魔法と光の使者   作:形右

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では、無印最終回でございます。


それではどうぞ!


決戦・時の庭園 《後編》 『ラストファイト』

 

 

 

 

 

前に進むことを決めたフェイトはクロノ・なのは・ユーノに続き、彼女の使い魔であるアルフと共に、彼女の母…プレシアの――そして彼女にとって、一体何といえばいいのか……クローンとしてのオリジナル・母が自分を身代わりにしたその元の存在。アリシアの待つ『時の庭園』へと飛び立つ。

そしてそこには――『あの少年』も待っている……。

 

 

自分も行くと答えたとき、みんな驚いていたが……行くことを快く了承してくれた…。

 

アルフは彼女が前に進もうとしてくれたことに喜び、真っ白な魔導師の少女や、翡翠の瞳の少年や、漆黒の執務官も彼女の参戦を笑顔で迎えた。

 

 

 

そして、5人は『時の庭園』へと飛び込んでいく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

『時の庭園』の入り口へと降り立った若き魔導師たち……。

 

 

 

そんな彼ら・彼女らを待ち構えていたものは、大量の魔導兵士。プレシアの魔法で動くそれらは、この庭園への侵入者を排除する傀儡兵たち。

近づくものを攻撃するものだが……。

 

「いっぱいいるね……」

 

「まだ入口だ、中にはもっといる……だろうが」

 

ユーノのつぶやきにクロノはそういい、彼の杖を目の前に立ちはだかる傀儡兵たちに向ける。

 

「こんな機械程度を相手に、無駄玉は必要ないよ」

 

クロノの攻撃魔法・スティンガースナイプが素早く傀儡兵を撃ちぬく。

さらにクロノが「スナイプッショット」というと、さらに弾丸の素早さが上がりその弾丸が高速で標的を貫き・薙ぎ払っていく!

 

「凄い……」

 

「さすが!」

 

「速い…」

 

そのままクロノは流れる様に傀儡兵たちを倒し前へ駆け出すと、最後の門番のように立っていた傀儡兵に直接飛び乗り至近距離で直射型砲撃魔法・ブレイクインパルスを放つ。

 

「ブレイクインパルス!」

 

その一撃で入り口に立ちふさがっていた傀儡兵たちは完全に殲滅。思わずその手際に見とれていた4人だったが……。

 

「ぼーっとしてないで…行くよ!」

 

「あ…、うん!」

 

「うん!」

 

「わ、分かった…」

 

「…うん」

 

そして5人はその通路を駆けていくが……。その通路、あちこちに穴が開いており中は空洞…というわけでもないのだが何か赤…黒?のような色で埋め尽くされており、非常に不気味である。

この穴が何なのか分からないなのはは、この不気味な穴の奥を見ようとしたがそれはクロノの忠告により止められる。

 

「その穴には気を付けろ……。ユーノやフェイト・アルフは知ってるな?」

 

「……虚数空間」

 

「魔法が発動できない空間……だよね」

 

「その通り……落ちたら重力のそこまで真っ逆さまだ。飛行魔法もこの中では発動しない、つまり落ちたら永遠に閉じ込められることになる」

 

「き、気をつける……!」

 

そして5人は通路の突き当りにあるドアを見つけると、クロノが先陣を切ってそのドアを文字通りぶち破った。

 

そうして部屋の中に入った一同は先程の傀儡兵よりも少しばかりランクが上に見える傀儡兵と対峙する。

 

この調子では、埒が明かないと判断したクロノは4人に指示を出す。

 

 

「このまま二手に分かれる。なのは、ユーノしてアルフ。駆動炉を封印しに行くんだ!

ユウの力を奪っていたことからそれほど重要視はしていないが、あそこの力も利用しようとしていることはエイミィの調べで分かってる。それにあそこが先に逝ってしまえば、この庭園その物が崩壊しかねない。

それを考えてのことだ。

そしてフェイト、君は……やりたいことがあるんだろう?」

 

「……」コクッ

 

「よし……なのはたちもそれでいいね?」

 

その言葉に頷くフェイトとなのは達……。それを確認したクロノは杖を構え、砲撃魔法・ブレイズキャノンを発動する。

 

「なら、今……道を作る!!」

 

そうしてクロノの放った砲撃が、傀儡兵を吹き飛ばし隙を作り出す。

その隙に、なのは達はアルフの誘導で駆動炉へ向かう。

そしてクロノとフェイトは、この庭園の最下層へと向かってく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

駆動炉へと向かうなのは、ユーノ、アルフの三人は下へと向かいながら、傀儡兵たちを薙ぎ払っていく。

 

確かにクロノの言う通り、三人でも十分だ。こちらを止められても別にかまわない――ということなのだろうか?

プレシアの考えは、もはやこの世界を必要としない……。ということか?

