魔法と光の使者   作:形右

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第三話、ヒロイン登場回でございます。


もう一人の魔法少女 『フェイト・テスタロッサ』

 

 

 

 

由宇が、初めてコスモスに変身した翌日の事――――

 

 

由宇は盛大に寝ぼけていた……。

妹が上に載っていたせいで睡眠が浅く疲れが残ってしまったようで、彼はいつもよりも寝坊してしまったのだ。

 

そんなわけで、朝食もそこそこにスクールバスに駆け込むことに成功し、遅刻は免れたが……バスの中でも寝こけていた彼はほかの生徒たちが話している内容について幸か不幸か、聞き取ることはなかった……。

 

そんなわけで、寝ぼけていながらもバスを降りて教室へと向かう。

そのドアに手をかけて開けて中に入った瞬間。彼の寝ぼけていた頭のスイッチを無理やり切り替えた出来事が発生する。

 

「ユー! 大ニュースよ、大ニュース!!」

 

その声の主は幼馴染のアリサで会ったが、何に対して興奮しているのか知らないが噛みつかんばかりの勢いで迫られた上に、肩をつかまれて揺さぶられた由宇は目を回してしまった。

ただでさえ昨日の今日だというのに……と心の中で言い訳をしながら。

 

「い、一体何なのさぁ~アリサ。大ニュースっていったい何のこと……?」

 

「えっ!? ユーひょっとして今朝のテレビとか新聞見てないの!?」

 

「ね、寝坊しちゃったから……。今日は何も見てないけど……それがどうかしたの?」

 

アリサはやれやれ、とでも言わんばかりに腰に手を当てこめかみを抑えて呆れの意志を強調する。

昨日の出来事で疲れていたんだ、と自分の正当性を主張したかったがその言葉はアリサによって表に出る前に既に遮られていた。

 

「じゃあはい! これを見なさい、これを!」

 

そういってバンッ! と音が響きそうな勢いでアリサが机にたたきつけたのは今朝の朝刊だった。

 

「いったい何があったって……―――――――」

 

その記事を見た瞬間、由宇は驚きのあまりここ最近よく体験している硬直という現象を今再び体験していた。

 

その見出しに書かれていたのは……。

 

《夢が幻か、ウルトラマンの出現! 怪獣との戦闘か!?》

 

という見出しだった……。

 

「―――――――こ、これ何……?」

 

「鈍いわねぇ……あんたが会ったっていう青いウルトラマンがこの街に現れて、怪獣を追っ払ったっていう記事よ。

それよりも、このウルトラマンよね、由宇が出会ったのって?」

 

「う、うん……そうだよ。で、でも――」

 

もうすでに再会しました、とか言えない……。

再会して一緒に戦いましたとか、言えない……。

 

それにしても、この見出しの写真。はっきりと写っている……というかよく写りすぎなくらいだった。

まさか撮られていたとは……。

 

「それにしても、反応薄いわねぇ……もっと驚くとか喜ぶとかすると思ったのに――――それとも嘘だったの?」

 

「違うよ! それだけは絶対に違う!!」

 

必死に反論している由宇の目は嘘をついている人のものでない。それが分かったのか、アリサはそう、と言い納得する。

 

「でもユーの反応薄すぎない?」

 

それに関しては自分でも思う。だが、前述の通り再会しちゃったし、おまけに一緒に戦った。アリサには悪いが、反応が薄くなってしまうのも致し方ないと思う。

もはや驚くとか、そういうレベルは越えてしまっているのだ。

 

取り敢えずアリサたちの納得するような適当な返事をしなくては……。

万が一バレたら困る。

 

そんなことを考えながら、由宇はアリサになんて返せば一番良いかを考えていると――――

 

「ねぇユー君、ウルトラマンに会ったってホント?」

 

「えっ!?」

 

――――クラスメートの(主に男子)襲撃を受けた。

 

やはり小学生の自分たちには〝ヒーロー〟の存在はとても胸を沸かせるものであるのは必然。

こんな面白いことが起これば、大人でも興奮するだろう。

いつの世も、人々はヒーローを求めるものだろうから。

 

そのあと質問攻めにされ、コスモスの名前やら、出会った時のことやらを言わされたりして授業が始まる直前までそれは止まらなかった……。

 

しかし……。―――――――――

 

「ウルトラマンとかすげぇ~!!」

 

「コスモスっていうんだってよ!?」

 

「地球守りに来てくれたんだって!!」

 

「じゃあ変身してる人とかいるのかな?」

 

「いたら会ってみたいな~!」

 

「だね~!」

 

――――――――そんな話が出てきたので由宇のドキドキはまた昨日とは別の意味でまた高まった……。

 

