射……ッ!』
リンディが、そう口にした瞬間……〝アルカンシェル〟が放たれ……《ナハトヴァール》は、今度こそ完全に――――ダイナの作り出した時空の狭間へ入り口部分へと押し込まれて、その中で……消滅したのだった…………。
心をかき乱すときは終わり、歓声を上げてもよかったのだろうけれども……。戦いの時は、ただ静かに過ぎ去っていき……シンシンと降る雪と、暗闇が晴れて……少々赤紫がかった、所謂『紫天の空』を浮かべる空だけが、事の終わりを『現実』だと告げていた。
――夜明けまで続いた、聖夜の戦いは……こうして、終わった。
そしてまた、皆が死に物狂いで守り抜いた〝平和〟が織り成す『日常』が……帰ってくる。
だがそこには、一つの奇跡と別れが伴って……
――――『悲しみ』を乗り越え、自分の足で歩き出す『強さ』も、二度と繰り返さないための『優しさ』も……もうすでに、君たちの中にあるのだから……。
* * * [別れ、そして約束 PROMISE.]
地上に帰って来た二人のウルトラマン。
そして、その後ろに佇むのは、光の女神の如き姿の――【カオスヘッダー・0】。
二人は――由宇とアスカは人間の姿に戻る。
だが、
「あれ……?」
「何だ……?」
二人が変身を解除しても、ウルトラマンたちは彼らの中へは――――戻らない。
「コス、モス……?」
――ユウ。すまない、私たちは……一度、別れなくてはならない。
「え……?」
驚く由宇。だが、アスカの方は、ただダイナとじっと互いを見つめ合っているだけだ。まるで、何かを確かめ……そして飲み込むかのように。
――――皆は、それをただ……静かに見守り続ける……。
由宇はコスモスに何故かと問う……。
その答えは、
――私たちが、この世界……この星で活動するためのエネルギーは、既に限界近くまで下がってしまった。だから、私たちは……一度
「そんな……! ……コスモス……」
――そんな顔をしないでくれ、ユウ。君は、既に私などとうに及ばないほどの、『真の勇者』となった……。
「まだ、慣れてないよ……! まだまだ、全然足りてないよ……! 僕は、未熟だ。半人前どころじゃないただの〝子供〟だ……」
コスモスは首を横に振る。
――君は、私にも想像もつかないほどの……本当の『愛』を持っている。一人の少女と、その家族を救い、いくつもの星を巡って救い、カオスヘッダーたちとの共存の可能性をも見せてくれた……。私も及ばない、『愛』を……君は見せてくれた。
「でも……それは! それは、コスモスがいたから……! 僕だけじゃ、何もできなかった。いつだって、どんな時だって……! 僕は誰かに支えられてきた。その支え合いの始まりを教えてくれたのは……『やさしさ』を教えてくれたのは……! 貴方だ……!!」
――ユウ……。
「貴方がいたから、皆がいたから……! 僕は、ここまで来れた! 本当の『優しさ』も、『強さ』も、『勇気』も知る事が出来た……! コスモス、行かないで……もっと、貴方と一緒に……皆と一緒に! 『本当の心』を、知っていきたい。そして、守っていきたい……。『悲しみ』や『辛さ』を感じている人たちを、ううん……人だけじゃない。もっとたくさんの、怪獣たちも魔導生物たちも……どんな星や次元の人とでも、『絆』を、繋げていきたい……!」
しかし、コスモスは再度首を横に振る。
――これからは、君たちが……自分たちの手で、紡ぎ、守り抜いていくのだ。たくさんの、数えきれないほどの『絆』と全ての『命』を……。
「コスモス……!」
由宇は、泣いていた。
「僕は、また貴方と飛びたい……空を、一緒に……」
――ユウ、君はもう……一人で、飛べる。それに、私だけが君と共に戦いっていたのではない……。君には、たくさんの仲間がいる。
由宇の背後にいる仲間たちを指すコスモス。
――何度倒れようと、君たちならば……いくらでも起き上がれる。傷ついている者がいれば、助けに行ける。この無限に広がる宇宙が、君たちの世界。どこまでも繋がっている、繋がりを紡いでいける、『一つの世界』だ……。
「……コスモス……。また、会えるよね……? きっと、きっと……会えるよね? もう一度、必ず……!」
コスモスは立ち上がり、由宇に蒼い輝石を託す。
それだけで、由宇にとっては……どんな言葉よりも確かで、大切な――『約束』に感じられた……。
