(思ったよりも傷は深いし、血を流しすぎたか?)
今だ血を流している軽くベルドゴールの効果ダメージで受けた傷口に手を触れ、
(『癒しの光』)
今まで使う事も無かった癒しの力で傷口を癒す。
熟練度が原因なのか、最も初歩的な簡単な力しか使えないが、それでも出血も止まり意識もはっきりしてくる。だが…それが逆に絶望的な状況を理解させてしまう。
(…状況は最悪…)
自称闇のデュエリスト、タイタンの肉体を操っているダーク・クリムゾンのフィールドには上級モンスターである魔界七将が二体と破壊された時に相手のモンスターを破壊する効果を持った冥闘士バラムの三体。それに対して総麻のフィールドには彼のフェイバリットカードとは言え雷皇龍ジークヴルムが一体のみ。
一気に相手から流れを奪い取る為に召喚したジークヴルムの効果が逆に利用されてしまい、結果的にデュエルの流れを相手に渡してしまう結果となってしまった。
ジークヴルムの攻撃力は相手のフィールドに存在している三体のモンスターの内の二体を上回っている物の、既に攻撃は終了してしまっている為にその二体のどちらかの戦闘破壊も不可能、しかも、その一体は破壊する事自体が自殺行為。
(…どうする…?)
このままでは確実に次の相手のターンでジークヴルムを破壊され、残る二体のダイレクトアタックで敗北する。可能性としてはバラムの自爆特攻とパンデニウムでの戦闘破壊と二パターン存在している。………悪い事に………。
残りの手札を確認して次の相手のターンを凌ぐ為に一手を思考し、カードを伏せる。
「カードを二枚伏せてターンエンドだ」
このターン、傷は《力》で癒したものの血は流し過ぎてしまった上にライフも削られてしまった。
総麻 LP2000
フィールド
雷皇龍ジークヴルム 攻撃力2100
伏せカード×3
手札×1
ダーク・クリムゾン LP1600
フィールド
冥闘士バラム 攻撃力1600
魔界七将ベルドゴール 攻撃力2000
魔界七将パンデミウム 攻撃力2200
手札×1
圧倒的不利な状況でターンの主導権は総麻からダーク・クリムゾンへと移ってしまう。
「我のターン、ドロー。どうやら、我の切り札を出すまでも無かったようだな。やれ、パンデミウムで攻撃、大罪の大鎌!」
ダーク・クリムゾンの号令に従ってパンデミウムがジークヴルムへとその大鎌を振り下ろそうとする。ジークヴルムは翼を広げてパンデミウムの鎌を回避するが、パンデミウムは上空に逃げたジークヴルムへと肉薄する。
(…伏せカード三枚…攻撃力の高いパンデミウムと破壊効果を持っているバラムの攻撃を防がなきゃ負ける。なら!)「伏せカード・オープン! 速攻魔法『禁じられた聖杯』!」
雷皇龍ジークヴルム 攻撃力2100→2500
パンデミウムの鎌が振り下ろされそうになった時、総麻の発動させた魔法の効果を受けて効果は失った物の攻撃力を上昇させ、雷光を纏ったジークヴルムの突進が鎌を砕き、パンデミウムを撃ち抜き爆散させ勝利の咆哮をあげる。
ダーク・クリムゾン LP1600→1300
「パンデミウムの効果発動。戦闘で破壊された時、互いのプレイヤーは手札を全て捨てる。」
魔界七将パンデミウム
☆7
属性:闇
攻撃力2200/守備力1500
悪魔族
効果
このカードは同一ターンの間に互いのライフが半分以上減った時に手札から特殊召喚できる。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時デッキからカードを一枚ドロー出来る。このカードが戦闘で破壊された時、互いのプレイヤーは手札を全て墓地に送る。
ダーク・クリムゾンの指示に従い総麻とダーク・クリムゾンは残っていた手札を捨てた。
(捨てたカードはフタバニア…良いカードだ)
