無印が大体10話で、番外編と今回のエピローグを含めて全17話でやっとこさA's編が完結という事になります。
それにしても長かった……。ここまで時間がかかるとは正直思っていなかったので、完結までたどり着けるかという不安もありましたが、どうにかこうにか至ることができました。
(まぁ、他の小説にちょっと浮気してたことも長引いた原因の一つなので……自業自得ではありますが)
それはともかくとして……さて、今回はエピローグですが……勿論ここでの完全完結ではないです。
また性懲りもなくもっと長くなりそうなシリーズに手を出すという僕の無謀な挑戦への足掛かりの一端が、このエピローグでございます。
今回も結構オリ展開を含んでおりますので、その辺りはよろしくお願いします。
取り敢えず、今回はあくまでも『A's』のラストなので、これ以上はおいておくとして……それではA's編の最終回をどうぞ!
[序章 全てが終わった後で、人々が思う事 Epilogue_and_Recollection.]
聖夜の夜。
『闇』が砕け散った……後の街。
砕け散った『闇』が、まっさらな雪となったかのようにこの日の海鳴市には……雪が降り積もっていった……。
そんな雪の中、人々が想うのは――未来への希望か、これまでに対する哀愁か。
【第二部:2nd A’s ―Epilogue―】
* * * ユーノとなのは 『明日への約束』
雪の舞い散る冬の海鳴市。
町一面が白い化粧を施されたかのように、まっさらに降り積もった雪が街を静寂な……しかしそれでいて尚、人々の心を優しく包むようなそんな柔らかで絹衣のような雪の降り積もる中を歩く、二人の子供の姿が……あった。
ユーノと、なのは……つい先ほど、世界そのものに降りかかるような厄災から世界を守りぬくために戦った、小さな
そんな二人の間には、しーん……と静かだが、しかし穏やかで……どこか心地よい沈黙が流れていた。
「ユーノくん。ユーノくんは、これから……どうするの?」
「実は、管理局の人たちから今回のこともあってこれからも『無限書庫』で司書をしないか、って誘われてるんだ……」
「そうなんだ……」
「うん。それで、特に急ぎの目的もないから引き受けようと思ってるんだ。なのはたちも管理局に入るっていう話だから、ミッドチルダにいるよりは近いから皆とも会いやすいだろうからね」
「そっか……!」
その言葉に、嬉しそうな声を発するなのは。心なしか、彼女は頬に少し赤みを増していた。
それは……決してこの雪の寒さだけが原因ではないのだろう。
幼い二人は、互いに背中を預合い……大切な人たちと過ごす日常を繋いで来た、これまでの日々なかで生まれ、育まれてきたその『絆』と『想い』に名前を付ける日は、きっとまだ遠いのだろうけど……。
それでも二人の胸の内には、この先においても決して途切れる事の無い――確かなものが、
「なら……これからも、一緒――だよね?」
「うん。僕も、皆も……なのはの傍にいるよ、ずっと……ずっとね」
「えへへ……、嬉しいな」
はにかむ様に笑うなのはのその微笑みに、ユーノは魅せられ……彼女のほほえみは、彼の顔にも穏やかな微笑みを浮かばせ、彼女もまたそれ魅せられる。
互いに、魅せられる二人の歩みは……穏やかに一歩ずつ、雪の上に足跡を残しながら進んでいった。
しかし、しばらくしてなのはの家につき……二人はこの時間が、もう少しだけ続いてほしかったと思いつつも、別れを告げるしかない。
でも、その『お別れ』は……また明日にまみえようとする二人の小さな温かい『約束』の証だ……。
「それじゃあね、なのは……」
「うん、ユーノくん……」
二人は少しだけ見つめ合い……そして微笑み合い、
「なのは、お疲れさま……また、明日ね」
「うん、また明日ね……」
今一度、『約束』を交わす。
「「またね」」
手を振り合い、二人は別れる。
また会うために、幼い二人は……それぞれの道を、また少し歩き出す。
自分の道を歩き出しても、これまで紡いできた『心』は消えない。
まだこの気持ちには、明確な名前などないけれど……二人の道は、決して離れることなく……二人の間に繋がっている『絆』の下に交わり続けるのだった…………。
* * * ユウとフェイト 『互いに告げる気持ち』
雪降る街公園のベンチに座る二人の姿があった。
互いに寄り添い、背を預け……大分小降りになって来た雪を受けていた。
「そろそろ、行こうかフェイト……?」
「うん……。でも、もうちょっとだけ」
