魔法と光の使者   作:形右

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今回はのちの真っ黒提督と、その母である甘党艦長の登場回でございます。


時空管理局 『次元船アースラ』

 

 

 

あの日――――――なのはとフェイトの激突から既に半日以上が経過していた……。

 

 

各々が、それぞれの決意を胸に貫きたい信念を掲げている。

 

このところ立て続けに起きた騒動の影響で、なのはとアリサ、すずかのギクシャクした雰囲気も収まり互いに相手を待つことを決めた……。

 

そして、相変わらず騒がれ続けるウルトラマンコスモスの話題。

 

由宇湯のクラスメイトに、報道関係に秀でた子がいて、由宇が『コスモス』という名を口にしてしまったせいか、すでに各種メディアでは『コスモス』という名がすでに定着してしまった。

 

由宇はコスモス関連のことでてんやわんやということは少なくなっていた。

そのわけはやはりメディアのおかげかもしれない。

 

それが否定的なものにせよ肯定的なものにせよ、皆が突然現れたヒーローあるいはエイリアンとして人々の話題にとどまりつつある。

 

そんな意見でも大多数は肯定派である。まぁはっきり言ってこの世界には、特捜チームのように怪獣に対抗できる戦力などない。

だから、守ってくれているコスモスがヒーローに見えるのだろう。

 

まぁそれはさておき、そんな日常は終わりを告げ……。なのは、由宇、ユーノに再び非日常の合図が告げられる。

 

 

 

「ユーノ君……」

 

「うん……。ジュエルシード、だね……」

 

 

 

 

 

「コスモス……」

 

―――――共に行こう。

 

「……うん」

 

 

 

 

 

 

こうしてついに、新たなジュエルシードが……活動を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

海鳴市・市街地にて

 

 

「感じるね……」

 

「うん…。もうすぐ発動するジュエルシードが、すぐ近くに……」

 

フェイトとアルフもまた、新たなジュエルシードの胎動を感じ取っていた。

 

フェイトの方も、カオスヘッダーによる精神攻撃を受けたものの……由宇の光による浄化が上手く行ったのか、大事には至らなかった。

 

しかし、あれだけ苦してジュエルシードを集めたにもかかわらず、やはり彼女の母は彼女を褒めてはくれなかった。

 

代わりに彼女が感じたのは「痛み」と「恐怖」の二つ。

 

あの記憶を見てから、少しずつ自分という存在が歪んでしまうように感じることが多くなったフェイトは、自分が要らなくなりいつか見捨てられるのではないか…? などと考えてしまうことが多くなり、≪自分≫が壊れてしまいそうになっていった……。

 

――――――だが、耐えがたい苦痛を伴う『お仕置き』を受けた後。もう限界になりかけていたフェイトに告げられたのは、この世で最も愛する母に告げられた――――「私の娘」という言葉を受けて……。

 

その言葉がどれほど冷たくても、母が期待をしてくれていることを表すその言葉が……。

その事実が、彼女自身の原動力に変わっていく……。

 

どれほどの苦痛を伴っても、それでも彼女は、自身の母の為に行動することを貫くことを決めたのだ……。

 

「今までのよりも、強いね……」

 

「うん、あたしにもわかる……」

 

フェイトは、握り締めた手を胸のあたりに当てより一層強く握りしめる。

 

「きっと、あの子も来る……。そして、あの人も……きっと………」

 

本当は、戦いたくなんてないのかもしれない。

このままどこかへ逃げ出したいのかもしれない。

 

――――それでも……。

 

人一倍優しい心を持った少女は、傷つきながらも決して逃げない。

何としても果たしたい、望みがあるから。

どうしても戻りたい、日々があるから……。

 

たった、21個の宝石ぐらいで……。あの、あの黄金に輝くような安らかな日々に戻れるのならば。

彼女は鬼が出ようが蛇が出ようが、戦うことを止めるつもりなど毛頭無いのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

それぞれが、それぞれの『思い』や貫きたい『信念』をかけて……。

 

――――動き始める……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

時刻 PM18:24 ―――海鳴市・工業地帯にて。

 

 

なのはとフェイト。二人の少女がその場所で対峙する。

 

そしてその二人を見守るユーノ、由宇そしてアルフ。

 

「あの……。フェイトちゃん……」

 

「……フェイト・テスタロッサ」

 

なのはが彼女の名を呼んだことに驚いたが、フェイトはいまだに名乗っていなかったことからかファミリーネームまでしっかりと名乗った。

 

「うん……。フェイトちゃん」

 

なのはは彼女が水から名乗ったその名をしっかりと確認するようにうなずいてから、フェイトにこういった。

 

「私は、フェイトちゃんとお話ししたいだけなんだけど……」

 

「……起きて、バルディッシュ」

 

【Yes,My master.】

 

【Device form setup.】

 

フェイトはバリアジャケットを身にまとい、彼女のデバイス『バルディッシュ』を構え、なのはに真っ直ぐに見ながらこう告げる。

 

「ジュエルシードは……譲れないから」

 

「私も譲れない…。理由を、知りたいから……」

 

なのはもバリアジャケットを身にまとい、彼女のデバイス『レイジングハート』を構える。

 

それは、お互いの譲れない意志。

その信念の為に彼女たちは相手と対峙する。

 

【大切な人のために……】

 

【分かり合いたいがゆえに……】

 

そのために戦う。

 

「私は知りたい。なんでフェイトちゃんがジュエルシードを集めてるのか…その本当の理由を。

そして、どうして―――なんでそんなに……寂しそうな目をしているのか

その訳を、知りたいんだ」

 

「!?」

 

その言葉をなのはが告げたとき、フェイトが一瞬動揺したのを由宇は見逃さなかった。

そのフェイトの動揺の訳が、彼女の相当深い所にあるのが分かった。

 

彼女と初めて会ったあの時から、ずっと感じていたどこかに影を帯びている彼女……フェイトのその影の意味とは何なのか。

 

『大切な人の為』に戦っているはずの彼女が抱えている影の意味になのはが気づき、そして今真っ向から向き合おうとしているのを由宇は今、見守るしかない。

 

これはジュエルシードをめぐる戦い。コスモスの力を使って割り込んではいけない。

 

(僕たちが介入するのは無粋だ。今はなのはとフェイトの闘い……彼女たちが互いの気持ち、その確認と目的のものをめぐる戦い、今は見守るだけだ)

 

その気持ちはユーノもアルフも同じなようで、二人もこの戦いには手を出す気はないらしい。

 

三人の見守る中、彼女たちの激突が始まろうとした……その時ジュエルシードが、すさまじい輝きを放つ。

 

「相変わらずスゴイねぇこりゃあ……! これがロストロギアのパワーってやつか……!