そんな考えの浮かんだユーノは、とりあえず止めなくてはならないこの状況を優先しアルフの案内を受けながら、駆動炉のコアを手に入れるためになのはともに進んでいく。

 

 

その違和感…というよりは、決心か何かのようなものを……なのは達だけでなくこの庭園へと出撃したリンディも感じていた。

 

(要するに――初めからから片道でいいということなのね……。随分と部の悪い賭けね……)

 

リンディは、庭園を包み込むように次元震を抑え込むシールドを張り、プレシアに最終警告を呼びかける。

 

《プレシア・テスタロッサ。終わりですよ……》

 

《……来たのね》

 

意外なことに、プレシアはリンディの念話に応じた。だが、リンディは動じずに警告を与える。

既に、状況は詰みであると……。

 

《次元震は私と……貴方がユウ君から奪ったものが抑えています。さらに駆動炉も、なのはさん達ならもうじき封印し終えるでしょう。

そして、貴方のもとには執務官が私の息子と…貴女の娘が、向かっています》

 

《……》

 

先程のような嫌悪をするわけでも声を荒げるでもなく、プレシアは淡々とリンディの言葉を聞いていた。

 

《忘却の都【アルハザード】、かの地に眠る秘術――そんなものはとっくに失われてしまっているはずよ?

今やその力は……存在するかすら曖昧なただの伝承にすぎません……》

 

《違うわ……。アルハザードは今もある。失われた道も、次元の狭間に存在する……》

 

《随分と部の悪い賭けだわ……》

 

先程思った通りの考えのもとでプレシアは動いている……。リンディはそこへ行って一体プレシアが仮にそれができるとしたら何がしたいのか……。それを、訪ねた。

 

《貴方はそこへ行って何をするの……? …失った時間を、犯した過ちを取り戻すとでもいうの……?》

 

《…………そうよ……私は取り戻すの………。取り返すのよ………私とアリシアの〝過去〟と゛未来〟を……!!》

 

……分かってはいた。

でも、どこかに望みがあるのではと思っていたのだ。

だが、【子供】の為に何かをしようと決意をした【親】を……とりわけ【母親】を止められるのは、その【子供】くらいしかいないことを…リンディは痛いほどに理解していた……。

 

……彼女もまた〝母〟であるからこそ……。 

 

 

 

そのやり取りの間にも、若き魔導士たちは自身の役目を……やるべきことを果たすべく全力でことに当たってた。

 

 

 

なのは達は無事にコアを奪取し、駆動炉へと降り立っていた。

 

アルフは、なのはとユーノが彼女をフェイトのもとに行かせてあげたいと思いフェイトのもとへと行かせた。

彼女はフェイトのことを一番思っていた『家族』……。

フェイトが傷ついていたとき、そして『アースラ』で母親に捨てられたとき、何度もボロボロになり色々な意味で傷つき続けていた彼女をいつもそばで見ていたのはアルフなのだから……。

今だって、フェイトを気にかけているのは彼女だ。

フェイトの決心の果てを見届けるべき一番の存在は、彼女であるはずだ。

だから、二人は彼女を行かせた。

 

 

 

そしてなのはとユーノは二人で、駆動炉に立った。

 

そしてそこにもやはり、傀儡兵がはびこっていた。

 

「僕が防御を担当するよ……。なのはは封印に集中して……!」

 

「うん……。いつもどおりだよね」

 

「?」

 

なのはの返答にユーノは不思議そうな顔をする。なのはそのまま、ユーノにこういった。

 

「ユーノ君は……。いつも私と一緒にいてくれて……そして守ってくれてた……。」

 

そういいながら、レイジングハートを封印の為にカノンモードへ変形させる。

 

《Cannon mode.》

 

「……だから戦えるんだよ……。背中がいつも……あったかいから!」

 

いつでも支えてくれたユーノ…。そしてみんな……。

たくさんの人たちが、背中を押し支えてくれる。

だから、いつでも戦える…頑張れる。

そして今、自分の背中には……誰よりも信頼する『親友』兼『師匠』がいて……。友達になりたい『あの子』も、その子の『家族』も頑張ってる。そして『あの子』の為に戦っている友達が二人いて……。

一人は『あの子』と共に向かい、もう一人は今もこの悲しき『運命』にあらがって『耐える』戦いをしている…。

 

だから、今ここで自分ができることをして…その人達の力になってが得たいから彼女は戦う。

 

「行くよ……ユーノ君、レイジングハート」

 

「うん!」

 

《All right.》

 

そんな彼女を最大限支えるべく、ユーノとレイジングハートはそう答える。

 

そしてなのはは、二人の期待に応えるべく駆動炉に立ちふさがる傀儡兵たちに、ディバインシューターを出現させて放つ。

 

「ディバインシューターフルパワー……シューートっ!!」

 

彼女の役割を全うするための戦いが始まる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

一方、プレシアのもとへと向かったクロノ・フェイトのもとにはアルフが合流し共に最下層へと向かっていた。

 

その道中、三人は無言だった……。

 

クロノは気を引き締めて目標を確保することに集中し、アルフもフェイトの決意を全うしてほしいので彼女に立ちふさがるものをすべて蹴散らすつもりで全神経をそれに集中させている。

そしてフェイトは―――

 

(母さん……)

 

(私は、貴方に利用されていただけかもしれない……)

 

(ただの人形だったのかもしれない……)

 

(……それでも、私は母さんに伝えたいことがある……)

 

(例え、耳を傾けたもらうことができなくても……それでも伝えたいことがある)

 

―――彼女の決意…思い。それらが彼女の中にあるものを一つの道筋へと変えていく。

 

何がしたいのか、何が言いたいのか……。その彼女の意志は既に一つだ。

 

もう迷うことなんてない。することは自分に正直に、したいことをするだけ……。

 

自分を自分として見てくれたあの少年のように真っ直ぐと……。

 

あの少年には会ったらお礼を言いたい。

ありがとうと……。

立ち上がる力をくれたのは貴方だと、伝えたい。

 

そのためにも、早くいかなくてはならない……。

 

いなくなってしまう前に、伝えられなくなる前に……!

