月が満ちる夜。そんな中黒い影は暴れまわり、ロードへと双剣を振り回した。月明かりに照らされた影は周りが暗いにも拘らずその姿をはっきりとチヒロたちに見せた。
「ティナ・・・!!」
チヒロは攻撃出来ずにそのまま彼女の攻撃を回避する。右、左、そしてまた右左と何度もその二つの剣を振るった。
ティナはチヒロの言葉に一つも返事せずその剣を振るった。
「っ!!」
「おいお前!!」
チヒロの肩へと一つの剣が刺さり、刺さったまま壁へと蹴飛ばした。チヒロはその言葉の通りされるがまま突き飛ばされた。
「チヒロ、このままじゃ君が」
「じゃあこのままティナを殺せってのか!!」
ロードはチヒロの言葉に黙り込んだ。今の彼らの状況は劣勢そのもの。このままティナを刺し殺すことが最も楽な策ではあるだろう。だが、恐らく彼女の実力、それ以上にロードとチヒロがそれを出来たとしても許さないだろう。
「テメェが出来ねえなら!!」
「よせブラッド!!」
「・・・。」
ブラッドはその大きなガトリングの銃弾を何発も放ち、直撃であれば跡形もなくなるほどに撃ち込んだ。
「これで・・・」
「ブラッド上だ!!!!」
ブラッドがチヒロの言葉につられるように上を向くと、そこには黒い影がすぐさままで近づき、ブラッドへとかかと落としを見舞いした。その威力は彼よりも数段背の低い子供とは思えないほどの力だった。
「ぐぁ・・・っ!!」
ブラッドはそのまま倒れこみ、彼はその後立ち上がってはこなかった。
「クソ・・・クソッ!!」
チヒロは地面にその拳を叩きつけた。この世界で守ったもの、そして守らねばならない仲間一人守ることが出来なかったのだから無理もない。
「うああああああああああ!!!!」
「チヒロ!!!!」
チヒロはロードの声を聞かず、叫びながら音撃棒烈火を召喚し何発もの火炎弾を放った。だがその煙の中からは無傷で埃を払う黒い影の姿があった。
「ふふふ・・・、この力はどうだい?」
チヒロの目の前にいたのはあの時ティナを攫い、彼らへと闇を相手にさせたナーベルその人だった。
「テメェ・・・!!」
ロードはチヒロから無理矢理人格を変え、目の色が赤から緑に変わるとロードはティナたちに剣を向けた。
「君たちか?ティナをこんな風にしたのは。」
「君たち?これは僕の計画さ。僕以外には誰も関わっちゃいないさ。」
ロードは加速をつけて一気に斬りかかった。しかし、ナーベルを庇うようにティナの双剣がそれを防ぐ。影はそのままロードの剣を弾き飛ばし、首をつかんだ。
「っ!!」
その力は強く、彼を絞め殺すなどたやすいと思わせるほどだった。
「ティ・・・ナ。」
息が止まる。彼の目の前が薄くなっていき、目の色が消えていく。目の前にいるナーベルすら霞んで消えていくようだった。彼が死を覚悟したそんな時だった。
「全く・・・、ここで死んでもらっては困るんだよ。」
そう声が聞こえ、声の主はティナとナーベルを二つの剣で薙ぎ払った。
「おま・・・え。」
「どうして・・・!?」
二人は目を疑った。彼らの目の前にいたのは青い鎧を纏い、赤い目をしたガンバライダー-アクート-だった。
アクートは二人を薙ぎ払うと、ティナの手から離れたロードを抱きかかえてそのまま地面へとゆっくり降ろした。
「何でお前が・・・?」
チヒロの言葉にアクートは鼻で笑ってチヒロを睨むように見た。その複眼の奥からまるで怒りと笑いを同時に起こしているようだった。
「君に死んでもらっては困るからだよ。俺も君も来たるべき時までは生きる意味がある。」
「来たるべき・・・時?」
アクートは銃を召喚すると周囲に紋章を開き、そこに銃口を向けた。銃口を向けた紋章へと光が移転し、その光は紋章を中心に次第に広がっていく。
「どうしてお前がそれを・・・!?」
ロードたちは驚きを隠せなかった。彼らが向かったビスコッティで使われた紋章砲そのものをアクートが使用し、チヒロたちの前で開いているのだ。彼らの頭の整理がつかないままアクートは話しかける。
「これが来たるべき時の真実とも言えるだろうな。」
「何!?」
「それより良いのか?そこでお仲間がくたばっているようだが。」
アクートの言葉にハッとしたチヒロとロードは驚きを隠せないまま、後ろへと下りブラッドの元へと走っていく。ブラッドの手を握るとまだ手のぬくもりが残っていて、彼が確かに生きていることが確認できた。
「おい!!」
チヒロたちは声の方向へと目を向けると、そこには長身の男性がチヒロたちへと手を振りこちらへと誘導している。
「何のつもりだいヴィンセント?」
「うるせえ!!さっさとそこのバカを連れてコッチに来い!!」
チヒロは困惑しながらも言われるままヴィンセントの元へと走って行った。
「行かせないよ!!」
「こちらのセリフだ!!」