随分不完全・不安定な発露の仕方だけどね……!」

 

その光を見て、アルフがそんなことを言う。確かに彼女の発言もあの凄まじい輝きを目にした者ならば頷ける。

そして彼女はジュエルシードのもとへと向かう。封印を優先するつもりらしい。

ユーノもそれに関しては同意見なようでジュエルシードを封印する方向にシフトしたようだ。

 

「なのは!」 「フェイト!」

 

彼、彼女はそれぞれのパートナーに呼びかけ封印するために動き出す。

 

一番先に動いたのはユーノで彼はこの一帯に結界を張り巡らせる。

 

「封時結界・展開……!」

 

ユーノの足元に魔法陣が展開され、ユーノの魔力光である緑色の結界が辺りに広がる。

 

「この結界といい、この前の強制転移魔法といい……。いい使い魔を持ってる……」

 

フェイトはユーノの能力を見て賞賛の言葉を漏らすが……。

 

「ユーノ君は……その使い魔ってやつじゃないよ。私の大切な友達!」

 

「友…達……?」

 

「そう、大切な友達!」

 

そうやらフェイトはユーノをアルフと同じような使い魔と勘違いしていたらしく、なのはがそれを否定した。

そして大切な友人であると訂正するが、フェイトは友達という一言が今一つ飲み込めないようだ。

そしてなのはが、先ほどの言葉の続きをフェイトに告げる。

 

「私は、フェイトちゃんの理由が知りたい。よかったら、聞かせてほしいんだ……。フェイトちゃんの話を。

ゆっくりでいいから……。話し合いで、なんとかできるならそうしたい。

そしてもし、フェイトちゃんが困ってるなら力になりたい!」

 

「――――ッ! 話す必要なんて……ないッ!!」

 

フェイトは彼女の中の迷いを振り払うように、なのはの告げた言葉を突き放す。

 

 

そして彼女たちが、ジュエルシードの近くへ降り立った。

半覚醒の状態のそれは彼女たちに昨夜の光景を思い出させる。

 

 

 

「……ジュエルシードには、衝撃を与えちゃいけないみたいだ」

 

「うん…。昨夜みたいなことになったらレイジングハートもバルディッシュも可哀想だもんね……」

 

その言葉になのはが優しい子だということを改めて感じたフェイトは少々沈黙するが……。

 

「…………でも、ジュエルシードは譲れないから…」

 

「私は、フェイトちゃんときちんとお話ししたいだけなの……。きちんと真っ直ぐ!」

 

なのははフェイトに決意のほどを吐露する。

 

「私が勝ったら……。ただの甘ったれた子じゃないってわかってくれたら……!

お話し…ちゃんと聞いてほしい!!」

 

そういったなのはの言葉を受け、フェイトの方もなのはの決意の固さを察したのか戦いを受け入れる。

 

そうして二人が構え、二人がぶつかり合おうというまさにその瞬間。

 

――――そこまでだ。

 

いきなり告げられたその言葉と共に、彼女たちの手足が『バインド』によって拘束される。

 

「な、なに……!?」

 

「……ッ!?」

 

突然二人の間に現れた青い光が、彼女らの間に割り込んできたのだった。

 

「時空管理局執務官……クロノ・ハラオウンだ。ここでの戦闘は危険すぎる。

こんな場所で戦闘して……。また次元震を起こすつもりか?」

 

そういって青い魔法陣から黒装束を纏った黒髪の少年が、彼女たちに身分証らしきものを見せながら彼が何者なのかを告げる。

 

「時空管理局……!?」

 

アルフが、その単語にやたら反応しているのはなぜなのか?由宇にはよくわからなかった。

その間にもその黒い少年……クロノ・ハラオウンはなのはとフェイトに質問をし始める。

 

「さて……。詳しい事情を聞かせてもらおうか?」

 

すると、アルフがそのクロノにいきなり攻撃を仕掛ける。

 

「!」

 

だが、クロノはたいして困りもせずにアルフの攻撃を防御する。

 

「君……!」

 

クロノはアルフに先ほどの攻撃について何か言おうとしているようだが、アルフはその間にフェイトに撤退するように告げる。

 

「フェイト、撤退するよ!」

 

アルフは追撃を仕掛ける。

丁度その攻撃の延長線上になのはがいたため、クロノは反撃の姿勢から防御の姿勢に体制を変える。

クロノの防御魔法とアルフの牽制攻撃がぶつかり合い、あたりに土煙が舞う。

その間にフェイトはバインドを解くが……。彼女はすぐに撤退せずにジュエルシードの方へと向かっていく。!

 

「フェイトっ!?」

 

あと少しでジュエルシードに手が届くといったところで、クロノはそれを阻止するべくフェイトに攻撃を放つが……。

 

「――ッ!?」

 

フェイトは後ろからの追撃に気づくが、かわすことはできない。

青とほんの少しで、その攻撃が彼女に直撃するといったその時彼女の後ろに一筋の光が現れ彼女をその攻撃から庇う。

 

---フェイト、逃げるんだ。

 

「……ありがとう」

 

攻撃が衝突した際の煙のせいでよく見えないが、聞こえてきたその声にフェイトは礼を告げるとジュエルシードをひっつかみ、アルフと共に転移魔法でその場から去る。

 

そして煙が晴れる、光の塊が地面に降りてきて一人の少年へと姿を変える。そうさっきの光の塊のようなものの正体は由宇で、彼はとっさにフェイトを庇ったのだ。

 

「君!なんで邪魔をしたんだ!?」

 

クロノが起こるのも無理ないが、黙ってフェイトが傷つくのを見てられなかった。

だが、確かに状況的にこの場合は非は自分の方にあると思ったので、由宇は素直に謝ることにした。

 

「ごめんなさい……。でも…」

 

「……はぁ…まぁいい」

 

クロノはため息をつきつつも、由宇のことを許した。するとその時、クロノに連絡が入る。

 

『クロノ執務官。お疲れさま』

 

「すみません艦長…。片方…逃がしました……」

 

『ん……。ま、大丈夫よ。それより……詳しい事情を聞きたいわ。その子たちを「アースラ」までご案内してね』

 

「了解」

 

そういって通信を切るクロノ。

通信を切った彼は由宇たちの方に向き直り、こういった。

 

「すまないが……君たちには次元船『アースラ』まで同行してもらう」

 

クロノの言う『アースラ』とは何なのだろうか?