 

早く、二人の…いや、違う。

 

待っているのは『三人』。

 

あの人と、母と、そして――――『××』が待ってる……。

 

 

そして三人はついに、最下層の前に辿り着いた……!

 

「二人とも下がってくれ……。今、瓦礫を吹き飛ばすから…!」

 

 

先程やここに来るまでの間にも何度か使っていた……クロノの砲撃魔法・ブレイズキャノンが最下層への道を塞ぐ瓦礫へと放たれた。

その砲撃の直前、中にいるだろうプレシアの声がかすかに三人の耳に届く。

 

『――取り戻すの……。こんなはずじゃなかった世界の全てを……!』

 

それを聞き、クロノは苦々しく思った。

 

(……こんなはずじゃなかった、か……)

 

そして、クロノの砲撃が瓦礫を吹き飛ばし……。三人は、プレシアの前に足を踏み出していき……クロノが一言こう告げた。

 

「――チェックメイトだ……。プレシア・テスタロッサ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『時の庭園』最下層にて――

 

 

――ついに事件を起こした張本人であるプレシアとクロノたちが対峙した。

その傍らには、光を奪われ虫の息となっている由宇もいた。

それを見て、クロノは苦虫をかみつぶしたような顔をするが……まだ彼は〝生ている〟。

ならば、この場を早急に収めて彼を連れて『アースラ』へ早く戻る。それが、今自分が一番するべきことだと、決めプレシアを見据える。

 

「……来たのね」

 

改めてプレシアを見たクロノは、彼女が幻影にとりつかれた亡霊のようだとプレシアのことを見てそう思った……。

 

だが、彼にもプレシアの気持ちが『分からないこともない』。

確かにクロノはまだ人の親というわけでもないし、プレシアにとってのアリシアほど愛した人もまだいない。

 

でも……――

 

――だからといって、別に悲しい思いなどしたことが無いただのガキかと聞かれれば…それもまた違う。

だから彼はプレシアに突きつける様に、そしてどこか自分に対しての戒めのように……こういった。

 

「……プレシア・テスタロッサ。世界はいつだって……こんなはずじゃ無いことばかりだよ。

ずっと……ずっと昔から。

何時だって、誰だってそうなんだ!

確かに、こんなはずじゃないという現実から逃げるか、戦うか………それは個人の自由だ。」

 

でも……、とクロノは語り続ける。

 

「だからと言って、そんな自分勝手な悲しみに、無関係な人間を巻き込んでいい権利は、どこの誰にもありはしない!!」

 

そう告げたクロノを見据えながら、その隣にいるフェイトに気づきクロノから意識をフェイトへと視線を向ける。

その時、プレシアは急に咳き込み始める……。

 

その咳には――血が混じっている……。

 

「ゲホッ、ゲホッ!」

 

それを見て心配したフェイトが駆け寄ろうとするのをプレシアは睨むようにして制しながら、苦々しく問う。

 

「何を……しに来たの………!?」

 

その言葉に、フェイトは立ち止まってしまう。

 

だが……。それでも――

 

 

――成し遂げたいことがある。

 

「貴方に用はないわ……消えなさい」

 

プレシアの突き放すような言葉にも、フェイトは引かない。

ここで引くわけには……いかない。

 

「貴方に……言いたいことがあって来ました」

 

少女は、『母』と対峙する。

 

拒絶されようが、何をされようが………。自分自身のけじめを、そして自分の決意を伝えるために。

そして、母の横にいる人に……。

 

何というべきかは分からないけれど……、酷く恩知らずなことかもしれないけど……。

 

それでも、『お礼』と…。まだ自分でもよく分からない『温かい気持ち』を告げたいから……。

 

少女は本当の自分を始めるための、階段に足をかけた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「……言いたいことですって?」

 

いったい何だというのか?

 

プレシアは分からない。というか理解できない。

 

さっき、あれほど突き放したというのに……なぜここへ来たのか?

 

言いたいこと――文句を言いたいということなのか?

怒りの言葉をぶつけたい、と?

それとも憎しみや罵りをぶつけたいということか?

 

何にせよ、プレシアを糾弾するものであることは間違いないだろう――

 

――そう思っていたのに……。

 

 

自身が散々〝人形〟や〝出来損ない〟と蔑んだ少女の口から告げられたのは―――

 

 

「―――私は、『アリシア』ではありません」

 

自分がアリシアとは違うという宣言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「私は『アリシア』ではありません」

 

そうフェイトはプレシアに言った……。

 

それは、プレシアの言ったようなアリシア≠フェイトということではない。

彼女が言ったのは……。

 

自分は、『アリシア』じゃない。

自分は、『フェイト』だ、ということ。

 

「確かに、私はただの代わり……〝人形〟…ただの〝失敗作〟なのかもしれません。『アリシア』になれなくて、失敗ばかりで、《期待》に答えられなくて……」

 

フェイトはプレシアに語る。今の自分の思いを……。

変わらない、母への愛を…。

 

「いなくなれって言うなら、遠くに行きます……」

 

