あの戦いから二週間が経とうとしていた。
魔物とヘルヘイムの力を取り込み、ビスコッティ全体を闇で覆ったユキカゼを救い、そこへと現れたアクートを退けた。
「早いもんだなぁ。」
「そうだねぇ。」
チヒロは小さくそう呟いた。獅子王炎陣大爆破によるダメージは回復し、九重もまた傷は癒えていた。
「でも、君はダメージを負いすぎたな。」
九重の言葉にチヒロは苦笑した。尤も、彼のおかげユキカゼは救えたとは言えど、彼自身にヘルヘイムの力を取り込ませた。そしてその傷の大きさは以前よりも増していた。
「大丈夫さ。この程度の傷。」
チヒロは傷を叩いてみせた。ロードは少し怒りを含めた声で彼へと声を放った。
「僕は痛みはあるけどね!」
お前が考えた作戦だろうに・・・。チヒロは頭を少し掻いた。
「どうする?することがあるなら今のうちにやっときなよ?」
チヒロの言葉に九重は首を横に振った。
「生憎サービス残業は嫌いなもんでね。」
ロードは九重の言葉に少し笑った。尤も、平和が訪れた以上、ガンバライダーがここで活動することもない。
「んじゃあ、行くか。」
次元の壁を開き、去ろうとした時だった。
「何も言わずに行くとは、水臭いでござるなぁ。」
後ろを向くと、ダルキアンやユキカゼ、それにシンクやエクレールたちもいた。
「あんまりこういう湿っぽいのは好きじゃないんだけどなぁ。」
九重は笑顔で彼女たちに行った。ユキカゼは一礼した。
「お二人、いやお三方のお陰で何とか復興も進んだのでござる。礼も言わせずに行くのはズルイでござるよ。」
「そうだ!勝ち逃げはさせねぇよ。」
ユキカゼとガウルの言葉に九重とチヒロは苦笑いした。確かに復興は協力したが、彼らのおかげだとは微塵にも思ってなかったのもあって、何とも返す言葉が見つからない。
「それに、お渡しするものもあります。」
小さな光の玉をユニゾンブレスへと当てた。彼らはそれが皆の力、光であることはすぐに分かった。
「ありがとな。姫様。」
「こちらこそ、他のところに行ってもご武運をお祈りいたします。」
チヒロと九重は大きく一礼し、次元の壁へと歩いて行った。
「行っちゃったね。」
「生きてれば何処かでまた会えるでござるよ。」
少し肩を落とすシンクにユキカゼはそう慰めた。
「・・・」
「お館様?」
「あぁ、何でもない。」
アクートの言葉が頭をよぎる。彼の言う結末。そして九重が言っていた一つの可能性。彼女はそれに対して不穏な空気を隠さずにはいられなかった。
「最悪のシナリオにならなければ良いが・・・。」
一人彼女は空を見上げた。彼女には彼らの武運を願うことしか出来ない。そう初めて感じたのだった。
仮面ライダー新牙、「君島 龍」はたった一人廃墟に佇んでいた。無論、「独り」での行動ではないわけだが。
「今回は逃してしまったな。」
「あぁ、コウガネ。」
彼の中に秘めるロックシード「ダークネスエナジー」からは男の声が聞こえる。それはかつて神を名乗り、仮面ライダー鎧武たちに戦いを挑んだ「コウガネ」その人だった。
「あいつは俺の手で必ず・・・。」
「戦えたみたいだね。」
遠くから女性の声が聞こえた。君島の目の先には長い髪を靡かせた女性だった。
「噫蘭か。」
噫蘭と呼ばれる女性は龍へと近づいた。噫蘭は近くにあった瓦礫の一つに座り込んだ。
「お前は何のために奴と戦う?」
噫蘭は君島の言葉に少し考え込み話を始めた。
「彼を討つ理由なんてたった一つ。憎しみ以外の何者でもない。」
噫蘭の言葉に少し興味なさげに空返事を返した。
「なら俺と同じ・・・と言うわけか。」
噫蘭は小さく首を縦に振った。
「私と君が組む理由には他ないだろう?」
いや、と君島は言葉を切った。
「奴を討つのはどちらか。そこだけはハッキリさせておこう。」
噫蘭は少し笑った。大人しい表情からは想像できないくらい穏やかな表情だった。
「そんなもの早い者勝ちだ。倒したいなら私より先に・・・というだけだ。」
君島は遠くを眺めた。
「そうか・・・。なら、俺が仕留めるとしよう。」
二人はまた離れ、互いに違う世界を見ていた。
「カナデ・・・。君は私が倒す。それまで死んでもらっては困るんだ・・・。」
噫蘭氷菓は瓦礫で勢いを付けて降りていった。彼女の手にもまた「ガンバドライバー」鈍い光を放っていた。
次元の壁から戻ってきたチヒロと九重は研究員たちの目を見ることは出来なかった。
「・・・また失態か。」
「うっせぇよ。」
チヒロは研究員へと鋭い目を放った。研究員は後ろへと下り、またチヒロも九重に肩を叩かれた。
「今は反応してる場合じゃないよ。」
チヒロはそこで目を瞑ると、落ち着いた。と彼に目で合図を送った。
「次の世界へと向かってもらう。」
「休みなしかよ・・・。」
九重は残念そうにその報告を聞いた。疲れも癒してくれないこの会社はやっぱりブラックか。彼は心の中でそう呟いた。
「良いさ。さっさと行こうぜ。」
チヒロはレイシフト台の上に乗った。元気だねぇ。と九重は呆れを混ぜながら台の上に乗った。
「問題発生です!」
「は?」
二人は研究員の方を向いた。周囲のモニターには[Eroor]の文字が広がっていた。
「待て!これどうなんだよ!」
「知らないよ!こんなの初めてだし・・・。」
二人の時間は次第に乱れて行き、彼らがそれぞれに落ちた先に片割れはいなかった。
「どうなってんだよあのクソ会社。」
「ったく、着く先で聞いてないことしか起きてないじゃないか・・・。」
二人は困惑しながらも、少しずつ歩みを進めるのだった。
作:というわけでDog Days編終了です!
エ:実に半年の月日だったな。
リ:長かったでありますなぁ。
ユ:ここからはまた違う世界でござるなぁ。
ダ:武運を祈るでござるよ!
作:皆さん!ご愛読
全員:ありがとうございました!!