魔法と光の使者   作:形右

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 では、このシリーズもいよいよ第三部『前章』の開始です。
 今度は前に間章としてやった【マルチバース編】より……それどころかこれまでやって来たシリーズよりもかなり長くなりそうです。ですが、それでも頑張って書いていきますので精々ご贔屓にお願いします。

 あと今回調子乗って挿絵描いてみましたが……色々拙いので、そこまで挿絵は気になさらないでいただければと思います。ですが、今後も描くならなるべくクオリティを上げられるよう努力します。

 あと書き添える事と言えば……皆さまのお好きなBGMでも流しながら読んでいただけたら、臨場感が増すのではないかということくらいでしょうか。

 ――さて、ではついに本編が始まります。

 そして、子供たちの成長を描く物語がついに始まります。子供たちに訪れ、そしてまた新たな出会いを重ね、絆を紡いでいく……そんな新しい物語が始まります。

 それでは、第三部『前章』――Chapter_TIGA.をどうぞ!



【第三部:STS・前章】――Chapter_TIGA.――
Chapter_TIGA. 第一話 『――光を継ぐもの――』


[序章 『闇』の目覚め、破滅の始まり Darkness.]

 

 

 

 あの戦いから、早数年の時が流れ……世界を再び平和が包み込む。

 そんな穏やかな『日常』の中で、誰もが自分たちの目指す『夢』や『目標』に向かい……『未来』へと歩み続けていた。

 誰しもが、そんな日々が永遠に続くことを疑わない。

 

 だが。

 そんな日々をあざ笑うかのように……『闇』の使者たちは……それらを壊さんとして、その目覚めを遂げる。

『闇』の胎動が始まり、再びこの世界に『破滅』をもたらすべく……新たな目覚めを遂げる。

 そして、その撃ち砕かれた闇の破片……『欠片』は、その受けた痛みを経て……自らの〝意志〟として昇華し、『人格』までも生じさせるに至る。

 

 

 そしてその〝意志〟を持った『闇の欠片』は……眠っていたもの、暗黒の〝闇〟と出会うことで……世界を再び、『破滅の時』へと導いていく――――。

 

 

 人々に、再び『絶望の闇』が……迫りくる。

 

 

 

 

 

 

 * * * [二年後、崩れゆく平穏 Bebinning_Lost_Shine_and_Bolood_Sky.]

 

 

 

『第一管理世界・ミッドチルダ』――。

 この世界には、幾重にも重なる次元世界の司法組織である『時空管理局』の本局がある。

 首都・クラナガンには地上本部が、次元の海には次元航行部隊の本局が存在し……それぞれ、『(おか)』、『海』と呼ばれている。

 その『海』の方には、管理局全体が誇る問う巨大データベース――『無限書庫』がある。

 ここは二年前までは単なる『物置』に等しい状態で包囲されていたが、二年前に『第九十七管理外世界・地球』で起こった『闇の書』事件の際……『JS《ジュエルシード》事件』の件で偶々その世界に関わりを持ち滞在していた一人の少年の手によって、がらりとその全貌を変えた。

 

 その少年の名は、ユーノ・スクライア。

 

 現在十一歳。『無限書庫司書長代理』を務める少年である。

 

 

『すまんな、ユーノ。整理の方もまだ忙しいだろうに……』

「ううん、大丈夫。忙しいけど、でもそれと同じくらい楽しいよ。でもクロノ、人員の増強と依頼をもう少し減らす件の方は、流石にどうにかしてよ?」

『……善処する』

 そんな彼と画面(モニター)越しに会話する黒髪の少年の名は、クロノ・ハラオウン。

 現在、次元航行船の『提督』職につくために勉強中である『執務官』の役職をしている少年である。

 彼はかつて母・リンディが『提督』を務めていた『アースラ』付きの『執務官』だったが、母が提督職を退いたのを機に次期提督候補としての勉強にいそしんでいる。ちなみにそんな彼の補助を務めるのはエイミィ・リミエッタ通信指令補佐であり、最近彼女といい感じになっていると彼の妹分二人が証言していた。

 まぁ、それはともかくとして。

『それにしても……随分と整理が進んだな。たった二年でこれだ……あの時君に期待していたのは間違いじゃなかったようだな』

「それはどうも。でも、本当に人員が少ないから依頼の方も整理の方もなかなか進まないんだよね……。検索魔法で依頼の方はどうにか乗り切ってるけど、整理の方は終わるのは何時になる事やら…………」

『すまない。なるべく早急に解決できるよう努める』

 そういって二人はしばし談笑をしている。

 ここ二年で、すっかり穏やかになった(でも時々は昔の様にケンカする)悪友兼親友の二人は、いくつかの近況を報告し会った後で通威信を切り、お互いの職務に戻っていく。

 そして、そのしばらく後。

 ユーノは最近よく手伝いに来てくれるアリシアやアルフたちが来るまで、少しだけ整理・発掘の作業を進めていた。

『書庫』なのに発掘、と思うかもしれないが……ここにはかつての王朝の白の書庫そのものが丸々収まっていた事例もあったくらいなので、たまにどこかの世界の宝物庫兼書庫やそういった感じに伴う形で出土品のような形で過去の品々やたまに危険指定さえ受けそうなほどの古代遺産(ロストロギア)級のものまで様々出てくるのである。

 そしてそれは――。

「??? なんだろう、これ……?」

 そんな時に起こった――いや、〝出会った〟のだった……。

 

 ユーノが見つけたのは、古めかしい金属製の地球でいうところの『駒』を逆さにひっくり返したような形のもので、それが何かと聞かれると……表現に困るような、何とも奇妙な形をしていた。

 ユーノはその不思議な物体をしばらく眺めていたが、不意にその物体のユーノが抱えていた方向とは反対側の部分が窓のように開き、映写機の様にして空中に一人の少女を映し出した。

 なので、ユーノは無重力の中にそれを置き、映し出された映像を少し見てみようかと思ったのだが……。

 

『★※&!%*〇▽◆?』

 

 しかし、その少女の口から発せられるのは、なんとも奇妙というか言語の艇を成していないような気さえする『言葉』だった。

 ユーノが頭を抱えていると、そこへアリシアとアルフがやってきてユーノが見ているそのホログラムの少女に付いて尋ねてきた。

「ユーノそれって……?」

「さっき見つけたこの変な置物が映写機みたいになってて……でもなんだか変わった言語でよく聞き取れないから……今から翻訳魔法をかけてみようとしてたとこだったんだ」

「そんな訳の分かんない言語の翻訳なんて……できるのかい?」

 アルフがそう聞くが、ユーノはどうやら心あたりがあるようだ。

「うん。前に一度……これとよく似たのを聞いたことがあってね。だから多分、既存の翻訳魔法でもきっと大丈夫」

 そう、前に聞いたことのあるのと似ている気はする。

 ジュエルシードを探しに行くよりずっと前。両親のいなかったユーノを育ててくれた育ての祖父であるレドシックおじいちゃんがこれとよく似た支離滅裂に聞こえる古代言語を教えてくれたことがある。

「前にこれと似たのを教えてくれたときにおじいちゃんが言ってたかぎりでは、確か三千万年前くらいのもの……らしいけど」

「三千万年~? ンな馬鹿な……」

「まぁ、誇張気味な部分もあるかもしれないけど……それでも相当に前の言語なのは間違いないと思うよ」

「ふーん……でもなんでそんな言語をユーノのおじいちゃんが知ってるの?」

「詳しく聞いたことはないけど……これを聞いたとき何か言ってた気がするけど、二、三歳くらいの時のことだから……」

「そうなんだ」

 アリシアはとりあえずそれで納得はしたらしいが、ユーノは逆にそういえばなんであの時そんなことを聞いたんだっけ……? と、かえって疑問が膨らんでしまい……今度里の方に直接帰ってみるか、あるいは通信なりでおじいちゃんに聞いておこうと決めた。

「まぁ、とりあえず翻訳してみなよ」

「うん」

 アルフにいわれて改めて翻訳の方をしてみる。

 すると、先ほどまでとは少しずつではあるが……ユーノたちの普段使っている言語に近い『言葉』に変わっていく。

 