フェイトは悲しそうに告げる。でも、それでも、最後まで…これを伝えたいとプレシアに語る。

 

「でも、それでも私は……『フェイト・テスタロッサ』は貴方に生み出してもらった、そして育ててもらった、貴方の娘です。

そうやって、この世界に生まれたから……今私はここにいる。

だから、私は……貴方に幸せになってほしい。笑顔になってほしい……。

これは、私の……。『フェイト・テスタロッサ』の本当の気持ちです。

私はアリシアの〝代用品〟なのかもしれない。

でも私がそんな『偽物』だったとしても、その気持ちだけは――『本物』です……」

 

「……だから何? 今更また貴方を娘と思えと?」

 

フェイトはプレシアをまっすぐに見つめながら……。

 

「貴方が、それを望むなら……」

 

と、硬い意志のもとにそう答えた。

それにはプレシアは驚いたが、周りにいた者たちはもっと驚いた。

この少女の愛は、一体どこまで深いのかと……。

 

この会話を聞いているのは、アルフ・クロノだけではない。

なのはやユーノ……虫の息でも、まだ意識を失っていない由宇にもしかと届いた。

そしてフェイトはそのまま言葉をつづける。

 

「だから……、それを望むなら……。私は、この世界の全てから貴方を守ります。

私が、貴方の娘だからじゃない。

貴方が……――」

 

――私の、『母さん』だから……。

 

 

そう答えたフェイトに皆言葉が出ない。

 

どこまでも純粋に相手を思う気持ちを、この少女は体現しているといっても過言じゃない。

誰もが当たり前に持っていて……誰もが忘れがちなもの。

貫けば傲慢。貫こうとするなら自分勝手。

 

だけれど、とっても優しいものを……彼女は貫くことを決めた。

 

 

 

 

しかしそれは――

 

「……くだらないわ」

 

――まだ、届かない……。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

由宇は、光を奪われ薄れゆこうとしている意識を必死に繋ぎ止めながらクロノやアルフと共にやって来たフェイトの言葉を聞いていた。

だが、プレシアには……。

 

「……くだらないわ」

 

(まだ、届いてない……。いったい僕は、どうしたらいい…?いったい何ができる?)

 

こんな風に、終わらせたくない。この二人と、そしてアリシアの三人。

悲しいさだめのもとでかき回されてしまったこの三人を、助けたい。

傲慢だろうが、自分勝手だろうが、なんでもいい。

罵ってくれても構わない。

でも、こんな風に壊れてしまうのは絶対に認めたくない。

 

それに、まだ自分の結論をプレシアに告げていない。

あの時遮られて最後まで言えなかったあの言葉を……。

 

どうしたらいい?

 

何をすれば変えられる?

 

どうしたらいい?

 

由宇は必死に考えていた。

しかし、考える間を与えてくれるほど、この世界や『神様』というやつは優しくはないようだ……。

 

フェイトの言葉を着てもなお、プレシアは【アルハザード】への道を諦めようとしない。

魔法陣を展開させ、次元震を促す。

『時の庭園』に指令室からのエイミィの声がこの庭園――つまりは次元船が間もなく崩れるということを告げている。

だが、まだ……。

 

(だめだ……! まだ、まだ……何も――)

 

――何も変わってない。

 

こんな悲しい結末なんて嫌だ!

認めない、認めない!!

 

フェイトの悲しみもプレシアの悲しみも、何とかしたいんだ……。

アリシアだって、二人がこんな風にすれ違うのを望んでいる訳がない。

 

だって……アリシアにとってプレシアは母で、フェイトは――

 

――『妹』みたいなものだろう?

 

 

生まれ方がどうだとか、クローンだとか、そんな小さなことが何か関係あるのか?

 

同じ人間なんていない。クローンだって、絶対にオリジナルと同じかと言われればそうじゃない。

『心』は複製することなんてできないんだ。

違うのはきっと〝当たり前〟で〝当然〟なんだ。

 

だから、プレシアは勘違いをしている。

それに気づいたから、あの時言おうとしたんだ。

 

 

違うからなんだ、と。

もう一人の娘だろう、と。

妹みたいなものだろう、と。

 

代用できるほど、軽いものなのか、と。

 

貴方にとって、『娘』とはそんなに軽い存在なのか、と問いたかった。

 

 

始まりはちょっとした認識の誤りなのではないかと由宇は思ったのだ。

 

二人の娘を得ながらも、それぞれがちょっとした違いで……それぞれの歩むべき道をそらされた。

だから、それを直したいと……思っ…た………。

 

 

このときになり、やっと理解した。したいことは、それだったのかと。

 

それを変えたら、変わるのではないかと思ったのか……。という自分の考えの根底にやっとたどり着いた。

 

だが、やはり世界は誰かの結論を待ってくれるほど優しくないらしい……。

 

由宇が、結論を得たその時……。

プレシアとアリシアは、次元の狭間へと……落ちていった。

 

それをフェイトは止めようと歩み寄るが、崩壊していく瓦礫に遮られる。

 

それでもと手を伸ばそうとするフェイトの必死な声だけが響いた……。

 

「母さん!! アリシア!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

次元の狭間……【アルハザード】への道であるはずのその中へと落ちる寸前……。

フェイトの必死な声がプレシアにも聞こえていた。

 

あれだけ突き放したのに、あれだけ冷たくし痛みさえ与えたというのに……。

あの〝人形〟……フェイトは、最後まで自分を嫌うことは無かった。

 

(ホント……馬鹿な子………)

 

そんなことを思いながらも、フェイトの言葉が……やけに耳に残っていた。

 

そんな時だ、次元の狭間を均すようにして狭間を覆っていた『光』がプレシアの心のビジョンを思い出させる………というよりもこれは――

 

――映し出されている、のか?

