龍の転生者と魔物達の転生記 決闘符禄   作:龍牙

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TURN-08『恐怖と導き』

意識を取り戻した総麻の視界の中に飛び込んで来たのは清潔な天井。どうやらベッドに寝かされているらしい。

ベッドの傍らに他のデッキと一緒に置かれているデュエルディスクにはデッキがセットされている。間違いなくそれはそのデッキはダーク・クリムゾンと戦った時に使った赤のデッキだろう。

 

「っ!?」

 

体を起こそうとした時、手の中に何かの感触が有るのを感じ取る。ゆっくりとそれを視線の高さまで持ってくると、それが視界の中に映る。

 

「…夢じゃないってのは分かっていたけどな…」

 

名前とレベル、属性だけが書かれたバトスピのカードではなくデュエルモンスターズのカードとなった12宮Xレアの一枚、蠍座の『天蠍神騎スコル・スピア』のカードともう一枚…。

 

「…何時の間に…。…いや、そんな事より…なんでこんな物が“今”存在しているんだよ…?」

 

もう一枚のカードへと視線を向けながら総麻はそのカードの名を呟く。

 

「…“ダークチューナー”…『蝕星龍 ジークヴルム・ヴェガ』…」

 

そう、それはこの時代には間違いなく存在していないはずのカード…。…地縛神によって操られたダークシグナー達の使っていた闇のチューナーモンスター、『ダークチューナー』のカード。

攻撃力は0でダークシンクロを使った時に発動する能力はどれも強力な物が多いのが特長だが、このカードの攻撃力は高く単独での効果も強力で召喚もし易い、バトスピのカードの中にも存在していたジークヴルムのバリエーションの一つ。

ダークシンクロとは関係なく総麻のデッキに単独で投入したとしても、無理なく動いてくれるカードだろう。だが、

 

「…なんて言うか…危険な予感のするカードだ…」

 

入手経路の不明なカードと言うだけでなく、『ダークチューナー』等と言う曰く付きの不吉なカードをそうそう多用する気にはならない。しかも、そのダークチューナーが総麻の愛用するジークヴルムの名を持つモンスターと言うのは…。

 

「まるで、誰かに『使え』って言われている気がするな…」

 

ダーク・クリムゾンに奪われた自分を憎む精霊『魔龍帝ジークフリード』の事も有るから下手に封印する事は出来ず、今の心境ではなるべくならそんな事はしたく無い。間違ってもデッキに紛れ込まない様に、デッキのカードとは別に手元に置いておいた方が良いだろう。

 

そう思いながら総麻はジークヴルム・ヴェガのカードをスコル・スピアのカードと一緒にメインデッキとは別にデッキケースに仕舞うと、ダーク・クリムゾンとの闇のデュエルでダメージを負った場所に触れる。触れた瞬間痛みが走り、服を捲ると巻かれた包帯に血が滲んでいた。

元々癒しの《力》はこれまで使う必要が無かった為に熟練度が低く、闇のデュエルの実体化した2000ポイント分のダメージを完全に回復させる事は出来ず、応急処置程度にしかならなかった。

 

もう一度、『癒しの光』を使って回復を促進させようかとも思ったが、それはやめておこうと考える。流石に怪我が跡形も無く直ぐに治ったらそれはそれで不自然だろうから。

 

痛みが引いていくと眠気が襲ってきてそれに逆らう事無くベッドに横になると再び意識を手放す。

闇のデュエルのダメージは思った以上に総麻の体にダメージを与えていた。お見舞いに来たなのは達が入ってくるまで眠り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「退学? 十代達が?」

 

お見舞いに来た彼女達が教えてくれた事だが、十代と翔が廃寮に入った事が原因で退学を賭けたデュエルをする事になったそうだ。

 

本来ならば一緒に入ったはずの隼人は留年を繰り返している為に退学も大した罰にならないだろうと、よく言えば見逃され、悪く言えばアカデミア側に匙を投げられた。

逆に成績優秀な明日香やなのは達の場合は、退学こそ受けなかったものの、厳重注意と罰則としてレポートが言い渡された。

続いて総麻と一緒に後から廃寮に入る事になったギンガは、自分の意思ではなく学園に入り込んだ不審者(当然タイタンの事)に廃寮に連れ込まれたと言う事で、罰は与えられずにいた。付け加えるなら、彼女の証言と大怪我を負った事で総麻も罰は受けないらしいのだが…。