由宇にはよくわからないが、自分のほかの二人を見るとなのははもっとわかっていないような雰囲気だったが、ユーノはなんとなく察しがついているように見える。

なので由宇は、ちょっとユーノに念話で聞いてみることにした。

 

《ねぇユーノ『アースラ』っていったい何のこと?》

 

《多分、時空管理局の使ってる時空船だと思う》

 

《時空船……?》

 

時空船とはいったい何なのだろうか?

でも確か、一度聞いたことが

ある気はする……。

何の時だっただろうか……?

 

由宇は疑問符を浮かべながらクロノの指示に従い、その『アースラ』まで同行することになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

次元船・アースラ

 

時空管理局のリンディ・ハラオウンが艦長を務める次元航行船。

 

 

そこへ由宇、ユーノ、なのはの三人はクロノに案内されやって来た。

 

《ユーノ君……ここっていったい?》

 

《時空管理局の次元航行船の中だね》

 

《その管理局って……ユーノ達の世界の……なんていうか警察とかそんな感じの組織なの?》

 

《うん、大体そんな感じだよ。由宇の言う通り、僕らの世界いわゆる次元世界って言う世界を統括している組織だね》

 

《じゃあこの……船、でいいんだよね? これはその次元世界っていうのを移動するためのものってことでいいのかな?》

 

《うん、その通りだよ。ユウは理解が早いね》

 

《ふ、二人ともぉ~私を置いて納得しないでってばぁ……》

 

《あっ、ご、ごめんなのは!》

 

《よーするにね、重なってる本のページからページへ移動するそうっごく大きな船ってことだよなのは》

 

《まだちょっと……難しいよぉ。ゆ、ユーノ君ヘルプ!》

 

《ええと……さっきのユウの話を補足するとね?この世界はたくさんの世界があってね? なのはたちの住んでる世界のほかにも……。僕らの世界やユウと同化しているコスモスの世界とかいろいろな世界があるんだ。

それは一冊の本みたいなイメージで、重なってるページの裏と表は普通には移動できないけどこの船を使うとそのページを飛び出して好きなページに行ける、そんな感じ……かな?》

 

《な、なるほどぉ……》

 

《おぉ~ユーノ分かりやすい》パチパチ

 

思わず拍手してしまった。

しかし、そんな三人の次元世界トークはクロノによって遮られた。

 

「そこの女の子」

 

「は、はい?」

 

「バリアジャケットとデバイスは解除してもらえるかな?」

 

「あ、はい…。それじゃあ……」

 

一応ここでは戦闘してもらっては困るという意味なのだろう。

それがなんとなくわかったのか、なのはは言われた通りバリアジャケットを解除して元の制服姿に戻る。

それを確認して頷いたクロノは、今度はユーノにいった。

 

「君もだ。そっちが本来の姿じゃないんだろう? まぁそういう趣味、ということなら無理にとは言わないが……」

 

「あ、はい。魔力節約の非常措置でこの姿のままにしてたので忘れてました……」

 

そういってユーノはなのはの方から降りる。

それを見てなのはは不思議そうにそれを見ている。

 

由宇はというとユーノに事情を聞いたときに「この世界と魔力資質が合わない」とか「異相体に敗れて負傷した」といった有無を聞いていたので、なんとなくユーノは仮の姿をとってるというSF好きの人間ならだれもが分かるお約束的展開なのだとわかっていたので特に驚きもしなかった。

これからユーノの本来の姿を見せてもらえるのだと思うとむしろ、ワクワクしてすらいた。

確か同い年という話だったが、どんな姿なのだろうか?、みたいなことを由宇が考えているうちにユーノの体は光に包まれ徐々に人型に変わっていく。

 

そして、フェレット状態のユーノがいた場所になのはと同じくらいの背丈で由宇よりちょっとだけ低いかなくらいの中性的な容姿の男の子が現れた。

 

(ユーノってなんていうか……あれだな。男の娘っていうあれだ)

 

リアル世界で見ることになるとは……。そんな変な方向に思考が言っていた由宇。

 

ユーノの方はというとなのはと由宇の方を見て、こんなことをいった。

 

「えっとなのはには久しぶりで……ユウには初めてだね。この姿を見せるの」

 

「そうだね、というかユーノって……ホントに男の子? もしかして〝こ〟の字違うとかそういう感じ?」

 

「……それの意味はいまいちわかりかねるけど…………暗に女顔だって言ってるのは分かったよ。そしてもちろん僕は男だよ、間違いなく確実に、ね」

 

「そっか」

 

 

世の中って不思議だなぁ……、と由宇は思った。

 

そんなアホな会話…もといほのぼのとした会話をしていると、今まで黙っていたなのはの上げた悲鳴に男三人は耳を塞ぐ羽目になった。

 

 

 

「ええぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!???」

 

 

 

そしてそして――――――――

 

 

―――――――――なのはがひとしきり叫んだあと……。

 

 

 

「ど、どうしたのなのは?」

 

「だ、だって……。えぇ!? ゆ、ユーノ君って……。普通の男の子だったんだ!?」

 

「……君たちの間で何か見解の相違でも?」

 

呆れたようにクロノがなのはとユーノに聞くが、ユーノの方も状況が呑み込めていないらしくなのはにこう聞き返していた。

 

「あれ? 僕がなのはに会った時ってこの姿だったんじゃ……」

 

「ううん!」

 

フルフルとなのはは全力で首を横に振る。

 

「??? ……! ああ! そうかそうだった。そういえば見せてなかった!」

 

「だよね? そうだよね!? びっくりしたぁ~…!」

 

なんでも後で聞いた話によると、その時ユーノは誰か魔導士が近くにいることを祈って念話で助けを呼び、それをたまたま魔法の才能のあったなのはが聞いたんだとか……。

加えてユーノはそのまま意識を失ってしまい、魔力資質が合わずに四苦八苦していた上に戦っての気絶だったためそのままフェレットモードに移行してしまったんだとか。

 

 

なんとまあ、真に恐ろしいのは偶然とはこれいかに……。

 

 

