ガンバライダーロード   作:覇王ライダー

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新たなる力で闇を打ち砕く!

-満月の夜-

いつからかこの世界は朝がなくなり昼がなくなり夜だけになった。そしていつからか月は変わらぬ満月を見せ続けている。

仕組みはわからないがどうやら彼ら魔術師のせいだと言われているらしい。この世界では魔術師が卑下され事の元凶にされることもいささか珍しいことではなかった。

それにも拘らずこの世界の人間達は変わらずにいつまでも変わらぬこの月の下で闇の商売を続け、つまらぬ生活を送っている。

-つまらない-彼はそう思いながら、彼へと近づく黒い光達と戯れた。

彼の周りには黒い妖精が飛び回っており、この世界のあらゆる所の情報を届けてくれる。現にティナの捕獲もおそらく妖精なしでは叶わなかったことであろう。

ナーベルは眠る少女を傍らにそんな変わらぬ月を眺めていた。

「っ!!」

ティナが起きたことを確認するとナーベルはそっと彼女へと近づいた。

「やあ、起きたかい?」

「誰!!?」

ティナは後ろへと下がろうとするが、彼女に付けられた手枷と足枷が彼女の両腕両足を縛り付けていた。

少年はティナへと不敵な笑みを浮かべながら近づく。その姿はまるで天使を殺そうとする悪魔のようだった。

「な・・・何よ。」

恐怖で足が震えている。ティナの震えは少年が近づくたびに止まらなくなっていく。

「ふふふ・・・、君の大切な人は君の手で傷つけられたよ。」

「っ!!?」

ティナへと赤い血の付いた砂を見せた。その血は先ほどの赤いガンバライダーやガトリングを背負った青年が倒れ込んだ時に付いた血だ。

ティナの震えが止まらなくなるのを見ると、彼はまるで黒い光に指示をするように手を上げた。

「やめて・・・。」

「大丈夫。」

「やめて・・・。」

「今度は必ずー」

「やめて!!!!」

崩壊したビルから断末魔の叫びが聞こえる。少女へと黒い妖精が纏わりつき、彼女の体を覆っていく。

そう、今度は大丈夫。誰もこの地から-還さない-

 

