魔法と光の使者   作:形右

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物語も佳境に入ってきました。

ここからオリ要素が多くなっていきますので、ご注意ください。


海上の決戦 『友――フレンド――』

 

 

 由宇たちが時空船『アースラ』に来てから、約十日が経過した…―――

 

その間に回収差したジュエルシードの数は全部で四つ。それに対しフェイトとアルフが手に入れたらしきジュエルシードは推定三つ ------ 。

 

全ジュエルシード 21個の内、 14 個は既に回収済み ---。

なのは・ユーノペアは六つ、フェイト・アルフペアは八個とそれぞれ入手済み……。

だが――――――そして残りの七つは未だに見つかってない……。

 

「残りは…七つ」

 

由宇は割り当てられた部屋でそんなことをつぶやいた。いったい残り七つはどこにあるのだろうかということを考えていた。

 

そこで、探していない場所に視点を向けてみる。

 

これまでに探したのは、陸・森・町……。あと探していないのは―――――

 

答えは意外と単純だったのかもしれない。この星における表面積の約七割を占めている巨大な領域があるではないか。

 

「―――――海、か……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

由宇が部屋でそんなことを考えていたころ……。

食堂ではなのはとユーノがこの船で評判のいい『アースラ』食堂特製クッキーを食べながら話をしていた……。

 

「はー今日も空振りだったね……」

 

「うん……。もしかしたら………結構長くかかるかもね……」

 

ユーノはすまなそうな様子でなのはに聞いた。寂しくないか、と。また、家族や友人に会えなくしてしまい済まないとそういった。

 

「なのは、ゴメンね……。家族とか友達に会えなくて……。寂しくない?」

 

「別に寂しくなんてないよ? ユーノ君やユー君もいるし……。ほかにもリンディさんや、クロノ君。エイミィさんたちもいるし」

 

そんなことを言いながら、なのはは、昔を思い出して、割と一人でも平気だとユーノに告げる。

 

「うちね? 私がまだちっちゃかった頃……。お父さんが仕事で大けがしちゃって、しばらくベットから動けなかったことがあるの」

 

その頃、彼女の家は現在では海鳴市でも有名な喫茶店「翆屋」を遣っているが、その頃はまだ店を開いたばかりで母・桃子は忙しく兄もそれを手伝っており、なのはにかまってあげられなかった………。

それでは姉の美由希はどうしたのかというと。父・士郎につきっきりで、姉・美由希もなのはにかまう暇はなかった……。

なので彼女は家ではもっぱら一人でいることが多く、今ユーノに語るまでは誰にも言わなかったことだが……。彼女は割と最近まで、寂しい思いをしていたのだ。

だから、ある意味ユーノはなのはにとって、かけがえのない存在になっていると言える。

いつでも一緒にいてくれるから……寂しくない。どんな時でも一緒にいてくれて、安心できる存在。そんなユーノと一緒にいるのがなのはは好きだった。

 

「だから、結構慣れてるの………」

 

「……そっか………」

 

その時なのははふと思った……。

ユーノの家族はどうしているのか、ということをこれまで聞いたことが無かったと……。

 

「そういえば私……。ユーノ君の家族の事とか………あんまり知らないね」

 

「ああ、僕は元々…一人だったから………」

「あっ、そうなんだ………」

 

「両親はいなかったけど……。部族のみんなに育ててもらったから、スクライアの一族のみんなが僕の家族」

 

「……そっか」

 

 そして少しだけ、沈黙が漂った後……。なのははユーノにこんなことを聞いた………。

 

「 ………ユーノ君……。色々片付いたら……。もっとたくさん……お話ししようね……?」

 

「……うん。色々片付いたら………ね」

 

 だが、二人は薄々気づいていた………。

 色々片付いたら―――――このジュエルシードの件が片付いたら……。

 たぶん、二人は……元の世界に戻され、離れ離れになることになるかもしれないと………。

 

 二人は、そのことを必死に仕舞い込む。今それを考えても、仕方がないから……。

 

 だけど、もし……。

 もしもまだ、一緒にいられるのだとしたら………。その時は、きっと――――――――

 

 その時。『アースラ』の艦内に、けたたましい警報が鳴り響いた………。

 

