総麻SIDE
さて、先日チューナーモンスターと白紙のシンクロモンスターを手に入れてから、遂に制裁デュエルの時が来た。まあ、当日まで丸一日保健室のベッドの上に拘束されてたりするのだが…。
その間には翔が脱走未遂を起して十代が翔の兄のデュエルアカデミアのカイザー『丸藤 亮』と戦ったり、隼人が父親と退学を賭けたデュエルをしたり、と言うイベントがあったが、その間総麻は保健室で眠り続けていたりする。
まあ、ダーク・クリムゾンとの闇のデュエルでの傷とその後のレッドデーモンズドラゴンを初めとする高攻撃力のドラゴンデッキを相手にしたデュエルでのダメージ。その二つのデュエルでのダメージの結果、再度倒れてしまったので当然と言えば当然だろう。まあ、治癒術のお蔭でこの程度で済んでいるのだが。
(鮎川先生には怒られて、フェイトさん達には泣かれた上に怒られたりと…動ける訳無いよな)
そんな訳で制裁デュエルまで大人しく保健室のベッドの上で、部屋から持って来てもらったカードで制裁デュエルへ向けてのデッキ調整をしていた。
少なくともどんな相手にも対応出来る様に六つのデッキの調整は出来ている。…確実に勝ちたければ、《力》を使って封印してある“狂った精霊”の宿った《幻羅星龍ガイ・アスラ》のカードを使えば、それだけで十分に勝てる。
だが、それを使わないのは総麻自身が定めている最後の一線と言った所だろう。
(…少なくとも、ガイ・アスラは魔龍帝とは事情が違うしな…)
以前にも語ったがガイ・アスラは元の持ち主であった男の人類への憎しみを長過ぎる期間受け続けた結果、“狂った”のだ。他者の影響で狂った精霊を正常に戻す方法が分からない以上、ガイ・アスラの暴走を防ぐ為には封印するしかない。
「っと、そろそろ時間か」
軽く調子を確かめる様にその場でジャンプすると総麻は確認しながらデッキを一つずつケースに移すと上着を着てデュエル場へと向かっていく。
SIDE OUT
『それでーハ、制裁タッグデュエルを始めるノーネ!』
総麻は観客席から一人で十代達のデュエルを眺めていた。ダーク・クリムゾンの様なイレギュラーでも起こらない限りは先ず十代達が負ける事は無いだろうが、逆を言えばそんなイレギュラーが有ればダーク・クリムゾンの時の様に、十代達が負ける危険性も有り得るのだ。
(…迷宮兄弟が使いそうなカードで考えられるのは、『マンモール』か『キャッスルゴレム』か? まあ、どっちも精霊が宿っていたとしても、それほど危険なカードじゃ無さそうだけど…)
前例が有る以上は、また別のバトスピのカードの精霊が敵に廻る可能性も有り得ると警戒はしておくべきだろう。
その結果は結論から言おう、
「やったぜ!」
「勝ったッス!」
十代達の対戦相手である『迷宮兄弟』に、見事二人のカードの融合モンスター『ユーフォロイド・ファイター』によって迷宮兄弟の切札『ダーク・ガーディアン』に貫通ダメージを与える事で勝利した。
(…イレギュラーは無しか)
そんな勝利の瞬間を眺めながら総麻は心の中で安堵する。タイタン戦とは違い、特にイレギュラーは起きず十代と翔は無事迷宮兄弟に勝利する事ができた。
「次は天凪総麻! 入ってくるノーネ!」
十代達が勝った事で悔しそうにしていたクロノス教諭が総麻の名を呼ぶと、総麻は観客席の柵の部分に足をかけて大きくジャンプしてデュエル上に音も無く降り立つ。
派手な登場に観客席に居る生徒達は唖然としているが。
「さあ、オレの相手は誰ですか?」
「そ、その前に君は持ってるデッキを全部出すーノ」
「?」
「ユーが複数のデッキを持っているのは知ってるノーネ。だから、対戦相手によって決めない様に、公平に私(わたくし)ーがデッキを選ぶノーネ」
「そうですか、そう言う事なら」
六色のデッキを取り出すと、
(ヌフフフ、彼が強敵と戦う時は何時もドラゴン族のデッキを使う事は知ってるノーネ、だったら、ここでそれ以外のデッキを選べばいいノーネ)
そんな事を思いながら六つのデッキを選んでいるクロノスに対して笑みを浮かべながら、
「あっ、クロノス先生。ただ、そのデッキって全部39枚しか入ってないんですよ」
「なんでスート!? それでーは「これが四十枚目です。クロノス先生が選んだデッキを確認した後でこのカードを入れれば」分かったのーネ、それでーは」
そう言って総麻はクロノスにジークフリードのカードを見せる。そして、クロノスは六つのデッキの中から一つ…緑色のケースのデッキを手にとってそのデッキに目を通す。
(これーは、ヌフフ、試験の時ーに使ってたデッキなノーネ)「確認したノーネ、それでは最後のカードを入れるノーネ」
「はい」