とはいえユーノの送ったその念話に付加されたイメージをなのはも夢で見ていたとかで、まったく見たことない……。というわけでもなかったのもまた事実で、とにかくなにが悪いかと言えばそれはタイミングという話だったとさ。

 

 

そんなやり取りをしているとゴホン、とクロノが咳ばらいをしてから二人にこういった。

 

「君たちの事情はよく知らないが……。艦長を待たせているので、早めに半紙を聞きたいんだが……。

取り敢えず、此方を優先してもらっていいか?」

 

「あ…はい。すみません……」

 

「す、スミマセン……」

 

「……、」

 

「ではこちらへ……」

 

取り敢えずなのはとユーノはクロノに謝り、由宇はとりあえず静観を決めてみていたのでクロノに促されるまま艦長室へと向かう。

 

そして艦長室の前についた。スライド式のそのドアがキュィーン、という音と共に開きその艦長室の全貌が四人の前に現れる。

 

 

そこは異世界の艦長室……という割には随分と僕やなのはにはなじみ深い風景が広がっていた。

桜に……何だろうか茶会か野点でも開くつもりなのか、所謂毛氈と呼ばれるあの真っ赤な敷物が引いてあり、その近くに野点傘が立ててある。(厳密にいうならここは室内なので、野点傘も毛氈も必要ない上にそもそも野点と呼ぶには無理があるのではないかと思うが)

そして柄杓が前に立ててあるその後ろでは風炉にはお釜がかけてあり、お湯を沸かしてる。そしてその横には、茶碗に棗、茶杓や茶筅その他水差しなんかといったお茶を立てる道具が一そろい備えてある。

おまけに盆栽やら水仙やらがあちこちにおいてあり、そして極めつけに滝の流れ込む池にししおどしまでおいてある始末……。

 

本当にここは艦長室なのだろうか?どこかの茶室かなにかに迷い込んだのではないか?という方がしっくりきそうだ。

 

「艦長…来てもらいました」

 

「お疲れさま~。ま、三人ともどうぞどうぞ…楽にして?」

 

部屋の内装に呆気に取られていると、クロノが毛氈の上に座っている人に声をかける。

その毛氈の上に座っているグリーンの髪の女性は由宇たちを歓迎しているらしい声色でこちらへどうぞ、と呼ぶ。それと同時にお茶とお茶菓子もついでに出てきた…。

その女性は確かにすごい美人だが、今いる部屋がいかにも純和風!な感じの為か少しミスマッチな感じがする。

 

「あ、えっとはい……」

 

「あ……。は…ハイ………」

 

「はい………」

 

それにしても、艦長さんが女の人だったとは……。確かに先ほど通信していたとき割と高い声だとは思ったが、離れていた由宇にはまりよく聞こえていなかったため素直に驚いた。

その艦長さんはリンディ・ハラオウンさんというらしい。

ハラオウン……? 何だかさっき聞いた気がする…。

疑問がそのまま声になって出してしまう。

 

「ハラオウン……?」

 

「あら、クロノは一度しか名乗ってないのによくちゃんと覚えていたわね。貴方はとても記憶力がいいみたいね?

そう、私はリンディ・ハラオウン。そこにいるクロノの母親です」

 

「あ、やっぱり……」

 

でもすごいなあ、うちの母さんとかなのはのお母さんの桃子さんも若いけど、この人も相当だな……。年をとるって概念がないのだろうか?

 

ついついそんなことを考えてしまった。

 

そんな風な余談も交えながら、話は本題に入っていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「――――なるほど、そうですか……。あのロストロギア…。ジュエルシードを発掘したのはあなただったんですね?」

 

「はい……。それで僕が回収しようと……」

 

「立派だわ……」

 

「だが、同時に無謀でもある」

 

リンディとクロノはユーノから話を聞き、ジュエルシードの詳細については大体理解したらしくユーノの行動を称賛すると同時にその行動について注意する。

確かにユーノはまだ9歳なのだから、大人の立場の二人からすればこの注意は当然だと言える。

 

そして、次は由宇の方にもリンディたちからお達しがある。

 

「それにしても、君も君だ。いくら強大な力を……いや、これは失礼か。頼もしい相棒を得たからと言って、君の行動はこの世界を危険にさらしかねないものだったことも事実だ。力を手にしたからと言って、おのれを過大評価しすぎないことだ」

 

「はい、その通りです。……ですが、僕にだって1つや2つの譲れないものがあります。それだけは言っておきます」

 

「……そうか」

 

「まぁ、それはともかくとして。あのロストロギアについてあこちらでも調査を進めているし管理局で回収に……」

 

「あの……」

 

「なにかしら?」

 

「あの……ロストロギアって、前にユーノ君から聞いた感じだとユーノ君たちの世界の古代遺産、っていう話だと思ったんですけど……。そんなに危険なものだったんですか……?」

 

なのはのその質問にリンディは何と言えばわかりやすいか少し考えてから、より詳しい説明を始める。

 

「そうね……。次元世界というのはいくつもの世界が重なって出来ているというのは知っていますね?」

 

「はい」

 

「それぞれに生まれて、それぞれに育っていく世界……。その世界の中でも、よくない方向に進化しすぎてしまう世界もある。

進化しすぎた文明や技術・科学がその世界そのものすら破壊してしまうこたがある……。

そうした滅びの後に残された危険な遺産を私たちは総称してロストロギアと呼んでいるの。この辺りはユーノ君から聞いたままの認識であってるわ。

でも、ここからが違うところ……。

そのロストロギア……。それらの使用方法は不明なことが多く、それらが使いようによっては世界・次元空間すら滅ぼす可能性がある危険な技術。

だから、それらはしかるべき手続きをもって、しかるべき場所に厳重に保管されていなくてはならない品物……」

 

そうだったんだ……。そういう訳で管理局が動いているのだということを理解した由宇はことの危険性を改めて認識した。

それと同時に2つの事柄が頭に浮かぶ……。

自分のしてしまったことの重大さを再認識するとともに、フェイトの集める理由がますます分からなくなった。

しかし、リンディの話はまだ終わっておらず続きを語り始める。

 

「貴方たちが探しているロストロギア。ジュエルシードについても先ほど調べさせてもらったわ。

あれは次元干渉型のエネルギー結晶体……。流し込まれた魔力を媒体として、次元震を引き起こすことのある危険物……」

 

「次元、震……?」

 

