始まりの使者、登場です
コロナモードでの戦いと、失恋というものを経験した由宇はあの後もどこか虚ろな気分で日々を過ごしていた……。
そんな由宇に幼馴染の三人もいまいち声がかけづらく、どことなくモヤモヤした日々が続いていた。
それに加えて……。コスモスはあの行動については、何も言ってこない。
あれが間違ってたとは……思わない。自分の思いつく限り、そしてあの時の自分の気持ちに素直になっただけだ……。
自己満足で、自分勝手で、とても褒められた行動じゃない。
でも、それでも……。ああすることを止められなかった。
そんなある日のことだった。
初めの、そして始まりの使者は……。遅くれて、現れる。
***
それは突然訪れた。
その日、人々は突然の皆既月食を目撃した。
突然現れたその天体は地球の軌道の上に留まり続けていた……。
その奇怪な惑星は由宇の部屋からも見えていた。
「なんだ……アレ?」
その奇怪な惑星は、そこに留まったままに地球を見下ろすようにそこにたたずんでいた。
コスモスはあの星について由宇に語りだす。
―――――バルタンか……。
「バルタン? あの、バルタン星人?」
確かに、コスモスは、初めに見たときバルタン星人と戦っていた。だが、それは倒したか追い払ったのではなかったのか?
―――――いや、あの時私はバルタン星人との戦いにかろうじて引き分けという形でどうにか地球への進行を防いだに過ぎない。彼らは自らの星を、自らの手で滅ぼしてしまい……。自分たちの新たな住みかとなる星を探していた。そこで、彼らはこの星に目をつけ……やって来た。
「そんな……。でも、あの巨大な星はいったい…?」
―――――あれはおそらく、彼らの星『バルタン』バルタン星の一部……それを切り取って運んできたのだろう。
「なんでそんなものを……?」
―――――彼らはもともと、この星に移住しようとしていたのだ。恐らくそのために自分たちの星から持ってきたのだろう。この星でいうところの、『ノアの箱舟』に近いものとして……。
「……バルタン星人たちの移住用の船、ってこと?」
―――――おそらくは、そういうことなのだろう……。
それならいったいどうすればいいというのか?
というか、彼らは地球に本気で移住するつもりなのか?
彼らは……この星『地球』にどういう感情で、やって来たのだろう?
単なる移住にしては、少々強引すぎはしないか……?
「ねぇ、コスモス……バルタン星人たちは、どういう気持ちで、この星に来たのかな?」
――――――それは私にも分からない。だが、それを知るために彼らと話し合うことはできる。あの星へ行けば、バルタンの星の人々の心が分かるかもしれない。
確かにあの星に行けば話せるだろうが……。
「…………僕の話なんか聞いてくれるのかな…?」
―――――――大丈夫。私もついている、共に行こう。
「……うん」
このところ沈んでいた由宇に降りかかった面倒ごと。がむしゃらに今は何かをしていたい、とは思ってはいたが……まさかその初めの出来事がこんな大ごとになるとはとは……。
ともかく、バルタン星人に会いに行くことに決めたユウは、コスモスに変身してバルタン星の浮かぶ空へと飛び立った……。
***
バルタン星、表面にて――――――――
由宇がバルタン星に辿り着くと、まるで来るのが分かっていたかのようにそこにはバルタン星人(ベーシカル)がいた。
「久しぶりだなコスモス……。いや、この星の少年と同化したのか……?」
どうやらバルタン星人は、コスモスと由宇が同化を果たしていることに気づいたようなので話は早い。
由宇は、早速この星に来た目的について聞くことにした。
恐れることはない、コスモスと一緒なのだから……。それにどうやら彼らも、これからいきなり実力行使に出るという雰囲気でもない。
ならば、まずは話し合ってみよう。地球人として、なぜこの自分の故郷を、どんな気持ちで訪れたのかを聞くために……。
「バルタン星人……、なぜあなた達は地球に来たのですか?」
「この星に、移住するためにやって来たのだ」
やはり、コスモスの言っていた通り第一目的が移住なのは本当らしい。
「移住……ということは、あなたたちはこの星に順応して、この星の法律や慣習といったものに馴染んで僕らと友好的に接したい、ということですか?」
別に異星人だからと言って、絶対に住めないわけじゃない。先住民の法律や習慣を尊重し、共存していこうという考えのもとであるならそれだって不可能ではないはずだ。
しかし、バルタン星人の答え……主張は若干それとは違うようなものだった。
「この星の人々は、我々がたどったのと同じ破滅への道を歩もうとしている。だから、この美しく住みよい星を我々の手で、我々バルタンの科学技術でより良い方向へ導くのだ」
「それは……僕たちを支配する、ということですか?」
「君たちが素直に我々を受け入れないというのであれば、そうなるのも致し方あるまい」
バルタン星人は本気だ。彼は本気で実力行使をしてでも、この星に住むつもりだ。
「仮にあなたたちが住むというのでしたら、先ほども言ったようにこの星の慣習・文化に馴染み、この星の法規を守るというのでしたらそれも不可能ではないでしょう。ですが、力で無理やりなどそれはただの野蛮な獣と変わらないのではないですか?」
「……。だが、我々には急がざるを得ない事情があるのだ」
聞けば、彼らの星はほぼ壊滅状態で住める状態ではなくなってしまったということらしい。
だが……。
「あなた方が急ぐ理由はわかりました……。ですが、それであっても…先に住んでいたものにたいして敬意を払うべきではないですか?