フェイトとよばれた金髪の少女は、少年に寄り添いながら甘える様にそういった。少年はそんな彼女の頭を優しく撫でる。
「もう、色々と……終わったんだよね」
「うん……。ひとまずは、ね」
「それでもだよ、ユウ……」
ユウ、と呼ばれた少年は、少女に――フェイトに「そうだね」と返した。
「ねぇ、フェイト」
「何……?」
「覚えてる? ここ」
「……うん」
「僕らが初めて会った日、ここに……来たよね」
「そう、だったね……」
「あの時フェイト、まだこの世界に慣れてなくてなんだかぎこちなかったよね」
「……仕方ないじゃない、だってこの世界に来たばっかりだったんだもん……」
「ははは、そうだったね」
「……いじわる」
「ゴメンゴメン」
拗ねた様に顔を背けるフェイトの頭を先ほどよりもじゃれる様に撫でる。
「むぅ……」
「あははは……」
苦笑しつつ、フェイトをなだめる彼は不意に手を止め……彼女の耳に顔を近づけ、こういった。
「これからも、ずっと……一緒にいようね」
「うん。皆とも、一緒に……ずっと」
「皆との穏やかな日々が、これからも続くように……」
願うは希望、皆の笑顔、そして作っていくのもは――大切な人たちとの、未来。
そうやって寄り添っていた二人だが、不意に公園の入り口の方から呼ぶ声が聞こえてきた。そちらを見てみると……そこには、フェイトの姉であるアリシアと、子犬フォームのアルフが二人を迎えにやって来たのが見えた。
由宇とフェイトは、迎えに来てくれた二人に返事をして……そちらの方へと歩いていく。
アリシアたちの方へと向かう途中で、由宇が二人には聞こえない声で……フェイトにだけ、不意にこう告げた。
これからも変わらない、永久に続いていく――『想い』を。
「ねぇ、フェイト……」
「……?」
「大好きだよ……フェイト」
「私も、大好きだよ……ユウ」
「「これからも、ずっと……いっしょだよ」」
これからを、歩むのは……自分たちの足で。
歩みは止めない。それが、希望を作るための第一歩だから。
互いを信じ、助け合い……。どんな時でも最後まであきらめない。
どんな時でも希望を信じ、未来を掴め――――光を信じて。
多くを語らずとも、深い『愛』の証が……二人の胸の奥に深く……どこまでも深く、刻み込まれていた。
――四つの影は……シンシンと降る粉雪の中を、それぞれの帰るべき場所へと歩んでいくのだった……。
* * * アスカとはやて 『守りたい想い』
病院の一室。
誰も、ここにはいない。既に暗いこの病院には、入院患者以外は寝ぼけ眼の当直さんしかいない。
ただ、二人の子供の姿だけがあった――。
「アスカ君……帰らんでえぇの?」
「今だけ……ダメか?」
「ううん、嬉しい……」
「そっか……」
――少女の横たわるベットの傍らで、寄り添うように頬杖を突くアスカと呼ばれた少年を除いては。
あの戦いの後、はやては初めて魔導師として活動したことや、急激に『リンカーコア』が成長、および酷使された為……管理局の医務室で検査を受けた後、再びこの病院に戻された。その際に、守護騎士達は事情聴取をするために本局へ残り、その代わりの護衛としてアスカが付いて来た……という訳である。
「はやて……」
「ん? なーに?」
「無事でよかった……。元気になって、本当によかった……!」
「おかげさんでなぁ……」
そう言いつつ、子供の様にすり寄る彼に自分も顔を近づけるはやてと呼ばれた少女。
そうして過ごす二人の言葉には、つい先日までの殺伐としたごたごたを戦い抜いたとは思えないほどにのんびりとした和やかな雰囲気を漂わせている。
「ホント……夢みたいや」
「?」
「こうして、私が生きとるんが……」
「夢なんかじゃ、ねぇよ……。はやてが、自分でつかみ取った結果だ」
「そうやねぇ……そうやとええんやけど」
「そうだよ、絶対にな」
「ふふふ、まぁたしかにアスカ君、助けに来てくれたもんなぁ〝君だけを守りたい〟ゆーて」
「ああ、そうだったな……。俺はあの時、君だけを守りたいって……そう思った――――この世界の、誰よりも」
「幸せ者やなぁ私は……。皆が守りたいゆーてくれるなんて」
「その中の筆頭は勿論俺だけどな」
「そやねー、ふふふ」
そう言って半ば筆頭宣言をするアスカ。それを嬉しく思いつつも、微笑ましく聞いているはやて。
なんだかその姿は、もはや夫婦の様であった。
「なぁはやて」
「んー?」
「俺、もう今はウルトラマンじゃねぇけど……これでも一応魔導士の端くれだったから、この先ずっと――はやてが嫌っていうまで、ずっとそばにいるから」