『くぁwせtdrftgyふじこlppぉきじゅhygtfrですぁ』

 

「もうちょっとかな……少し調整して……」

 再び調整し、今度こそはっきりと聞き取れるくらいまでに翻訳された。

 

 

【挿絵表示】

 

 

『――――私は、メティス。次元の叡智を守る者……。この次元(せかい)に、……再び厄災が訪れようとしています……。眠っていた「闇」が、この世界に再び目覚めようとしているのです。この世界に生きる我らが末裔たちよ、貴方たちがこの「叡智の海」から〝カプセル〟を見つけたという事は、滅びの時が迫りつつあることの前兆です……この世界に、今再び「闇」が訪れ、この世界は暗闇に染まる。その始まりとして、空を裂く翼・メルバと大地揺るがし剛腕・ゴルザが姿を現します。この世界を、ひいては次元宇宙の果ての平和を守るため……光を継ぐ者よ、巨人を蘇らせるのです。巨人を蘇らせる方法は――――』

 そこまで言うと急に、ざざざっ! とノイズが走り、それ以上何も告げることなく窓が閉じて映像が終わってしまった。

 方法も何も告げずに、ただ『厄災』とやらの〝予言〟を残していったその少女。

 こういう『悪戯』らしき発掘品はよくある。この前も古代文明の残した眉唾物の文献を見つけたりもした。なんでも、新暦六十六年の三月にこの世界が滅びる――と言ったもので、現在新暦六十九年。そんなことは微塵もなかったのは明白、という感じに色々とハズレや嘘の予言が入ったものは、よく出てくる。

 だから、この『タイムカプセル』に分類されるのであろうこれに関しても、一応丁重には扱うものの……そこまで信じるつもりは毛頭ない……つもりだったのだが、何故が妙に、その予言を告げた少女の姿は……ユーノの中に暫く残り続けたのだった。

 少女のことだけでなく、彼女が口にした――〝光〟と〝巨人〟という言葉についても……。

 

 だからだろうか?

 それから数日たったある日。ユーノがいつものように依頼をよこしてきたクロノに、発掘したこの〝予言〟のことについて話していたのは……。

「――という訳なんだ」

『予言、か……。僕はまじないごとの類はあまり信じないのだがな……』

「まぁ、僕も眉唾物だとは思うけど……ただ、なんだか引っかかってね」

『光と、……巨人、か』

「うん。まさか、三千万年も前にいたとは思わないけど……」

『由宇にでも聞いてみたいところだが……生憎と演習訓練に出ている、と』

「今開発中のライドメカ一号機の試運転もかねて、ということらしいね。アスカも一緒に言ってるみたいだし」

『僕としては、管理局の戦力が増えることはやぶさかではない……とは思うが、こんな時だとそちらよりもこちらを聞きたいと考えてしまうよ』

「ふふふ、確かに。それは僕も思ったよ」

『そうか』

 そして二人は少し笑いあうと、クロノは一つ思い出したようにユーノに言った。

『そうだユーノ。この前、ミッドの西北部エリアと南東部エリア、そして北東部エリアで妙な反応があったという話を聞いているか?』

「ああ、うん。聞いてる」

『北東部エリアについて、あそこはまだ未開拓の遺跡エリアだから専門の人間に調査を依頼しようと思っていてな……そこへ調査に行ってくれないか?』

「未開拓地域……か」

 それを聞き、ユーノは〝予言〟のことよりもそちらの方から発せれる超古代の香りにすっかり興味を奪われてしまった。

『チーム編成の方は、君が引き受けてくれるなら好きにしてくれて構わないという話だ。エネルギーの出所と、遺跡についてのデータを取ってきてほしいというのが今回の依頼だ。遺跡メインの依頼ではないが……どうだ、言ってくれるか?』

「……うん、行かせてもらおうかな。久々に〝スクライア〟の血が騒ぐ感じだ」

『そうか、ならよろしく頼む。だが、一応用心はしておくんだぞ』

「了解。でも、そんな無茶は……」

『無論普通はな。だが、君の場合は、前科があるからな……』

「うっ……」

 そういわれると弱い。確かに、ユーノには非常に無茶をやらかした前科が存在する。

『ジュエルシード』の回収――管理局に依頼していたことながら、幼い少年特有の正義感と年不相応の責任感の強さが災いし、ユーノはその古代遺産(ロストロギア)認定の『ジュエルシード』の散らばった、『第九十七管理外世界・地球』へと赴いた、というものである。

 だが、結果として……偶々と言えば聞こえはいいが……偶然生じた現地での連戦と魔力不適合により、大ダメージを受け、一時戦闘不能に陥ってしまう。

 それを受け、現地の少女・高町なのはに手を貸してもらい回復に努め、彼女と共に回収に専念しようとしていたときに、そこから始まる『JS(ジュエルシード)事件』に巻きこまれていった――というものである。

『違法渡航寸前の異世界渡航に、現地での回収作業の無断先行。そして挙句の果てには現地力者やら危険物を巡っての対立やら……君は色々と無茶をしやすい気質なのはいう間でもないだろう?』

 そこまで言われるともうユーノには反論の余地はない。

 なのはに救いを求め、管理外世界の少女に『魔法』を伝えたり……危険にさらしたりしてしまったのは紛れもない事実だと、ユーノは今でも深い自責の念を抱いている。

 あの時の自分がもう少し強ければ、魔力不適合が起こらなければ、いや、そもそも『ジュエルシード』なんて発掘しなければ……など、その自己嫌悪をかれは今でもたまに感じることもあるという。

 だが、彼は少しばかり自分を卑下しすぎる。

 

 それは何故か?

 

 彼こそが……この物語のそもそもの『始まり』だったのだからこそ、である。

 彼の見つけた『ジュエルシード』が、何もかもの始まりだと……それが明らかであるがゆえに、その思いは消えない。

 

 その物語のなかで、いくつもの絆を紡がれ……いくつもの命が巡り、いくつもの涙や苦しみが流れ心をかき乱したけれど……。でもそこで、その紡いだ『絆』と共に誰しもが戦ったからこそ――全ては上手く行ったのだと当事者たちは今でも口にする。

 

 彼がいなければ、何も始まりはしなかった。

 

 いくつかの災いの種を見つけたのは彼だが、それが育ち……いつしか幸せの花に変わったのも、彼がいたからこそ、であると――それを、誰審が知っている。

 

 ――――彼がいなければ、何も始まりはしなかった、ということを。

 

 いくつかの災いの種を見つけたのは、確かに彼だ。たが、それらの種が〝様々な形〟で育ち……いつしかそれが幸せの花に変わったのも、彼がいたからこそだ。

 そうとは言っても、本人がそれを未だ受け入れがたくしているのだからこの話を今長々と語ったところであまり意味がないといえば、それまでなのだが……。

 

 それはともかくとして、その『調査』にユーノが出向いてくれるのならそれに越したことはないとクロノはそれ以上ユーノの悪癖については語らないことにした。

『まぁ……それに気をつけてくれさえすればいいさ。じゃあ頼んだぞ』

「うん。……あ、後この――えっと〝タイムカプセル〟の分類、かな? とにかく……これの材質やら翻訳の続きを技術部の方の手も貸してもらいたいんだけど、いいかな?」

『ああ、そういう事なら問題ない。これから「調査」に出向いてくれる関係もあるからね、それくらいなら進めて置けるように話を通しておく。それかこちらに送ってくれれば出しておこう』

「あ、じゃあ頼むよ。じゃあ僕の方も早速調査の準備しとかないとね……早い方がいいんだろう?」

『まあ、そうだな。最近は変動や災害といったものはこのミッドでは少なくはなって来たが、全体で見ればまだまだ多いからね。早いに越したことはないかな』

「じゃあ、チーム編成を――って言っても、別に発掘メインじゃないから精々七~八人……いや、大体五人もいれば十分かな。確か僕の出向く北東部以外にも二か所あるんだよね? その妙な反応があったっていうエリア」