(くっ、手札のカードは三枚目の魔界七将と、サイクロンか)
互いの捨てたカードを見て二人は正反対の表情を浮かべる。墓地で効果を発動するカードを捨てた総麻と切り札を捨てたダーク・クリムゾン。
「だが、我の攻撃はまだ残っている。やれ、バラムよ!」
棍棒の様な武器を振りかざして襲い掛かるバラムをジークヴルムの突進が容易く粉砕する。
ダーク・クリムゾン LP1300→400
「バラムの効果発動! この時、相手のモンスターを破壊する。その怨念と共に【呪撃】せよ、冥闘士バラム!!!」
総麻のフィールドに戻ろうとしたジークヴルムの背後に透明な体のバラムが現れ、己を破壊したジークヴルムへの憎悪を浮べながら拘束する。ジークヴルムはそのままバラムの亡霊と共に闇の中に消えていく。
「これで天凪さんのフィールドからモンスターは居なくなって…。」
「我のフィールドにはまだ最後の魔界七将ベリドゴールが残っている。そして、攻撃力は丁度お前の残りのライフと同じだ。トドメだ、殺(や)れ、ベリドゴールよ!」
最後の攻撃を宣言するダーク・クリムゾンに対して総麻は笑みを浮かべる。
「最後の魔界七将…お前の攻撃を阻むのは…これだ! 罠カード発動、『リビングデッドの呼び声』! 蘇れ、ジークヴルム!」
咆哮を挙げて総麻の墓地からジークヴルムが再び飛翔し、ベリドゴールの攻撃を阻む様に立ち塞がる。フィールドに新たにモンスターが召喚された事でバトルが一度停止する。
「これなら!」
「これでこのターンは凌ぎ切った! ライフは完全に逆転した! 次のターンで…オレの勝ちだ!」
最後のベリドゴールの攻撃をジークヴルムが防いだ事で一気に勝敗は総麻の方に傾いたかに見えた。いや、完全に総麻の勝利に近づいているのだろう。フレイムウイングマンと同じ効果を持ったジークヴルムの攻撃がベリドゴールに決まれば勝利できる。だが、
「ふっ、バトルフェイズを終了し、ベリドゴールの効果を発動する」
ベリドゴールの効果を発動させた瞬間、ベリドゴールの姿が掻き消えジークヴルムの首が地に落ちる。首を失ったジークヴルムの体が地面に倒れると、そこには血に塗れたナイフを舐めながら総麻を見下ろすベリドゴールの姿があった。
「「なっ!?」」
「ベリドゴールのモンスター効果。次の我のターンまで攻撃力をゼロにする事で相手フィールド上のカードを一枚破壊する。」
突然ジークヴルムが破壊された事に対して総麻とギンガの二人が驚愕の声をあげるが、ダーク・クリムゾンは淡々とベリドゴールの効果を説明する。
魔界七将ベリドゴール
☆6
属性:闇
攻撃力2000/守備力1500
悪魔族
効果
相手の効果ダメージを受けた時、このカードを特殊召喚し自分が受けた効果ダメージの値+400のダメージを相手に与える。攻撃表示のこのカードの元々の攻撃力を次のコントローラーのターンまでゼロにする事で相手フィールド上のカードを一枚破壊して墓地に送る。このカードの効果で攻撃力がゼロになっている時、このカードとの戦闘ではコントローラーへのダメージは発生しない。このカードが相手のターンで破壊された時、墓地に闇属性の☆5以上のカードが存在する場合、墓地から特殊召喚できる。
魔界七将ベリドゴール 攻撃力2000→0
攻撃力は失った物の総麻へと向けられるベリドゴールの目には『早く自分を破壊しろ』と言う意思が宿っている。
「ふふふ…残念ながらこの効果を発動したベリドゴールは元々の攻撃力をゼロとして扱い、コントローラーへのダメージは発生しない」
「破壊しか出来ない…って訳か?」
「いや、破壊された瞬間ベリドゴールは墓地から特殊召喚される。戦闘力と引き換えに【不死】の力を得たベリドゴールを破壊する事は不可能だ。我はこれでターンエンド。さあ、お前のターンだ」