あー、でもはやてに嫌われてもそばに居ちゃうかもしんない、とアスカは言った。
「離れたら、生きてけない気がする」
「大げさなプロポーズやねぇ……。私ら、まだ子供なんよ?」
「別にいいさ、どうせ一緒だ。早いか遅いか、それだけさ」
「軽いなぁー……」
「言葉は重ねるだけが美学じゃない。薄くても重い言葉もあるのさ」
「多くを語らずとか、そんなん?」
「ああ」
「……亭主関白はお断りやけど?」
「そんな風に見えんの?」
「……見えへんなぁ」
「じゃあいいじゃん」
「むぅ……でももう少しくらい――」
「じゃあ、……これでいいか?」
「――へっ?」
そう言って、はやてのことを仰向けにして……アスカは何かをした。
薄暗い病室の中で、二つの影の頭の部分は少しだけ……重なった。
軽い音共に、二つの影は離れた。
「どう? 伝わったか、俺の想い」
「な、ななな……ッ!?」
はやての顔が、一気に真っ赤に染まる。だが、それ以上何も言えず……口をパクパクさせた後、結局――。
「……ぁぅ」
と言ってはやては黙り込んでしまう。
「……ははっ、伝わったみてぇじゃん?」
「ぅぅぅ……ばかぁー……!」
いきなりすぎや、と力なく真っ赤になってぽかぽかとアスカを叩きながら、怒ってます的な抗議の態度をされても……そこに宿る説得力など皆無だ。
だから、アスカは少し彼女をからかうようにして……この徐の耳元の顔をよせて、囁くように言った。
「可愛かったぜ……はやて」
「きゅぅ~……!?」
「……そんな真っ赤になっちまったら、これ以上いじめるのは可愛いそうだし……俺そろそろ行くかな――また明日な。それにしても……そんなテンパって皆の前行ったときにまでそうやって顔赤くしてたらなんていわれるかな?」
そういってニヤッと笑いかけて病室の扉に手を掛ける。はやてはもうすでに真っ赤で悶えてるのかそれとも怒っているのか、声にならない声を上げていた。
「~~ッ!」
そんな彼女を見て笑うアスカ。
「にししっ」
そう言って笑い声だけ残して出て行った彼の背をジト目で睨みつけながらも、彼女の顔には笑みが浮かんでおり……結局、そのあと一晩中真っ赤であったという……。
* * * [夜空を舞う風のこれから]
私は、消えるはずだった。
この魔導書が、『呪い』から解放されても……私がいる限り根底に残った《無限再生機構》と《自動防衛プログラム》の《暴走》が止まるわけではないから。
だから、私は消えるべきだと……そう思っていた。
だが、あの時――。
――『祝福の風』……貴女は消えるべきではない。
そういって……あの時、
――『ミラクル・リアライズ』……。
その光は、『私』を完全に〝元の状態〟に戻した……。
――これでもう二度と、『闇』に染まることもない。貴方の主と、騎士たちと共に……『これから』を、精一杯生きてほしい……。
「……有難う……」
――――そうして、私は消えなくても良くなった……。
主と。守護騎士の皆とのこれからを与えられた。
勿論、無罪で……何の柵もなく、とはいかない。
これからは、これまでの時の中で犯し続けてきた罪――積み重ね続けた『悲しみ』に対する贖罪をしていくことになるだろう。
だがそれでも、私にも……これからの未来が当てられたことに……胸が、いっぱいになった。
これから先も、我が身朽ち果てるまで……主と、守護騎士の皆と共に過ごす『日常』を、守り続けたい。
せっかく手に入れた、新しい居場所であるからこそ……。
―――――そしてその思いは、その後新たに生まれることになる彼女の〝妹〟にも受け継がれ、よりいっそう大切なものとなる。
光の戦士に対する『敬愛』と、仄かに香る……胸の内に灯ったあたたかな『想い』と共に。
――――皆と共に……『これから』の時の中を、精一杯生きていくのだ。
* * * [夜天の雲の下に集いし騎士たち]
『これから』に、繋がる『結果』……『未来』を得た。
長く、長く続いていた……混沌とした日々は終わりを告げ、和やかで安らかな日常が彼女らを出迎える。
これ以上ない結果だ。
だからこそ、これからも守り抜いていこう。
我らが心は、主ととともに……。
――――温かな日々が、ここから始まっていく……。
「……なぁ」
「どうした、ヴィータ?」
「本当に……終わったんだよな……?」
ヴィータの言いたいことは、他のヴォルケンリッターの面々にもわかっていた。
「ああ……」
「そうね……。これで、終わったのよね」
「…………そうだな」