それが嫌だというならば、他の無人惑星に移住してみてどうです?
あなた方ほどの、こんな風に星の一部を削り取って運んで来れるぐらいですから無人の惑星を開拓してそこに住んだ方がよいのではないですか?」
「……、」
バルタン星人はどうやら真剣に由宇の話を聞いてくれているようだ。
由宇はさらに話を続ける。
「それに、あなた方に未来を求める気持ちや願いがあるように僕たちにも未来を選ぶ権利や望みはあるハズです。
それなのに一方的に支配するなんて、そんなことは許されるはず有りません。それに僕だってこの星に住む者の一人として見過ごせません!」
「……、」
そして由宇は、最後にこういった。
「さきほども言った、別の星を開拓したりして住む場所がはっきりとしたら周辺の星と交流してみたらどうですか?
初めはほんの少しでいいんです。
少しずつ、少しずつ……。そうやって『絆』をつないでこれからの未来を創るんだって……。『絆』は誰かに受け継がれます。
そうして誰かと友達になり、あるいは恋をして……。そうして受け継がれる命がまた、新たな『絆』を作っていくのです」
バルタン星人はそういった由宇の言葉を何度か反魂するかのようにして、自分たちの今後について考える。
彼らの選択は……『支配』か『友好』か、果たしてどちらだろうか?
答えは、もう……すぐそこに――――ある。
「……我々が間違っていたのかもしれないな。子供たちの未来を願い、新たな星を探していたはずの我々が、ほかの星の子供たちの未来を奪っていいわけがない……。考えが足りていなかったようだ、焦りすぎていたのかもしれんな」
バルタン星人はそういって自分が考えた結論を述べる。
「我々は、この星には移住はしない。たしかに我々は悪戯に恐怖を与える様にやって来た。そして君たちの未来を自分たちの都合でゆがめようとした……謝ろう」
「大丈夫ですよ。それに、これで終わりではないと思いますよ?」
「?」
バルタン星人は由宇の言葉に不思議そうな顔をする。
「この広いのもとで、絆を広げいていけば遠くない未来に皆が手を取り合えるようになると思います。お互いが、お互いを支え合い、相手のことを思いやれるのなら……その時は必ず来ます」
確かに、完全に分かり合えるなんてことは難しい。でも、それでもだ。
互いに信頼という絆を深め合い、他者を尊重することができるならば……それも決して不可能じゃない。
この宇宙には、たくさんの人がいて怪獣がいてウルトラマンがいる。
その絆の和を少しでも広げられるのなら―――――
優しさを忘れないで、互いを思い合い支え合い、どこの世界の人とだって友達になれる様にしようとする心を忘れないで……。
そうやって紡がれた絆が……、いずれこの宇宙を満たしていくだろうから…。
なんていっても、所詮は受け売りなんだ。僕の好きなヒーローの言葉を僕なりに解釈したもので、本当の意味とは少し違うかもしれないけれど……。それでもこの言葉のように生きていたいと思った、その気持ちはたぶん本物だと思うから……。
「ありがとう、この星の未来を担う少年よ。君の子孫と我らの子孫が、再び会いまみえ友となることを祈って、いづれまた会おう……」
こうして、バルタン聖人たちは去っていった。
ことが終わった後、由宇はコスモスに聞いた。
自分の言ったことは理想で、所詮きれいごとだろうかと。
バルタン星人との間にできたと思っているこの絆も、自分たちの都合のいいようにバルタンの人々を追い払っただけなのだろうか? とそう聞いた。
それに対して、コスモスはこう答えた。
―――――――確かに、難しい問題である。
だが、それでも誰かと絆をつなぐことは間違ってはいないと私は思っている。
確かに、理想的すぎる結末は実現するのは難しい。
それでも、努力しようと前に進み続けること、諦めないことが大切なのだ。
諦めず、不可能を可能にする。それが私たち、『ウルトラマン』なのだから。
そのために、君は行動した。今はそれだけでも十分だ。その行動をあきらめずに続けて、君が大人になるころに君の周りにバルタン星人たちやほかの宇宙人たちとも友人になれていたら。君の周りはもっと楽しくなるんじゃないだろうか?
「うん……。確かにそうだね、何もせずに後悔するなってことだよね……?」
――――――――その通りだ、ユウ。
この言葉を危機、少しづつ元気を取り戻していく由宇。
純粋に求め続けることの大切さを改めて知った。こうして彼はこれからも、誰かとの『絆』を広げられるように彼は生きていくだろう。
こうして、この事件は一人の少年に一つの答えの形を残して、終わる。
真実は少年と、はるか遠い宇宙のかなたの友人と…。コスモスの中にだけ残され、誰も知らない内に静かに幕は閉じられるのだった……。
かなり短めな回です。
コスモスのテーマである『共存』に少しでも迫れるように頑張って書きました。