『ああ。幸い、その二か所に関しては平野と島……どちらも調査済みのエリアだからな。それなりの人数をそろえれば十分対策できることから、できれば頭数はこちらに欲しいというのが本音だな。こちらは調査というより偵察気味の任務だからな……その周囲一帯をチームで見渡す作業を手早く終えれば君の方にも人を回せるだろうからな』

 普通逆ではないか、と思われそうだが……実際のところ、未開拓のエリアを手早く『調査』するなど普通無理である。寧ろ頭数が多いと統率者の目が行き届かなくなり返って危険である。

 まして急な依頼だ。

 ユーノの了承をとれただけでもかなり幸運な方だというのに、統率者もいないのに無茶な調査――無論ユーノの力が不足して言うという訳ではないが、それでも広い地域を調査するうえで統率者が一人というのはかなり無理があるのは当然。故に、先に手早く調査できそうな方を先に終えられれば、その間にもう何人かのユーノに次ぐ『専門家』達の協力の了承を得るための時間と人材の両方を一挙に手に入れられる。

 そして、ユーノ自身の負担に関しても、調査・偵察のエリアが残り一か所となれば負担も相当に減る。『無限書庫』にも活動していてもらわないと最近情報の収集と整理・伝達・調査が迅速になり、それに依存しだしている『管理局』の流れを侵すこともない。

 それを理解してうえでの二人の調査計画である。

「あ、クロノ。後で人材を増やすなら、僕の方でも何人か監督者の心当たりをあたってもいいかな? 一族の方に適任な人が何人かいるんだけど……」

『そんな当てがあるならこちらとしては是非とも協力を願いたい。無論〝依頼〟形式だから当然報酬は出るとだけは伝えておいてくれ』

「うん。了解」

 そんなやり取りの後、ユーノはクロノとの通信を終えた後で先ほどまで見ていた〝タイムカプセル〟をクロノの下へ送り、自分がいない間の鑑定に回してもらう手筈を付け……早速自分も未開拓エリアに出向く準備をする。

 数日が仮になるのは明白なので、衣類等の生活用具は取り寄せることが可能なようにして置き、携帯食料や水、あるいは応急処置用の薬品などは出来るだけコンパクトにまとめて常に身に着けていられるようにはしておく。

 こんなものだろうかと思っていると、誰かからの通信の着信を告げるウィンドウが開く。

 そこには、友人の名が記されていた。

「もしもし、ユウ?」

『あ、ユーノ。良かった、起きてたんだね。そっちはもう夜になるところだからちょっと不安はあったけど……今、大丈夫?』

「うん。今日は仕事を切り上げて、クロノからの検索とは別の依頼の準備をしてたくらいだったから、特に忙しいとかはないよ」

 それを聞き、由宇はホッとしたようにして話を続ける。

 アスカやクロノも含めて何かと女性率が高い友人のグループにおいて、ユーノと由宇、アスカはよく通信や直接会ったりして話していることがよくある。

 だが、今日は彼の恋人……まだ幼いが故に初々しい……であるフェイトや、アスカと最近熟年夫婦の領域に達しつつあるはやても画面の後ろにいた。どうやら例の『ライドメカ』の試運転の後らしいが……。

『そっか、ならよかった。こっちはさっきまで「ライドメカ」の試運転やって、それでクロノからの依頼を聞いた後だよ』

「あれ? ユウたちもだったの?」

『うん。とはいっても僕らは残念ながらユーノとは別口の方だけどね……。にしてもクロノもいくらはやてやフェイトが広域と高速系だからって、僕ら二人も一号の「ウィング」と二号の「サンダーAct_1」の試運転がてら広域に当たれ……なんてさ。第一、本来アスカが担当の三号機と四号機の「スノー」と「イーグル」はまだ目処もたってないのに』

「まぁ、仕様が仕様だからね……」

 そう、三号と四号機には例の〝光を推進力にする〟という動力を搭載しようという計画が進められている。なので、まだ実用の段階ではないのだ。

『ていうか、ユーノもさー時間余ったらこっち来てほしいよ。堅実なタイプのパイロット少なくて……』

 実は、本格実装の前に作られた仮想型シミュレート装置でテストしたところ、ユーノはアスカとクロノ、由宇と同等以上の飛行をして見せたことがあり、とりわけ一号機の可変飛行の成績は随一であった。

「堅実、か……。確かにアスカとユウは割と飛び方に関しては無茶だよね」

『うっ……』

「この前Act_4の実験中にアクロバットやったって話、本局にまで届いてたよ?」

『……バレてる……』

 これでいて、結構飛び方に関してはハチャメチャなのが由宇という子である。

「はは、でもまぁいいんじゃない? 楽しむのも大事だよ」

『うぅ……』

 そんなことを話しながら、二人は談笑していた。そんな時……ユーノはふと、あの〝タイムカプセル〟のことを思い出し、その『予言』のことを由宇に話した。

「ねぇ由宇……『ゴルザ』と『メルバ』って、知ってる……?」

『? ユーノ、いつの間に〝ウルトラマンティガ〟見たの?』

「……ティガ…………?」

『? そうじゃないの?』

「いや、そうじゃなくて……」

 由宇に、『予言』のことを話す。

『……メティス? でもあの話だと、ティガの存在を伝えに来たのは確か〝ユザレ〟だった筈だけど…………まさか、アスカと同じ、もう一つの物語が……?』

「……この世界にも、ウルトラマンが……?」

『……かもしれない』

「そっか……じゃあ今度の遺跡探索は、面白くなるかもしれないなぁ……」

『……ユーノらしいね。でも、無茶は駄目だよ? もし、予言が本当だったら…………僕の世界にあったティガと同じことが、起こるかもしれない。だから、気をつけてね?』

「うん。ありがとう……」

 そう言いあった後、二人はまたいくつか言葉を交わして……通信を切った。

 そのあと、ユーノは再び準備を続けて……大体の物を揃え終わると、ふぅ……と一息つく。

 すると、彼の寮の部屋のチャイムが鳴った。

「? 誰だろ……」

 ドアを開けてみると……そこには。

「ユーノくん!」

「なのは! 急にどうしたの?」

「えっとね? さっきヴィータちゃんたちと教導を受けてたら、クロノ君から私たちに西北部エリアの偵察依頼が来てね? それで今、例の『ライドメカ』の調整の方に言ってるフェイトちゃんたちにも南東部の方を偵察する依頼を出して、ユーノ君が未開拓エリアのある北東部を調査するって聞いたから……だから、ユーノ君は先に出るっていうから、その……会いに来ちゃった」

 えへへ、とはにかむ様に笑うなのはにユーノも微笑み……有難う、と返す。

「だから、そのね? 依頼が終わったら、どこか遊びに行かない?」

「うん、一緒に行こう。皆も一緒に」

「……うん!」

 そんな風に言葉を交わし、二人は……一旦別れる。

 二年前のあの雪の夜のように……再び、何度でも会いまみえるために。また二人は、小さな『約束』を交わした。

 

 だが、その数日後――――ユーノ・スクライアは、遺跡で行方不明となる。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「眉唾物――――だと、僕も思っていたんだがな……」

 クロノはそうつぶやきながら、ユーノから送られた例のタイムカプセルを睨みつけるようにして見る。

 

 ――事の起こりは、ここ二日ばかりの間に立て続けに起こった『悲劇』二つが深く関係している。

 

 まず初めに起こったのは、遺跡調査中に突然起こった――ユーノの行方不明事件。

 最初にこれを聞いた彼の友人一同は、何が起こったのか…………理解することができなかった。

『調査』自体は、滞りなく進んでいたのだ。この調子なら、三日後に合流する偵察部隊の面々の力を借りれば、すぐに終わるだろう……と、誰しもがそう思っていた。

 だが、その時。

 ユーノが担当したエリア、そこで不思議なことが起こった。

 重症、軽症といった差異は有れども……ユーノ以外は一応全員帰還した。

 負傷しながらも、帰還した隊員の証言によると、その時遺跡で起こったことは大体こういう事らしい。

 

 最初のきっかけは、些細な事だったという。

 部隊の何人かが、いずれも大切な人や何かしらの因縁のある人物の声を聴いたのだという。しかし、そんな風に各々が思う〝誰か〟がこんなところにいるはずがないと、初めは空耳ぐらいの認識で受け流された。