「そこの女の子とあの黒い魔導師の少女がぶつかったときに起こったあの爆発と振動……。あれが次元震だよ。

たった一つのジュエルシードですら、あの威力を持っている。しかもその威力は全威力の何万分の一に過ぎないという……。

しかし、その何万分の一ですらあれだけの影響があるんだ……。もしもすべてが、あるいは浮く数個という程度だとしても……その際に起こりうる影響は計り知れない」

 

「大規模次元震や、そのさらにその上の災害…。次元断層なんていうものすら引き起こす可能性もある。

もしも次元断層が起こったとすれば、世界の一つや二つ簡単に消滅してしまうわ……」

 

「聞いたことあります……。旧暦の462年…。次元断層が起こったときのこと……」

 

「ああ、あれはひどいものだった…」

 

「その次元断層の起こった世界と隣接するいくつもの並行世界が……。いくつも崩壊した……。歴史に残る悲劇…」

 

どうやらその際に、そういう知識を持たない者には想像もつかないほどのとんでもない影響がどこか別の世界で起きた。

【世界】という単位をまとめて吹き飛ばすほどの威力など、想像することなど普通では出来ない……。というよりも…ありえない、というべきだろうか?

 

「そんな事態は繰り返してはいけない……。防がないといけないわ」

 

だから……。とリンディが告げたのは……。

 

「これより、ロストロギア『ジュエルシード』の回収は私たち『時空管理局』が全権を担当します」

 

「君たちは今回のことは忘れて……。それぞれの世界に戻って、元通りに暮らすといい」

 

「そんな……!」

 

由宇は滞りを感じ、反論しようとするが……。

 

「ただ、君は別だアキゾラユウ」

 

「え?」

 

「君は、そのジュエルシードのエネルギーを狙っているという『カオスヘッダー』とかいうやつと戦う必要があるようだ。だから君にはこのロストロギアの件が片付くまでは僕らと行動してもらう」

 

「どうして、僕だけ…?」

 

「君とコスモスというウルトラマンの力はあまりにも強大だ。これまでのように勝手に動いて、勝手にあの黒い魔導師……フェイトという少女を手助けされるのは非常に困るんだ。

だから我々としては君を監視すると同時に、民間人にこんなことを言うのは管理局という治安維持組織の一人として言うのは非常に不本意なのだが……君とコスモスに〝協力〟を要請したい」

 

「だったら、ユーノやなのはだって実力的には十分でしょう……?」

 

「だから、言っただろう?君は特殊なケースだ。ウルトラマンという別の世界の戦士の力を持ってしまった君は……。少々言い方は悪いが、野放しにしておくわけにはいかないんだ」

 

それを言われてはもう反論できない。由宇は視線をクロノから外し、ユーノとなのはの方を見る。

ユーノはとても落ち込んでいる……。責任感が強く、それに加えて優しすぎるほどに優しい彼にとって、自分が見つけた物の後始末を誰かに任せることに滞りを感じているのだろう……。

なのはも納得しきれないようで抗議の声を上げる。

 

「でも、そんな……!」

 

「この事件はあまりにもレベルが違いすぎる。次元干渉に関するこの事件に一般的な民間人の介入は認めることはできない」

 

「で、でも………」

 

未だに承服しきれないなのはにリンディは優しく語りかける。

 

「まあ、急にこんなことを言われても気持ちの整理がつかないでしょうし……。今夜一晩…ゆっくり考えて、ユーノ君と二人でよく話し合って。

それから改めて……お話ししましょう?」

 

「…はい……」

 

「…送っていこう……。元の場所でいいね?」

 

「……はい」

 

「……ユーノ君………」

 

そうやって力なく答えるユーノに、なのはが心配そうな声をかける。

由宇もそんなユーノの様子に胸が苦しくなる……。

 

「ユウ。君は、後で送っていく。君のことは形式上監視対象ということになるので、申し訳ないがこの後いくつかの手続きをしてもらってから自宅に帰ってもらう。そして、できるだけ早く、もしよければ翌日から君にはロストロギア捜索に協力してもらいたい」

 

「……わかりました」

 

 

こうして、なのはとユーノを見送った後……。いくつかの手続きというのの為に別室へと行き、いくつかの書類に……といってもミッド語は読めないので(確かに英語とそっくりだが、文字の形がなんだか変なので読めない。そもそも英語なんて読めないだろう日本の小学生にここまで求めるのはかなり酷だと思いますよ……?)口頭での説明を受け、それらは要約するとだいたいこんな感じだった。

 

・魔法及び多元世界に関しては秘密にしておくこと。(地球は管理外世界の為、そういう情報を流してはいけないというなのだそうです)

 

・このロストロギア事件に関与するにあたって、監視対象---身柄が一時管理局預かりとなることに関する承認。(これに関しては仕方ないと割り切った)

 

・ロストロギアを悪用しないこと、および力の悪用をしないこと。(これは……。確認する必要あったのだろうか? まあ、ウルトラマンについてほとんど未発達なミッドチルダの人たちにしてみれば至極当然なのかもしれないが……)

 

そんな感じの簡単な手続き(実際はもう少し複雑)を終え、両親をこちらの協力のために説得してくれないかということを聞かれたので「分かりました」といった後、家に帰った。もし説得が難しい場合は、協力してくれるとのことだ。

由宇としても協力するのは望むところではあるし、監視対象といってもリンディ含めたほぼ全クルーが由宇を監視対象にすることにどこか思うところがあるようなので、そういうのをなくすように積極的にかかわろうとも思ったが……。

今はそれよりも、なのはとユーノのことが気がかりである……。

しかし…半強制とはいえども、協力することが認められた自分が協力したくても出来ない二人に何と声をかければいいのか分からず、結局二人に任せるという判断をとるしかなかった由宇は、自分がひどく情けなく思えるのだった……。

 

とはいえ、目先にある問題を先に解決しなくては何も始まらないため、由宇は急いで家に帰り両親の説得を始めなくてはならないと、家路を急いだのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

由宇がいくつかの手続きを受けていたころ―――

 

―――なのはとユーノはクロノに送られも解いて場所に転移し夕日が移る海を見ていた……。

しばしの沈黙が二人の間に流れる…。

そんな沈黙の後、先に口を開いたのはなのはだった。

 

「………。とりあえず…帰ろうか……?」

 

「……………。………うん………」

 

そのなのはの問いかけに返事をしたユーノ。

話をつなぎたかったのか、それとも純粋な疑問だったのだろうか…。なのはは改めて人間形態のユーノを見て、こんなことを聞いた。

 

