龍の転生者と魔物達の転生記 決闘符禄   作:龍牙

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閑話01『精霊界への導き、光導の神』

「くっ…。オレは…って、何処だよ、ここは?」

 

意識を取り戻した総麻の視界の中に飛び込んできたのは緑色の草原と森に青い空…明らかにデュエルアカデミアがある島ではない風景。

 

「…確か、オレは…ダーク・クリムゾンの精霊に操られたタイタンに勝って…それから…」

 

闇のデュエルのダメージ-主にモンスター効果のダメージで切り裂かれたり、全身を焼かれたり-が原因で気を失った後の記憶が無い為になんとも言えないが、一種のリアルな夢と判断してしまうには、これはあまりにもリアル過ぎる。

 

「デュエルディスクが…無い」

 

ふと妙に腕が軽い事に気付くと腕に着けていた筈のデュエルディクスが無かった。

次にデッキを確認してみると、こっちはちゃんと六つ揃っている。何時の間にデュエルディスクを外したのかと疑問に思うが、今はそれを気にしている時ではない。

 

「取り合えず歩いてみるか」

 

軽く屈伸して何処へとも無く足を進める。此処が何処かは分からないが、一箇所でじっとしているよりも誰か人を探した方が現状を理解するには最適だろうと判断する。僅かに歩を進めて改めて周囲を確認すると、他に誰も居ない事を確信する。

 

(良し)

 

自分以外に誰も居ない為、遠慮する事無く《力》を使い、気で脚力を強化して走り出す。デュエルアカデミアでは殆ど役に立たない力だが、こう言う時は何よりも役に立つ。

 

それから総麻が道なりに走り続けていても誰も人を発見する事は無く、ただ景色だけが変わっていくのが見えるだけだ。

数分、数時間、どれだけの時間は知り続けているのか分からなくなる。それほど走っていると言うのに太陽は一向に傾く事無く、それが総麻の時間に対する感覚を麻痺させてしまう。

 

「分かれ道か…」

 

暫く歩いていると言葉通り分かれ道に差し掛かる。無言のままポケットの中を漁ると、デュエル中のコイントス用のメダルが出てきた。

デュエルディスクではコイントスを必要とするカード効果が発動した時には、ソリットビジョンでコインも出てくるが、一応イカサマ防止の為にこうして持っている。

 

「表は右で、裏は左に…“賭ける”」

 

そう言ってコインを投げて出た結果に従って分かれ道を進み始める。その後も分かれ道に遭遇する度に同じ事を繰り返していた。一見してみると乱暴な方法かもしれないが、総麻は最も安全で確実な方法としてこの手段をとっているのだ。

 

世紀末の魔人達の一人である《賭博の王》の《力》は、唯一遊戯王の世界では絶対的な力になる《力》と言えるだろう。

それは、上手く扱えば時に十代の引きを上回る《強運》を与えてくれる《力》。分かり易く例えるならば、追い詰められた十代が逆転の切り札を引き当てられなかったり、相手のターンならばデュエルディスクの故障でデュエルが中止になるほど絶大な、運命を変えるほどの力だ。だが、この力はデュエル中には色々と制限がある。

その制限の一つとして《賭博》。それが一種の賭け事として成立する事が最低限の条件になる。

 

何気にギャンブルカードだとかなり都合の良い事になりそうな気がするが、デュエル中のカード効果にはこの《力》は影響してくれないので助かっている。(流石に絶対に負けないギャンブルカードと言うのは反則過ぎると思っているので)

…付け加えると、外野(ギャラリー)の立場としてデュエルの勝敗を賭けの対称にすれば、幾らで影響を与える事はできたりする。

 

現在はデュエル中でない為に必要な制限無しで《賭博の王》の力を使い、別れ道で常に正解の道を選び続けていると言う事になる。

 

『        』

 

「ん?」

 

何度目かの時に何かの声の様な物が聞こえた。

丁度コイントスの結果も声の聞こえて来た方向を指している。それを疑問に思いながらも自分の運が導き出した結果を信じて別れ道を進む。

 

その後も総麻の進む道筋の先から声の様な物が聞こえてくる。特に別れ道に差し掛かると聞こえてくる率が上がってくる。

 

コインの示す道を、時に声の聞こえた先、時に声とは反対の方向へと進んでいくと、

 

「…神殿…?」

 

何年、何十年、いや、下手をしたら何百年と建ち続けたのか分からないほどボロボロになった神殿が視界の中に飛び込んできた。

 

(…なんで此処に…?)