 だが、それだけでは終わらなかった……。

 

 ――突如、そのそれぞれの思う〝誰か〟がはっきりとした実像を造りあげ……〝実際に隊員たちの目の前に現れた〟のだ。

 

 その事件当時、ユーノの傍にいた隊員はユーノが「……なのは?」と彼の幼馴染である「高町なのは」の名を呼んでいたのを目撃している。

 そして、その場に現れたその者たち――まるで幻影のごとく現れたそれらは、その場にいた者たちの心を写し取って表れ、その者たちの動揺を誘っているかのようにして暴れ出した。いくつもの閃光が飛び交い、その場はパニックとなった。

 無論、冷静でいようとは誰しもが思っただろう。しかし、その場に突然現れた……その場にいた者たちは、未だにそれらの出来事を信じられていないが……少なからず自分たちの心をかき乱すような〝誰か〟の姿をしたその幻影たちを前にして、しかも前触れもなく唐突に巻き起こったその事態に直面したうえで冷静さを保つことは……出来るはずもなかった。

 

 何せ、この事態の発端からして原因不明なのだ。何をどうすれば乗り切れるかなど、分かるわけもない。

 ――何が起こったかも分からないのに、どういう対応を取るべきか?

 それは、いかに『魔法』を扱う管理世界の――まして『時空管理局』の職員であったとしても……『人間』である彼らに、はっきりと分かるような事柄ではなかった……。

 

 

 その結果として、遺跡調査隊は完全に壊滅に等しい状態にまで追い詰められ……責任者としてのユーノの意地……あるいは最後の足掻きとでも言わんばかりの広域結果と転送魔法のおかげで、隊員たちはどうにか帰還することができた。

 

 

 

 しかし、同時に――このとき、翡翠の光が失われてしまった。

 

 

 

 

 

 

 ――――しかし、それだけで悪夢は終わりはしなかった……。

 

 

 

 ユーノの消息不明を聞き、彼と同様にクロノからの依頼により、『偵察』の任務に就いていた彼の友人達は著しくモチベーションを下げ、目に見えて落ち込んでしまっていた。

 特に、なのははそれが顕著で……元々ユーノには劣るにせよ、割と無茶を平気でやらかし、オーバーワークを重ねることさえも厭わない彼女はユーノの消息不明聞き今まで押さえ込んでいたものが表へと流れ出してしまった……。

 

 それはほんの僅かな歪み、そのほんの僅かなズレが……ささいなものと呼んで差し支えない程度であるはずのそれが……彼女がユーノから受け取った『翼』を――いとも容易くへし折って彼女を冷たい雪の上に叩き付けたのだった…………。

 

 なのはとヴィータのいた部隊を襲ったのは、ユーノたちの部隊を襲ったのと同じ現象であった。

 

 とはいえ、此方はバリバリの戦闘特化型の部隊。どうにか体制を立て直そうと奮闘し、実際にそれが成されようとしていたそのとき――それは起こった。

 

 ヴィータとともに訓練に出ていたなのはは、この事態が起こったとき……彼女に溜まった『疲労』はピークに達していた。

 しかしそれでも、彼女は自分を追い込むことをやめようとはせず……皆を守るために、決して戦うことをやめようはしなかった。

 だが、まるでそんな彼女の不調と意志を……〝英雄気質〟とでも呼ぶべきそれらを……感じ取り、かつ知っていったかのように……図ったかのようなタイミングで、彼女の目の前に現れ、闇に潜む影のようにして彼女の背後に回った――――もう一人の〝彼女〟の手により――。

 

『…………消えてもらいます。〝私〟は二人も要りませんし……あの時の痛みを、返さなければなりませんからね…………』

 

 そんな憎悪を伴い、放たれた……その鮮血のごとく赤い閃光が――

 

「なのはァァァ――――ッッッ!!!???」

 

「う……ぁ……か……はっ…………!!!?!?」

 

 ――魔導師の命にして、力の根源たる『リンカーコア』を…………撃ち抜いた……。

 

 

 

 

 

 奇しくも――その時なのはの『リンカーコア』を撃ち抜いた攻撃は…………。

 

 

 

 

 

 ――いつも翡翠の少年が守っていた……彼女がいつも彼に預けていた――『背中側』から放たれたものだった…………。

 

 

 

 

(…………ゆぅ、…の…………く、ん)

 

 

 

 

 ――墜ちる寸前……。彼女は、何時も背中を支えて……時には前に立ち、自分を導いてくれた翡翠の道標が今……彼女の元にいない事を、改めて思い知ったのだった……。

 

 

 

 

 

 

(…………背中が……冷たいよ…………)

 

 

 

 

 

 

 空を翔る、気高く折れる事の無い強さを持った桜色の輝きが…………地に墜ちた。

 

 

 

 ――――全てが、壊れてしまった。失われてしまった。

 

 

 

 ――友人達は嘆き、悲しみ……二人を襲った運命を呪った。

 

 

 

 だが、まだ終わっていない。まだ、始まってすらいないのだから。

 

 

 

 ――――二人が、このまま消え去る筈は…………ない……。

 

 誰しもが、……そう信じ、願っているのだから。

 

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 桜色の輝きが失われそうになったとき、地の底で…………失われたはずの光が、この世界で目覚めを遂げる。

 

 それは、偶々だったのだろうか。それとも、『運命』という奴なのだろうか。

 

 それがどちらかなのは、誰にもわからない。

 だが、その時……ボロボロになり、薄く硝煙と泥に汚れてしまった金の髪と、擦れても尚美しさを失わない翡翠の瞳を持つ少年は……確かに地の底で、重く閉ざされていた瞼を開け……目を覚ました。

 

(ここは……どこだろう…………?)

 

 最早、右も左も……上か下さえも分からない。一体どれくらいの時間を、ここで過ごしたのだろうか…………。

 

 突然、何かに呼ばれたような気がして……暗く深いとおぼしきその地の底で、その声に導かれるようにして少年は重い瞼を少しだけあげ……目を覚ました。

 

 まだ、死んではいけない――と誰かがそう願ってくれているかのように、暖かな加護の様なものが少年の心に響いた。

 

 だが、それと同時に――膨大な情報を頭に無理やり入れられたような……いや、違う……まるで、〝忘れていたこと〟を無理やり思い出したかのような……、或いは……『記憶』、寧ろ『情報』そのものを自分とは別の場所から引き出されているかのようでさえもあり――それはまるで、『情報』への『架け橋』とでも繋がったかのような感覚だった……。

 

 そのいきなり感じ取った膨大過ぎる情報の量に、頭が割れそうだった。

 

 温かな抱擁にも似た感覚とは反比例するかのように、もっとどす黒い何かが彼の脳裏を覆いつくした。

 

 ――――繰り返し脳裏に浮かぶ、膨大な知識や情景……。浮かんでは消え、脳裏を次々と横切る『情報』という名の奔流。

 

 

 崩れ去る古代の街、燃え盛り全てが滅んでいく……。

 

 闇と光の争い、最後は……味方同士すら争う。

 

 そうして、何もかもが消え去ろうとしたその時――全てが、滅ぶその手前において……四人の『闇』側の巨人が、それらを全て打ち倒したのだ。

 

 いや……寧ろその〝味方同士の争い〟とやらもその四人にとっては前座程度でしかなかったのだろう。

 

 何せ……その四人こそ、光と闇――そんな相反する両陣営の区別すら曖昧な程の〝強さ〟を持った……その世界における『最強』だったのだから。

 

 世界が、そうやって『闇』が覆いつくされそうになったというそのとき、一人の少女がその内の一人に語り掛けた。そして説いた……『愛』と『光』を。

 

 そして、一人はその言葉を信じた。何かを壊すのではなく、虐げるのではなく、ただひたすらに守り、与え続けるという『人』としての愛を、その巨人は……『闇』であることから抜け出し、『光』を取り戻した。

 

 それと同時に、彼は『人』としての本質を取り戻した。

 

 そうやって、三人の闇の巨人を一人の戦士が止めるために光として、そして何より人として戦った。

 

 その中で、彼は強くなっていく。

 