地上へと出たファルファラ、ブラッド、ヴィンセントは潰れたカジノを背に遠くを眺めた。

「来るかしら?」

「来るだろ。」

ファルファラは銃を、ブラッドはガトリングを構えて背を合わせた。ヴィンセントも片手に持った銃を回しながら敵を今か今かと待ち構えた。

「しかし、魔術回路・・・か。」

-魔術回路-

かつて滅んだとされるシステムの一つで、コアを媒体に魔術バイパスを血流の流れる心臓の各所に突き刺すことにより、血と共に魔力を流し込むようにする。というものらしい。

「そんなもんが本当にあるとはねぇ。」

ヴィンセントが呆れ声になるのも無理はない。

かつて滅んだとされる危険なシステムを使用できる術者がいること、そしてそれを自ら所望するバカがこんなところで揃ってしまうとはこの三人も予測していなかったのだ。

「ともかく俺たちは」

「ロードくん達がここに来るまで耐え抜くのよ。」

二人がそう話していると、周囲のカラスが飛び去り近くで屯っていた猫達がどこかへと走り去った。

「来る。」

そうブラッドが呟いた瞬間、空中から何本もの剣が彼らを襲った。剣は地面に刺さった瞬間黒い霧となって闇に消えていく。

「ふふふ・・・やっぱり君の力は最高だよティナ。」

ナーベルは思わず溢れた笑い声で遠くで着地した闇へと語りかける。破壊のままに動く闇の正体はティナであり、その力は以前ロード達と戦った時よりも数倍に増していた。

「あら、ずいぶん余裕なのね?」

「っ・・・。」

ナーベルは気配に気付くと後ろからの後ろ回し蹴りを左腕でガードした。止められたファルファラはそのまま蝶の姿となって美しくその空間を舞った。

「君は全く美しくないなぁ・・・。破滅のカケラもない。」

「薄汚えテメエに!」

「何がわかるってんだ!!?」

ブラッドとヴィンセントから放たれた無数の弾丸はナーベルへと一斉に飛び散り、彼の一面を煙へと変えてみせた。

撃ち終わるとブラッドは筒をゆっくりと下ろし、ヴィンセントは両手に持った銃をクルクルと回転させた。

「っ!!二人とも!!」

煙の中から出てきたのは無傷のナーベルであり、彼らよりも小さい少年には傷ひとつ付いていなかった。

「バケモンかよ。」

ナーベルは肩を軽く回すと、ヴィンセントたちに笑みを浮かべた。

「さあ、次は僕らの番だ・・・!!」

ナーベルが手を上げると、まるで彼に操られるようにティナはブラッドとヴィンセントへと走り出した。そして二人の間へとジャンプした。

「なっ!!」

驚くブラッドと舌打ちするヴィンセントへそのまま回し蹴りを決めて次の標的を探すように四足歩行でファルファラへと近づいた。

「っ!!」

ファルファラは銃を向けて引き金を引こうとした瞬間、走馬灯のように彼女へと違う景色を見せた。

それはこれまで彼女の手を離れて亡くなっていった子供達だった。彼女は何一つとして子供たちの命を守れずにまた一人、また一人と亡くなっていく姿を目の当たりにしてきた。

だからこそ人身売買に手を染めるジェノ一家、そしてこうして悪魔へと変えていくナーベル達が許せなかった。

しかし今はどうだ。悪魔へと変えられた子供へと自分が銃を向け今引き金を引こうとしている。それは大いなる矛盾なのではないか?

彼女へと与えられた疑問と走馬灯を見終わった時には彼女は倒れてそのまま天を見つめていた。

「私は・・・。」

「そうさ、君は間違っていた。君のような偽善を振りかざして銃を向ける者がいるからこの世界に争いがなくならない。そうして悲しむ子供たちが現れるのさ。」

ナーベルから突き刺さる言葉のナイフが彼女の心を抉る。間違い、偽善、そこから導き出された無力。彼女はもう立ち上がることすらできなかった。いや、できたとしてもティナを撃つ事は出来ないだろう。

「これでおしまいだよ・・・。じゃあね。」

ティナのナイフがファルファラへと向けられた。ファルファラは少しずつ目を閉じた。もう死ぬんだと確信したその時だった。

「っ!!?」

銃声が二つ聞こえた時にファルファラが目を開けると、ティナの剣は闇として消えていった。ファルファラは一瞬の隙を見た瞬間に蝶となってティナの前から姿を消した。

「誰だ・・・!!?」

ナーベルの前にいたのは赤と青の二人のガンバライダーだった。

「ここからはガンバライダーロードと」

「ガンバライダーノヴェムがお相手するよ。」

青のガンバライダーはともかくあの垢のガンバライダーは確実に前と違う。彼の中に埋められた魔力の力をナーベルはすぐに感知した。

 

監視していたガンバライジング社はロードから放たれた数値の高さにどよめきが走っていた。

それはその場にいた檀 黎斗にも衝撃を与えた。

「これは一体・・・!?」

周囲の研究者や社員たちが走って状況を判断を求める中、檀はたった一人硬直していた。

戦闘の記録を別モニターへと映されるが、格段数値の上がるような事態は起こっておらず、これまでの戦いを見てもどこを見ても変化を感じる要素は起こっていない筈だ。

何がどうなっている?この数値をすぐに叩き出せるような方法があるはずがない。先ほどの戦闘からまだ数時間しか経っていない中でこんな成長を遂げたものなどいなかった。

周囲の声も聞かず檀の思考をいくつも駆け巡る中で横にいた恵田がモニターを見ながら不敵な笑みを浮かべた。

「さあどう責任取るつもりだ社長様?」

檀は彼の言葉に冷や汗をかいた。自分の立場、そして自分の今するべきことが頭の中で転がって目が回る。

「責任を負われる立場になればそれ相応の罰かもしれないな。」

今回ばかりは覚悟するべきかもしれない。これまで彼を放っておいたこと、そしてアクート討伐を彼に任せたことは自分自身の道を大きく落とす事態になることを今の彼は知らない。

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