ナーベルが向かおうとするとアクートは橙色の光弾を何発も放ち周囲に煙を起こした。
煙が晴れた頃には三人はおらず、青いガンバライダー一人がそこにいた。
「貴様・・・!!」
「真実を知らされていない君にとっては疑問も当然だろうな。」
アクートはそう呟くと、飛びかかったティナの剣をいなしてそのまま地面に叩きつけた。
「っ!!」
「ほぉ、感情が完全に消えているわけではないようだな?」
黒い影は再び剣を向けてアクートへと走っていく。アクートはため息をつくと片手から生み出した光を収束させた。
「スパークスマッシャー。」
雷を纏った光弾は剣を振りかざしたティナへと直撃してそのままティナを吹き飛ばした。
ナーベルの額からは汗が流れており、それを見たアクートは小さな少年へと問いかけた。
「何だ?焦りでも感じているのか?」
「っ!!」
ナーベルは怒りを一瞬見せてそのまま睨み付けると、ティナへと手を振りティナをこちらへと呼び寄せた。ティナは操り人形のようにナーベルの元へと飛んで行った。
「これくらいにしといてあげるよ。プレシャスチルドレンは渡さない!」
そう言い、光に包まれるとアクートの前から黒い影と魔術師の少年はその場から立ち去った。
「勝てると思っているとは・・・愚かなものだ。」
アクートは後ろからの気配に気づき後ろを向くと、そこには彼と対峙したガンバライダー"ノヴェム"ともう一人女性が立っていた。
「やあ諸君、次は君たちが相手か?」
「お前の目的は何だ。」
アクートの言葉を無視してノヴェムが銃口をその額に向けた。その引き金を握る手には力が入っており、アクートへの強い憎しみが伺えた。
アクートはカジノへと指をさして軽く鼻で笑ってみせた。
「我が友なら向こうヘと向かった。置いて行かれる前に向かった方がいいんじゃないか?」
まるでバカにするような言い方に女性が銃を握るがノヴェムはそれを制した。
「君の思う結末にはならないことをよく覚えておいた方がいい。」
そう言いアクートの横を通り過ぎた。ファルファラもそれに付いていくようにアクートの横を通り過ぎた。
たった一人残されたアクートは周囲の壊れたビルの様を見てため息をついた。
「我々をジャッジするのは神かそれとも人か。どちらだろうな?」
彼が空を見上げるとそこには大きな穴が広がっていて、そこへと物体が吸収されたり放出されているのが見えた。彼はその穴を見て鈍い汗を見せた。
「あそこまで広がっているとはな」
「アクート!!」
彼が鈍い汗を払って後ろを向くと、そこには黒いボディに紫色のアーマーを纏ったガンバライダーが立っていた。彼はその人物が誰かを知っている。
「クロス・・・。」
彼とは幾多もの因縁があり、忘れようにも忘れられない。と言っても過言ではない人間の一人だ。
尤も、クロスも任務で追っているため彼との因縁は切っても切り離せないわけだが。
「ここで一つ小話をしてやろう。」
「興味ないな。」
クロスはガンバブラスターを召喚しアクートへと向けた。アクートはその真面目な姿を見て呆れ笑いを見せてクロスを片手で止めた。
「まあそう言うな・・・。お前は世界の中心-ワールドコア-という存在を知っているか?」
「ワールド・・・コア?」
銃を向けたクロスはアクートの言葉に疑問を抱いた。アクートは話を続ける。
「ワールドコアは並行世界ごとにいる世界のコアでそいつは並行世界で同じ人物、同じ物質として生まれないそうだ。」
「それが何だ?」
「ワールドコアが移転し並行世界に二人存在するとあの空中にあるワームホールのように多次元世界との扉が開くと言われている。」
クロスはその言葉にハッとして空を見ると、その穴は大きくなっていくのが見えた。クロスの額に冷や汗が流れるとアクートへと再び銃を向けた。
「ならお前がコアだとでも言いたいのか?」
「さあな。ワールドコアが暴走すると多次元世界の扉を幾つも開き世界の壁を壊す力もあるらしい。そんなものをお前は今放っておけるか?」
クロスは黙り込むも、アクートへと少しずつ近づき心臓に銃口を向けた。
「だがお前を倒さない理由にはならない。」
「今は手を組もうって話をしてるんだ。俺もあの穴を放っておくわけにはいかないからな。」
クロスは俯くと、その銃を捨ててアクートへと背を向けて歩き出した。アクートはため息をついてクロスを睨みつけた。
「どんなことがあっても俺はお前と組むことはないだろう。お前が敵である以上それは変わらない。」
アクートは鼻で笑うと去っていくクロスへと大声をあげた。
「ならワールドコアに会った時に伝えてくれ!君は今絶望に屈している場合ではないとな!」
その言葉に返すことなく黒いスーツのガンバライダーはその場から飛び去って行き、その場にはまたアクートただ一人が取り残された。