 その警報が告げたのは――――『捜索区域海上にて、大型の魔力反応確認』という知らせだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

『捜索区域海上にて、大型の魔力反応確認』

 

 

 その知らせはおそらく……。ジュエルシードとフェイトを見つけたことに関するものだと由宇は確信し、由宇は慌てて指令室へと走っていき…現在の状況を確認しようとする………。

 

 そして指令室で由宇が見たのは、指令室のモニターに映し出されたフェイトの映像……。

 

 荒れた海上で 必死に水柱をかわしている彼女の姿にこれは一体どういうことなのかをリンディやクロノ・エィミィに目線で問うと…。

 

 なんでも説明によると、残り全てのジュエルシードを見つけ出し…尚且つその全てを封印する為に……。彼女はとんでもない量の魔力を海に撃ち込んだということらしい。

 

 とはいえ、こんな状況でフェイトを放っておくわけにはいかない……。

 

「僕が出ます。彼女を止めて、連れて帰ります。勿論ジュエルシードも回収して……」

 

「その必要は無い」

 

「なんでですか!?」

 

「放っておけば、いずれあの子は自滅する。そこを取り抑えれば良い……。もし仮に自滅しないかったとしても、弱りきってる彼女を捉えるのは造作も無い」

 

「そんな……!」

 

 そこで会話を切り、フェイト捕獲の用意を始めるクロノ。

 その間にも、フェイトは刻一刻と弱っていく……。彼女のデバイス『バルディッシュ』の刃の部分…フェイトの魔力光である美しい金色の輝きが次第に薄れていく……。

 

 そこへ遅れてやって来たなのはたちもこの譲許に滞りを感じているようだ……。

 

 こんなのあんまりだ……。たった一人の女の子相手に、ここまでするのか……?

 

 すると、そんな由宇の思いを読み取ったのか……。リンディが由宇にこう告げる。

 

「残酷に見えるかもしれないけれど、これが最善……」

 

 これが……最善?

 違う、こんなの最善じゃない……。最善なわけがない。

 

 今、誰も彼女―――フェイトを助けようとするものは一人もいない。

 彼女の言っていた『大切な人』とやらも、姿を見せるわけでもない……。

 

 ………ならば、どうする?

 

(そうだよ……。答えは決まってるじゃないか……。この世界の誰よりも、君のことが大切に思えたから………。

 だから――――――僕が君を助けるよ)

 

 由宇はリンディとクロノに先に謝罪をする。

 

「ごめんなさい。僕は………行きます。言ってあの子を助けます!」

 

その言葉と共に、コスモプラックを取り出し構える。

 

「おい君! 勝手なことは…!!」

 

「説教や罰なら後でいくらでも受けます……。でも、僕はあの子のことがほおっておけ無いです…。見殺しにはできません…。あの子は優しい子なんです……だから、こんな風になってる彼女を助けずにはいられません!」

 

「待つんだ!!」

 

 クロノが制止しようとするが、由宇は既にコスモプラックを天に突き上げていた。

 

「コスモース!」

 

「うわっ……!?」

 

「まぶしい…!」

 

「ユー君……!」

 

 なのはやユーノも、クロノ同様その場を覆ったとてつもない光の輝きに目がくらんでしまった。

 そしてその間に……。光は、フェイトのいる海上まで飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 その頃……海上ではフェイトが四苦八苦しながら、どうにかジュエルシードが宿った水柱を避けている。

 水柱はまるで意志を持っているかのように、フェイトを襲う。

 

「……くッ………!」

 

 どうにか体制を立て直そうと、攻撃を試みるものの彼女に残されたエネルギーはもう後僅かしかない…。

 したがって、彼女の攻撃はその水柱を切り裂くどころか反対に弾き飛ばされてしまう……。

 さらに劣勢に劣勢を重ねる様に、彼女のデバイス『バルディッシュ』のサイスフォームの刃―――魔力でできているその刃は次第に輝きを薄れさせ……フェイトの魔力光である金色の輝きが、失われていく……。

 

「ハァ……ハァ……ッ」

 

「フェイト……ッ!」

 

 彼女の使い魔のアルフは、どうにかフェイトに近づき援護したいのだが……。

 七つすべてが同時に発動したジュエルシードの威力はすさまじく、おまけに彼女がフェイトに近づこうとするのを〝阻む〟かのように動く……。

 

 そんな現状にアルフは歯噛みする……。主人であるフェイトを、今度こそ守ると決めたのに……何もできていない。

 そんな現状がとても悔しく、情けない……!