 

(あの子の力…なんだかよく分からないことだらけね……)

 

そこに有ったのは、アリシアとの思い出……であるはずなのに、それが…その『記憶』が何故か『フェイト』へとつながっていく……。

 

どうしてアリシアとの思い出に、あの子が関係するというのかとプレシアは心底……自分でも不思議だが、今までのように苦々しくではなく純粋に疑問に感じていた。

 

(どうしてあの〝人形〟……『フェイト』がアリシアとつながっているの……?)

 

次第に鮮明になっていく、その光景は……プレシアもよく覚えている。あれはアリシアの誕生日プレゼントを聞いた時のことだったはず……。

 

鮮明になったそのヴィジョンは記憶の中のかつての自分が、アリシアにプレゼントは何がいいかと聞いているところだった。

 

『アリシア? お誕生日のプレゼント、何か欲しいものある?』

 

記憶の中のアリシアは可愛らしく、首をかしげながらうーん、と考えている。

そして、あの時アリシアが告げたのは……。何だったろうかとプレシアはぼんやり思った。

そして、アリシアが告げたのは――

 

『う~んとねぇ……。あっ! 私―――妹が欲しい!!』

 

プレシアは、その時ハッ、と思い出した……。

 

なおもその記憶の映像は続いていく……。

 

『え……い、妹…………?』

 

記憶の中の自分は、アリシアのいったリクエストに顔を少し赤くし困ってリクエストを聞き返している。

 

まぁ…それもそうだ。

実際あのころにはすでに夫と離婚してしまっていたし、いきなり『妹』と言われても――困るの一言しかないわけで……。

仮に困ると告げたところで、子供に何が困るのかなど分かるわけもない……。

なぜ困るか、なんて……。フェイトだって知っているかどうか怪しいものだ。そんなことをこのとき5歳くらいだったアリシアは知るはずもなく、聞き返した母にうん!と元気よく返事をしている。

記憶の中の自分は顔を赤くしたまま、アリシアにそれはちょっと困るから別のに変えさせようとしてアリシアを説得にかかる。

 

『え、えっとね……アリシア? その……い、妹って言うのはちょっと………』

 

『え~!なんで~?』

 

『な、なんでっていっても………』

 

『だって妹がいたら、お留守番も寂しくないしずっと一緒にいられるしママのお手伝いも二人でいっぱいできるもん!

絶対いたら楽しいよ!』

 

『そ、そうね………楽しいと思うわ……で、でもちょっと…困る、かなぁ…?』

 

『………絶対にダメ?』

 

そんな風にあからさまにしょんぼりして聞かれては、ダメとは言えないのが親だ。というか、理由を説明できない時点でダメとは言い切れないのだが……。

 

『ぜ、絶対にだめ、っていうわけじゃ…ないんだけど………』

 

良い切り返しや説得の仕方が思いつかないプレシアの苦し紛れの言い訳程度では、純粋すぎるこの年頃の子供は説得できはしなかった……。

 

『ダメじゃないんだね!じゃあママ、約束ね♪』

 

そう言って小指を差し出してくるアリシア。

結局なし崩しに了承してしまったプレシア。別に勝負ではないが、判定は完全に負け表示だろう。

そして、アリシアの指に自身の指を重ね約束をした……。

満面の笑みを浮かべるアリシアと指を重ねながら、プレシアはこのとき確かに思った。

 

ああ…、二人の娘に囲まれて過ごしたら……楽しいだろうと。

アリシアにさせていた寂しい思いを少しでも和らげられるだろうし、娘たちに出迎えられたり、一緒にどこかへ行ったりしたら、きっと楽しいだろう……。

 

確かにあの時、そう…思った……。

 

なのに、自分がしたことは――その真逆の事ばかりで……。

 

フェイトの教育係にした使い魔・リニスに指摘されたことがあった……。

『今のあなたにはフェイトが……』と。

 

しかし、自分はフェイトをもう一人の娘……いや違う。あの時〝もう一人〟という考え方を持ってなかった……。

だから、フェイトを娘と思うことを拒否した。

 

あの子はアリシア()じゃない、と……。

 

 

しかし、リニスには気づかれていた。

フェイトがアリシアじゃないのは別にあの子のせいではない、ということをプレシアが心の奥底で〝分かっていた〟ことを……。

 

 

それでも、今まで優しくできなかったアリシアの為に。アリシアのもう一度会うために、フェイトに〝アリシア〟を奪わせない、と。

 

 

あの時リニスは、そんなことはとっくに知っていたのかもしれない。

 

というより……分かっていても、言えなかったのかもしれない。

 

 

どす黒い心の悲しみと……押し殺して、自分でも気づかなかったが、確かに〝存在した〟――否定してしまった『愛』を、リニスにそれまで切っていた「精神リンク」で見せつけたあの時に……。

 

 