「はやてと、これからも一緒にいられるんだよな……?」
「ああ……」
「だよな……!」
「あ、ヴィータちゃん。通路は走っちゃ……「あでっ!?」……やっぱり」
今ある目の前の現実を噛み締め、その幸せの喜びに少しはしゃいでしまったヴィータは転んでしまう。
「あらあら……すりむいちゃったわね」
「うぅ……。ゴメン、シャマル……」
「次からは気をつけてね?」
そうしている姿は、まるで姉妹か母娘の様であり……シャマルの母性がいっそう引き立っていた。
「平和、なのだな……」
「……ああ。平和、だ」
守護騎士たちの明日は、光が灯り……これまでも破滅の定めはすっかりと消えて、暖かな未来が広がっているのだった。
――――安らかな時の中で、騎士たちの『本当の生』が、始まっていくのだった……。
* * * [柵を越えた先で、彼らが感じる心]
『戦い』は、終わった。
そう実感できるようにまでなった。誰一人として、失うことなく……この『戦い』は終わりを告げた。
嘗て選ぼうとしていた『手段』では、決して得られなかった〝笑顔〟を……守り抜いて、戦いは終わらせた。
「……『奇跡』……か」
そう呟くのは、『時空管理局・提督』――いや、今回の案件で『提督』としての権限は剥奪され……今は引退を決めた、『ギル・グレアム』元・提督。
彼は、自身の使い魔である双子猫のリーゼアリア、ロッテの二人にそう呟いていた……。
「本当に。何も失うことなく、終わってくれた……」
「……だね。父様」
「いつまでもチビだと思ってたクロスケも……どっか女の子みたいなユーノも、なのはたちも、ウルトラマンの二人も……。そんな子供たちが、ねぇ……」
「そうね、ロッテ……」
「……進むことを恐れない、飽くなき未来への探求と渇望。『若さ』というのは……こういうものなんだろうか……?」
そういって天井を見つめるグレアム。
彼には、権限剥奪以外は、基本的に未遂だったため……これまでの『管理局』への貢献度と言った部分を含めて、大事になるほどの処分は下されていない。
そこには、多少なりとも〝組織〟としてのエゴは含まれているかもしれないが……はやて率いる『ヴォルケンリッター』の面々にも、それに習い、グレアムとの関わりから、表立って大事に罪に問われなかったのはこの椅子を失うこととは比べ物にならないほどの対価だった。
自分たちにこれからできることと言えば――はやてたちが、あの『戦い』に打ち勝った子供たちが……これから先に出会い、乗り越えるであろう『未来』に対して……支え、見守る事だけであり、彼ら彼女らの『これから』が明るく楽しいものになってほしいと……そう願うことだけだ。
「それにしても……あの少年と一緒にいたのは、やはりアスカだったのか……」
「? 父様、知ってたの? あの子の事」
「ああ。まぁ、彼の方は知らないだろうがね……。私が彼をしているのは……彼の父親が優れた提督だったからでもなく、伝説の男だったから――光の果てに消えた英雄だったことでもなく。ただ、彼が若かった頃……私がクライドと同じくらいに可愛がっていた教え子の一人だったから……というだけのことだからね」
グレアムはかつてを思い出すように目を閉じ、そういった。
「へー……でもその割には、あんまし聞いたことないけど……?」
「彼は、非常に才能に恵まれていた。私の教えなど、すぐに乗り越えてしまう程に……。だから、すぐに彼は自分の足で……先へ先へと、『より大きな何か』の為に飛んでいた……。それでも礼儀正しく、常に誰かを思うような情の深い男だった。だからこそ、私はあの事故も、そのあとにこの組織にはびこった悪評も、耐えがたかったが……それ以上に、この世界に彼の息子が入って来たと聞いたとき、支えられないのが残念でならなかった」
そして、アスカはそのあとで……ダイナと――光となった父と再会するが、その頃管理局では彼が死んだという話が流れていたため、グレアムは関われなかったことに、そしてまた何かを守れなかったことを悔やみ……『闇の書』を何が何でも止めようとした。
だが、その時に……汚く濁り切っていた『大人』の自分の目を晴らしたのは――『子供』たちで……それはどちらも、嘗ての教え子たちの息子たちだった……。
「……運命というのは、分からないものだね。アリア、ロッテ……」
「うん……だね」
「そうだね……」
――三人は、この先……『未来』を生きていく子供たちのその行く末に、幸多からん事を願うのだった。
* * * [母親たち、家族を見つめて Mothers.]