総麻 LP2000
フィールド
伏せカード×1
手札×0
ダーク・クリムゾン LP400
フィールド
魔界七将ベルドゴール 攻撃力2000→0
手札×0
手札もフィールドもゼロ。そして、相手のフィールドには次のターンには攻撃力が0となっているとは言え攻撃した所でダメージを発生させられないモンスターが一体だけ。
「オレのターン、ドロー。地龍 サーベカウラスを守備表示で召喚」
地龍 サーベカウラス 守備力1200
攻撃した所で無意味なら次のターンに備えて守備を整える為にサーベカウラスは守備表示で召喚する。
「折角あと僅かな所まで追い詰めたと言うのに守勢とはな。我のターン。ドロー。魔法カード強欲な壷を発動。二枚ドロー」
魔界七将ベルドゴール 攻撃力0→2000
相手のフィールドのベルドゴールの攻撃力が元に戻る。そして、ダーク・クリムゾンの手札は二枚に増強された。
「更に手札の魔法カード『カオスドロー』を発動する。墓地に存在する戦闘で破壊された闇属性モンスター一枚に付き一枚ドロー出来る」
「ッ!?」
「このデュエルで戦闘で破壊されたモンスターは…」
「デーモンソルジャー、骸騎士ヴェリアム、冥闘士バラム、魔界七将パンデミウムの四枚。よって更に四枚ドロー」
結果ダーク・クリムゾンの手札はゼロから一気に五枚まで増強されてしまった。
「…十代並みの引きだな」
「いや、安心しろ。五枚も引いたのは良いが残念ながら手札はモンスターだけだ。だが…最後のドローで決着を着けるに相応しいカードがやっと手札に来た」
ダーク・クリムゾンの言葉と共に相手のフィールドのベリドゴールが闇の中に消えていく。
「我はベリドゴールを生贄に捧げ…。我が僕(しもべ)を引き連れ、闇より現れよ、邪悪なるドラゴンの主よ! 我は我が分身…『魔龍帝騎ダーク・クリムゾン』を召喚する!!!」
その言葉と共に闇の中より浮かび上がる闇色のルビーの宝玉。そして、ルビーの宝玉が砕け散り、その中から二本の槍を持った闇蒼のドラゴンが現れ、咆哮をあげる。
カオスドロー
通常魔法
効果
自分の墓地に存在する戦闘で破壊された闇属性モンスター一体に付きデッキからカードを一枚ドローする。
魔龍帝騎ダーク・クリムゾン
☆6
属性:炎
攻撃力2300/守備力1500
ドラゴン族
効果
このカードの召喚に成功した時、自分のデッキを上から十枚引きその中に『龍帝』と名の付く儀式モンスターが存在する場合、あらゆる召喚条件を無視して特殊召喚し、それ以外のカードは全て墓地に送る。このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、ダメージ計算を行わずにそのモンスターを破壊する。
二本の槍を大地に突き刺し、ダーク・クリムゾン(分身)は腕に巻きついている鎖を引き上げる。それに合わせてダーク・クリムゾンのデッキがオープンされ、そのカードが露になる。
「我が分身(ダーク・クリムゾン)の効果発動!!! デッキの上から十枚のカードをオープン! その中に存在する《龍帝》と名の付くカードを召喚条件を全て無視して特殊召喚する!!! 十枚のカードの中に存在する『龍帝』は一枚! よって、『魔龍帝ジークフリード』を召喚条件を無視して特殊召喚!」
その首に鎖を巻きつけられて闇の中から龍皇ジークフリードに似た黒いドラゴン、魔龍帝ジークフリードが出現すると、自分を拘束する鎖を引き千切り狂気に染まったはずの視線をはっきりとした憎悪に染めて総麻へと向かって咆哮をあげる。
間違いない、あの魔龍帝は…。
「オレの魔龍帝…」
総麻の呟きを肯定する様に魔龍帝は咆哮をあげる。
