チヒロとノヴェムはこの世界について金髪の少女「ユキカゼ・パネトーネ」に質問をしていた。
「なるほどな。つまりこの世界はユキカゼみたいに耳のついた人間がいて、俺たちはそこに迷い込んだ…と。」
「まあ、ざっくり説明するとそんなところでござる。二人は恐らく目的はあれど「勇者」として導かれた者でもなさそう…でござるな。」
チヒロはそれに小さく頷いたが、横にいたノヴェムはその言葉に凄い食いつきを見せた。
「勇者!?この世界に勇者なんているのか!!」
「いるでござる!戦の時には活躍してくれるでござるよ!」
ユキカゼはその食いつきの良さにテンションが上がるのがチヒロにもわかったが、彼には一つ疑問点が浮かんだ。
「戦?戦うのか?こんな世界で。」
「そりゃ人がいりゃ争いくらいは起きるでしょうよ。」
ロードの言葉にチヒロは納得した。だが、それをつゆ知らぬユキは少し自慢げにこちらを向き、歩いていく方向を変えた
「どこ行くんだ?」
チヒロの疑問にユキカゼは答えた。
「当然でござる!戦の場でござるよ!」
「えっ?」
二人。いや、チヒロの中にいたロードすらその思考についていくことは出来なかった。
森を抜けるとそこには異様な光景が広がっていた。
その戦は彼らの想像するような「戦争」ではなくどちらかというと「競技」に近いものがあった。そして倒されるたびに小物のような動物になっていく姿に驚きを隠せなかった。
「人が倒されるたびに猫に……?」
ノヴェムとロードはその異様な光景に頭が空になった。一方でチヒロは少し笑みを浮かべてユキカゼに提案した。
「これって参戦したらダメなのか?」
「はぁ!?参加するの!?この乱戦に!?」
不安げなノヴェムとは逆にユキカゼは少し笑みを浮かべた。
「大丈夫でござるよ!拙者たちの国はあちらでござる!」
そこにいたのは緑色の髪をした中性的な少女と金髪の少年だった。金髪の少年は耳が頭についていないことから別世界の人間であることはハッキリとわかった。
「で、あの金髪の男性こそ我らが勇者「シンク・イズミ」にござるよ。」
敵を無双していく勇者を見てノヴェムは少し前のめりになっていた。
「うわぁ……。超かっこいいじゃん勇者!」
チヒロはそのテンションの上がりようを見て彼は降りようとする崖の高さを見た。この程度なら降りられる。そう確信した。
「んじゃあ、行ってみるか!」
チヒロが降りようとしたその瞬間だった。後ろから剣を向けられ、チヒロは動けば死ぬ距離にその剣は輝いていた。
「動かないでもらおうか。異世界の者よ。」
「お館様!!?」
ユキカゼは後ろにいた女性を見て驚いた。チヒロは後ろを見ると、中性的で和服を着た女性が剣を向けていた。もちろん、この世界の人間なのだろう耳がついていた。
「ちょっ!?どういうことですか!?」
お館様と呼ばれたその女性にノヴェムが質問すると、女性は話を始めた。
「この世界に魔物ではない異郷の者が住み着き出した。主らが呼び出したのだろう?」
チヒロは後ろを振り向き、怒るような目つきでベルトを装填した。
「随分と勝手な御託を並べてくれんじゃねか!」
「ちょっ!?チヒロ!?」
ロードが止めようとするがチヒロはガンバライダーにすぐさま変身した。そして無双セイバーを召喚し女性に斬りかかるが、女性はそれを見事に避け、鞘で殴り飛ばしてみせた。チヒロはその攻撃で近くの木に叩きつけられ、その木には叩きつけられた窪みができていた。
「ガハァ……。」
「召喚のみが取り柄ということか……。何と情けない。」
チヒロは息をしようとするが一撃の重さからか、うまく息が出来ない。それどころか息をするごとに苦しくなっていく。
「すげぇ……。」
ノヴェムがそう呆気に取られていると、次はノヴェムにその剣を向けた。
「さあ、答えてもらおうか?何が目的だ。」
ノヴェムは足が竦んだ。あんなにやられている姿を見て彼自身は逃げる道すら選んだ。黙り込むノヴェムを助けるかのようにユキカゼが間に入っていった。
「待ってくだされお館様!彼らは魔物に襲われていた身。恐らく別の者の仕業です。」
「なんと!?それは真か!?ユキ!」
ユキカゼの言葉を聞いて女性は少し驚いた顔をして、チヒロへと駆け寄った。
「すまない!拙者の早とちりだったようだ!!立てるか?」
チヒロは伸ばされたその手を掴み、何とか立ち上がった。
「まずあんた誰だ?」
チヒロはギリギリの張った声で女性に問いかけた。
「名乗っていなかったな!拙者はブリオッシュ・ダルキアン。ユキたちを纏めている棟梁だ。」
チヒロは納得し自分の力で足を張ると、ロードから声が聞こえた。
「チヒロ、それってアクートが呼び出したんじゃ?」
チヒロはロードの言葉に頭を掻いた。
「そうだとしたら……進化しすぎだろ。何で怪人呼び出せるようになってんだよ。」
ノヴェムたちはチヒロとロードの会話に疑問符を浮かべた。
「誰と話しているでござるか?」
「それ思った。」
ユキカゼとノヴェムのリアクションにチヒロは驚くような顔をして、よく考えた。そして二人は気づいた。自分たちが二重人格であることを。