その世界の名は
遠く暗い道が続いている。鉄の香りと腐り乾いた空気が彼らの鼻を通っていった。
「ったく、ここホントどこだよ・・・。」
チヒロは周囲を見渡すも、そこには薄暗い灯と牢獄しかない。
「ここに捕まった。と考えるのが妥当だね。意味はわかんないけど。」
「ったく・・・、どうなってんだよ。」
ロードの言葉にチヒロは頭を抱えた。今回は別々に空間が飛んだため、この世界に九重がいるかどうかさえ怪しいところだ。
「困ったね・・・。」
あぁ。とチヒロが小さな声で返すと、ギシギシと鉄の擦れる音がした。
「何だ?」
チヒロはその音へ近づいていくと、そこで少女が手首を鎖で繋ぎとめられていた。銀髪の少女はそれに気づいてないかのように眠りについている。
「おい!!」
咄嗟のことにチヒロが大きな声を出してしまった。その声に呼び寄せられたか、チヒロたちの背丈の二倍もある男たちが彼らへと迫ってきた。
「お前・・・誰だ?」
「お前らこそ誰だ・・・!」
大男は睨み付けたチヒロへと殴りかかった。彼はその大きなモーションを見事に避けガンバドライバーを装填した。
"Ganba rider stand by ready"
「変身!」
チヒロはライダー状態へと武装し、すぐさま仮面ライダー斬月の武器である「メロンディフェンダー」を召喚した。
「どけええええ!!」
チヒロは盾から衝撃波を繰り出し、大男たちを薙ぎ払った。そしてその衝撃波で牢獄の檻すらも砕いた。
「大丈夫か!?」
チヒロの問いかけに少女は寝息で答えた。無事なことを確認したところでロードへと人格が変わった。
「寝てるみたいだ・・・。すぐさま脱出しよう。」
ロードへと人格が変わると、鎖を壊しメダガブリューを召喚した。
「お前まさか・・・。」
「そのまさかさ。いくよ・・・!」
壁めがけてストレインドゥームを放ち、壁へと大きな穴を開けた。
「さあ、脱出するよ!」
「お前滅茶苦茶だなホント。」
チヒロの呆れ顔を遠のけ、ロードは少女を連れて空へと飛び上がった。
「おい!何事だ!」
大きなガトリングを背負った男が軽々しくこちらへと走ってきた。
「ブラッド!?収容者が逃げた!」
ブラッドは空を見つめた。空気を吸い、彼らの匂いを追った。
「まだ追える・・・。さっさと追うぞ!」
ブラッドを取り囲んでいた大男たちはすぐさま武器を持ち、牢獄の外へと走っていった。
一方で九重は暗い細道を歩いていた。すぐ横では男たちが騒ぐ声が聞こえる。
「もう・・・、あのポンコツ会社め。変な仕事ばっかり押し付けて・・・。」
チヒロと出会って一ヶ月ほど経つものの、彼へと与えられる仕事は本当に変わったものばかりだった。
「あの人たちだけ楽しやがって・・・。許さんぞ。」
九重は自分でもどうだってよくなる愚痴を言いながら入り組んだ道をフラフラと入っていく。そして明るい場所に出たと思ったその時だった。
「うわっ!」
「きゃっ!」
九重と女性は倒れ込み、しりもちをついた。先に立ち上がったのは九重だった。
「大丈夫ですか!?」
「えぇ・・・。大丈夫です。」
女性は金色の髪をなびかせ、その紅い目と歌声のような声で九重へと話しかけた。
「あ・・・あぁ、それなら良かったんですけど。」
危ない。と九重は心を止めた。この声を聞いただけで惹かれてしまいそうだ。しかし、その甘い時間は唐突に消し去られた。
「下がって。」
女性にそう言われると九重はあたりを見渡した。そこには真っ黒な影が無数に彼らを囲み、まるで闇のようにこちらに迫っていた。
「逃げ道はなさそうね。」
「戦うしかないってわけですか・・・。」
九重はガンバドライバーを装填した。女性は装填されたベルトを見たまま頭に疑問符を並べているようだった。
"Ganba rider stand by ready"
「変身!」
九重はノヴェムへと変身し、彼は仮面ライダー龍騎のモンスターであるドラグレッダーそして仮面ライダーリュウガのモンスターであるドラグブラッカーを召喚した。
「やれ。」
赤と黒。二頭の龍は一斉に炎を放ち、闇を焼き払っていく。そしてドラグセイバーを召喚し、同時に斬りかかっていく。しかし、闇たちは消えるどころか数を増していた。
「こいつら正気かよ・・・。」
九重の焦りようを見て女性は片手に銃を構えた。
「私も戦おうかしら・・・。」
女性がそう言うと、女性の辺りには蝶が舞い、あたりの空気を一瞬にして変えた。
「何だ・・・これ。」
ノヴェムが周囲を見ているのも束の間、闇たちは消滅していた。
「私と・・・組む気は無いかしら?」
女性は九重の後ろへと回り込み、小さく問いかけた。彼女の持っていた銃口は確実に九重の脳天へと向けられていた。
「・・・何が望みですか?」
ノヴェムは変身を解き、女性へと鋭い視線を送った。すると女性はとある写真を渡した。
「名前はティナ。この子がこの街で狙われているの。」
ふーん。と九重は目を細めた。
「こんな街で狙われる子もいるんですね。」
女性は返す。
「そりゃそうよ。私だって狙われてるかもしれない。この"100億ドル"の街でね。」
「100億ドル?」
女性はハッとしたように言葉を急かした。
「挨拶がまだだったわね。私の名は"ファルファラ"。よろしくね。」
九重は軽く頷く。
「協力しますよ。僕の名前は九重一成。僕も人を探してるもんで。」
二人は握手を交わし、九重は仮面ライダー鎧武のバイク「サクラハリケーン」を召喚し、ファルファラを乗せて夜の街へと走っていった。