 

 

 そんな万事休すかと思われたところへ、一筋の光が飛来する……。

 

 その光は、フェイトとアルフを掬い取るように水柱の間を抜けその影響の及ばない場へと高速で移動した……。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「……ん……?」

 

 

 ここはどこだろうか……?先ほどまで海上にいて、ジュエルシードを封印するために躍起になっていたはずなのに……。どうしてこんなところにいるのだろう……。

 

 辺りを見るが、何かがあるわけでもない。

 

 そこで、先ほど何が起こったのかを改めて考えてみる……。

 

(確かさっき……。水柱に弾かれて、海に落ちそうになってたところを……何だか分からない光に――――!?)

 

 そこでようやく思い出した。

 彼女は、先ほどなんだかよくわからない光に飲み込まれたのだった……。

 

 光に包まれるという現象に、いいイメージと悪いイメージが同時進行ごちゃ混ぜなフェイトにとって、あまりこういった体験は好ましくないように思えるのだが……。

 この光はなんだか、彼女の心を落ち着かせるような印象を受け……とても心地いい気分になる……。

 特にこれと言って、根拠があったわけではない。

 なんとなくそう感じた。ただそれだけなのだが、そうすると益々この空間と光は何なのだろうか?

 

「安心したよフェイト、どうやら間に合ったみたいだね……?」

 

「!?」

 

いきなりの声に驚いて振り返ると、先ほどまで誰もいなかったハズの空間に一人の少年が立っていた……。

 

「やあ、元気……って訳ではないよね、やっぱり…。あんな戦いしてたみたいだし……」

 

「あ……えっと……うっ……」 ガクッ

 

 フェイトは返答に困って、とりあえず目線だけでも合わせようとして立ち上がろうとした。だが……ボロボロになった彼女の体は立ち上がることさえ難しいほど疲労していた。動き回った状態から、一気にリラックス状態になったために体の動きが鈍くなっていたのだった……。

 

「……こんなにボロボロになっちゃって、無理しすぎだよ……」

 

 そういって少年はフェイトに手をかざすとコスモスの技の一つ『ヒーリングシャワー』を彼女に当てた。

 

「傷が……」

 

 ほぼ一瞬でフェイトの傷は治癒してしまった。そして少年は立てる? と聞くとフェイトに手を差し出す。フェイトはその手をためらいがちにとり、立ちあがるが……傷は治って、経てるようにはなったものの…。体力は回復していないようで、フェイトはまだふらふらだった。

 

「じゃあ…次は体力を回復しないといけないかな……?」

 

「えっ……?」

 

 そういって右掌を前に出し、彼女に次の技を当てる。

 『エナジーシュート』と呼ばれる相手にエネルギーを与える技だ。

 それを受けたフェイトはたちまち魔力・体力共に完全回復した……。

 

「凄い………!」

 

「あ、あとアルフも一緒に助けたんだ」

 

そういうと、アルフがこの場に現れる。

 

「フェイト……!」

 

「アルフ……」

 

 少年はそう言って抱き合う彼女たちを見ていたが、アルフにもエネルギーを飛ばし、先ほどの傷を治して全快させた。

 

「凄いね……こりゃあ……!いつも助けてもらってすまないね……」

 

 アルフはその治癒に感嘆の声を漏らし、少年を見て礼を言った。

 

「いいよ、好きでやってるから。……さて、フェイト・アルフ。君たちは、まだジュエルシードを?」

 

「………やっぱり今回は、君も敵…なんだね」

 

 フェイトはいつも何かと助けられているためか、少年に刃を向けることを少し戸惑っていたが……恐れでも母の為にジュエルシードが必要な彼女は、由宇に刃を向けた。

 

「……確かに、今回僕は管理局の側についているし、ジュエルシードを七つ纏めて発動しているこの状況でおとなしくする気はさらさらないよ。

 さもないと僕の大切な人たちの命に関わりかねないから………。

 でも、僕はまず君を助けたかった。これもまた本当だから、君には好きな方を選んでもらいたいな。ジュエルシードを止めるのに協力してくれるか、それともこのまま自滅して管理局につかまるか……どっちがいい?」