 決して闇に染まらず、それらを自らの内にて光へと変えていく……。

 

 そして、闇の戦士たちは封じられた。

 

 だが、そうやって訪れた平和さえも……最後には崩れ去る。

 

 残された闇の怨念、光に対する憎悪が……最後の邪神となり――この世界を破滅へと、『世界の崩壊』へと導こうとした。

 

 強すぎる闇の前に、これまで抗い続けた〝残された人々〟ですら抗うことをやめた。やめてしまったのだ。

 

 そうして……ある者は一時の夢に溺れ滅び、またある者は別の土地へと旅立った。

 

 そうして……光に包まれたその情景さえ、最後には消え――彼の守りたかったものは、彼の前から消えてしまった。そして、彼は眠りにつき……『人』としての意志を残す。

 

 

 それが、〝光を継ぐ者〟……一人の少年が、その光の中から――生まれ落ちた。いや、寧ろ……本来の姿を取り戻した――――といった方がいいのかもしれない。

 

 それを見た、初めに彼に『人』の何たるかを解いた少女は……光とは、人の本質とは何かを彼に教えたその少女は……その生まれ落ちた子を抱きしめ、何かを囁いた。

 

 そして、その子供はその時代からは消えた。いずれ、世界が闇に覆われる時まで……その子もまた、巨人と共に眠りについた。

 

 少女は、自身の叡智の全てとこれから先の破滅に立ち向かうために……何より、〝守りたいもの〟の為に、彼女は自身の『意志』を全て『器』に移し替え……その『器』たる『叡智』への〝架け橋〟となることを選んだ。

 

 そうして、世界はまた……一時の静寂を得た。また『人』が生まれ、この星で暮らすことを待ち望むかのように……。

 

 ――――そんな情景が何度も浮び、消えていく……。

 

 虚ろな意識に次々と送り込まれてくる、そんな情報――『記憶』の奔流に、心が砕けそうだった。そしていつしか……彼は死んでもいいとさえ思い、寧ろこの永遠と続く痛みに〝殺してくれ〟と懇願せんとするばかりだった……。

 だが、それでも……それでも彼はそれら全てに対して耐えきったのだ……。痛みや苦しみの中でもだえ苦しみながらも、最後まで自分という存在と、その身に宿る意志を失うことはなかった。

 

 ――彼は、その苦痛に打ち勝った。

 

 だが、その苦しみの後に彼に残されたのは……暗闇と静寂だけだった。

 誰もいない、何もない。そんな空間にボロボロで放置された彼は……しばらくの間呆然と転がったまま動かなかったが、どうにか立ち上がり……ボロボロになった体を引きずりながら、這うようにして立ち上がり、少年は立ち上がった。

 そして、彼は歩き出した。

 どこにあるのかすら分からない出口と、友人たちの顔を思い浮かべながら……、必死に……必死に、出口を探した。

 

 そして、どれくらいの時間がたったのか……そんな感覚も麻痺し始めたころ、気づいたらいつの間にか『扉』の前にいた。いつ着いたのか、どれくらい扉の前にいたのかすら分からない。

 

 それこそ初めから、自分は扉の前で気を失っていたのではないだろうか? という程に……。時間の感覚などとっくの昔に狂っていたが、彼の中でどれだけの時間が経過したかなど既に差だけではないものの、それでもその光輝く『出口』に彼は足を踏み出した。取っ手もない、ただの光輝く壁ですらないそれに……彼は頭から突っ込んでいった。

 だが、ぶつかりもしない。壁など無かったかのように体はその『壁』をすり抜け、少年をその場に誘う。

 その中に入る瞬間、少年は何かを感じた。

 

 

 ――まるで……彼の目の前に広がる金色の光が、彼を〝呼んでいる〟かのような……ずっと昔に切り離されていた半身が、他の誰でもない〝自分〟を呼んでいるような……そんな、気がした――。

 

 

 その光の中に包まれながら、彼は再び意識を失った。

 

 

 彼は気づかなかったが……この遺跡の内部、とりわけこのエリアは……彼がもう少し意識を保っていたれたのならば、彼はきっと――――三体の巨人像たちが、彼を守るようにそびえ立っている光景を……この時に目にできたかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 * * * [闇の使者は、光の地へと来る Monsters_has_ come.]

 

 

 

 ユーノとなのはの『事故』の直後、由宇たちの偵察部隊では……最近とんとご無沙汰だった『怪獣』の姿が確認された。

 だが――。

「グゥゥルガァァァッ!」

 その『怪獣』の中にある、〝本質〟が……『闇』であり『悪』だと、少年は知った。

 生物でありながらも、この世界の破滅を望む……そんな闇の使者。争いを生むために、この世へと生まれた者たち。

 

 それが、『ゴルザ』という……この世界の光と闇の抗争を確かなものとした始まりの『怪獣』の名前だった。

 

「……ユーノの見つけた、あのタイムカプセルは――『予言』は、本物だったんだ……!」

 

 そう、あれは本物だった。

 だが、彼の知る……所謂〝オリジナル〟のティガの運命ではない。

 〝シンドウ・アスカ〟がかつてたどったのと同様に、『もう一つの世界』における、『新たな物語』。そしてそれは……この世界において、また――ウルトラの光と、相対する邪悪なる者たちが……再び目覚めを遂げたことを証明するものでもあった。

(くっ……! 今の魔導部隊と、まだ実践装備じゃないメカじゃ太刀打ちできない。威嚇するにしても、下手に刺激するのはまずい……いったいどうすれば)

 考えを巡らせるが、今現状においてあの『ゴルザ』に対抗できる戦力は、この部隊には――。

 《ユウ。……あの怪獣》

 《……うん。あの怪獣は――ゴルザは、昔現れたスフィアと同じ……本当の意味での、本質的な〝邪悪〟……》

 嘗てオリジナルのティガの世界の古代文明を滅ぼす先兵となったゴルザ。古代の街を炎と瓦礫の海へと変えた悪魔の使者であり……剛腕で怪力、かつ獰猛にして狂暴。どこまでも『破壊』を信条としたような性質を持っている。

 《ユウ、どうする? 攻撃してみるか?》

 そうアスカが問いかけてくるが、

 《……威嚇、にとどめておこう。今ここで交戦するには、戦力的にも危険だし……何より、あいつは質が悪すぎる》

 

 とユウは攻撃はしないという手段に出た。

 《了解》

 あるかとフェイトはそう返事をし、そして由宇の考えは部隊に伝わり……現在、リーダーとしてこの部隊の指揮を執っているはやてから全隊員に通達された。

 そして、威嚇の攻撃を喰らったゴルザは目覚めたばかりというのもあってか……はたまた、彼らを羽虫とも思っていなかったのかはわからないが……驚くほどすんなりと彼らの前から引き下がった。

 だが、嘗て『光』とかかわったことのある者達は、はっきりと確信した。

 また、戦いが始まることを。そして、今度の戦いが、……はっきりとした、明確な『闇』との戦いであることを――。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ゴルザは地中へと潜って消えた。

 だが、決しておとなしく引き下がるために姿を消したわけではない。

 そのことを含め、由宇たちは急遽設立された今回の怪獣事件を担当する臨時部署としてのチームが結成された。

 

 基本スタッフは、以前の『闇の書事件』で活躍した面々が集結し……『特別臨時怪獣対策課』という名で設立された。

 

 それに加えて、最近建造が進められている『ライドメカ』等も導入され、本格派の特捜チームといった感じに編成され、略称としては『特時課』と称される。

「……結果として、『予言』は本物だった」

 そうクロノが集まった面々……由宇、フェイトとその母・プレシア、姉のアリシア、そして使い魔のアルフ、アスカ、はやて、ヴォルケンリッター一同、そしてリンディとエイミィを筆頭とする『アースラ』スタッフ……に告げる。