――――ホントにバレないといいが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「はぁ~……」

 

そんわけで、自分で自分の首を絞めるようなことをしてしまったような気分の由宇だったが……。何は兎も角、学校は終わり話題の渦からは解放された。

ただ、放課後になるころにはみんなもだいぶ興奮は収まりつつあり、由宇に集まる人もだいぶ減っていたので助かった。

しかし、それでもそんな風にごちゃごちゃとやっていれば疲れが取れないのは―――それもまた必然だったわけで、由宇はいまだボロボロな気分で家路を目指していた。

 

その時、公園の方からすさまじい音がした。

 

それに驚き、公園へと向かうと猫型の異相体が光の粒子に包み込まれている。

 

(あれは……?)

 

―――――どうやら、猫がジュエルシードを発動させてしまったようだ……。

 

猫が―――つまりは、生き物。

 

『心』を有するものが使用者となっている。

 

そこをカオスヘッダーは狙ったのだ!

 

自分たちに足りないもの、それを持っている者をジュエルシードもろとも飲み込み、そこに発生しているエネルギーを全て手に入れようとしている。

異相体を『カオス化』させようとしている。

 

それを止めなくてはならない。

由宇は、コスモプラックを空へ翳す。

 

「コスモース!」

 

ウルトラマンに変身し、巨大化した異相体に対峙する。

 

(ともかくカオスヘッダーを切り離さないと!)

 

前回同様ルナエキストラクトを使い、カオスヘッダーを切り離すべく技を放つ。

今回は、命を持つ猫が使用者のため、抵抗され動きが鈍い。簡単に当てることはでき、カオスヘッダーは外に出ていく……妙に素直に。

 

――――――――――ユウ、違う。あれは……!

 

カオスヘッダーは、切り離されたのではない。自分から外に出たのだ!

 

カオスヘッダーは……何やら渦を巻き、形を作り出していく。

カオスヘッダーは、行動できる体が欲しかったのだ。そのために、猫とジュエルシードのエネルギーを奪い去り異相体のDNAをもとに、コピーを作り出したのだ。

 

エネルギーを奪われた猫はぐったりと地面に横たわっている……。

 

「!!」

 

許せない、そう思った。

自分の為にほかの生命を弄ぶなど、絶対に許してはいけない。

そう確信した。

 

そう決めた瞬間。体の奥底から、湧き上がるような『熱』を感じた。

燃え盛る太陽のように、心が燃えるようだ。

 

そうだ、今目の前に対峙しているのは明確な〝敵〟なのだ。命の理を無視して命を軽々と奪い去ることに何の躊躇もない『悪』だ。

 

もう、容赦など……しない――――

 

「ホォアッ!!」

 

拳を天に突き上げ、赤く光る太陽のごとき『強さ』の力を開放する。

 

――――力を体現せよ、邪悪を打ち破れ。

 

『強さ』をもって、闇を照らす太陽のごとき存在となれ。

 

拳から放たれた赤い光が、コスモスの体を覆い、太陽の赤をその身に刻む。

灼熱の太陽のコロナのような力をその身に宿す。

 

ウルトラマンコスモス、コロナモード。

 

コスモスの力、『強さ』を体現した姿だ!

 

「ディアッ!!」

 

そしてコスモスは、シールドを猫に放ち、安全なところに移動させると、自身は異相体へと向かっていく。

もはやこれまでのコスモスとは、まるで違う。

静かなる月のような慈愛の巨人から、燃え盛る太陽のような巨人にモードチェンジしたのだ。

 

コロナの激しい攻撃に、異相体は……いや、カオスヘッダーは。もはや手も足も出ない。

コスモスは、必殺技の構えを取る。

光を集め、一気に放つ。

 

コロナモードの必殺技、ブレージングウェーブがカオスヘッダーを吹き飛ばす。

すると、カオスヘッダーのいた場所からジュエルシードが現れる。それを手元に引き寄せ、由宇へと姿を戻す。

 

「ハァ…ハァ……」

 

怒りのままに戦ってしまった。

これではだめだ。もしも、相手が命あるものだったとしたら……。

考えただけでも恐ろしい。

気を付けなくては……。怒りと強さは別だ、と他のウルトラシリーズでも言っていた。

 

そうやって考えをいったん切ると、由宇は、掌にある青い宝石に視線を落とす。

 

「これが、ジュエルシード……か」

 

どうするか迷うが、なのはに預けとけばいいのだろうか?