 

 少年は我ながら嫌な質問をぶつけているという自覚のためか、ばつの悪そうな顔をしていた。

 

「………私は…………」

 

 フェイトが答えに詰まってしまったその時………。桜色と緑色の光が、二つ会場へと新たに降り立った。

 

「やっぱり来たね………。なのは、ユーノ……」

 

「あの魔力光………あの子が…」

 

 さてどうしたものかと、少年は頭を抱えるが……その時。

 

 なのはたちとは別の光が、こちらへと向かってきていることに気づいた……。

 

 どうやら、増援はいい意味でも悪い意味でも行われたようだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 由宇が飛び立った後、なのはも後を追いたかったがあいにくなのはには一気に飛び立っていけるような力はない……。

 どうすればいいか悩んでいると、ユーノがゲートを開くと言ってくれたのだった……。

 

《なのは……行ってあげてあの子のもとに》

 

《でも、ユーノ君……私がフェイトちゃんとお話ししたいのはユーノ君とは………》

 

《確かに、関係ないかもしれない。でも、僕は……なのはが困ってるなら、助けてあげたい。なのはが、僕に…そうしてくれてるみたいに》

 

《ユーノ君………!》

 

《行ってあげて、僕もすぐに行く。君たちのサポートを全力でするから……行ってあげて?》

 

《うん……!》

 

 そう、誰かが誰かを助けることに関係なんていらない。ただ、困っているから……。苦しんでいるように見えるから、助けたい。

 理由なんて、そんなものでいいのだ……。

 

 なのはは転移ゲートへと走る。

 

「!? ……君もか!?」

 

 クロノはどいつもこいつも……!といった具合に怒っているようだ。

 だが、なのはもユーノも止まらない。

 

「ごめんなさい……。高町なのは……指示を無視して、勝手な行動をとります!!」

 

「あの子の結界内へ……転送!」

 

 

 こうしてなのはとユーノは、局員たちの制止を振り切ってこの場にやって来た……。

 

 その海上の空中にとどまっていた光から、フェイトとアルフ、そして人間大のコスモスが出てくる。

 

 そして、コスモスから由宇の声が聞こえ、なのは・ユーノ、フェイト・アルフにそれぞれ告げられる。

 

《なのは、ユーノ。あれは早く封印しないとかなりまずい状態になっていて……。今もどんどんエネルギーが増してる。

 フェイトとアルフも、本当に四の五の言ってられ無い状況になっちゃったんだ。悪いけど協力して、早く封印を!

 カオスヘッダーがこっちに迫ってい来てるんだ……!》

 

「えっ……!?」

 

「カオスヘッダーが……!?」

 

「カオス……ヘッダー……?」

 

「あおのカオスなんちゃらって…何のことなんだい?」

 

《この前二人も見ただろう?あの光の粒子の渦を……あの粒子はカオスヘッダーっていう光のウィルスでとても危険な相手だ……。

 そしてカオスヘッダーの狙いは、ジュエルシードの持つ莫大なエネルギー……。

僕が、カオスヘッダーを止める!だから、みんなは協力してジュエルシードを早く止めるんだ!!

 さもないと、きっととんでもないことになってしまう……!

 頼んだよ!》

 

 そういってカオスヘッダーの方へと向かうコスモスを見送りながら、その場に残った4人は。今は、協力しなくてはならないことを理解し……。ジュエルシードの封印を優先させることに決めた!

 

 

そして、みんなを信じジュエルシードは任せて、カオスヘッダーがみんなのもとへ行くのを阻止するために……由宇はカオスヘッダーのもとへ急いだ。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 ジュエルシードの発動した場所から少しばかり離れた平地で、コスモスとカオスヘッダーは対峙した。

 

 今度はいったいどんな力を乗っ取り、攻めてくるのかと思ったが……。そこには何もなかった……。

 

――――――いったいカオスヘッダーはどうやってコスモスと戦うつもりなのか…?

