突然の来訪者を退けたロードたちは公園から去り、再びバイクでその道を走らせていた。
「なあ、妙じゃないか?」
チヒロの一言で全員が足を止めてそれぞれがロードへと近づく。
「これだけ荒らしておいて敵が誰一人として来ない。」
「罠・・・とも考えられるな。」
チヒロと九重は顔を合わせる。おそらく狙いはティナただ一人、恐らく先ほど大きな力を使ったティナは暫く立ち上がれないだろう。
狙われているティナは九重の後ろでゆっくりと眠っており、もう暫く目を覚ますことはなさそうだった。
「撤退するか?」
「いいえ、考えたって仕方ないわ。」
二人の会話を切り裂くようにファルファラが意見を一刀両断した。
「たとえ罠だとしても彼らを討たない限りは先はないのでしょ?」
「その通りだと思うよ。」
三人が声のする方向へと目を向けると、そこにはハットを被った一人の少年が立っていた。
「ナーベル!!」
ファルファラが彼の名を叫ぶと、少年はゆっくりと街中へと降りていく。ネオンの光が眩しいのか、彼は降り立つ瞬間少し深く帽子をかぶりなおした。
「その少女・・・プレシャス・チルドレン」はいただくよ。」
「プレシャス・チルドレン?」
ナーベルは不気味な笑みを浮かべてチヒロたちへと一歩、また一歩と近づいていく。
彼の通った背後からは影から這い出るように黒い影がいくつも生み出された。
「あれは・・・?」
「あの時戦ったやつだ。」
ロードへと人格が変わり、二人はガンバドライバーを装着し、ICカードを装填した。
「変身!」
二人は変身して影へと一気に歩みを進める。ファルファラもまた銃を構えた。
-GRZ社-
ここでは並行世界の全てを守るために各世界に拠点が敷かれて日々研究、活動が続けられている。という表向きの姿を見せている。
特に力を入れている「ガンバライダー」は仮面ライダーたちの力を使役することで力を振るうシステムであり、適合者こそ必要なものの、その能力の高さと実績は各政府から補助金が降りるほどだった。
「ガンバライダーのデータの収集完了しました!」
「よし、ご苦労。」
研究員たちは日夜廊下を駆け回り、いくつもの書類に目を通していた。
だが、これは表向きの姿に過ぎない。
「使えねえなこんなクソみたいなデータ!」
「っ!!」
白衣の男は被験体であるガンバライダーへ罵倒を浴びせてその場を去っていった。
「始めるぞ。」
「うあああああああああああああああ!!!!」
少女は拘束された状態で電撃を撃たれ、死にも匹敵する痛みが身体中に広がっていく。
これがGRZ社の裏向きの姿である。本来の目的は世界掌握のために様々な並行世界のデータを手に入れることただ一つにあった。
無論、現在アクートを追っているガンバライダー「ロード」もその一人だった。
「Lordシステム、未だ活動せず。」
「ふざけるなよあのガキ・・・。」
白衣の男たちは映像を通してロードたちの戦闘記録が何枚もふくれあがる。
「どうだい調子は?」
「社長!!」
GRZ社の社長-檀 黎斗-はそのモニターに目を通す。そこには幾つもの数値が細かく割り出されていた。その数字の一つ一つを確認して、檀はモニターに目を通す。
「我々の大事な商品なんだ。是非とも大事にしてやってくれよ?」
はい!とそれぞれが返事をしたことを確認すると、そこにあったオフィスチェアに腰掛けた。
「彼の成長には期待しているんだ。失敗してもらっては困る・・・。」
不敵な笑みを浮かべて、そのモニターに集中して目を通す。
-Lordシステム-それは誰も未解明の言わば「発展途上」のシステム。彼の興味は彼へと一点に向けられた。
ロードとノヴェム、そしてファルファラは次々に影を掃討していく。しかしその数は減るどころか増える一方だった。
「これじゃキリがねえな・・・。」
「こっちが疲弊するだけだ・・・。」
少年は空中から傍観し、その機を伺っているようにも見える。
ファルファラは一気にへと近づき、何発もの銃弾を放った。
「あなたの相手は私よ!!」
「退屈だなぁ・・・。」
ファルファラが近づいた瞬間、ナーベルは姿を消して地上のロードたちの間に割り込んだ。
「僕の相手を忘れないでほしいな。」
ナーベルは周囲に魔法陣を描き、杖に炎を灯した。
「そーらっと!!」
魔法陣に囲まれた周囲は一気に爆発し、周囲を煙と炎に変えた。
「俺らも見下げられたもんだな・・・。」
「そうだね。」
ロードはガウルユニゾンへと、そしてノヴェムは紋章砲を展開し、炎を全て吸い上げた。
「一気に狩落とすよ。」
「あぁ。」
ロードの手に灯された炎の爪は巨大化し、一気にそれを振り回す。爪に切り裂かれて一気に影たちはその姿を消していく。
「神狼滅牙・封魔断滅!!」
ノヴェムのガンバソードに灯された炎は一直線に振りかざした方向へと燃え上がり、影たちは燃え消えていった。
しかし、影たちの数は増えていき、彼らを囲っていく。
「まだまだ!!」
「こんなもんじゃない!!」
二人が後ろを向くと、ノヴェムのバイクへと近づいていく。