時空航行船『アースラ』艦長・リンディ・ハラオウン提督とその家族たちの住まう、『第九十七管理外世界・地球』のハラオウン&テスタロッサ家にて――。
「やっといつも通り、と言ったところかしらね……?」
「そうね……それにしても、良かったわね。守護騎士たちも魔力使用制限と所在地認証を付けるだけで留まれて……」
「……ええ。本当に、よかった……」
「……これで、すっきりとした気持ちでご主人への報告もできるわね」
「……知ってたの?」
「レティがね。この間教えてくれたわ、あなたのご主人の事と、近況報告のこと……」
そんな会話をしながら、クロノの母であるリンディとフェイトとアリシアの母親であるプレシアは、リビングにて子供たちが外に出たまままだ帰ってきていないので、その帰りを静かに待ち続ける……。
だが、先程の話題から、少し母親としての部分を外れて、妻としての会話がしばしの間展開される――。
「……そう、レティが」
「その時話を聞いただけだけれど――でも、なんとなく……気持ちは、分かるわ……。私も……似たようなものだから、ね……」
プレシアも、主人……アリシアの実の父とは、〝離婚〟している。まぁ、それがどうという事ではなく――状況は異なるだろうが……『失うこと』に関する気持ちは……知っているし、理解しているつもりだ。
「……ねぇ、こんなこと聞くのもあれだけど――あなたはご主人とどうして別れたの?」
「…………そうね。あれは、アリシアがまだ生きていて……二歳か三歳くらいの時。あの人、急に私たちに冷たくなった……でいいのかしら。とにかくなんだか酷く素っ気なくなって、そこから早々と――と言ったところかしら……」
プレシアはそういって感慨深そうに天井を見上げる。
「そう……なの」
リンディは少し俯くようにして、少し声の端を弱めて……そういった。
だが、
「――ただ」
「…………ただ?」
プレシアは、天井から目を放し……少し下を向くようにして、自分の中にあった疑念か何かのようなもやもやとした引っ掛かりを口にした。
そう、それは……『あの日』。
プレシアが夫と別れた、日の事だ。
「あの時……あの人は――」
何だか非常に焦っている様で、でもその焦り方が……愛人が出来たとか、家族が嫌になったとか、そういう類のものではないかのような様子であるようにプレシアには見えた。
でも、人の心とは……時と場合に応じて……変化し、壊れたりすることだってある。
でも……それでも。
何だか、そういうのとは……違う、気がした。
「……何が違うのか、それについては分からないんだけど……。何かが変な気がして……それが、少し引っかかっていて……」
「……ご主人は、何か言い残しては、行ったりしたの……?」
「……ええ」
確かそれは――。
『………………………………………………………………………………………………すまない』
それまで酷くそっけなかったのに……何故か、謝罪の言葉を最後に残していった。
その様子は、酷く切なく……やっとこさ、絞り出したかの様な、非常に弱々しいものだったけれど――。
「でもそれが……どこか心に引っかかっていてね……。だからかしら……どうしても、心の片隅に――あの人が消えないのは」
「…………そうなのね」
リンディのその言葉を最後に、二人の間には……しばしの静寂が漂う。
殺伐とした沈黙ではなく、どこか遠い過去に思いを馳せているかのような……そんな、どこか悲しく、しかしどこか優しいような――そんな、静寂。
しかし、そんな妻としての静寂は……過去に思いを馳せるとおのずと現れる、子供たちの影によって……段々と母親としての意識の方が表に浮かび上がり、段々と……また再び妻としての部分は、心の深淵に沈んでいった……。
「それにしても……子供の成長っていうのは、早いものね」
そう感慨深そうにリンディは呟く。
すると、プレシアもまたそれに対して頷き返すと……そうね、といった。
こうやって落ち着いた状態で待つことができるのは、女性――ひいては母親ならではの強さなのかもしれない。
「まだまだ小さいと思っていたあの子たちは、いつのまにかどんどん大きくなって……。私たち親のことなんて飛び越えて、先へ先へって進んで行っちゃうのよね……」
「……親元を離れていくのって、こういう気分なんでしょうね……」
「そうねぇー……まだ、子供だからそういうのとはちょっと違うかもしれないけど……。それでも、結構くるものよね……」
「私……アリシアの『死』を経験したときでさえ、こんな気持ちにはならなかった……。アリシアとフェイトが、今もこうして私のことを〝母親〟として慕ってくれることが……それまでに感じていた『幸せ』よりも、もっと強くなって……。どこまでも手放したくないって……思ってしまうの」
自分の子と一度は死に別れた彼女ですら――いや、きっと〝だからこそ〟……なのだろう。
一度失って、壊れた心を知っているからこそ……。幸せを、感じることを……それが少しずつ離れて行ってしまうことが、やはりどこか物悲しいのだろう。
だが。
だからこそ――。
「……それでも。本当に、良かった」
「ええ……。皆、無事だったんだものね……」
そう、だからこそ――〝家族〟が返って生きてくれたことを、何度でも再確認する。
これからも変わらない、『愛』の形を感じ取るように。そして、それをこれからも……紡ぎ、生み出していくように……。
それが、母としての愛であり……。今の子供たちの帰るべき場所を作り続けているかけがえのないものなのだからこそ……。
「これからも、よろしくお願いね……プレシア」
「ええ……そうね。リンディ……」
似た境遇を持つ、二人の〝母〟は……自分たちの子供たちの帰りを、これからもずっと待ち続けるのだろう。
〝母〟としての、『愛』と『強さ』で。
ずっと、ずっと――。
永久に変わらぬ、慈愛をもって……。
そして、彼女らの耳に『声』が、聞こえてくる。
『ただいま』
という、まだ今は……まだまだ危うくて……〝守るべき〟ものである――我が子らの声を。
そして、今の居場所である自分たちのすべきことを、二人は子供たちに告げる。
『おかえりなさい』、と。
『母の愛』――それは、きっと……何者にも及ぶことのできない『強さ』。
それこそ……ヒーローたちにだって、きっと……及ぶことは出来ないものだ。
永久に変わらぬ子を支える愛と、子を守りたいという気高い心を持ち合わせた……〝母親〟は、きっと……この宇宙の何者よりも、強くあり続ける。
母は強し、なのだ。
* * * [待つ者ら、信じる者ら Dear_Friends_and_Family.]