「……んーと…? ………同い年、位……?」

 

「あ、うん…。たぶん……」

 

そしてその会話の流れに乗ったまま、ユーノもおずおずとなのはに質問をする。

 

「あ……えっと…、もしかして怒ってたりする……? その……そんなつもりはなかったんだけど……。何だか隠してたみたいになっちゃって……」

 

「あ、ううん……! びっくりはしたけど……それだけだよ?」

 

「えっと……、その……。ゴメン……。…ありがと………」

 

「あはは……」

 

そして二人は笑いあい……。その場にあったどこかぎこちない空気は完全に消え失せ、とても暖かい雰囲気が二人を包む。

そしてひとしきり気持ちが落ち着いたところで、ユーノは、とりあえず……。と言ってフェレット形態に戻る。

 

「取り敢えず…。普段はこっちの姿の方が便利そうだから……」

 

まあ、この星にいる以上……。今更人間として居候、というのは余計な混乱を招くだけだろうから、ユーノの判断は間違っていない。その代わり、また可愛がられる(もみくちゃにされる)ことになりそうだが……。

 

「うん、そうだね……。晩御飯食べて、それから二人で考えよう……。これから、どうするか………」

 

そうして家路につく二人の影を、夕焼けがどこまでも伸ばしていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

海鳴市の某マンションの…薄暗い一室にて――――

 

 

 

「もう駄目だよ……!管理局まで出てきたんじゃ、もーどうにもならないよ……」

 

アルフがフェイトにそういうと……。このジュエルシードの件が始まってから…ずっと元気がなかったフェイトはこの前の闘いから、酷く弱っていしまっている。

とてもじゃないが、これ以上戦うのは好ましくないし、アルフ自身……。そもそもご主人様のフェイトが、こんなにボロボロになるのを見続けるのなんて……もう絶対嫌だ。

しかし、フェイトは……。この幼い少女は使い魔であるアルフに優しく大丈夫だよ……、とつぶやく。

 

「大丈夫じゃないよ……!

あいつらが本気で捜査したら、ジュエルシードどころか…。ここだっていつまでバレずにいられるか……」

 

その通りだ。そもそも、一個人と組織では『戦い』にすらならない…。

負けるのが早いか遅いか、ただそれだけの違いだ。

それに加え、フェイトがいくら優秀で天才的な才能をもっていても……。彼女はこれほどまでにこんなにも弱っている……いや、これはもはや弱っているなんて生易しいものじゃない。いっそのこと『衰弱』と呼んだ方が正しいくらいだ…。

だから、アルフはフェイトにどうにか諦めてもらいたい。だから彼女は必死に懇願する…。

もう戦うのはやめよう…。いっそどこか遠くへ逃げてしまおうと……。

 

「それに、あの鬼ババ……。あんたのかーさんだって、わけわかんないことばっかり言うし…フェイトに酷いことばっかりする!

………あんな奴の為に、もうこれ以上……!」

 

「……母さんのこと、悪く…言わないで……」

 

「……っ!!」

 

この少女は……。あれほどに、あんなにも……『お仕置き』等と言う名目の元、たった9歳の少女相手に容赦なく文字通り鞭を振るうような母親に対しても……。彼女はどこまでも、本当に心の底から―――慕っている。

アルフはまだ知らないが、彼女はこの前に襲われたとき…。彼女自身も〝覚えのない〟『嫌な記憶』を見ている。

だが、それでも……!彼女は母がまた『あの頃』のように……笑顔になってくれたらという、どこまでも優しい理由の為に……戦うことをやめない。

 

だから、だからこそ……! アルフはフェイトを戦わせたくない。

 

理不尽の連鎖……何も悪いことなどしていないこの少女を巻き込み、押しつぶそうとする『悪意』のようなものの連鎖から……。彼女が世界で一番慕う…。不器用だが、どこの誰よりも優しいご主人様を…その冷たい檻の中から、解き放ってあげたくて……。

 

「いくらでも言うよ! だってあたし……フェイトが心配だ……。フェイトはあたしのご主人様で…あたしにとって世界で一番大事な子なんだよ……?

群れから捨てられて、死んでしまってもしょうがなかったのに……。フェイトはあたしを拾ってくれて……。使い魔にしてくれて……。

ずーっと優しくしてくれた…………」

 

アルフは懇願する。世界で一番愛しい主人の為に……。彼女にとって『世界で一番幸せにしたい人』の為に……。

もう戦うことを、やめてほしいと……。

 

「フェイトが泣くのも……。悲しむのも…………。あたし………嫌なんだよ…………!!!!」

 

その心を、フェイトは受け取る。彼女の可愛く愛しい使い魔である、アルフからのメッセージを……。

だから、彼女はアルフに感謝の言葉を贈る……。

 

「ありがとう……。アルフ………」

 

「じゃあ……!」

 

でも、それでも……。彼女は逃げない。

今度は、彼女がアルフにお願いをする番だ……。

 

「でもね……それでも私……。母さんの願いを叶えてあげたいの……。

あと、もう少しなんだもん……。最後まで、あともう少しだから………。

だから、アルフ……。……お願い………」

 

それを聞いても、アルフは納得しきれない。傷つくことを選ぶ少女を、ただただ支え続けるなら……。いっそのこと、このまま彼女をどこかへ…彼女を傷つけるもののいない世界へと……連れ去りたいくらいだ……。

でも、彼女の……。

フェイトの瞳の奥にある優しく温かい炎の方なものが…。アルフが一番大好きなご主人様の温かい視線が……。彼女の決意の固さと溢れんばかりの愛情を示している……。

その愛の深さ、決意の固さを、誰よりも見てきたアルフは……。

 

だから……アルフは…――――

 

「………うん…………」

 

――――とそう答えるしか…なかった……。

 

でも、体が認めても……。心は未だ割り切れておらず、口からは……彼女を止めることはかなわないと理解しつつも……アルフの心の叫びが、漏れ出していた……。

 

「……フェイトが悲しいと…あたしの胸も、ちぎれそうに…痛いんだ……。いつも…あたしも、目と鼻の奥がツンとして……どうしようもなくなる…」

 

「……私とアルフは、少しだけど…精神リンクしてるからね……。ごめんね……? アルフが痛いなら、私もう悲しまないし……泣かないよ……?」

 

アルフはそのフェイトの言葉に、対し首をフルフル、と振って否定する。

違う、違うんのだ……。

そうじゃ…ないのだ……。

 

「違う……。そうじゃないんだ……!