由宇は涙を流しながらも、輝石を握り締め……笑みを浮かべた。
――……。
「なんとなく、そうなんじゃないかって……思ってた」
ダイナが何かを言っているわけではない。ただ、二人は顔を見合わせてアスカの方がぽつりぽつりと語り掛けている。
「色々……心配かけてたからさ、やっぱり不安だったよな……そうやって心配かけるくせに、いっつも無鉄砲で、無茶して、カッコつけて……そのくせ……その…………」
――……アスカ。お前は……目立ちたがり屋だが、〝いつも〟人一倍照れ屋だったな……。
「……、うん。そうだったよ……ずっとそうだ。それこそ、今だって……」
――でも、お前は……人一倍……仲間思いな子だ。誰かの為に傷つくことを恐れない、強い子だった……でも、〝それが〟不安でもあった……。
「……」
――それでも、もう私は心配などしていない。お前には、こんなにも頼もしい仲間や友人たちがついている。もう何が起こっても、きっと乗り越えられる。
「……それでもさ、一緒が……よかった……。できれば、もっと……一緒に居たかった……。〝もう会えない〟って……思ってたから…………! だから――」
――……アスカ……すまなかったな……あんなに早く、一人にしてしまって…………。でも、私たちがここで分かれても、またいつの日か……必ず巡り合うだろう。私は…………いつでもお前のことを見守っている。お前に危機が迫るその時、私はまた必ずお前の下に現れる……。
「…………」
――お前は……人であり、光である。お前が人であろうが、光であろうが、私はお前の事をずっと、ずっと……愛している。
「………………………………さん……………………」
――泣くな、アスカ……。また、会える。
そういってダイナは、アスカに完全に石のようになってしまった〝リーフラッシャー〟を託す。
――またいつか、それが輝きを取り戻したとき……お前と共に厄災に立ち向かうだろう。
「………………………ぉ……さん…………」
――アスカ……仲間を、友達を大切にな……。
「…………うん」
――また会おう……アスカ。
「…………またな――――――――――――――――――――――――――――父さん……」
アスカは、その言葉を噛み締める様に……嘗て亡くした人がそばにいたことを確かめる様に、そして……受けとったその『愛』を噛み締める様に、その名を……呼んだ。
そして、三つの光が……空へと飛び立つ。
憎しみも柵も、全てを変えて……『心の絆』で繋がっている、大切な友に……そして、大切な家族に向けて……二人は短く告げると、後は目一杯に手を振った。
「さようなら……さようなら! コスモス……ッ!!」
「じゃあな、また会おうぜ…………父さん……ッ!!」
こうして……二つの光はこの地球を去り、その『心』を学び、受け取り、育んだ子供たちは、自分たちの足で未来へと歩き出したのだった……。
コスモスとダイナとカオスヘッダーたちが飛び去っていた空に皆で手を振りながら、フェイトが由宇にこう尋ねた。
「もう……会えないのかな?」
「分からない……。でもきっとコスモスもダイナも、『夢』を持ち続けていれば……また会える。『夢』を持たなくちゃ、『奇跡』はきっと起こらないからね……」
と、由宇は答えた。
そう、『夢』を追いかけ続けていれば……きっと。
またいつの日か――――会える。
――それが……『希望』を信じることを忘れない限り、そうやって守り続ける限り……彼との『約束』が導いてくれる。
全ての命を大切にすること、誰かに対して『優しさ』を持つこと、『強さ』ばかりを当てにしないこと、それらを貫き通すための『勇気』を持つこと……そうやって『絆』を紡ぎ、『希望』を生み出していくこと……それが、蒼い輝石に込められた『真の勇者』の誓いであり……コスモスの残してくれた―――
――――『ウルトラの願い』だ…………。
* * * [これからへと進む者たち、未来への誓い]
次回、『明日へ Epilogue_of_A’s.』
いかがだったでしょうか?
今回で、A's編はほぼ完結といった感じです。
次回はA's編のエピローグとなりますが、そこで今回の話にもいくつか混ぜた伏線と言えば伏線らしきものを回収していき、第三部の前章に繋げていきたいと思っています。
それでは、よろしければまた次回にお会いしましょう。