新しいことに、親友たちが出会っていたらしい。
何か、そう……〝不思議なこと〟に。
出会いの中で、たくさんの力とのぶつかり合いがあったらしい。
そうやって、大切な何かを守って帰って来た親友たちは、一回り大きくなって……強い意志の下で、成長してきたように見えた。
でも、それでも親友たちの本質が変わったわけでもない。
だからこそ、受け止めるのだ。
例えそれが、どんなことでも。
そして、間違った道に進もうとするなら、それを正してあげる。
悲しい事なら、話を聞こう。そして、慰めよう。
苦しい事なら、一緒に支えてあげよう。
力のあるなしとか、それが出来るか出来ないとかじゃない。
ただ、それに――自分が親友と共に向き合えるか否かというだけのことだ。
だから受け止めよう。
親友たちがこれまで戦ってきたというこれまでを、その懐の内に。
太陽のような満面の笑みと、月の如き慈愛の微笑で。
――離れてたって、『心』は……いつまでも、どこまでもつながっているから……。
――それくらい、ドーンと受け止めてやるわ! それが友達ってもんでしょうが!
* * *
なのはが帰宅した後の高町家にて――。
なのはは、家族に……明日、話したいことがあるといった。
それを聞いて、家族の面々は多くを語らずとも理解した。
この子は、この家の可愛い末っ子の少女であるなのはは……思いを成し遂げ、そしてそれをしっかりとやり通した上で、それについて語ろうと言っているのだと。
心配してはいた。
不安でもあった。
でもそれ以上に、信じてもいた。
だから、これから……どんなことがあろうと、それを受け止める覚悟は……十分にできている。
それがたとえ、どんなに突拍子もない事であっても……きっとそれが、なのはが決めた決意と覚悟が成したことの結果で、彼女なりの一つの結末を迎えた証なのだから。
一体、何があったのか……聞くのが少々楽しみでもある。
そこに有ったのは、冒険か、苦悩か、友情か、悲しみか、恋か、厄災か、あるいはそれら全てなのか……。
それも、明日までのお楽しみという訳だな、と――話はそこで終わり……何時も通りの光景が、高町家には戻って来た。
そうして彼らは明日を待つ。
――ただそこに、明日訪れるという友人たちと、リンディとフェイトの母たちのことを出迎える準備に、美味しいものでも作って待っていようという思いだけを残して……。
* * * [閑話 闇晴れた後で、これからを生きる者たちの道]
真実は告げられ、友情はよりいっそう深まり……どこまでも明日へと向かって彼らは歩み出した。
飽くなき『
手を取り合って、歩み出す。
誰もが笑顔を取り戻し、幸せの中を生きることができる様になった……。
『魔法』が運び、『光』と共に紡いだこの冒険は……ここで一度、幕を閉じることとなる。
大好きな人たちと、ともに生きる事のうれしさと……一生懸命に〝これから〟を生き抜いていく喜びを胸に、誰もがそれぞれの夢や目標に向かって歩みだした。
――――その一端を、ここに少しだけ記そう。
『光』たちが、遥かなる〝
『闇』と戦い抜き、明日を守り抜いた少年少女たちは、それぞれの道を全力で歩み続け……それぞれの夢への足掛かり積み上げ続けている……。
由宇、アスカともに管理局へと所属&復帰。
由宇もアスカも、ウルトラマンとの合体の影響か……『リンカーコア』が活性化しており、一応魔導士ランクを取得(アスカは再度取得)しての所属となった。
魔導士ランクは、由宇が総合B+ランク。アスカは元々Aだったのが、空戦A+ランクを取得。
管理局に所属後、由宇は『危険指定の生物・遺失物保護』の理念を掲げる部署を設立すべく奮闘中。
コスモスとの『約束』と自分自身の『夢』へと向けて、日々精進の毎日。ただ、普段は基本的にユーノが開拓中の『無限書庫』か、あるいは部隊の方での活動が主である。
ついでにいうなら、彼の発案で『ライドメカ』が管理局に受け入れられ始めたこともここに付け加えておこう。(従来にヘリや戦闘機あるいは次元航行船の改良案として、採用され始める)
現在は、試作一号機と試作二号機、そして試作三号機と四号機が開発されており……いつかはそれらを応用して、現在の時空航行船を越えた『巨大次元戦艦』を造り上げようという計画と、試作機……特に三号機と四号機にとりつけられる予定の〝光を推進力に変える〟というシステムも目下開発進行中である。(戦艦にも採用予定)