そんなことを考えていたとき、後ろからがさっ! という物音がした。

 

「!?」

 

そこにいたのは―――――――――

 

「なぁ~ん」

 

――――――――先ほどの猫だった……。

 

一瞬本気で何なのか、とびっくりした由宇は相手の正体にホッ、とする。

 

「でもまぁ、よかったよ……。無事でさ」

 

猫を撫でながら、由宇は先程の戦いの最中に忘れてしまいそうになったものを思い出して、噛み締めていた……。

 

 

そう、優しさは……強さを消すものであってはならない。

 

力におぼれた存在はウルトラマンではない。『心』を失ってしまえば、ただの兵器にすら成り下がる。

 

 

大切なのは、最後まであきらめず立ち向かうこと……。

 

例えわずかな希望でも、勝利を信じて戦うこと。

 

信じる心。その心の強さが不可能を……可能にする。

 

 

 

それがウルトラマンだ……と言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、由宇は知らなかった……。

 

 

 

 

彼が戦う直前に、ここで二人の少女がぶつかり合ったことを。

 

 

 

 

そして、その片方である黒き魔導師の少女が、物陰から彼を見ていたことにも……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

黒き少女は物陰から、少年が持っている青い宝石を見ていた。

 

先程の巨人が消えた後、あの少年が現れ……アレを持っていた。

 

(……あの人が、あの巨人……)

 

つい先日、出会った少年だった。

 

あの時親切にしてくれた人……。この世界で、出会った人たちの中でも特に優しい人だと思った。

 

でも、彼女にはその恩人にすら牙をむかなくてはならない理由がある。

 

それは、彼女がこの世で誰よりも慕う母の為……。

母の願いをかなえるためにあの宝石、ジュエルシードが必要なのだ。

だからこそ引くわけには――――行かない……。

 

意を決して、彼の前に出る。

 

「……久しぶりだね」

 

「!? ふぇ、フェイト……?」

 

彼は驚いた様子を隠さずにこちらを見ている。

 

「君には悪いけど……それがどうしても必要だから――――ジュエルシードを、頂きます」

 

彼女は彼女のインテリジェントデバイスである『バルディッシュ』を近接用のサイスモードにして構える。

しかし、彼は驚いたのは先程の対面の時だけであって今は至極落ち着いている様子でこちらに喋りかけてきた。

どうやら、彼女の目的はこの宝石『ジュエルシード』で……この『ジュエルシード』が彼女にはどうしても必要らしい。

 

 

「フェイトは…これがほしい――いや、必要なんだね?」

 

「……そう」

 

「そっか……でもこれを渡せない」

 

「……、」

 

「これは危険なもので、この星に来た『カオスヘッダー』もこれを狙っている。だから、渡せない」

 

「なら、力ずくでも……」

 

フェイトの瞳に暗い影が宿る。何かに苦悩しているのが、なんとなくわかった……。

何かに迷ってる。

寂しいと言っているような目だ。

だからだろうが?

彼女に、こんな事を聞いてしまうのは……。何か心に引っかかるものを……。理屈では説明しづらい何かを確かめたいから、なのだろうか?

 

「……君は、何のためにこれがほしいの?」

 

「……、それは―――」

 

―――――この世界で一番、笑顔でいてほしい人のために……。

 

そう告げたフェイト。

由宇は、その言葉に胸が苦しくなる。

彼女がここまで想っている人物とは、誰なのか……。そんな言葉一つで、由宇はたまらなく苦しくなってしまう。

……でも、彼女は――フェイトは、その人を本当に大切に思っている。

 

……だから、この優しい瞳を持つ少女が……。その瞳に愁いを帯びさせている原因を、これで解消できるのだとしたら―――――

 

(ゴメン……。コスモス……)

 

―――――気付いたら由宇は、フェイトの掌にそれを乗せていた。

 

「その人を、幸せにしてあげて。これで、出来るならそうしてあげて?

きっと君ならできるよ、だって……君は優しいもの。誰よりも優しい目をしてるから……。

君がそこまで必要だというのなら、これはあげる。僕には君が嘘をついている様には見えないし、この宝石をめぐって起こっていることの事情もよく知らないから……。君が必要なのなら、たぶん正しいことなんじゃないかなと思ったから……。だから、あげる」

 

そう言って、フェイトにジュエルシードを渡す。

これは自分のワガママ……。

好きな人の手助けをしてから、身を引きたい。せめて、役に立ちたい。

覚えていてほしい。

そんな自己満足のために、大変な事をしたのだろう。

でも、それでも、とめられなかった。

 

このまま、彼女と向き合っていると益々苦しく、涙まで出てきそうな気がしたので……。由宇は、その場から静かに立ち去るのだった。

 

それをフェイトは、手に乗せられたジュエルシードと立ち去る由宇を交互に見ながら……。彼がなぜこういうことをしたのか、これがどういう意味なのか、その理由を考え続けていた……。

 

 

 

 

 

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