「どうやら、もう一枚の魔龍帝にお前を始末する役目は譲れん様だな。お膳立てはさせてもらおうか。我が分身でサーベカウラスに攻撃」
二本の槍を投げつけられ、守備力が下回っているだけでなく効果破壊の効果も持っているダーク・クリムゾン(分身)の攻撃は総麻の壁となっていたサーベカウラスを容易く粉砕する。
「今まで封印されていた憎しみ…存分に晴らすが良い。魔龍帝ジークフリードでダイレクトアタック!!!」
魔龍帝ジークフリード ☆10
属性:炎
攻撃力3500/守備力2500
ドラゴン族
効果・儀式
このモンスターを召喚する時の生贄には必ず『龍皇ジークフリード』と名の付くカードが含まれなければ、このモンスターは召喚できない。
このカードが攻撃する時、デッキの上からカードを五枚墓地に送らなければならない。
このカードが攻撃する時、相手フィールド上のモンスターを二体まで破壊できる。
狂気と憎悪に染まった瞳で咆哮をあげながら魔龍帝の噴出した炎が総麻へと襲い掛かる。
「魔龍帝の効果でデッキから五枚を墓地に送り…闇の中へと消えろ!!! アマナギソウマ!!!」
「悪いけど…もう一度縛られてもらう。永続罠『闇の呪縛』!!!」
魔龍帝ジークフリード 攻撃力3500→2800
総麻の罠の発動と同時に闇から現れた鎖が魔龍帝ジークフリードを縛り上げる。
「バトルフェイズを終了し、手札の『首なし騎士デュラハン』の効果を発動。相手フィールド上の永続罠を一枚破壊し、このカードをゲームから除外する」
魔龍帝を縛る闇の鎖を首の無い騎士が切り裂き、闇の中へと消えていく。それによって魔龍帝の拘束は解除され、攻撃力も元に戻る。
魔龍帝ジークフリード 攻撃力2800→3500
「我はこれでターンエンドだ。」
「オレのターン、ドロー! 強欲な壷を発動して二枚ドロー。良し、魔法カード『光の御封剣』を発動」
「良し、これで相手が魔法・罠カードを破壊するカードが無きゃ、三ターンだけど持ちこたえられる」
「オレはカードを一枚伏せてターンエンドだ」
そして、ターンはダーク・クリムゾンへと移る。
「我のターン、ドロー。何もせずターンエンドだ」
光の御封剣(一ターン経過)
一ターンが経過した事で僅かに光の剣が消え、拘束の緩んだ魔龍帝が今にも総麻へと襲い掛からんばかりの勢いで光の御封剣を揺らす。
「オレのターン。ドロー。二枚目のアンキラーザウルスを召喚。守備表示だ。ターンエンド」
「我のターン。何もせずターンエンドだ。手札が六枚を超えたので一枚捨てる」
そう言ってダーク・クリムゾンが捨てたのは『大嵐』のカード。
「な、何で使わなかったの?」
「ッ!? お前、このターン…」
「それでは魔龍帝がつまらないと言っているのでな…。残されたターン、己の無力さを悔やませたいのだろう」
そう言ってダーク・クリムゾンはターンエンドを宣言する。余裕なのか、それとも総麻を憎む魔龍帝の意思を尊重したのか、両方なのかは定かではないが、このターン、トドメを刺せる状況に有りながら態と総麻を生かした。
光の御封剣(二ターン経過)
「オレのターン、ドロー」
そう言ってカードをドローする。既に魔龍帝ジークフリードを戦闘で倒す手段は総麻には存在していない。総麻のデッキの最高の攻撃力を誇る龍皇ジークフリードを強化(狂化)したカード。効果を使えば話は別だが今の状況で堕ちた龍皇を倒す手段は無い。
ドローしたカードに視線を向けると、それはモンスターカードではなく今の状況では役に立たないカード。表情に出す事無くそのカードを伏せる。
(…龍皇ジークフリードが来てくれれば勝てた…。けど)
龍皇ジークフリードが存在すれば確かに攻撃力の低いダーク・クリムゾンの分身を倒す事でこのデュエルには勝利できるだろう。だが、
(…オレは…魔龍帝から逃げて良いのか?)