そんな流れではあるが、アスカはマイペースに部隊と由宇の手伝いを並行して行っている。
以前にもまして大暴れするので、型破りや無鉄砲さに磨きがかかっていないか? という皆の呟きが絶える日がない程である。
そんな二人を支えているのはユーノであり、『無限書庫』による遺失物や危険指定の生物に関する様々なデータを纏めるのに大きく貢献中。(最近はよくアリシアやアルフが手伝いに来ている)
それに加えて通常業務や、書庫整理も並行してやっているので……由宇とアスカには頼もしい親友であると同時に、なんとも頭の上がらない相手になりつつある――主にどちらかというとアスカの無茶が原因の九割。だが、ユーノは何時も大抵苦笑で許してくれる――だが、アスカが一番怖いのはその後に待っているはやてのお叱りタイムである……。(普段はほわほわとしている彼女だが、怒ると非常に怖い)
ユーノも、二人の手伝いとは別に管理局の情報部門を支えていることから、『無限書庫』の司書長代理として現在は活躍中。(完全に責任を追うにはユーノはまだ幼いため、せめて十五歳位まではと……先代の司書長が代理として責任や柵に押しつぶされることなく経験を積める様に計らってくれた)
クロノも、そんな彼らには負けておらず……最近はフェイトとアリシア、そしてプレシアやクロノたちとの時間を大切にすべく、本局の方に席を移動した母・リンディに変わって、『提督』としての役職に就くための勉強中。
オペレーターとして、順調に成長中のエイミィと共に、現在も『執務官』及び『提督候補生』としての経験を積んでいる。ゆくゆくは、『ライドメカ』関連での政策がすすめられている新型の提督に……と言ったところである。
ついでに言うと、『準・提督』ともいえる彼とその母であるリンディと、彼女と同じく『元・提督』であるグレアムの口添えも加わり、由宇の目標としている部署の設立へと向けての力添えも行っている。
そして、少年たちに負けないほどに少女たちも躍進を続けている。
なのは、フェイト、はやても共に管理局に所属。
嘗て起こった、『
なのはたち三人は、今は研修等を重ねながらそれぞれ『教導官』、『執務官』、『特別捜査官』とそれぞれの目標とする役職へと向けて勉強や経験を重ねている。
そんな中でもはやては、『管理局』に入った後に知り合ったカリムからの予言を聞き、由宇と同じように『管理局』に新たな部署を作り出そうと考えており、由宇やアスカ、ユーノ、クロノそして自分を含めた三人と『アースラ』スタッフやその他にも戦力として頼もしい仲間を募ろうと考えている。
普段はアスカらと共に任務に出向いており、豊富な自身の保有スキルを使って守護騎士の面々やアスカ、由宇と共に、主に遺失物を捜索する任務に『特別捜査官(暫定)』として就いている。
守護騎士の面々との信頼関係は現在でも抜群(末っ子の誕生のこともあって、さらに愛情度増加中)。
それに加えて、成長するごとに彼女はどんどんオカン度が増してきており、管理局の若オカンなどと呼ばれることもしばしば。
さらに言えば、すっかり恋人となったアスカと共にすごしているせいか……あるいは元来そういう性格だったのか、最近はムードメーカーな面も出てきており、別に腹黒いとかそういう訳ではないらしいが……かつてのあの薄幸美少女はどこに行ったの? と言った感じである。(ただ、怒らせるととにかく怖い:アスカ談)。
フェイトは、次元を渡り歩く由宇や家族であるクロノを支えられえるような仕事がいいと『執務官』試験へ向けて猛勉強中(ユーノやクロノに教わっており、その関係か彼女にくっついて来たアリシアが『無限書庫』を気に入り、アルフも『無限書庫』に興味を持ったこともあり、二人はフェイトの勉強を支える傍ら司書としての業務に参加中である)。
更に、その傍らでも、これまで通りなのはやはやてたち共に舞台にも参加して経験を積んでいる。
戦場に煌く雷光という二つ名が最近つき始めた。(本人は恥ずかしがっている)
由宇との仲は相変わらずで……いつも甘く、温かい雰囲気を醸し出しているという。
そして、なのははこれまで以上に人を助けたいという願いと、自身がこよなく愛するようになった空を飛び回る『夢』のもと、空戦魔導師として『教導官』を目指す。
色々な任務に参加し、実戦経験を積む傍らで……人を助ける事、そして支え導くことを学んでいる。