 

「…で、オレは退学こそ見逃されたものの、十代達の事の報告を怠った事のペナルティとして、レポート十枚を賭けた制裁デュエルを十代達と同じ日にタッグデュエルじゃなくてシングルデュエルで受ける事になったと…」

 

「うん」

 

同じ制裁デュエルでも、総麻の場合は命に関わる大怪我を負った上に不審者に連れ込まれたと言う、言ってみれば論理委員会の不手際に関わる問題だった為に退学は無し、と言う事らしい。

 

クロノス先生辺りは『総麻も十代達と一緒に退学だ』と言っていたが、逆に総麻の方は論理委員会が率先して反対してくれた。

総麻が大怪我をしてまで女子生徒を護った事と、無理矢理連れ込まれた被害者で有る事が理由らしいが、穿った見方をすれば向こうにとっては下手に退学にして総麻の口から、アカデミアの敷地に入り込んだ不審者を何日も放置したと言う自分達の大き過ぎるミスが明らかになるのは拙いという事なのだろう。デュエルアカデミアの信用問題にも関わるだろうし。

 

ただし、十代達が廃寮に行くと言っていた事を知っていて黙っていた事に関しては問題だった為に、ペナルティとして制裁デュエルが課される事となった。

総麻の場合は退学ではなくレポートを賭けてだが。要するに負けても単にレポートに苦労する程度だ。

 

「まあ、強い相手と楽しくデュエルできるなら、歓迎だけどな」

 

命も将来も関係ない気楽なデュエルになるなら、それは歓迎できる物だ。掛かっている物が単なるレポートならば、純粋にデュエル(ゲーム)を楽しむまでだ。

 

本来なら勝つはずのタイタンを相手に、ダーク・クリムゾンと言うイレギュラーの存在が有ったとは言え負けたと言う事で確実とは言えないが、十代達は先ず負ける事は無いだろうと考えているので十代達には自分達で頑張って貰おうと思っている。

 

厳しい言い方だが、校則を破って危険な場所に勝手に立ち入った以上、今後真似をする生徒が出ない為にも厳しい裁きを与えられるのは、ある意味においては当然の事だ。寧ろ、十代の実力を考えれば制裁デュエルと言うのはかなりの温情だろう。

 

「十代君達の事は心配やないんか?」

 

「…いや、不審者の事を抜きにしても……不法侵入は犯罪だろ? 寧ろ、問答無用に退学にならなかっただけでもアカデミア側の温情だ」

 

明らかに友達である十代達の退学に対して心配して無い冷たい言い方の総麻に対してはやてが不満そうな声を上げるが、“十代達は自分達の意思で率先して廃寮の中に肝試しとして入って行った”。どう考えても、タイタンの事が無かったとしても十代達はこの事がばれたら罰せられただろう。

 

「友達だからこそ、悪い事をしたら反省させなきゃならない。…流石に退学は遣り過ぎだとは思うから、勝つ事は祈っているけど、少しは苦戦して反省した方が良い…」

 

心配して勝利は祈っているが、直接的な手助けはしないと言うのが総麻から十代達への対処だと言う事だ。ただ甘やかすだけが友情や愛情ではない。まあ、怪我で動けそうも無いが。原作知識(未来予知)で一応タイタンが(多分)クロノス先生の差し金だとは思うが、勝手に廃寮の中に入り込んだのは十代達の方が悪い。

 

「えっと、それじゃあ退学とかじゃなかったら…」

 

「負ける事は期待しないけど、自業自得として切り捨てる」

 

厳しすぎる総麻の一言に思わず黙り込んでしまう彼女達…。其処まで話した後、ふと聞き忘れていた事を問いかける。

 

「ところで、オレと十代達の制裁デュエルって何時なんだ? …それ以前にオレってどれくらい寝てた?」

 

「明日だよ」

 

「へ?」

 

「もう一週間近くも眠り続けてて、全然目を覚まさなかったから、みんな心配してたんだよ!」

 

(…どんだけ深手負ったんだよ、オレ?)