あたしは…っ。……あたしはフェイトに笑っていてほしい……。

…あたしはただ…フェイトに……幸せになってほしいだけなんだよ……!

なんで、なんで……わかってくれないんだよぉ……。

……どうしてもっと……自分を大切にしてくれないんだよぉ……?」

 

「ゴメンね……。ありがとう……。アルフ……。

でもね…? 私……。母さんの願いを叶えてあげたいのは……。母さんの為だけじゃない……。

きっと……――――――」

 

その言葉をアルフに告げようとした時に……。フェイトは何気なく、あの夜にあの少年から告げられた言葉を思い出した……。

 

何故こうしたのか? とうことを…。

 

何故そうしたいのか? ということを…。

 

そして――何故そうしてくれるのか? を……。

 

その意味を聞いた時のあの言葉を……。

 

 

(―――――――君が、僕にとって……。誰よりも何よりも大切に思えたから………。だから僕はこうしたいと思ったんだ……。

 

……ただ、それだけ……)

 

 

そういうことだと、彼は告げた……。

 

多分自分も、そうなんだ……。誰かの為でなく……。

今度は自分自身の為に、誰かに優しさを分ける為の戦いを始める。

 

だからフェイトは…。アルフを抱きしめながら、この優しい使い魔アルフに……。

こういった……。

 

「自分の為なんだ……。

私自身が、母さんを助けたいから……なんだ………」

 

どれだけ虐げられても、愛情を向けてくれないとしても……。

フェイトはアルフに告げる。

どうしても、そうしたいと……。

だから、もう一度だけ……。自分と共に頑張ってくれないか、とフェイトはアルフに告げた。

 

だから、アルフはその決意の元真っ直ぐに自分を見つめるフェイトをまっすぐに見つめて……。こういった。

 

「約束して……。あの人の言いなりじゃなくて……。フェイトはフェイトの為に……。本当に自分自身の為だけに頑張るって……。

そうしたら……。あたしは必ず……絶対にフェイトを守るから!!」

 

この優しいご主人様のことは…。誰であろうが……。

もう二度と、汚い『心』の渦で彼女を心を…優しさを……傷つけ、汚させるようなことはさせないと。

そうアルフは言った。

 

それに対しフェイトは、彼女に優しく微笑かけて……。

「……うん」とだけ答えたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

フェイトとアルフの対話が行われていたその頃、家に帰り着いた由宇は……父・宇幸(たかゆき)と母・由希子を前にして、事件にかかわるために家を空ける許可をもらおうとしていた……――――

 

 

「――――お願いします。父さん、母さん…。どうしても、どうしてもやりたいことが……。貫き通したいことがあるんです!

だから、お願いします……!」

 

由宇はテーブルを囲んで、父と母と向き合い、頭を下げていた……。

その必死の様子に、両親はただただ、驚いた……。

由宇は、それほど自己主張の強い子では無い。確かに、頑固なところ……。一度決めたことを貫き通そうとするところはあるが……。

ここまで必死な由宇を見るのは、この子を授かってからのこの9年間見たことが無い。

 

「ちょ、ちょっとユー…。いったいどうしたんだ?いきなり家を空けたいなんて……?」

 

「そうよユーちゃん、いったい……?」

 

「……さっきも言ったけど、どうしてもやりぬかなくちゃいけないんだ。僕にできることを……」

 

その真剣な声色に両親は何と答えていいものか、正直なところ迷っている。

まだ、小学三年生の息子が家を空けてまで、真剣に何かをしたいと追い出したのだ。

あまりの出来事の連続に、混乱状態のようになってしまう。

だが……。その真剣さには、本物の意志が宿っている。

だから父・宇幸は由宇にこう聞いた。

 

「……そのやりたいことは、危険なこと…なのか?」

 

「……、」

 

「……そうか」

 

沈黙は肯定……。息子がこれから行こうとしているのは、危険を伴う場所。

おまけに、家を空けてまでのことだという……。

行かせるわけにはいかない―――だが、この子は……。もう決めているらしく……その幼い瞳からはとても強い意志をこちらへ向けている。

 

両親は顔を見合わせ、しばし思案する。するとその場には、しばしの沈黙が漂う……。

 

その沈黙を先に破ったのは、父・宇幸だった。

 

「……もう、決めてるのか?」

 

「……うん。僕は、どうしても……救いたい子がいる。どうしても、やりたことがある。友達の手助けをしたい……例えどんなことがあっても……」

 

「……そうか」

 

その由宇の様子に、両親はついに折れた。

 

「……なら、一つだけ父さんと母さんに約束してくれ」

 

「……?」

 

「必ず、帰ってくると……」

 

その言葉を受けた後……。由宇は絞り出すようにはい……ッ、と答えた。

その様子を見て息子も怖いのだということを理解した…。

だから、宇幸と由希子は由宇を抱きしめた。

 

「ユーちゃんはいい子だから、約束を必ず守ることも引き受けたりやると決めたことをやり抜こうとすることは私たちが一番知ってる……。

だから、頑張って。そして帰ってきて?帰って来たらユーちゃんの好きな料理いっぱい作ってあげるから、ねっ?」

 

「……う…ん……!」

 

「お前の帰りをずっと待ってる。だから、どんなに時間がかかっても構わない……。だから。、必ず帰ってくるんだぞ?

ウルトラマンが現れるような世の中だ、何があるかなんて分かったものじゃないが……。私たちはずっと待っている。

そして私たちは…勿論由香もだが、お前がこれからどんな選択をして、何を成し遂げるのだとしても…。ずっとお前の味方だ……!」

 

「……うん……!!」

 

 

 

流れ出る涙をこらえながら、いったん部屋に戻り……。着替えやその他もろもろを用意し、部屋を出る。

すると、何故か起きてきた由香に声をかけられた……。

 

「あれぇ~…? お兄ちゃんまたどこか行くのぉ……?」

 

「……うん。今度はちょっと長くなるかもしれない……。でもね由香、必ず帰ってくるよ」

 

「……ホント?」

 

「うん、約束……。じゃあ行ってくるね」

 

「うん、いってらっしゃい。お兄ちゃん」

 

「うん。行ってきます」

 

 

そういって由宇が外に飛び出した後、一筋の光がこの街から一筋の光が宇宙へと飛び立っていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