そんな彼女の優しく、気高い姿から……彼女のことを『管理局』の『エース・オブ・エース』と呼ぶものも出てきた。
だが、彼女もまだまだ幼いことに変わりはなく、たまにストレスがたまるようなことがあると……『無限書庫』や実家の『翠屋』でのんびりとすることもしばしばだという。
ユーノとの仲は……まだ進展途中、と言ったところ。
互いに今はまだ仕事が好き、と言った現状と……大事な友達の部分から互いに抜け出せていないらしい。(周囲はやきもきしているが、そんなふわふわとした二人も嫌いではないのか……ゆったりと時に身を任せよ、な状態である)
このように、つかみ取った平和な日々の中で……それぞれが夢へと向かい歩み続けている。
温かい時の中で、笑顔が絶えないこの世界がいつまでも続くように――と誰しもが願い続けている。
――――だが、まだ……『戦い』は、完全に終わったわけではなかった。
眠り続けていた『闇』が胎動を始め、そしていくつもの野望が交錯を始め……誰しもが望む争いごとのない明日を、その濁った野望が汚していく……。
だが――。
――今それを知るものは、まだこの世界において……誰一人として、いないのだった……。
* * * [全てが終わり、そして始まっていく Don’t_stop_story.]
――――『A’s_After.―― Before_Strikers.』
カオスヘッダーが去り、単体ではウルトラマン二人を相手にするのは不可能と判断したのか……この世界から去っていったスフィア。
それでようやく平和が戻ったと、誰しもがそう考えていた。
だが、しかし……。
――――戦いは、まだ終わっていなかった…………。
次元の壁すら超えて、散らばった……『闇の欠片』……。
それらは、偶然にも――それらを打ち破り、そして明日を掴んだ少年少女たちが夢をはせる世界へと散らばった……。
『…………ク…………ラ……イ……』
『……貴方も、知っているのね……』
――〝捨てられた〟……『痛み』を。
――――囁くようにして、告げられた言霊が……砕かれた『欠片』を導いていく……。
そして、『憎悪』に依存した感情が――〝意志〟が宿り始める……。
『焦燥』と、〝あの少女たち〟に刻まれた『痛み』が……破壊を司る意志を、生み出し『欠片』に宿らせていく。
――――砕かれた『闇の欠片』と、それらが……〝この『
そして、再び世界に『滅亡の時』が……訪れる。
そんな中で、叡智の中に眠っていた『予言』が示したのは、もう一つの――〝光〟の目覚めだった。
――――〝運命〟を継ぐ者は……誰か?
砕かれた闇の目覚めと、眠っていた光の目覚めが、……この『
―――― T I G A ――――
【第三部:3rd_Strikers.】
――『前章』―― 《Chapter_TIGA.》
――――始動。
いかがだったでしょうか?
今回はエピローグの筈なのに無印の方のエピローグの三倍近い文字数となってしまいました……。
まぁそれはともかく、やっとこさA's編完結です!
これでついに3rdへ――と行きたいところですが、空白期の部分に『前章』を挟むことを前々から決めていたので、そこを書いたうえでの3rd――【第三部】に入りたいと考えています。
今度の空白期は、【マルチバース編】の時よりも長くなると思いますが……とにかく頑張って、必ず【第三部】までつなげたいと思っておりますので……今後もどうぞよろしくお願いします。
さて、続いての展開からして……次回からのチャプターでは、一時的に由宇が主人公ではなくなります。
彼ら彼女らが夢を馳せている世界に眠っていたもう一つの『闇』。この世界におけるオリジナルとはところどころ異なる……別の『闇』の目覚めに伴う厄災が、次元世界を襲います。
これから先に迫りくる戦いに、果たして子供たちはどう立ち向かうのか……。
カオスヘッダーたちとはまた異なる『邪悪』との邂逅。それが、前章のスタートと言えます。
この前章は、これまでに描いて来たテーマもそうですが……『愛』や『希望』といった部分にももっと深く入り込めたならと思って書いていこうと思います。
かなりフラグを盛り込んだので、それらを消費しきれるかが……少し不安です……。
ですが、それでも頑張って書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
それではまた次回お会いしましょう。