だからリニスはあの時、片方だけを助けることを選べなかった……だから、言えなかった。

 

 

今、考えて見れば……ひどく単純な事だったのに。

 

『もう一人の娘』(フェイト)【娘』(アリシア)と混同していた自分の考え方に、そしてそれを押し殺したことに、そもそもの間違いがあったというのに……。

 

 

自分にはもう時間がない、だからアリシアに注ぐ愛情をあの偽物に奪わせない。

 

 

 

それは違った。

 

完全に間違っていた。

 

 

 

 

だが、もう遅すぎた……。

 

そうだ、いつでもそうだ……。

 

(私は……気づくのが、いつも…いつも……―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――遅すぎる………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

プレシアの心は、由宇の光の影響かあるいは何らかの偶然でこの戦いに参加していた者たちの中に流れていき……全員がそれを見た。

 

ある者は、悲しみ。

ある者は、悔やみ。

ある者は、泣いた。

そして、ある者は――

 

 

フェイトやアルフは涙を流し……。クロノですら悔しさに歯噛みした。

 

しかし、その時だ。

少年が一人、立ち上がる……。

 

 

――足掻くために立ち上がる。

 

 

 

少年は、フェイトにもう今にも途切れそうな声で語り掛けた……。

 

「……フェイト、僕はやっと答えを見つけたよ」

 

「……えっ……?」

 

「おい、ユウ!君はそんな体で、まだ何かする気なのか!?」

 

クロノは起こったようにいう。

だが、少年は止まらない。

 

「最後まで、諦めない……。僕は【希望】を…『無限の可能性』を信じてる……。まだ、終わらせないよ。こんな悲しい結末で終わらせない……!」

 

今度ははっきりとした声で、そういった。

その鬼気迫る様子に、三人とも何も言えない。クロノですら、言葉が出てこなくなる。

 

「待ってて、フェイト。君の母さんと『姉さん』は、必ず助ける……。それからだよフェイト、物語の続き――本当の自分の始まりは」

 

フェイトにすれ違いざまにそう言い、コスモプラックを片手に次元の狭間へと通じる穴……もはや崩壊で崖のようになっているそれに向かっていく。

それを、フェイトは……止めた。

 

「待って…、まだ……お礼も、何も……してない。私が、立ち上がったのは……あなたの言葉が、あったから。だから、私は……母さんも『お姉ちゃん』も助けたいけど……失いたくないけど……。それなのに……あなたに、行ってほしくないって思ってる」

 

だから、行かないで。というフェイトにボロボロだが、確かに優しく微笑みかけた由宇はこういった。

 

「凄く嬉しいよフェイト。僕は君が悲しそうになるのも嫌だ。だから君が行ってほしくないというならそうしたい。でもね?今君が、『家族』を失う結末になるのは…もっと嫌だ……。僕もやっとわかったんだ、やるべきこと……したいことが……。

プレシアさんもやっと気づいたみたいだ、だから助ける。助けて、みせる」

 

「でも……! あそこへ行ったら、あなたは……」

 

「……そうかもしれないけど、それでも行くよ。君の家族を助けられるなら、ね?」

 

そう悪戯っぽく言っているが、由宇が無理をしているのは明らかだ。

行かせられない、この人まで失いたくない。そんな風にフェイトは思った。こんな気持ちになるとは思っていなかったし……。彼女自身、自分が今こうして引き留めていることすら不思議だ。

行くなら早い方がいいのに……、確率が上がるのに……。

でも、行かせてしまったら二度と会えない気がして……。

 

そんなフェイトに、由宇はこう言った……。

 

「ねぇ、フェイト。……僕を信じて欲しいんだ」

 

「……、」

 

「君が、信じていてくれるなら必ず帰ってくる。君が僕のことを覚えていてくれるなら……きっと」

 

「でも、あなたは……!」

 

「僕の名前は由宇。秋宙由宇だよ。あなた、じゃない」

 

「ユ、ウ……?」

 

「うん。ユウだよ、フェイト。ねぇフェイト……?僕は、フェイトが名前を憶えてくれるなら……僕を信じてくれるなら必ず帰ってくる。どんなことがあっても、何があっても最後には絶対に君のところへ帰ってくる。

約束するよ……」

 

フェイトはついに、由宇を放した。

 

そして、由宇はフェイトにありがとう、必ず君の家族を助けてくるよ、と告げて次元の狭間へと降りるべく歩みを進める。

 

クロノは由宇にこういった。

 

「止めるのは、無駄……だろうな」

 

由宇は無言だ。

 

「君はもう……ウルトラマンになれないんじゃないのか? 君にはもう戦えるほどの力……光はもう残ってないだろうに……。はっきり言って、無茶で無謀だ」

 

「……でも、不可能じゃないはずだよ」

 

「……、」

 

「必ず戻るよ、フェイトとの約束だからね」

 

「君は……大馬鹿だ。でも、止められそうにない僕も……同じくらい大馬鹿なのかもしれないな………」

 

そういってクロノは杖を下す。

それを見てユウは笑って、次元のは狭間へと降りて行った。

 

「やれやれ……僕にはお礼は無しか……」

 

クロノは呆れたようにそういった。

 

 

 

由宇は降りていく、次元の狭間を真っ逆さまに。

もう限界だった……。それでもいい、最後の一滴まで自分の力を絞り出す。

何度でも決意する。

まだ終わっていないと。

 

(もう一度、もう一度!救うための力を……!)