 

思わず頭を抱えてしまう。恐らく…総麻が並みの人間だったら、間違いなく死んでいたのではないかとも思ってしまう。実際、忘れがち…と言うよりも大して利用価値も無いのだが、総麻は何気に《黄龍の器》の力を基礎的な能力として持っている。

 

並の人間に比べれば遥かに致命傷を負っても生き延びる可能性が高い。現に総麻の力の《黄龍の器》の力を持った剣風帳の主人公は“胸を日本刀で串刺しにされても”生き延びたのだし。多少の危険なダメージでも生き延びられる程の天運に恵まれてるのではないだろうか。

 

(…どっちにしても、制裁デュエル用に六つとも調整しておくかな…。それにしても)

 

総麻の気に掛かるのはタイタンを操っていた『魔龍帝騎ダーク・クリムゾン』の精霊の存在だ。元バトスピのカードにも精霊が宿るのは、自分も知っている。だから、精霊が宿っているのは良い。だが、タイタンは何処でどうやってダーク・クリムゾンのカードを入手したのか、それが気になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、総麻はこっそりと保健室を抜け出す。レッド寮の部屋に戻っても良いのだが、何日も意識を失っていた事で保険教諭の鮎川先生に止められた。少なくともあと一日は保健室で休んでいる様に言われたのだが。

 

総麻は周囲を警戒しながら移動して火山の前に着くと、デッキケースの中からスコル・スピアのカードを取り出す。

 

(…此処に行け、そう言う事か?)

 

心の中で問いかけてもスコル・スピアのカードからは何も返事は返ってこない。

 

(…思えば、オレが一緒に行っていれば…十代は負けなかったのかもしれない…。いや、ダーク・クリムゾンや魔龍帝の狙いがオレだったら…最初からオレが戦っていれば、それで済んだかもしれない)

 

お見舞いに来たなのは達には見せないようにしていたが、《自分が逃げたから危険に晒した》、そんな考えが浮かんでくる。

…あの場で闇のデュエルが起こる事を知っていたからこそ、自分の安全を考えて逃げた事で、自分が知っている筈の未来とは別の方向に進んでしまった。

結果的に自分をおびき寄せるためにダーク・クリムゾンに人質にされたからこそ十代達は助かったが、ダーク・クリムゾンが助けていなかったら…闇の罰ゲームを受けていたのは…。

 

「オレのせいなのか…?」

 

誰にとも無く問いかける。だが、そんな事は分かりきっている。自分が逃げ出したから、自分が居るから…。

 

「クソ!」

 

思わず拳を地面に叩きつける。全ては総麻自身の弱さが招いた結果だ。総麻の中にある恐怖心は未だに巣くっている。

 

(…この先、どんなイレギュラーが起こるか分からないって言うのに…)

 

少なくともこれから先、直接的に生命の危機に陥る戦いも多いだろう。だが、今回の事を考えると…また逃げ出そうものなら、今度はどんな取り返しの付かない事態に陥るか分かったものではない。心から恐れている死を回避する為にはその恐怖心に立ち向かわなければならないのなら…。

 

「どうしろってんだよ」

 

そんな事を考えていると、総麻を照らしていた月の光が何かによって掻き消える。

 

「っ!?」

 

全身を奔った危険信号に従うように大きく前へと跳ぶと先ほどまで総麻の立っていた場所を五つの首を持った巨大な何かが砕く。

 

「なっ!? 『F(ファイブ)・G(ゴッド)・D(ドラゴン)』だって!?」

 

それは現実へと実体化しているデュエルモンスターズ史上最大の攻撃力を誇るモンスター、F(ファイブ)・G(ゴッド)・D(ドラゴン)の威容。それが総麻を見下ろす様に存在していた。

 

「くっ!? 実態化した、モンスターだと?」

 

慌てて其処から逃げ出そうとするが、赤と白の光の壁の様な物に阻まれる。

 

「これって…まさか、闇のデュエルか!?」

 

すると、F(ファイブ)・G(ゴッド)・D(ドラゴン)の巨体が消え、白い光と炎が混ざり合いながら人型と化した様な何かが現れる。

 

「…デュエル…」

 

「っ!?」

 

人型の声が響くと同時に総麻の腕に装着されていたデュエルディスクが総麻の意思とは関係なく勝手に起動して、LPが表示される。

 

 

総麻 LP4000

人型 LP4000

 

 

「チッ! 問答無用か…。良いぜ…相手になってやる」

 