危険だからと言う理由で使う事を拒否しただけでなく、封印を重ねて闇の中に仕舞いこんだ。魔龍帝の精霊にとってそれはどれだけ苦痛だったのか…それは想像も出来ない。それは総麻自身の罪だ。
「我のターン、ドロー。何もせずにターンエンドだ。そして、余剰の手札を一枚捨てる」
そう言ってダーク・クリムゾンが捨てたのは魔法カード『ハリケーン』。
「更にエンドフェイズに手札の『呪王ドラゴナーガ』のモンスター効果を発動。エンドフェイズに手札から捨てる事によって、自分フィールド上のドラゴン族一枚に付き800ポイントのダメージを相手に与える」
「っ!? うわぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
ダーク・クリムゾンが手札のカードを墓地に送った瞬間、紫の炎が総麻の全身を包む。全身を焼かれる感覚、呼吸する事で肺さえも焼かれそうな痛み、全身を焼く紫の炎の苦痛に膝を着くが辛うじて倒れるのだけは免れる。
「はぁ…はぁ…」
総麻 LP2000→400
紫の炎が消えて呼吸を整える。苦痛と痛みはあっても肉体のダメージはベリドゴールの効果の時の様に存在しては居ない。そして、このターンで最後の三ターン目が経過し、光の護封剣の効果が完全に消える。
ダーク・クリムゾンのモンスター効果のダメージが終わると、魔龍帝ジークフリードは自身の動きを縛っていた光の剣が消えるよりも先にそれを砕く。
己の憎しみをぶつけるべき相手に対して何も出来なかった事へと苛立ちと、復讐を果たせると言う歓喜の表情を浮かべ、魔龍帝は咆哮する。
「さあ、お前のラストターンだ。このターンで勝利できるカードをドロー出来なければ…我のターンでお前の負けだ」
ダーク・クリムゾンの言うとおりだ。もう一体モンスターを召喚…墓地のフタバニアを効果で召喚して壁を揃えた所で、守勢に廻っても魔龍帝の効果でフィールドを一掃され、ダーク・クリムゾンでトドメを刺されるだけ。このターンで魔龍帝を破壊できなければ…確実に総麻の負けだ。
(オレのデッキでこの状況でアイツのライフを削りきれるカードが有るとすれば…二枚の最上級モンスターだけ…)
ジークフリードでダーク・クリムゾンの分身を倒せばそれでデュエルは終わりだ。効果破壊した上で効果ダメージを与えればそれでもデュエルは終わる。どちらにしても総麻の勝利で。
だが…それで本当に魔龍帝に向き合った事になるのだろうか…? そんな疑問を思わずには居られない。
そんな逃げている考えでは次のドローカードは総麻に勝利を与えてはくれないだろう…。仲間を助ける為、それを言い訳にして…総麻は目の前に居る自身の罪から逃げている。
自身を睨みつけてくる魔龍帝の視線を正面から見返す。
「…悪かった…魔龍帝ジークフリード」
危険な力を宿していると言うだけで精霊が宿っていると知っていたカードを今まで闇の中に幽閉してしまっていた。…もう一枚のカード『幻羅星龍ガイ・アスラ』にも言える事だが…。
「オレを憎んでいるならその憎悪は…オレは受ける責任がある。だけどな…今は…十代達の命が懸かってる! お前の憎悪…正面から打ち砕かせて貰う!!! オレの…ターン!」
そんな決意と共にデッキのカードをドローした瞬間、本来の力を取り戻すようにドローしたカードのステータスが書き換わる。
龍星皇メテオヴルム
☆8
属性:炎
攻撃力2500/守備力2100
ドラゴン族
効果
炎属性のドラゴン族を生贄にして召喚する時、このカードは生贄一体だけで召喚する事が出来る。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、攻撃力が守備力を上回っていれば、相手プレイヤーにその数値分のダメージを与える。
このカードが相手モンスターを破壊した時、その攻撃力または守備力を選択し、その数値分のダメージを与える。
それがドローした瞬間のステータスだが、それは本来の力を総麻へと貸すと決めた瞬間、オレンジの体色のドラゴンの精霊が総麻の後ろに現れ、そのカードのステータスは書き換わる。
龍星皇メテオヴルム
☆8
属性:炎
攻撃力2800/守備力2400
ドラゴン族
効果
ドラゴン族を生贄にして召喚する時、このカードは生贄一体だけで召喚する事が出来る。
このカードは炎属性のドラゴン族を生贄にして召喚した時、召喚したターンの間だけ攻撃力を1000ポイントアップする。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、攻撃力が守備力を上回っていれば、相手プレイヤーにその数値分のダメージを与える。
このカードが相手モンスターを破壊した時、その攻撃力または守備力を選択し、その数値分のダメージを与える。