「……でも、『メルバ』ってやつの方はまだ――」

 クロノの言葉に、そういうヴィータだが……その時、エイミィ、そしてアレックスとランディがモニターにたった今確認された事実を表示する。

「……たった今……。なのはちゃんたちの偵察を担当していたエリアから、飛行を得意とすると思われる怪獣の出現が、確認されました……」

「……いよいよ、始まった――という訳か」

 シグナムがそういうと、一同はモニターに映るメルバを見る。

 そして、フェイトがクロノに問いかける。

「お兄ちゃん、何か対策のヒントになりそうな情報はないの?」

「ユーノの見つけたこのカプセルの解読はアルフとアリシアと『無限書庫』のスタッフたち、そして臨時で戻ってきてくれたリーゼ達も手伝ってくれている」

 グレアム元提督の使い魔である双子の猫姉妹リーゼアリア、ロッテの二人は……嘗て『闇の書事件』の時、ユーノと共に『無限書庫』での検索を行っていたことがあり、かつ元から長く管理局に努め、数々の案件を解決してきた敏腕魔導師でもある。

「それで……結果は?」

 由宇がそう聞く。

 だが、アリシアとアルフは目線を下げ、こう答える。

「最初にユーノが訳したときからたいして進歩無し……。せいぜい進歩と呼べるものがあるんだとすりゃあ〝巨人を蘇らせる方法は、ただひとつ〟……まで訳せたくらいだねぇ」

「そっか……。ここまでティガと同じだなんてね…………本当に、この世界に『闇』の出現が……」

 嘗て、光を手にしたことがある少年は、そういった。

 そして、守ることを……今の自分にしかできないことを、探す。今の自分は、光と共にあったあの時の自分じゃない。だからこそ、彼は……あの時とは違う、今の精一杯をやり遂げるために、戦う。

 だから、

「『予言』は本物だった。だとすれば、少なくともこの世界…………この星には――ウルトラマンがいる……!」

『!!』

 由宇のその発言に、皆は顔を上げ彼の方を見る。

 この世界に、まだ誰もで立っていない……確認されていないウルトラマンが、いる。それが本当に〝ティガ〟なのかは由宇にもわからない。

 でも、そんな中で――由宇とアスカは、なんとなくではあるが……それでも、彼らの中で確信に近いものに……それは、おそらく光と共にいた彼らだからこそ……それに変わりつつあった。

 

 

 ――この世界にも、確かにかつての自分たちと同じ……『光』が、〝いる〟……という、確信に。

 

 

「光の巨人……。どこかにいるけど……まだ、目覚めていない。ゴルザとメルバは、何のために……? 目覚めていないときに、目覚めた……その理由は……?」

 フェイトはそんなことをつぶやく。

「目覚める前の……目覚め、ねぇ……」

 アスカがそういうと、

「何かが起こる前触れ、いう話やけど……そもそも、その前触れの筈なのにまだ何にもしてへん。前触れでもあるけど……何かを、するために……」

 そうはやてがいい、それを聞き……由宇がこう言った。

「目覚めを恐れているんだ……ゴルザとメルバは。始まりだからこそ、もう一つの始まりを……それが『目覚める』ことを恐れているんだ……。だから、もし向かうなら…………光が眠る場所」

『!?』

 その由宇の言葉に、目を見開く一同。

「だとすれば、早くしないとまずいのではないか? まだ、光の方は目覚めてすらいないのだろう!?」

 シグナムのその言葉に、

「でも、この『予言』には場所を示すヒントなんて……どこにもねーじゃんかよ?」

 とヴィータが答える。それに対し、さらにシグナムが言葉を返す。

「だからといって、このまま手をこまねいて言うわけにもいかんだろう……。この間にも、どこに現れるとも知れぬ怪獣が地中と町々の上空を移動しているのだぞ?」

 確かに、シグナムの言う通りだ。

 早急に対策をしなくてはならないが、対象の位置が分からなくてはどうしようもない。

 二体の居場所、それを見つけなくてはならない。

 するとプレシアが口を開く。

「……二体の居場所。それを特定する手立てになるかはわからないけど、あの二体のエネルギーがあの二か所での偵察任務の原因だったのよね? だとすれば――」

「――その時のエネルギーと同質の反応を見つければ、二体の居場所が分かる……という事ね?」

「ええ」

 リンディの問いかけに頷くプレシア。

 その発言にすぐさま応じるのはエイミィ率いるオペレーター陣。

 速攻で検索をかけ、そのエネルギー二つと……もう一つ、別のエネルギーの反応を見つける。

「これは……!?」

「……気づいた? クロノ君」

「ああ…………これは」

 クロノはモニターを凝視するので、それを不思議に思ったアリシアがクロノにどうしたのかと聞いた。

「どうしたの……? お兄ちゃん」

「……。アレックス、皆に見えるようモニターを拡大してくれ。ランディ、この二つの軌道を補足し、その交点を導いてくれ」

「了解」

「了解、補足します……って、これは!」

 ランディが驚いた様な声をあげる。

 そして、その驚きの原因は直ぐに皆にも伝わる。

「……そういう事だったんだ」

 由宇がそうつぶやく。

 それは何故か? それは――エネルギーは確かにゴルザとメルバのものと、そして……もう一つあったからでもあり、その反応の地点が……ユーノが調査を担当していたエリアだったからである。

 

 そして、そのエリアが――――ゴルザとメルバがこのまま移動した場合、二体の交錯地点になっていたからでもあった……。

 

 

 ユーノが行方不明になった地点が、二体の目的地……偶然ではない。ここには、初めから光が眠っていたのだ。だから、狙われてしまった……。

 

 

 つまり、そこに――いる。

 まだ、目を覚ましていない……まっさらなままの『光』が。

 そして――ゴルザと、メルバが、そこに向かっている。自分たちの陣営を脅かす、光の存在を……消すために。

 

「……行こう……」

 

 誰がそういったか、定かではない。しかし、皆の意志は既に固まっていた。

 

 向かおう、光の眠る地へ。

『闇』との戦いの場所へ。

 友人が行方不明になった、その地へ……。

 

 

 戦いの幕が、再び上がる。

 

 

 

 

 

 

 そのエリアへと向かう為と、ゴルザ・メルバという完全攻撃型の怪獣への対策を兼ねて、試作二号機・サンダーAct_3.に乗り込みながら……由宇はこんなことを考えた。

 それは、行方が分からなくなってしまった友、ユーノへの思いだった。

 

(ユーノ……。きっと……きっと生きてるよね? ……僕は、信じてる。それに、……今度は、僕が君に力を貸す番だ。それに、なのはも――今は危険な状態だけど、それでも……生きてる。そして、きっと……今彼女が一番必要としているのは、きっと……君だよ)

 

 だから――必ず、帰ってきてくれるよね? と自分勝手だなと自嘲しつつ、しかしそれでも自分の正直な気持ちの表れであるそれを、ただひたすらに願い、信じる。

 

 

 

 ――全ては、信じる事から始まる。

 

 

 

 たとえそれが、何度裏切られることになろうとも……それを信じ続けることが希望になる。初めは相手と分かり合えなくても、最後にはきっと分かり合える。

 

 その対象が、友であるのならばなおさらだ。もとから、信じることに戸惑いなどありはしない。

 

 信じ切って、それから結果として伴う事実に出会うために。

 

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 エリア地点に辿り着くと、確かにそこにはゴルザとメルバがいた。こちらの計算よりも、はるかに早い。

「もう、来ていたのか……!」

 クロノがそう苦々しく口にすると、まるで二体はそれを感知するかのようにしてさらに人々をかき乱すようなことをし始めた。

 山々の一部分を崩し、そこに有るものを正確に感じとって……そこだけに狙いを定めたかのように……ゴルザとメルバの光線が、山々をガラガラと崩し、輝く黄金の建造物を皆の目にさらす。

 

 それは……光の眠る、黄金の御殿。

 

「光の……ピラミッド……!」

 由宇の呟き、そして確信。

 あそこに……この世界に眠っていた、『光』がいるという……確信。

 

 しかし、そんな中でさえ、怪獣たちの攻撃は止まらない。

 

 ピラミッドの外壁を紫に輝く光線で崩し……隠されたる三体の巨人像を、今再び……この世界へと顕現させる。

 だがそれは、決して再開を喜ぶようなものではない。

 それは一方的な討滅。

 蘇ることを恐れ、邪魔になるものが無力な内に壊す……ただ、それだけのこと。

「……やめろ…………止めろォォォッ!!」

「ユウ!? 一人で行くな…………!?」

 一人で巨人像を壊す怪獣たちに向かってメカ事突っ込んでいきそうな勢いの由宇を止めようとしたアスカは信じられないものを目にした。そしてそれは……由宇の足を止めるに足るほどのものだった。

 

 

 黄金のピラミッドだったところから、翡翠の鎖と檻が飛び出し……その動きを止めたのだから――。

 

 それは、友の生存を告げ……戦いの行方を更に変える、反撃の狼煙だった。

 

 

 

 

 

 

 * * * [〝目覚め〟と『目覚め』の狭間で ――起床、覚醒――]

 

 

 

 

 

 

 静寂。

 沈黙。

 どこまでも虚無へ溶けてゆく意識とそれと共に薄れゆく力。

 そんな瀕死状態の彼の前に……一筋の『光』が差し込んだ。

 それはまるで、無償の愛の様に……彼を優しく包み込んだ。

 

 

 ――――……なさい。

 ……誰……? …………僕を、呼ぶのは……?