 

絶対的な幸運を持った《賭博の王》の力を使って進んだのだから、その神殿に何一つ危険はなく、寧ろ自分がそこに必然的に導かれた。そう考えるべき場所だろうと判断する。

 

そう思いながら総麻は神殿の中に入っていくと、入って直ぐに足元に妙な壁画を見つける。太陽と月が描かれた床板…ゆっくりと天井へと視線を向けると、外の光を取り入れている天井に開いた穴から零れる光に照らされて見える見覚えの有る何かのマーク。

 

「…蠍座?」

 

丁度零れる光の点を線で繋ぎ蠍の絵の上に重なっている天井の壁画を眺め、そんな疑問の声を零しながら前へと視線を向けてゆっくりとモンスターの石像の様な物が祭られた祭壇の様な物に触れる。

 

「ッ!? 罠か!?」

 

総麻が何気なくその石像に触れた瞬間石像が砕け散り、それをトリガーとして神殿が揺れて崩れ始めていく。

 

慌てて神殿から外へと飛び出すと、崩れ落ちた神殿の跡から一つの巨大な影が飛び出してくる。

 

「なっ!?」

 

神殿の残骸を踏みしめながら現れる巨大な影…蠍を思わせる下半身と巨大な針、両腕にも巨大な針を持った青い巨体を持ったモンスター…それは。

 

「『天蠍神騎スコル・スピア』?」

 

総麻の記憶の中にある、黄道十二星座の一つ『蠍座』を司る神の力を秘めた青き異形のスピリット…『天蠍神騎スコル・スピア』。そんなスコル・スピアに対してデュエルディスクを構えようとするが、

 

「チッ! (…まさか、オレを此処に呼んだのはこいつ? それに、スコル・スピアが実体化しているって事は…此処は、《精霊界》か!?)」

 

何故か自分を此処へと導いたのが他でもない、目の前に存在する天蠍神騎スコル・スピアだと理解しながら、腕にデュエルディスクが無い自体に思わず舌打ちしてしまう。

相手が何時攻撃を仕掛けてきても良いように全身を気で強化しながら構えを取り総麻はスコル・スピアと対峙する。

 

だが、当のスコル・スピアはそんな総麻の心情を知ってか知らずか、総麻に対して攻撃してくる様子も無く、その巨体は光に包まれて一枚の『白いカード』へと変わり、総麻の元へと舞い降りる。

 

「白いカードって事は…シンクロモンスターか? …まさか、お前自身のカードをオレに渡したくて此処に呼んだのか…?」

 

自分の下へ来たカードを受け止めながら思わずそう呟いてしまう。だが、カードとなったスコル・スピアからは何も返事は返ってこない。

 

「…『天蠍神騎スコル・スピア』…シンクロモンスターだから、チューナーが無いから使えないよな…属性は…っ!?」

 

絵柄も無く効果も召喚条件も読めないそのカードを手にしながら、辛うじて読める部分を読み上げていく上で、そのカードの特異性を知る事になる。

 

「『神』属性…☆10…あの三幻神と同格かよ…。」

 

それでも、ある意味では三幻神…とまでは行かないとしても、少なくともこれから先に出現する事になる三幻魔には匹敵する力を持つであろう12宮Xレアの持つ力を考えれば当然と言える事だろう。

 

…失礼ながら、三幻神と比べたら数的には個々の力は、大体四分の一位とは推測しているが。流石に個々の力が三幻神一体と同等の力を持っているとすれば、数の上では四倍も存在していると言うのは洒落にならないだろう。

 

第一、黄道12星座は太陽の通り道に存在する。星座を司る神と、太陽を司る神であるラーの翼神竜と同等とは考え辛い。

どっちにしても、ただでさえこの時代ではイレギュラーな代物であるシンクロモンスター。その上、神属性と言うどう考えてもイレギュラー過ぎる代物をそうポンポンと使える訳も無く、チューナーが無い為に召喚条件も満たせない代物だ。チューナーを単独で使った方がまだ安全と言える。

 

それに、下手にシンクロ召喚を多用して、5D`sで語られたシンクロモンスターが原因の滅びの未来を迂闊に使って早めたくは無い。

GXと5D`sの年代を推測すると最低でもアカデミア卒業後十年以内に少なくともゼロリバースが起こる可能性が高いのだし。

 

「まさか、こいつが全シンクロモンスターの元になった…って言う事は無いよな…?」

 

そんな疑問も浮かぶが、真実だったらそれはそれで怖すぎるし、スコル・スピア自体がイレギュラーな代物である為に、それは有り得ないと強く言い切れる。

 

「まあ、人目のある時に使わなきゃ良いだけの事だろう。当の本人(?)も使う時じゃ無いって言ってる様子だしな…」

 

召喚条件を含むテキストが何も書かれていないスコル・スピアのカードを眺めながらそんな事を考えて、手に入れたスコル・スピアのカードをデッキケースの中の一つに仕舞いこむ。

 

天蠍神騎スコル・スピアは力こそ強大だろうが封印してしまった二枚ほど邪悪な意思は無い。手元に有った方が安全だろうと判断した結果だ。

 

(…デッキに入れてた所で使えなきゃ意味ないしな)

 

融合モンスターを使わず、チューナーモンスターを持っていない総麻にとっては融合デッキに入れていたとしても、それは単なる自分の目の届く保管場所以外の価値は無い。だからこそ、そこは一番安心できる場所だ。

 

そんな事を考えながら、今は役目を終えて崩れ去ったスコル・スピアが眠っていた神殿に対して、一度黙祷を捧げた後背中を向けて歩き始めた。

 

丁度その時だった。総麻の視界に霧が掛かった様になり、同時に意識が遠くなっていく。

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