フェイトとアルフが言葉を交わして、由宇が両親を説得し空へと飛び立った頃……――――

 

 

――――なのはとユーノもまた、今後についてのことを話した……。

 

そして、なのはとユーノはこの件にはどうしても関わりたい。何より、由宇やフェイトを放っておけない。

だから二人は、この件に関わるための承諾を得るためにリンディに直談判をすることにした。

内容は、大人相手に話しなれているユーノがすることになり……。なのははとりあえずユーノのことを信じて待つことに徹することにした。

 

 

 

「――――――だから、僕もなのはも……。そちらに協力させていただきたいと……」

 

「協力…ねぇ……」

 

通信のウィンドウ越しの指令室では、ユーノとの通信をリンディ・クロノ・エイミィの三人が見ていてその話しを聞いていた。

 

「僕はともかく、なのはの魔力はそちらとしても有効な戦力だと思います……」

 

言い方はなんだか言っていて気持ちのいいものではない。友人を、戦いの戦力だなんて称するのは…ユーノにとってはかなりはばかられるが…。

しかしここでしくじれば、協力の承認も取れず、自分を信じて交渉を任せてくれたなのはにも申し訳がたたない。

だから、ユーノはこれまでの経験全てを総動員して理詰め理詰めに説得を試みる。

元々早熟で、一族の中でも秀でていた才覚の持ち主のユーノは、この年ですでに発掘現場の総責任者すらしているほどだ。

秀才の彼が、大人の世界で生きて来るしかなかった彼が今。その経験をすべて利用して承諾の獲得を試みる。焦らず、要点をはっきりとさせて、尚且つ反論をさせないように注意を払い、しかし丁重に……。

 

そして、全てを話し終わった後のリンディの返答とは――――

 

「なるほど……。なかなか、考えてますね……。

……それならば―――まあ、いいでしょう」

 

――――承認・OK・許可。

 

兎に角、この件に関与する為の承諾をユーノとなのはは経ることができたのだった……!

 

しかし、クロノは一瞬反論しかけたが…。母であるリンディに「切り札は温存しておきたいし……ね?」と言われて、しぶしぶ引き下がったようで……。もう二人の協力に対し、誰も文句はつけない。

 

 

しかし、その際に守るべき条件は二つ。

 

・両名とも、身柄を一時管理局預かりとすること。

 

・そして、此方の指示を必ず守ること……。

 

この二つを守ることを条件に、二人の承諾はその時をもって完全なものになたった……。

 

通信を終えると、ユーノはなのはに許可が出たこと、そしてその際の条件についてを念話で伝える。

 

《なのは…! 決まったよ……》

 

《そっか…! うん…ありがとう……ユーノ君》

 

ユーノに感謝を伝え、今度は自分の番だとなのはは気持ちを切り替える。家族にこのことに関して、魔法とかそういう次元世界に関わることを伏せて説得し、アースラへ向かうための説明をしなくてはならない……。

 

(次は……私の番だね……!)

 

丁度その時、父・士郎と兄・恭也ガ公園へと稽古に行くということで、それに姉・美由希も付いて行くということで、丁度家には母・桃子となのは、そして自室にいるユーノの三人だけ……。

最初の相談をするなら……。絶好の機会、なのだろうが……―――

 

---―――やはり、何というべきか踏ん切りがつかない……。

 

しかし、母・桃子はそんななのはの変化はとっくにお見通しですよと言わんばかりに……。なのはの鼻先をツンッ、として「なのはは何か、相談事があるんでしょう……?」と優しく聞いてきた……。

 

「うん実は……――――」

 

これまでのことを、できる限り話す。それを最後までやり遂げたいこと、そしてそれが危ないことであるけれど……。大切な友達と始めたことだから、最後まで貫き通したいと。自分がどれだけ本気であるかも……。

だからそのために少し家を空けないといけないことも……。

 

「危ないかもしれない……。危険かもしれない……。でも…それでも……最後まで、やり通したいんだ……。

その……お母さんや…みんなにも…。心配かけちゃうかもしれないんだけど…………」

 

「それはもう……! いつだって心配よ? お母さんはお母さんだから……なのはのことがすごく心配!」

 

母・桃子のの言葉を聞き、少しだけうつむいてしまうなのは……。……だが、桃子はこう続ける。

 

「だけどね……。なのはがまだどっちにするか迷っているなら、危ないいことはダメよ……って言うと思うけど……。でももう決めているんでしょ?

お友達と決めたことを……。最後までやり通す、って……。

なのはが会ったその女の子と、もう一度話がしたいって……。

だから、お父さんやお兄ちゃんはお姉ちゃんは、ちゃんとお母さんが説得しておいてあげる。

だから行ってきなさい……。後悔しないように……ねっ?」

 

「うん……! ありがとう、お母さん!!」

 

「うん、行ってらっしゃい……」

 

 

そのあとすぐに部屋に戻り、準備をして……。ユーノと共に『アースラ』へ向かう為に夜の道を走った。

 

もう、後戻りはできない……。自分で決めた道、自分が本当にやりたいと決めたことを……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

そしてその後、次元船『アースラ』内にて……。

 

 

「――――というわけで…。本日零時を持って、本艦全クルーの任務はロストロギア---『ジュエルシード』の捜索と回収に変更されます。

また、本件においては特例として……。問題となっているロストロギアの発見者であるこちら---―――」

 

「はい、ユーノ・スクライアです」

 

「---――それから、彼の協力者でもある現地の魔導師さん……」

 

「高町なのはです!」

 

「以上二名が、臨時局員の扱いで事態に当たってくれます」

 

リンディの二人の紹介が終わると、周囲からよろしく、という声や拍手が二人に送られる。

そしてリンディは最後の一人の紹介に移る。

 

「そして最後に、本件のロストロギアと関連してはいますが……。少々特殊な形ゆえに、こちらは特別協力者という形での扱いになる……」

 

「秋宙由宇です。よろしくお願いします!」

 

此方にも拍手やよろしく、の声が上がり…。三人の協力者がこの『アースラ』に本格的に加わった。

 

 

 

 

こうして、ジュエルシードをめぐる戦いは……終局へと向かい加速していくのだった……。

 

 

 

 




 今回は、主人公たちが時空管理局にどうかかわっていくかを書きました。

 次話から少しずつオリ展開や、独自解釈の要素が増えていきますが、ご了承いただけたら幸いです。
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