「墓地の機龍フタバニアの効果を発動! 機龍フタバニアを墓地から特殊召喚!」
総麻の墓地から特殊召喚されるフタバニア。そして、総麻は先ほどドローしたカードを
「機龍フタバニアを生贄に…。今、天を切り裂け流星の皇! 『龍星皇メテオヴルム』を召喚!!!」
召喚する。
フタバニアがルビーの結晶に変わり砕け散ると、天井から出現した無数の隕石が総麻とダーク・クリムゾンの間に無数に降り注ぐ。
そして大型の隕石が総麻のフィールドに落下した瞬間、隕石の落下によって巻き起こった土煙を切り裂き、オレンジの体色を持った新たなドラゴン、新たな切り札、『龍星皇メテオヴルム』が咆哮をあげる。
「龍星皇メテオヴルムのモンスター効果、炎属性ドラゴン族を生贄にして召喚した時、召喚したターンの間だけ攻撃力を1000ポイントアップする!」
龍星皇メテオヴルム 攻撃力2800→3800
「ほう」
メテオヴルムの召喚によって敗北が決定したと言うのに当のダーク・クリムゾンは余裕その物と言った表情を浮かべている。
(…リバースカードは無い。手札にダメージを無効にするカードでも有るのか? だけど…このターン、魔龍帝だけでも破壊させてもらう!)「行け、メテオヴルム!」
総麻の声に従う様にメテオヴルムは天井スレスレまで飛翔し、全身を炎に包まれ全身が突進に特化した形に変わる。その姿はメテオの名に恥じない正に流星と言った姿。
「打ち抜け、メテオヴルム…魔龍帝ジークフリードに、【激突】だ!!!」
咆哮をあげて魔龍帝へと向かっていくメテオヴルム、メテオヴルムを迎え撃たんと炎を吹き出す魔龍帝だが、メテオヴルムは炎を切り裂き、その一撃は魔龍帝ジークフリードを捉え、
(…貴様の力は見せて貰った。やはり、我が主が望むだけの決闘者(デュエリスト)だ。良いだろう、今日の所は貴様に勝ちを譲ってやろう)
そう心の中で呟き、メテオヴルムの体当たりを正面から受け止めている魔龍帝を一瞥する。一瞬の拮抗だったが、やはり自身の効果で魔龍帝の攻撃力を上回っているメテオヴルムの力は受け止めきれず、力尽きた魔龍帝はそのまま憎悪の篭った叫び声を上げ打ち抜かれる。
ダーク・クリムゾン LP400→100
「更にモンスター効果発動! 破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える」
魔龍帝ジークフリードが爆散する爆煙の中からゆっくりとダーク・クリムゾンへと近づくメテオヴルム。そして、メテオヴルムはダーク・クリムゾンへと炎を打ち出す。
「ぐ…グオォォォォォオ!!!」
咆哮をあげてダーク・クリムゾンがメテオヴルムの炎に包まれるとそのまま操られていたタイタンの体は地面に倒れる。
ダーク・クリムゾン LP100→-3400
「や、やった…」
「見事だ、アマナギソウマ」
勝利したと思っていた総麻は突然響いてきた声に驚いて其方へと視線を向けると、デュエルが終了したと言うのに未だに存在しているダーク・クリムゾンの分身がそう言葉をかけてきた。
「ッ!? まさか…」
「その通り…あの男の体を捨ててこうして分身の肉体に宿らせて貰ったのだ」
「どう言う事なんですか…?」
「さあな(流石はXレアって言った所かよ…)」
何でもない様に言い切るダーク・クリムゾンに対して思わずそんな感想を持ってしまう総麻達。
「約束だ。望み通り貴様の仲間は返してやろう。む?」
闇のデュエルの敗者を闇の生贄にしようとしているのか、ダブルコストンのような黒い物体がタイタンとダーク・クリムゾンへと纏わりついてくる。
「ええい、鬱陶しい!!!」
そう叫び咆哮をあげるとダーク・クリムゾンに纏わり着いていた黒い物体達はそのまま吹き飛ばされる。
ダーク・クリムゾンは無理だと理解したのか、黒い物体達はタイタンを包み込み、そのまま闇の中へと消えていった。そして、タイタンと入れ替わる様に気を失った十代達が現れる。
「では、さらばだ。我と再び戦う時は我が僕(しもべ)の復讐が果たされる時だと言う事を…忘れるな」
ダーク・クリムゾンが手をかざすとタイタンの飲み込まれた闇の中からデッキを構成していたカードが飛び出し、その中の一枚から魔龍帝ジークフリードが姿を現す。
デッキから姿を現した憎悪を込めて魔龍帝ジークフリードは総麻を睨みつける。そして、そのまま二体のドラゴン達は飛び去っていく。
「悪い…アカデミア側に連絡して、迎えを…。」
今までは気力で立っていたのだが、それも限界になった総麻はそのまま意識を手放して倒れる。
「あ、あの!」
だが、総麻は知らない…闇の中で手にした一枚のカードは、彼にとっての一つの大きな運命を運んでくるカードだと言う事を…。