 

 しかし、その考えがいかに甘かったかを由宇とコスモスは知ることになる……。

 

 カオスヘッダーは……結果として何にも憑りつくことはなかった……。

 

 しかし、その代わりに……。彼らは今まで持たなかったものを手に入れていた。

 

 そう、『実体』というものを手に入れて……!

 

 

――――――ワレワレハ、『ココロ』ヲシッタ。……コスモス、オマエハ『テキ』ダ。コスモス……オマエガ、ニクイ……!

 

「!?」

 

 カオスヘッダーが、明確な言葉を意志を持ちコスモスに語り掛けてきた…。

 

―――――お前が、憎いと……!―――――

 

 

――――――コスモス。ミルガイイ……コレガ、『ニンゲン』ト『ココロ』ヲシッタ…ワレワレノ、スガタダ……。

 

 

 そういってカオスヘッダーは、以前とは違う渦を巻き起こし……。

 体を自ら作り出して、コスモスをにらみつけていた……!

 

 実体カオスヘッダーがここに誕生した……。

 その姿は、人の負の感情を体現するかのような禍々しいもので……まるで悪魔の姿を借りたかのようにも見える……。

 

 カオスヘッダー・イブリースの誕生である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

ついに自らの体を得たカオスヘッダー。

悪魔の王のごときその姿は、まるで幻影のような姿をしていて以前ジュエルシードの異相体と融合したときよりもさらに禍々しい姿となった。

 

―――コスモス。オマエガニクイ……!

 

「!?」

 

ついに自らの体を手に入れたカオスヘッダーは、その過程で人間から『心』や『感情』を「学習」し、自らの『自己』を得た…。

より生物に近づこうとしたカオスヘッダーは、そういう過程を経て――自らの…カオスヘッダーという単体としての『実体』を得た。

 

しかし、コスモス・由宇も怯んでばかりもいられない。

ここから先にはいかせない。この先にはユーノやなのは……そしてアルフやフェイトがいる。

彼女たちは今、ジュエルシードを封印しようと戦っている……。

だから決して、彼女たちの邪魔は――させない……!

 

「シェアッ!」

 

「グゥオオオォ……」

 

こうして、二者のにらみ合いが始まり、大地を揺るがすほどの衝撃を秘めた戦いの幕が開いた。

 

二者のぶつかり合いの最初の軍配はイブリースに上がった。

 

しかし、コスモスも負けずに反撃を仕掛け、イブリースに攻撃を当てていくが……。

 

「ディアッ!」

 

「グォアアァ……ッ!」

 

コスモスの一撃をかわしたイブリースは、その鋭い爪をコスモスに突き刺した。

 

「フォアッ!?」

 

その突きの後、イブリースは次の攻撃へは移らず、鉤爪を抜かずにそのままコスモスを押さえつける。

……すると、コスモスの傷口から流れ出る光を吸収していく。

そう……。今まさにカオスヘッダーは、コスモスの力を『分析』している。

その情報を彼らの相対的な意識のもとへと送り、コスモスの力を彼らの中に情報としてインプットしていく。

 

自らが『テキ』として認識したコスモスを、確実に倒すためにカオスヘッダーは、コスモスの情報をコスモス自身からかき集めていく。

 

このままでは、ダメージは蓄積するばかり。

おまけに力の全容を解析されれば、いかにコスモスと言えども危ういだろう……。

 

やられ放題になっていたコスモスだが、今イブリースは解析に集中していて隙ができていた……。

その一瞬を狙い由宇とコスモスの意識を重ね、片手に力を集め……わき腹に刺さっていたその鉤爪に手刀を振り下ろす……!

 

ガギンッ! という音共に、刺さっていた鉤爪に振り下ろした手刀がその鉤爪を真っ二つにへし折った……。

 

イブリースはその反撃に動揺し、コスモスから距離を取って体制を立て直そうとした……。

 

それが、カオスヘッダーの今回の敗因だろう。

 

そう。カオスヘッダーは実体を持ち、初めて自分だけで味わう痛みを知った。

そのため、生物なら当たり前の感情。危険からの逃走を、彼らが今まで無視していたその行動をとった。

 

その隙を、決してコスモスと由宇は見逃さなかった。

 

「デュアッ!」

 

その隙に、コロナモードへとモードチェンジをした。

 

それを見て、体制を立て直そうとするイブリース……。

だが、コスモスの攻撃はそれを許さない。

 

実体を知ったばかりのカオスヘッダーは、動揺や逃走……そして、体制の立て直しという、『生物』としての戦いの基本を……。『感情』というものがまだよくわかっていない……。

『心理』を知ることは、同時にカオスヘッダーにも生き物としての戦いへの恐怖を与えたのだった。

 

それに……。―――――

 

――――――お前はまだ、人間の『心』を理解しきれてい無いんだ。カオスヘッダー!

