ロードたちはティナの救出、そしてヴィンセントの計画を止めるために彼の潜むカジノへと向かっていた。
「お前のガトリング邪魔・・・ぶつかる!痛え!!」
チヒロの顔面には鉄がぶつかる。ガンガンと顔面に鉄がぶつかってくる。
「痛え!!お前のこれなんとかならねえのかよ!!」
「うるせえな静かにしろよお前!!何だ!!お前味方に対しての対応じゃねえだろそれ!!」
「うるせえ!!鉄が直撃してんだぞ痛えに決まってんだろ!!」
チヒロの顔に何度も彼の背負った筒がぶつかる。
彼を乗せながらガトリングを担いでいる。というよりはガトリングを乗せてその後ろにチヒロがいるためほぼ彼に座る席などなかった。
「お前後で覚えてろよ!絶対ぶっ飛ばすからな!」
「ああやってやるよいつでもかかってこいよ!!」
「チヒロ落ち着いて!!今喧嘩してる時じゃないって!!」
ロードの言葉に我を取り戻したチヒロはひとつ落ち着くと、彼の目線には彼らが落ちて来たあの監獄のような要塞が見えた。
元々ティナはあそこにいて捕らわれていた。よくよく考えれば彼女だけが捕らわれていたのも不思議な話であるが。
「なあ!?」
「何だ!?」
チヒロの問いかけにブラッドは聞き返す。チヒロはロードへと人格を変えて話を続けた。
「僕らが最初に着いた場所、あの監獄は何だったの?」
「あぁ、あれか。」
ファルファラと九重は前を向いてひたすら走っている。その中でブラッドは少し声を落とした。
「アレは兄貴の後ろ盾の奴らが密売するために作ったらしくてな・・・。あの子供もおそらくはそいつらに捕まったんだろう。」
「なるほど・・・。そこで僕らが転移してきてこうなったと。」
ブラッドは頷く。
「アレがどうかしたのか?」
「あれを混乱の手口に使えないかな?と思ってね。あそこを崩せば相手も混乱するだろうし。」
ブラッドはなるほど!と納得して一気にファルファラたちに追いつく。
「おい二人とも!提案があるんだがいいか?」
「あぁ。」
「ええ。構わないけど。」
三台のバイクはそのまま加速してカジノへと突き進んでいった。
-各員、戦闘準備整いました-
そうヴィンセントへと各所からの伝達が渡ってくる。
ここには世界全体を見渡すモニターが付いており、ヴィンセントはここから世界を見渡すことが可能となっている。無論、それはガンバライダー側についたブラッド、そしてナーベルに攫われたティナのことも見えていた。
「ったく想定外ばっかり起きやがって・・・。」
ヴィンセントは大きなため息をつくと、モニターを眺め続ける。
しかし、彼にも気掛かりなところが幾つかあった。
「財団X・・・ねぇ。」
世界をまとめる組織が何故今になって自分たちのところへと来たのか。そして、この世界で好きにしていいか。という質問をしてきたことも彼にとっては気掛かりだった。
「あの連中なら聞かずして暴れまわりそうな気がするがな・・・。」
今はそんなことを考えてる場合ではない。今目の前にあることに集中しよう。ヴィンセントは改めてモニターを眺めた。
彼らがティナを必要としているのもわかるが、こちらも必要なことには変わりはないし、こちらは彼らと違って時間がない。彼に与えられた職務を果たすには少々乱暴ではあるが彼らを止める必要がありそうだ。
少し考えるそぶりを見せていると、赤いガンバライダー 、そしてブラッドがカジノの門を通る姿が見えた。
「ん?」
先ほどまで一緒だった青いガンバライダーとファルファラがいない。何か妙な予感がするが今は戦闘への狼煙を上げることが先だ。
「よし、花火を飛ばせ!!」
了解!と各所からの伝達が入るとカジノの上からは綺麗な花火が何発も上がり、それを合図に一気に兵士が走り出した。
「女神様・・・私を導いてください。」
ヴィンセントは祈りの構えをとると、通信を切りそのまま赤いソファへとゆったりと座り込んだ。