 

 ――――…………いわ……。

 優しく響く、その声は……僕の、中に……響く。

 

 ――――……を、待っている……人が、いるわ……。

 …………? ……まってる……人…………?

 

 ――――そうよ……。貴方が、守るべき……人。空を翔る、美しき桜色の星の光……。

 ……………………なの、は……………………?

 

 ――――目覚めなさい……貴方が、この世界を…………守るのです………………。

 貴女は……あの、カプセ……ル…………の……?

 

 ――――……貴方には……『光』が、ある…………。

 ……ヒ……カリ…………? …………『光』…………?

 

 ――――そう……。早く、目覚めなくては…………『闇』の先兵が、すぐそこまで…………。

 …………や…………み……?

 

 

 そこで意識は再び静寂の中に消え、虚無の中へと溶けていく。

 それと同時に、今自分のいる場所がガラガラと崩れるような音と、その音の根源とそれを崩す者たちの姿。

 

 山肌から現れる黄金のピラミッド。

 大地と空を震撼させる二体の怪獣。

 崩れるピラミッドと、その内から現れる巨人像の姿。

 三体の巨人像、その二体により破壊されゆく巨人像。

 それを止めようとする、友の姿。

 傷つきゆく、大切な人たち……。

 

 

 ――止めろ。

 

 

 ――やめてくれ……!

 

 

 ――破壊の後に、何が生まれるというんだ……!?

 

 

 ――皆が知ってる、……僕だって知っている。誰かが誰かを救いたいという願いの尊さを。誰かが誰かと分かり合おうとする気持ちの気高さを。他者への思いやりを、傷つけることの苦しみを、誰かと分かり合った後の喜びが生む笑顔を、誰かが誰かに差し伸べた手の温かなぬくもりを…………知っている。

 

 ――これ以上、僕たちの世界の平和を……崩さないで…………!!

 

 

 そう念じたとき、先程の迄の声が……再び聞こえた。

 

 

 ――――なら、貴方が守りなさい。大切な人たちを、その手で。

 

 

 そして、消えたはずの意識が……再び彼の心に火を灯す。

 

 

 ――あぁ……それが、僕の一番したいこと……! 皆を守る。傲慢かもしれないけれど、それでも……世界を優しく包み込む、そんな盾のような存在に……僕は、なりたい。

 

 

 そこまで考えたとき、いつの間に立ち上がったのか分からない足で、いつの間に差し込んだのかもわからない日の光の下で、両手を天に掲げ、悪を囲む『檻』と、悪を裁く『戒めの鎖』を目の前に立ちはだかる悪へと解き放った。

 

 

 だが、その強靭な檻や鎖さえも……消耗したからだから放たれたもの。

 あっさりと砕かれ、それを放った少年は…………二体の攻撃により、あえなく宙へと吹き飛ばされる。

 その刹那、彼の名を呼ぶ友の叫びが……彼の耳に届いた。

「ユーノォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオぉぉぉッッッ!!!???」

 

 だが、その声が……彼を、彼の秘められたもう一つの力を覚醒(めざめ)させる。

 

 そして、彼は――――太古の昔からの因縁が紡ぐ、運命の元へ……もう一つの体の元へと帰着する。

 

 

 ――――――輝く、『光』となって……。

 

 

 

 

 

 

 * * * [巨人の目覚め Shining_Stand_up.]

 

 

 

 その鎖と檻が砕け散ったとき、喜びも共に砕け散り……皆が一人の友の叫んだ。

 

「ユーノォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオぉぉぉッッッ!!!???」

 

 だが、その時……。

 最後に残った石像が、ゴルザに踏みつぶされそうになった――その時だ。

「……あれは……ッ!」

 巨人像が、ひとりでに動き……その足を、受け止めたのだ。

「グゥォォォ……」

「……テュアッ!」

 そして、立ち上がった。

 この世を覆う闇と戦う戦士、この世界に眠っていた光……。

 

 また新たな、光の巨人――ウルトラマンが、この世界(ものがたり)の中に生まれたのだ。

 

 光を纏いながら立ち上がり……右の拳を大きく点に突き出して、左拳を顔の横に折り曲げて近づけたポーズをとる。

 

 銀に輝く顔。顔と同じ銀色のボディを赤と紫のストライプと、胸の金のラインの走るプロテクター。まぎれもない、『ウルトラマン』が……そこに立っていた。

 ユーノの意志と光と魂が、巨人の体に生命(いのち)を吹き込み……この世界に、また新たなウルトラマンを復活させた。かつて超古代において、人々を守り続けてきた守護神が……再びこの世界に目覚めた。

「デェアッ!」

 そして、左手を握り締めたまま胸元に寄せ……そして右手を手刀の形で前に突き出す構えをとり、二体の怪獣と対峙する。

 

 

「ティガ……!」

「巨人が、ウルトラマンが……蘇った……!」

「どうしていきなり……?」

「分かんねぇよ!」

「でも、すごい……!」

 皆口々に……蘇った巨人に目を奪われつつも……それぞれの感想を口走る。

 

 

 しかし、その間にも二体の怪獣は、目覚めた光の戦士を倒すべく巨人へと向かってくる。

「ギィギャァァァ!」

 だが、巨人……ティガは向かってきたゴルザをいなすようにしてチョップと膝蹴りを食らわせ、そこを狙い先制を取り直そうとするメルバをキックで迎え撃ち、弾き飛ばす。

 だが、メルバが地面を転がってしまった直後。バチバチィッ! とティガの背後で音がし、振り向くと……ゴルザの額部分に紫の怪しい紫電が走っていた。

 超音波光線を放とう、ゴルザが額にエネルギーを集めている……!

「グルォォォッッ!」

 そんなゴルザの額と口に掴みかかり、その鶏冠か兜の様になっている額の部分と口を押さえつけながら組み合う――が、そんな両者の力比べは飛翔したメルバの背後からの体当たり攻撃により均衡が崩れ、ティガは吹き飛ばされてしまった。

 そこへ、ゴルザが光線で追撃を仕掛ける。だがしかし、これをティガは側転しながら華麗に躱していく。

 しかし、怪獣たちはティガにこれ位以上は好きにはさせないとでも言わんばかりに、コンビネーション攻撃を仕掛ける。

 メルバと組合う形になったところでゴルザからの光線攻撃がティガの背に命中。

 ティガはどうにか体制を立て直そうとするも、空中からのメルバの鉤爪による攻撃に完全に崩され、地面に突っ込む形で倒れる。

 どうにか二体の方に視線を戻す者の、このままでは不利である。

 そう判断したティガは、メルバとゴルザの内……パワー型のゴルザを標的と定める。

 すると……ビキィィィンッ! と、ティガの額のクリスタル部分が赤い輝きを放つ。

 そのまま、ティガは額のクリスタルの前で両腕を交差させ、振り下ろす。

「ンンン――――ハッ!」

 掛け声とともに振り下ろしながら、ティガが立ち上がるのに合わせた様に体のストライプの色が変わった。

 元の三色から、赤一色のストライプに変わる。

 先程とか打って変わって、拳を突き出すような形の構えを取り……ティガは二体に対して攻め込もうとする。

 だが、近づけさせまいとゴルザが光線を放った――だが、これをティガは片手で張ったバリアで防いでしまう。

 ゴルザは驚き、動揺するが……その隙を見逃すティガではない。ゴルザへとさらに距離を詰めようと動くが、そこへメルバが目から放つ光線――メルバニックレイを放ち、それでティガを押しとどめようとする。