 

――――――ナ、ニ……?

 

――――――確かに、人の心には【怒り】や【憎しみ】……【恐怖】がある。でも、人の心にはそれだけじゃ無く…もっと温かくて、時には理屈さえも超えてしまえるような……。そんな【無限の可能性】という……。【希望】が宿っているんだ!

 

――――――キ…ボウ……? ――……!?」

 

その時、カオスヘッダーは〝あの時〟理解できなかった物。再び自分たちの気づけなかった……そして、気づけなかったものが。今再び彼らのキャパシティーを埋めていく……!

 

――――――コ、レハ……コノヒカリハ……!? アノトキノ…………。コレハ、イッタイ…ナンナンダ!?

 

あの時、カオスヘッダーはフェイトと由宇の心を探り、暗い感情……。【怒り】や【憎しみ】といったものを知った……。

しかし、あの時それらと同様に見た『温かい気持ち』に気づけず…それらを理解することができなかった。

 

 

「グォオオオオーーー!?」

 

――――――それが、今のお前たちの限界だ……カオスヘッダー!

 

「フゥアッ! ディィヤァァァーーーッ!!!!」

 

 そして由宇の言葉とともに、コスモスガ構えに入り……。コロナモード最大の光線である『ネイバスター光線』が、カオスヘッダー・イブリースに叩き込まれた!

 

「グウォオオオオオオオオオアアアアアアアア!!!???」

 

断末魔の叫びを残し、イブリースは消滅した。

 

それを見届けると同時に、コスモスの胸のカラータイマーが点滅を始める。

先ほど受けた傷や全力で撃ったネイバスター光線の影響か、点滅はすでに早かった。

直ぐにでも元に戻らなければならないが、それを妨げるかの如く……。

 

空が……雷鳴を轟かせ、普通ではあり得ない紫色の雷が発生させている。

 

しかもその雷は、まるで意志を持っているかの如く……。ジュエルシードのある方向にのみに集中して発生している。

 

嫌な予感がする。

 

ただの勘だが、由宇はジュエルシードのある方向……。つまり、彼の仲間たちのいる方向へと飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

由宇が、カオスヘッダー・イブリースとの戦いへと向かったあと……。

 

協力することを決めた4人は、ユーノ・アルフのサポートペアとなのは・フェイトの砲撃ペアに分かれ、ジュエルシードを封印するために動いている。

 

「僕たちは、なのはたちのサポート、全力でいくよ!」

 

「ああ…!」

 

ユーノとアルフの、チェーンバインドがジュエルシードが発生させている水柱を押さえつける。

 

そしてそれを一撃で封印するために、なのはがフェイトにこういった。

 

「フェイトちゃん、ユーノ君とアルフさんがサポートしてくれてる……。私たちも、一気に封印……いけるよね?」

 

「…分かった……」

 

「うん……!」

 

フェイトが、なんだかなのはに微笑んだように見えた……。

 

だから、なのはは笑顔で……フェイトと協力して一気に封印するために勢いよく空中へと飛び出した。

 

その時、なのはは空を駆けながら……。何だか、分かった気がした。

 

皆がいてくれる。

一緒に戦ってくれる。

 

一人になってしまった時や、寂しいと思ったとき……。

してほしいことは……。したいことは……。

 

誰かに…。大丈夫? と聞いてもらうことでも、ただ優しくされることでもなくて……。

 

そういう時にしたいこと……。そして、伝えたいこと……。

 

(私がフェイトちゃんに、伝えたいこと……ちゃんと話したいこと……)

 

 

それは、きっと……――――

 

 

フェイトと並ぶようにして、なのはは、彼女のデバイスである『レイジングハート』を《カノンモード》へと変形させる。

そして彼女の足元に彼女の魔力光である桜色の魔法陣が展開される。

 

「ディバインバスターフルパワー! ……一発で封印、いけるよね?」

 

【当然です】

 

「せーので、一気に封印……!」

 

それを聞きフェイトも『バルディッシュ』を《クレイブモード》に変形させる。

そして魔法陣を展開させると、彼女の周りに金色の紫電が走る。

 

 

そしてついに、二人が封印の体制に入る……!