一方でロードとブラッドは花火が上がったことを確認すると、人格が変わりブラッドと背を向ける。
「今の花火は?」
「第一陣だ。このあともう一発花火があがりゃ第二陣が来ることになってる。」
「花火の形とか決まってんのか?」
クソほど意味わかんねえ質問するなコイツ。そう呆れ気味にロードを見た後ブラッドは敵へと視線を戻した。
「決まってねえけど・・・それがどうした?」
それを聞いてロードはほくそ笑んだ後、なのはユニゾンへと姿を変えてそのまま空中へと飛翔した。ブラッドが後ろを向いた時にはかなりの高度を上昇していた。
「第二陣ごとぶっ飛ばす考えが思いついた。俺に任せろ!」
「えっちょっお前!!待てよ!!それどういう」
そう言い残して飛び去ると、大軍勢の中一人ブラッドが取り残された。
「ったく滅茶苦茶しやがんなアイツ・・・。仕方ねえ耐えてやるよ!!」
そう言い背中に背負ったガトリングを構えて狂うように回転ながらその大きな筒を振り回した。
チヒロはそのまま飛翔しながら先ほどの花火の上がった座標へと辿り着いた。
幸い敵は戦線に出ているようでその下には誰もおらず、空中に監視の目も届いていそうにはない。
「ねえチヒロ!!」
「どうした?」
チヒロはロードに落ち着いた表情で聞き返した。ロードが何度も問いかけていたのは知っていたが、彼へと一つ返事も返さなかった。
「第二陣ごと吹き飛ばす力ってどういうこと?そんなの」
「スターライトブレイカーだ。」
ロードは呆然とすると、少し考える。
「えっ?待って?やっぱり僕には理解できないんだけど。」
スターライトブレイカーは砲撃魔法として確かに吹き飛ばすことは可能ではあるが、どう考えても先ほどの花火の話と繋がらない。それに第二陣が出ていないのに今この座標に来ても意味がないのでは?言い分を言おうとしてもロードは大丈夫。としか答えない。
「俺とレイジングハートなら出来るって話だ。さあ、始めようぜ!」
"All right"
そうレイジングハートも答える。彼ら二人の思考をロードはどうも発想することすらできなかった。
ノヴェムとファルファラはロードたちが元々落ちた場所。ティナの眠っていた牢獄へと足を運んだ。
「ったく何よここ・・・汚いし暗いし。」
「全くだ・・・。こんなとこで働く奴らの気が知れない。」
ノヴェムの後ろにつくファルファラ。ノヴェムはフッと笑うとファルファラの手を握った。
「うわっ!!?」
「ビビってるんですか?」
「ビビってないわよ!!
揶揄うノヴェムへと本気で怒るファルファラ。真っ赤になっていくファルファラを見ると堪えていた笑いが溢れるようにクスクスと笑い続ける。
「なっ・・・何よ!」
「いーえ、何でもないですよ。」
そう子供のような目で言い返すと、ファルファラは深呼吸して彼の一歩前へと出た。
「向こうも戦闘してるでしょうし急ぎましょ!!」
ノヴェムとファルファラがそう話していると、ドーンという花火の音が遠くから聞こえた。ファルファラは不思議そうに身構えるノヴェムの肩を叩いた。
「あなたもビビってるの?」
「今"も"って」
「言ってない!!」
おー怖。と戯けた態度をとり、ノヴェムが一歩下がるとファルファラは一息ついてノヴェムから視線を外した。
「恐らく向こうの戦闘が始まったのよ。こっちも急ぎましょ。」
あぁ。と気を取り直すと二人はそのまま暗い監獄をそのまま突き進んでいく。しかし妙なことに人の声は何一つしない。
「なんだここ・・・。」
「誰もいないなんてこと」
「あるんだよ。ここにはあの女しか捕らえられてなかった。」
声のする方へと二人が目を向けるとそこには人、いや人ではない何かが棒立ちで立っていた。
「誰だ・・・あんたは。」
男はその仮面の奥でフッと吐き捨てた笑いを飛ばすと、男は手のナイフを向けた。
「ソルジャーネーム-スタンス-。それが俺の名だ。」