総麻がカードを五枚抜き放つと、人型の前に五枚の石版が出現する。それが人型の手札なのだろう。

総麻は相手を見据えながら睨みつけているが、無意識の内に手が震えている。ダーク・クリムゾンとの闇のデュエルの時に感じた死の恐怖が心の中に再び湧き上がって来たのが原因だろう。

 

「…『仮面竜』を守備表時で召喚、カードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

 

仮面竜/守備力1100

 

 

人型の前に存在している石版の一枚が表になり其処から仮面をつけた赤いドラゴンが出現し、防御体制をとる。仮面竜、優秀な効果を持ったドラゴン族のリクルーターだ。

 

(…仮面竜やF(ファイブ)・G(ゴッド)・D(ドラゴン)と言う事は…ドラゴン族デッキか)

 

相手の先ほどの戦術でデッキの傾向を推測すると自分の手札へと視線を落とす。

 

(…ダーク・クリムゾンと戦った時のままの赤デッキか…。最悪だ、このデッキだとF(ファイブ)・G(ゴッド)・D(ドラゴン)は戦闘(バトル)じゃ破壊できない)

 

そう、赤デッキは炎属性と僅かな風属性が主力のデッキ。その中にはF(ファイブ)・G(ゴッド)・D(ドラゴン)を倒せる《光》属性のカードなど一枚も入っていない。

一ターンの間だけF(ファイブ)・G(ゴッド)・D(ドラゴン)の攻撃力5000を突破する事は可能でも、炎属性しか居ないデッキではF(ファイブ)・G(ゴッド)・D(ドラゴン)を戦闘で破壊する事はできない。攻撃力の元に戻った後にF(ファイブ)・G(ゴッド)・D(ドラゴン)に破壊されるのがオチだろう。

 

(だったら、出される前に…決着をつける)「オレは地龍サーベカウラスを攻撃表示で召喚!」

 

 

地龍 サーベカウラス/攻撃力1400

 

 

総麻のフィールドに出現するのは緑の体色に体に刃が映えたモンスター。

 

「サーベカウラスで仮面竜を攻撃、サーベカウラスは攻撃する時、攻撃力が400ポイントアップする」

 

すれ違い様にサーベカウラスが仮面竜を切り裂くと表になっていた石版が砕け、新たな石版が地面の中から出現する。そして、それと同時に新たなドラゴンがその姿を現す。

 

「仮面竜の効果で『アームド・ドラゴンLv(レベル)3』を召喚。更に罠カード『リビングデッドの呼び声』を発動、仮面竜を蘇生」

 

「っ!?」(二体の…しかもアームド・ドラゴンは次のターンには次のレベルに…。くっ、これじゃ攻撃しない方が良かった)

 

人型のフィールドに再び現れた仮面竜と新たに現れたアームド・ドラゴンの姿に思わず舌打ちしてしまう。相手のフィールドを削るどころか、先ほどの攻撃は完全に裏目に出てしまった。

 

「オレはカードを伏せて…ターンエンドだ」

 

次のターンに出現するであろう大型モンスターの存在を警戒しながら、総麻は二枚のカードを伏せてターンエンドを宣言する。だが、事態は更に厄介な方向に進む。

 

「ドロー。アームド・ドラゴンの効果でLv5にレベルアップ。更に仮面竜を生贄に捧げ、『ホルスの黒炎竜Lv6』を攻撃表示で召喚」

 

「はっ? 嘘だろ…? レベルモンスター…しかも、一体はホルスかよ!?」

 

心の其処から『最悪だ』と言う叫び声を上げてしまう。

総麻を見下ろすように佇むのは第二の進化を遂げた二体のドラゴンのレベルモンスター達、それに対して総麻のフィールドに有るのは伏せカード一枚と攻撃表示で出ている攻撃力1400のモンスター・サーベカウラスが一体だけ。

 

(くっ、伏せカードで何とかなるか?)

 

伏せたカードに視線を向けてそう考える。例え効果を発動させたとしても、二枚の伏せカードの効果なら、このターンは持ちこたえられるが…其処までだ。それは逆転の一手等にはならない。

 

(…どうする…?)

 

まるでダーク・クリムゾンの時を思い起こさせる様な状況の中、総麻は相手を見据えながら手札へと視線を向ける。

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