 しかし、

「ハッ!」

 ティガは止まらない。再びバリアで光線を防ぎ、それを振り払うようにして霧散させ……今度こそはと、ゴルザへ強烈なショルダータックルをお見舞いする。

 しかし、ティガの追撃はそこでは終わらない。

 タックルの衝撃で後ろへ吹き飛ばしたゴルザを逆に引き寄せ捕まえる。そしてそのまま両腕をゴルザの体に回し、きつく締めあげる。

「ゴギュォォォッッ!?」

 ゴルザはその激しい締め上げ攻撃にうめき声をあげ、振り払おうとするが……赤い姿となったティガの剛腕は振り払うことができない。そして、ティガによる締め付けを喰らい……フラフラになったところをティガはヘッドロックのような体制から地面へ投げ飛ばす。

 そこへ、さらにメルバが突進してきたので、反撃に転じ……回し蹴りを放つが、メルバは難なく避けてしまう。

 先ほどまでの俊敏さが嘘のようだと言わんばかりのスピードに、メルバは悠々と空を飛び回る。

 そんなメルバに気を取られ、ゴルザの方への注意がおろそかになっていたティガはサクッガシュッ! と地面を掘る音に気付き、そちらを振り返ったときには……既にゴルザは地中への逃走準備を始めていた。

 逃がしはしないとゴルザを追おうとするが、それは空中からのメルバの光線による攻撃で阻止されてしまう。

 背後からの攻撃に、膝をついてしまい動作が少し遅れる。

 空を翔け、翻弄してくるメルバ。地中への逃走を図るゴルザ。

 その両方に対処しようとティガは立ち上がろうとした……その時だ。

 ピコン……ピコン……と、ティガの胸のランプ――『カラータイマー』が、地上での活動限界までの残り時間が少ないことを告げる。

 こうなればゴルザを引きずり出して即座に決着をつけ、対処しようとティガはまた立ち上がろうとするが……そこを再びメルバに追撃され、阻まれてしまう。

 このままでは、単なる鼬ごっこ……メルバに翻弄されるままに、残り時間が過ぎてしまうだけになってしまう。

 となれば……メルバに狙いを定め、先に対処するしかない。

 だが、今のままではそれができない。

 ならば――ティガの額のクリスタルが、今度は青い輝きを放った。

「ンンン――トゥアッ!」

 先程よりも短い動作で機敏に両腕を交差させ、ティガは自身の姿を変える。赤かったストライプが、今度は青がかった紫一色へと変わる。

 先程までとは打って変わり、手刀の様にした手を構える方を取り……より機敏な動きで上空のメルバを見据える。そしてそのまま勢いよく地面の蹴って飛び上がったティガは、俊敏な動きで空中にいるメルバにキックを打ち込み、そのまま地面に叩き落した。

 さしものメルバも、次々と変わるティガのファイティングスタイルに逆に翻弄されてしまい、ノックアウト寸前である。

 ここだ! とティガは確信し、両腕を水平に広げ……エネルギーを集約させる。そしてそのまま頭上に両手を上げ、合わせ……左腰の方へと合わせた両手を引く。

 そして、右腕を水平に降りぬくようにして突き出し、一気にためた青みを帯びたエネルギー弾――『ランバルト光弾』をメルバへと解き放った。

「ビギィィィッッッ!?」

 放たれた光弾が、メルバへと突き刺ささると……そのままメルバを粉々に吹き飛ばした。

 

『すごい……!』と、由宇とフェイトがいい……皆がそれらと似たような感嘆の声を呟く。

 しかし、そんな中でクロノだけがただ沈黙していた。

「……、」

 沈黙……と言っても単なる呆然傍観ではない。ただ、彼は驚いていたのだ。

 新たに現れた光の巨人の、戦い方に。

 ウルトラマンの活動時間は、約三分間――これは由宇から聞いた地球でのシリーズの設定、および実体験により、大体の子とは聞いているし……実際由宇がコスモスと同化していたときはそれくらいだったのは明白。

 しかし、今回のウルトラマン――ティガの動きは、コスモスのコロナやスペースコロナと同様に力強く、それでいて俊敏な三色混合の基本形態【マルチタイプ】。そして、パワー優先の【パワータイプ】、そして今の戦闘のフィニッシュを決めたスピード重視の形態【スカイタイプ】。無論、クロノ本人は『ティガ』自体を見たことが無いのでそんなタイプの名称までは知らないだろう。

 しかし、彼が驚いているのは、そこではない。

 だが、それでも最後の戦い。スカイタイプにティガが変わってから、メルバを倒すまで者の数十秒間。活動時間の限界が近づいていたこともあるだろうが、ティガの戦い方はコスモスとは異なり……何というか、完全突出ではないというか……そう、無駄がない――とでもいうべきものだったからである。

 つまりだ。端的に言えば、クロノの驚きの理由もだが……驚いていたのは、彼だけではなく……ティガの『華麗』とでも形容したくなるような動きの切れに、皆見とれてしまっていたのだ。

 

 

 そんな羨望にも似たまなざしを受けながら、ティガは「――チュアッ!」という掛け声とともに空の彼方へと飛び去った。

 

 

 この世界における始まりの戦いは終わった。

 だが、その陰に犠牲になった者たちもいるという事を、一同は思い知ることに――。

「……!? クロノ君、その近くに魔力の反応があるよ! パターンはそう……ユーノ君と同一の!」

「何!?」

 ――また、ウルトラの奇跡は彼らの元へと舞い降りる。

 

 

 未来へと向かう、子供たちの元へ……ウルトラマンたちは、いつだって希望を運び続けている。

 

 

「――いた! いたよ、クロノ! ユーノだ!!」

 そうして、瓦礫の中……まるで何かに守られたのか、あるいは彼自身の得意な障壁によるものなのかはわからないが――確かに彼は、〝生きて〟そこにいた。

 

 

 そうして、由宇の乗って来た《サンダー》に乗せられ……本部へと運ばれる途にて。

 由宇さえも気づかなかったのだが……傷ついた翡翠の少年は、眠るようにして気を失いながらも――ふと遠くから聞こえてきた『声』に……反応して、小さく、そして薄く……口を動かした。

 

『巨人を蘇らせる方法は、ただひとつ』

 

「…………、」

 

 

 

 

 

 

 ――――ユーノが、光となること……。その巨人の名は、『ウルトラマンティガ』。

 

 

 

「……………………ティ……ガ…………?」

 

 

 

 そうつぶやいた少年のポケットには、少しだけ翠の光を持ったような金色に輝くクリスタルのついた、スティック型のアイテムが収まっていた……。

 

 

 

 

 

 

 この世界における、『光』と『闇』の運命が巡り……世界の行方を左右する戦いが、今度こそ本当に幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 To_Be_Continued. 【Next,V.S._GAGUMA.】

 

 

 

 

 

 




 いかがだったでしょうか?
 ついに第三部『前章』も開始いたしました。
 頑張って続けて行こうと思いますので、よろしくお願いします。
 あと、一応『ティガ』本編の流れに沿って行くつもりですが、ところどころにオリ展開およびオリキャラを混ぜる場合もありますのでそのあたりもよろしくお願いします。
 あと、『ティガ』本編についてキャラクターたちが知っているのは、大まかなストーリーと重要なキー怪獣のみで、そこまで細かくは知らないという感じです。所謂『コスモス』や『メビウス』の本編で、『ウルトラマン』や『レジストコード』的なものがあるのに、そこまで詳しく語られていないような感じで行こうと思っています。


 あと……挿絵はどうでしたでしょう? 下手糞で申し訳ないのですが、今後はなるべく描くならクオリティを上げられるように頑張りますので、生暖かい目で見守るような感じでお願いいたします。

 次回以降も、よろしくお願いします。
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