「僕の目的はこっちさ。」
「待て!!」
ロードたちは影を切り裂きながら近づくが、その数は減らずこちらが押し返されるほどだった。
少年はその細い腕でティナを抱きかかえて、空中へと上がった。
「させない!!」
ファルファラが遠距離から何発も銃弾を放つが、彼の魔法陣により防がれてしまう。
「邪魔だよ・・・。」
「っ!!」
ファルファラへと放たれた何発もの銃弾はファルファラの眼前で止まり、大きな光を生んだ。
「閃光弾!?」
「じゃあ、また会おうね。」
光の中ロードたちを嘲笑うように満面の笑みを見せた。
「くそっ・・・!!」
ロードたちは押し返してくる影たちを弾き飛ばそうと何度も試みるが、その数に押されて動くことすらままならなかった。
少年とティナはその場の影となって一瞬で姿を消した。
「ティナ!!」
「チヒロ、今は焦っても仕方がない。今はこいつらを・・・!!」
小さく舌打ちするとロードたちはICカードを反転させてバーストチェンジした。
「こいつら・・・!!」
「どぉぉぉおおおけぇぇええええええ!!!」
二人はバーニアでなんとか移動し、腕に纏わり付いた影を振り払った。
「あいつらの相手は私がするわ!二人は追って!!」
「ファルファラさん!!」
ファルファラは一気に突撃していく。彼女の空中から放った何発もの光弾は敵を炭へと変えていく。
ノヴェムはゆっくりと背を向けて、バーニアをもう一度点火した。
「僕らは奴を」
「九重。」
「何?」
「俺たちのガンバドライバーのシステムってホントに普通のガンバドライバーと同じなのか?」
九重は生唾を呑んだ。チヒロとロードの力で何倍も生み出すことが可能なわけがないことなどロードたちも薄々気づいていたのだろう。
「・・・ない。」
「あるんだろ!?」
チヒロの怒号が混じった声はノヴェムの足を一歩引かせた。
「・・・あるにはあるが君たちに使わせるわけにはいかない。」
「使わねえとティナも何も救えないだろ!!」
「そんな温いことを言ってられる状況じゃない。僕からも頼む!!」
チヒロとロードの言葉に押されていくノヴェムは一つため息ついて彼らへともう一枚のICカードを与えた。
「君たちに与えられたLordシステム。それは二枚のICカードでバーストチェンジすることで二重の力ではなく二乗の力に変えるシステムだ。だが失敗すれば片方は消滅する・・・ってあれ?」
ロードはノヴェムに渡されたもう一枚のICカードを装填し、再度抜いて二枚のICカードを装填した。
「人の話聞いてる!?危険だって」
「今それを気にしてたら何も助けらんねえだろ。救えるもんくらい救ってやるよ!!」
「バカ!失敗したらどう責任を」
バーストチェンジしたロードはノヴェムの言葉を遮り強い光を生み出した。
"Ganba rider Lord Rerize"
「Lordシステム・リライズ!!」
周囲は光に包まれ、その光はロードたちに吸収されていく。
"Rerize open"
光が消えた時、ノヴェムの目の前には赤色の目、そして緑色の目を輝かせた二人のガンバライダーがいた。
「君が」
「俺・・・。」
二人は目を合わせて、再び下を見下げた。ファルファラが一人で善戦していた。
「いくぜロード!」
「あぁ、チヒロ!」
二人は一気に加速して闇へと何発もの光弾を放った。影は一瞬にして消滅していく。
「二人・・・なの?」
「あぁ」
「実際には一人だけどね。」
ファルファラと目を合わせると、ファルファラは空中のノヴェムの元へと向かった。
「あの子たちは大丈夫なの?」
「まあ、こればっかりは信頼するしかないよ。」
いかんせん使ったことのないシステムのため、ノヴェムも何とも言えない状態なのだ。
ロードとチヒロの二人のガンバライダーは背中合わせとなって、同時にユニゾンブレスを輝かせた。
ロードはなのはユニゾンへと、チヒロはシュテルユニゾンへと姿を変えた。
「彼女たちの力、使えたんだね。」
「みたいだな。」
二人はその場で魔法陣を展開して、そこへと大きな光の球を生み出した。
「行こうストライクカノン、レイジングハート!」
"All System Complete"
「いくぜルシフェリオン!!」
"委細承知"
「スターライト」
「ルシフェリオン」
「ブレイカー!!!!」
光の球は収束し、光線へと変わり大地へと降り注いだ。
二つの星の光は地面を覆っていた影を全て消し飛ばして、その周囲には二つのクレーターを生み出した。
「すごい・・・。」
「無茶苦茶だ・・・。」
ユニゾンを解除してロードのチヒロは一つの体へと戻ると、人間体へと戻った彼がそのまま地面一直線に落ちていく。
「チヒロ!!」
「ロードくん!!」
落ちていった彼を男が抱きかかえて、そのままゆっくりとクレーターへと置いた。
「今から向かうところはおそらく同じだ。俺も同行する。」
ノヴェムとファルファラの目の前にいる人物は予想すらしていない戦力だった。
「アンタは・・・」
「ブラット・・・。」