 

そして、由宇は叫んだ。限界なんて『超える』、『越えてやる』と。

 

「うぉおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオォォォォッ!!!!!!!!!」

 

思いは限界を超え、由宇は再び光となった……!

 

(コスモス!)

 

由宇がコスモスが答えってくれたことに喜び、そしてコスモスに謝った。こんな風になってしまい本当にすまないと。

 

(ゴメン、コスモス。巻き込んじゃって……)

 

――――かまわない。私と君は一心同体、今やもう互いに無くてはならない存在だ。私はどこまでも君と共に行く。それが闇の底であっても、君とであれば必ず抜けられる。

君は真の勇気を持つ者――真の勇者へとまた一歩み、自分の限界を乗り越えた。

 

(真の勇気……真の勇者…か……)

 

――――さあ、行こう。ともに、あの少女フェイトの家族を救うために……。

 

(うん、行こう……そして救おう。フェイトの家族を……。何が何でも…必ず!!)

 

 

そして光の塊となり、プレシアとアリシアを追いかけ……ついに見つけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

プレシアは、次元の狭間をどこか諦めたような気持ちで降りていた。

このままアルハザードへ辿り着けるなら、それでもいい。辿り着けないのなら……それでもいい。

もうこれ以上ないほどに後悔した。

自分の過ちにも気づいた。

 

でも、だからと言ってアリシアが生き返るわけでもないし、フェイトにしたことが消えるわけでもない。

 

それに、自分の病状では仮にアリシアが生き返っても、フェイトに謝罪してとして……それを優しく彼女が許してくれたとしても……。そう長くはいられない。

 

結局、もう何も意味がないのかもしれない。

 

そんな風に考えていた時に……。一筋の光が、自分とアリシアに近づいて来たかと思った時には……既にその光は自分たちを包み込んでいた。

 

そして、その光のまぶしさに目を瞑りし暫くして目が慣れたところでそのあたりを見渡すと……そこは何もない空間。言うなれば、光でできた部屋…といったところだろうか。

すると、何もないはずのその部屋に声が響く。

 

「やっと見つけましたよ、プレシアさん」

 

「……貴方は…………」

 

「フェイトが待ってます。貴方と彼女の姉さんを……」

 

この少年は……いったいどこまで………。

 

「なぜ……」

 

「前にも言いましたよね?僕は、フェイトが大切だからフェイトの悲しむ顔を見たくない……そして、フェイトの『家族』である貴方たちも大切だと思った、ただそれだけです」

 

「それだけの為に……」

 

「始まりはそれだけです。でも、本当は貴方に言いたかったことがあったんですが……貴方は自分でその答えにたどりついたようですから…もう言いません。

あの時の言葉は遮られましたけど、これでもう伝わったのと同じですから……。

これでやっと、フェイトは『フェイト』として家族と過ごせます」

 

もう代用品でない、それを理解できたならば…それでいいというのか?この少年は……。

 

(この子も……フェイトに負けず劣らず、純粋すぎるわね……)

 

だが、それが正しい……ということはもう自分の心が理解している。

 

でも―――

 

「でも、【アルハザード】でなければ……アリシアは………それに……私も………」

 

―――アリシアも、自分も、このままでは結局フェイトと過ごせないまま消えるだけ……。自分は、戻れても罪を償う時間を取られれば――もうフェイトとは……。

 

「……それは、わかってます。だから……ここに来るまでに考えたんです。

僕には、命は用意できません。だから――残った光を、そして僕の命の一部を使って…アリシアと貴方を救います」

 

「なっ……!?」

 

「まずは……プレシアさんから――」

 

そういい、由宇が手をかざし『ヒーリングシャワー』を全力で浴びせる。

すると……こちらは、どうにか治癒に成功した……。

 

「!? 胸の痛みが……!」

 

取り敢えず第一段階終了だ……。

 

だが、問題は……――

 

――アリシアだ……。

 

此方は、成功する自身とか確率とかそんな者は用意していない。

出来るかできないかなど、由宇にもコスモスにも…ましてや神様なんかにもわかりはしない。

誰にもわからないのだ。

 

でも、挑む。

 

諦めたくないから……。希望を捨てるわけにはいかないから……。

 

そして何より、信じているから……。

 

コスモスに教えてもらった『無限の可能性』を、そして真の勇気を……。

 

だから、今の自分の全てを賭けて……大好きな人の家族をすべて救って見せる!

 

コスモス・ルナモードの蘇生光線『コスモフォース』を自分の命…生命エネルギーを混ぜてアリシアに全力で浴びせる。

 

(……君の妹が……君と母さんを待ってるよ……)

 

そんな祈りと共に浴びせ続けるが、アリシアはまだ目覚めない……。

 

 

―――それでも! 絶対にあきらめるもんか!!

 

「はぁあああああああっ!!!!!」

 

 

その思いは、皆に届く。

絶対に諦めない心が皆の心を、共振させる。

 

「頑張って……ユー君!」

 

「ユウ……頑張って!」

 

「頑張って!!」

 

「やるなら、貫き通してこい……!」

 

「頑張ってよ、ユウ君!」

 

「ユウ君……頑張って……」

 

「ユウ……!…お姉ちゃん……!頑張って!!」

 

由宇を、アリシアを応援する人々。

なのはが、ユーノが、アルフが、クロノが、エイミィが、リンディが……そしてフェイトが、他にも色々な人たちの祈りや想い……。

 

そんなみんなの『願い』が一つになって、凄い『奇跡』を呼んだ!