そう言って渡されたデッキに四十枚目のカードを入れてシャッフルするとデッキをデュエルディスクにセットする。
「それで、オレの相手は?」
「ヌフフ、こちらもかなりの実力者を呼びましたノーネ!」
クロノスがそう言うと選手入場口から誰かが歩いてくる。間違いなく、それが対戦相手だろう。
「お前がワイの対戦相手やな? ワイと勝負する事になるなんて、お前もついてへんな?」
「…クロノス先生」
「なんなノーネ?」
「何か、迷宮兄弟に比べて随分レベルが落ちましたね」
正直な意見だった。まあ、ニット帽を被ってベストを着た十代後半の男…恐竜族デッキの使い手の『ダイナソー竜崎』。
はっきり言って、遊戯王DMの中で一二を争うほど勝率の低いデュエリストだろう。インセクター羽賀に負けて、アンティデュエルで城之内に負けて真紅眼の黒竜を取られて、エスパー絽場に負けて、付け加えると遊戯(アテム)とは一度も戦っていない。更に付け加えるとアニメオリジナルエピソードでは更に惨めだったりする。どう考えても迷宮兄弟に比べてランクの下がるイメージがある。
…実力者なのは間違いないだろうが…。
「なんやとー!!!」
「仕方ないノーネ。迷宮兄弟へのギャラでかなり掛かったノーネ。だから、ランクは落ちても、それなりーの実力者として」(小声)
「決闘王である遊戯さんと戦ってないけど、その親友の城之内さんと戦ったデュエリストにランクダウンと…」(小声)
「ちょっと待てー! お前等、しっかり聞こえとるで!!!」
「「おっほん」」
一度咳払いするとそれぞれ何事も無かった様にデュエルの準備を始める。
「お前等なぁ…ワイを誰やと思っとるんや!」
「ダイナソー竜崎さん、ですよね」
「態とらしい敬語は止めてサッサと始めるで!」
ダイナソー竜崎の言葉に笑みを浮かべて総麻はデュエルディスクを向ける。
「それじゃあ。始めるとするか」
「おう!」
「「デュエル!」」
観客席…
「行っけー、総麻くん! 私とキャラが被りそうなのに負けたら許さへんで!」
「あはは、はやてちゃん。そんな事言っちゃダメだよ」
「総麻は負けても退学じゃ無いけど、そんな事言っちゃダメだよ」
なのはとフェイトの二人に窘められるはやて。
「でも、十代君達と違って総麻君の場合は気軽に応援できるから、安心やな」
「そうだね」
デュエル場
総麻 LP4000
ダイナソー竜崎 LP4000
「オレの先行。ドロー」
ドローしたカードを一瞥し、総麻は素早く戦術を組み立てる。
「アンタも実際運が悪いな」
「なんやと!?」
「オレのデッキが…“こいつ”なんてな。オレは『ビートビートル』を攻撃表示で召喚!」
総麻のフィールドに現れたエメラルドが砕け散り、その中から現れる一匹のカブトムシ。
ビートビートル
☆3
属性:風
昆虫族
攻撃力1000/守備力1000
効果
一ターンに一度だけ攻撃表示で存在するこのカードへの攻撃を向こうにできる。
「さらにフィールドに昆虫族の風属性モンスターが存在する時、手札のこのカードを守備表示で特殊召喚、来い『フライングミラージュ』!」
フライングミラージュ
☆3
属性:風
昆虫族
攻撃力1500/守備力1000
効果
自分フィールド上に風属性の昆虫族モンスター存在する時、このカードは手札から特殊召喚できる。
「昆虫って、運が悪いってそう言う事か!?」
「残念ながら、主の命を吸って咲き誇る大樹は手札に無いが、オレはカードを一枚伏せてターンエンド。さあ、本当の意味での…緑のデッキの初陣だ。全力で戦ってくれよ、ダイナソー竜崎さん」
フィールドに召喚されたビートビートルとフライングミラージュの姿に顔をしかめるダイナソー竜崎。羽音立てて羽ばたく二匹の昆虫を従えながら、総麻は余裕と言った表情を浮かべている。
観客席
「くぅー、総麻の奴あんなデッキも持ってたのかー! オレもデュエルしてみてぇ!」
「なるほど、昆虫族デッキか。クロノス先生が選んだとは言え、面白いデュエルになりそうだな」
「どう言う事スっか?」
総麻の召喚したモンスターを見て興奮気味の十代とその姿を見て納得と言った顔の三沢。
「ダイナソー竜崎は全国大会で昆虫デッキのインセクター羽賀に負けて、日本二位に留まってしまっているんだ」
「つまり、いい意味か悪い意味かは別にして、心理的に影響のあるデッキと言う事ね」
「ああ。一度、それも大舞台で負けた相手のデッキと同じ昆虫族、心理的に影響はあるはずだ。だが」
「どうしたんだよ、三沢?」
「いや、あのモンスターも見たことが無いな、と思ってな。いや、総麻の使うモンスターはどれも見たこと無いカードだ。一体、彼はあんなカードを何処で手に入れたんだ?」