 

 

「せぇえーーのっ!!」

 

 

 

「サンダー……!」

 

「ディバイーン……!」

 

 

二人のデバイスへと一気に魔力が集まり……。

 

 

「レイジィィーッッ!!!」

 

「バスタァァーっっ!!!」

 

 

二人の魔力が全力全開で放たれた!

 

 

そしてその二人の魔力は……暴走していたジュエルシード7個すべてを包み込んだ。

 

 

それを見ていた『アースラ』の指令室では皆、なのはとフェイトの攻撃に対しての感想は驚愕の一言だった……。

 

「凄い…! ジュエルシード7個一発で完全封印!」

 

「こんなデタラメな……」

 

「でもすごいわ……!」

 

二人の攻撃を見て……。エイミィは歓喜し、リンディは感心して、クロノはあきれていた……。

 

 

 

 

そして、封印されたジュエルシードの前に立ち……。なのははフェイトに、彼女に言いたいことを…伝えたいことを……真っ直ぐに向き合いながら……。

 

「フェイトちゃん。私……フェイトちゃんに言いたいこと……やっと決まったんだ」

 

「……?」

 

「私は、フェイトちゃんとお話ししたい。いろんなことを話し合って……伝え合って……そして―――」

 

 

―――友達に……なりたいんだ………。

 

「友……達……?」

 

 

しかし、その時……。ジュエルシードが封印されたことで、明るさを取り戻したはずの空が……。再び黒く染まり……紫の雷が轟き始め、紫電が周囲に走り始める……。

 

 

 

 

 

再び漆黒に染まった空にユーノは、何事かと思ったが……隣にいるアルフには何か心当たりがあるようなそぶりを見せている。

 

 

 

 

なのはもまた、一体何事かと思ったが……。この状況がいったい何がどうなってこうなっているのか分からない。

そこでユーノに聞いてみようかと思い、ユーノたちの方を向こうとしたととき……。

 

視線の端に、青ざめたフェイトの顔が見えた……。

 

「フェイトちゃん……?」

 

 

 

その時、呼びかけられたフェイトはその雷を見て……。

 

何かに怯える様にして……………小さくつぶやいた………。

 

 

 

「か……母さん……………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

コスモスは……。というよりは由宇は、今のこの状況がよくわからないので皆のもとへと向かった。

そして、みんなのすぐ近くまで来たとき……。コスモスとなっている由宇の通常の何倍にも強化された聴覚にフェイトを心配しているらしきなのはの声と、フェイト自身のつぶやきが届いた。

 

 

『フェイトちゃん……?』

 

『か……母さん……………?』

 

というつぶやきが……聞こえた。

 

母さん?

ということは、この雷雲は彼女の母親が作り出したものなのだろうか?

でも、一体何のために……?

ジュエルシードは既に封印済みだ。これ以上の攻撃は必要ない。

仮にカオスヘッダーに向けられて用意されたものだとしても、カオスヘッダーは自分とコスモスで追い払った。

――だというのに……。この黒い雷雲は収まる気配は全くない。

むしろ……余計に広がっているくらいに感じる。

 

 

そんなことを考えたその時、なのはとフェイトのいるあたりに……あろうことか落雷が降り注ごうとした……!

 

(!? まずい……!!)

 

二人は先程の全快砲撃の影響で、でへとへとになっている。おまけにフェイトは無茶をして、回復してからの前回放出をしたのだ……精神的疲労はなのはよりも多いのは間違いない……!

 

だから、非常にまずい……。この状況は、今の彼女たちには相当まずい。

 

だから由宇はそのまま、彼女たちに降り注ぐ雷と彼女たちの間へと立ちふさがった……!