 

 

(あと、もう…少し……なんだ!)

 

 

――――目覚めて……!

 

 

そんな人の想いが――ついに……一つの命の炎を、再び灯し……。

 

 

 

――――……………………トクンッ…………

 

 

 

その命の小さな鼓動が、響いた……。

 

 

 

「やっ……た………!」

 

届いた……。

 

願いが、祈りが、気持ちが、届いた。

 

『奇跡』が、起きた……!

 

 

「はぁ……はぁ……! やりました……アリシアは……目覚めました……!」

 

プレシアは、何と言っていいか、分からなかった。

 

でも、それでも……溢れる感謝を口にした。

 

「……こんなこと…私が、言えたことではないけれど………。ありがとう…アリシアを、私をそしてフェイトを助けてくれて…ありがとう………ウッ、ウッ……」

 

プレシアは、泣いていた…。でも、笑っていた……。

由宇は、大きく息を吐き出すと……。最後にやるべき仕事をなすために動く。

 

「……では、最後に。あなたと、アリシアを……送り届けます。フェイトの元まで……」

 

そういい、二人を『トランスバブル』で泡の中に入れ『ルナポーション』で次元船アースラまで送り届けようとしたとき、プレシアが由宇がプレシアとアリシアだけを異動させようとしたのを見て聞いて来た……。

 

「……? 貴方はどうするの……?」

 

「……今ある僕のエネルギーでは、二人を送るだけで精一杯で…僕とコスモスが戻る分は有りません」

 

「そんな…!? なぜ!?」

 

「でも、多分聞こえてますけど皆に言っといてもらえますか?〝心配しないで〟って。僕必ず帰ります。フェイトと約束もしましたし…でも、今はフェイトの『家族』を助ける方が先決なのでそうします」

 

「……止めなさい!それでは……!」

 

そのプレシアの言葉に、答えは帰ってこなかった……。

でも、由宇は満足そうに笑っていた……。

 

プレシアとアリシアは確実に送り届けた。

 

だが、『本当の最後の仕事』が残っている。

 

 

 

「最後だ……コスモス。この次元震を吹き飛ばすよ」

 

――――ああ、私たちの光の影響は段々と弱くなっている。このままでは、本当に次元断層が起きかねない。

ユウ、コロナの『ネイバスター光線』で吹き飛ばそう。

 

「うん……やろう…!」

 

そして、赤い光に包まれながら由宇は何か……違和感を感じた。

 

(何だろう……?)

 

最近感じたことのある、金色の力が……沸き起こってくるような感じがした。

 

だが、その違和感を振り払い、コロナにモードチェンジして『ネイバスター光線』を撃とうとしたその時……。

 

次元震の奥で……。何かがうごめいたように見えた。

 

 

そして響き渡る不気味ないくつもの笑い声……。

 

 

「キャハハハッ!」

 

「ディアッハッハッハッ!!」

 

「ハハハハハハッ!!」

 

「フフフフフ……」

 

 

それを見て、由宇はこう感じた。

 

――『闇の化身』、と。

 

 

これらを、外へ出してはいけない……。この世界に呼んでは、いけない。

 

そう感じた瞬間――先ほどの金色の力が……全身を包んだ。

 

これまでに感じたことのないほどの力が、体中に沸き起こり……邪悪の権化であるようなその『闇の化身』達へと向かって、自分でもよくわからないままに金色の光線を放った。

 

その光線は、混沌とした渦の中心へと吸い込まれていき…………次元震の中心を吹き飛ばしたように見えたのだが……。

 

そのあと、いきなり紫電が走ったようになった瞬間……。爆発が起こり、その爆炎が由宇をコスモスの体を焼いた。

さらに、それだけでは終わらず……。その渦はブラックホールのように由宇とコスモスを吸い込み始めた……!

 

「こ、これは……!?」

 

――――まずい! ユウ、君だけでも脱出するんだ!君が分離すれば……。

 

「コスモス……僕は、君と一緒にここまで来たんだ。君が、僕という悪魔と相乗りしてこの運命を受け入れてくれたのに…僕だけが逃げることなんてできないよ……」

 

 

――――ユウ……!

 

 

そのまま、二人は吸い込まれていき……。渦の中へと消えていった―――

 

 

その光景を見て、皆由宇の名を叫んだ……。

 

 

―――そのあと、渦は金色の光によって爆散し……。後には平穏な次元空間だけが残った。

 

 

 

その後からは……コスモスも、由宇も発見されることは無かった……。

 

 

 

 

 

 

その後の、二人の行方は……二人だけが知っている――――

 

 

 

 

 

 

 

 





テスタロッサ家救済ENDでした。

本当はリニスも救済したかったのですが、リニスの消滅はプレシアの契約解除を止めないことには不可能なので、ちょっと無理でした。

ですが、A's編を書き終えたときにマテリアルたちを出すGOD編を書こうかと思っているので、そこから派生させて救済できたら……とも思うんですが、そこまで続くかという問題も……。
ともかく頑張って書きますので今後もよろしくお願いいたします。
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