 

その結果、雷はコスモスの体へと直撃する……。

 

とっさのことでバリアを張ることもできず、その背に雷が直撃し……カラータイマーの点滅が急激に速くなり、けたたましい警告音が周囲へと鳴り響く……。

 

 

ピコン ピコン ピコン ピコピコピコン ピココ ピココ ピコ…ン

 

 

そして……ついに――――

 

――――フッ……、という音と共に、コスモスの胸に光るカラータイマーの光が完全に消え去り……由宇はもとの姿となり、海上へと落下した。

 

この時の彼が最後に見たのは……。雷を受ける自分を、目を見開いて見ているなのはとフェイトだった……。

 

 

 

 

 

この後のことを、由宇は何も知らない……。

 

後に人づてに聞いたところによると、海上に落下しそうになった由宇をフェイトが抱えて、アルフと共に連れさったのだとか……。

それも――――せっかくなのはと共に封印した…七つのジュエルシードと共に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

どこかの次元の庭園のような場所……。

 

「……こんな子供が、あの巨人…。あの強大な力を持っているのに、なぜあんな〝人形〟を守ろうとしてたのか分からなかったけど……合点がいったわね。

子供だから……無我夢中で誰かを守ろうとする。というわけなのね……」

 

 

 くだらない……。

 その場その場の正義感や思いやりで、わざわざあんな〝人形〟を守ろうとして―――

 

 ―――だが、待て。あの巨人のエネルギー……何かに使えないだろうか……?

 

自らが、回収を命じたジュエルシードの力の補正役として…丁度いいのではないだろうか……?

あの力はどうやら、不安定なものではなく、とてつもなく安定していて。尚且つそれが、マイナスの方向には決して行かない……。

 

そんなエネルギーを手に入れられたとしたら――――――

 

――――――おまけに丁度良く、フェイトがあの少年を抱えている。

 

その人物は、モニターをコスモスの闘いの様子をからコスモスの放った光線やエネルギーについての解析をするための画面に切り替えた。

そして、その場にいる……フェイトに念話を送る。

 

《フェイト……。早くジュエルシードを回収なさい。あと…その男の子を、ここへ連れてきなさい》

 

《えっ……どうして……?》

 

《ジュエルシードの発動に、その子の持っている光の力……。それを借りたいの。だから連れてきてくれる?

――――それに、あなたの怪我を治してくれたのは彼なんでしょう……?》

 

《あっ……はい…。……分かりました…………〝母さん〟》

 

そう言って、彼女は念話を切った。

 

モニターにフェイトの様子を映し出してみたが、どうやらジュエルシード七つすべて回収に成功したようだ。

 

「ふふふ……。あの子はお礼でもするつもりだと思っているようだけど…確かにこれなら、あの男の子にお礼をする価値も……あるかもしれないわね?

なんていっても、ちょうどお仕置きついでに邪魔者を一掃しようかと思ってたのを……。わざわざあの人形まで庇ってくれたおかげで、残りのジュエルシードが全ては手に入ったのだから……!」

 

 そういって笑うその人物の口元には、狂気じみたものがにじんでいた……。

 

 

 

 たいして期待できないと思っていた〝人形〟は偶々現れたイレギュラーのヒーロー気取りの子供に助けてもらったおかげで、ジュエルシードの残りは全て自分の手に……!

しかも、自身で回収して万が一にもこの『庭園』の位置をバラすと面倒極まりないというこの時を狙っていたかのように……。

これで場所を移すこともなく、準備を進められる。

後はあの白い少女と翡翠の少年の持ってる七つを手に入れるかどうか程度……。

 

 これで手に入ったジュエルシードは、計14個……。次元震を起こすだけなら、もはやこれで十分だ。

この計画の最低条件はとっくに満たしている。

 おまけに丁度良い塩梅の〝緩和剤〟まで手に入った。

 

面白いくらいに、計画が思い通りの方向……。当初描いた理想に近い形で進んでいる……。

 

モニターに映る少年を見て、その人物はこういった。

 

 

―――本当にヒーローさまさまね……。

 

 

と、そういったのだった……。

 

 

 

 





主人公誘拐! で終わりましたね。

次回からはもう何と最終回前後編に入っていきます。

早すぎ、な気もしますが……頑張って書きましたのでよろしくお願いいたします。
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