VS ハブネーク
百億ドルの街で起きたガンバライダー同士の戦闘と財団Xが関わった次元レベルの事件から何日かの時が経った。九重は恵田との戦闘で深手を負い怪我の完治まで数週間の休養、恵田はその場から姿を消して戻ってこなかったという。
今回の一件で世界的にガンバライダーの信頼度が暴落し、ほかの世界でもその力の強さに疑問を持つ人々が現れたそうだ。幸い行動に規制がかかるまでに至らなかったため、事件はロードと恵田の身勝手な命令無視だけで終わるものと周囲の人間も思っていた。
GRZ社の社長室では烈火と檀が広い応接間で座っていた。二人は少し険しい顔で小さなため息を何回もついている。お互いに今の状況は把握していた。
「・・・ロード君の現状は?」
「未だに部屋から出てこずだ。よほど今回のことがショックだったんだろうな。」
檀の質問に烈火はそう答える。以前の事件でロードはクリスタルを大怪我に遭わせる事態となり、ロード自身も推定で全治一週間の怪我を負う羽目となったが彼は治療を拒否して部屋に引きこもっていった。そこからは何も飲まず食わずなんだとか。
檀はその状況を聞いてさらにため息をついた。彼自身もコンタクトを取りに行こうとしたのだがロードが普段訓練などで暴れまわった経緯から止められたらしい。社長に対する判断としては正しいのだがなんとも歯痒いものを感じる。烈火は目の前にあった水を飲んで檀へと告げる。
「人の心の傷なんざそうそう消えるもんじゃないさ。これまで戦ってきた人間なら必ず戻ってくる。」
そうだといいんだが、と檀が不安そうに水を飲んでいるとドアの開く音がした。ノックもせずに入るとは礼儀がなってないなと叱ろうとしたが檀はその怒りすら安堵に変わった。
「ロードくん・・・。」
「・・・遅かったじゃないか。」
「医務室に用があってな、少しそちらに向かってた。」
安堵の声を上げた檀とは正反対にふてぶてしそうにそう答えて烈火の隣に座った。烈火はロードの腕を見てすぐ違和に気付いた。彼に付いていた傷が一切ついていないのだ。処置を受けずしてこんなに傷が早く治るものなのだろうか。彼の取り込んだロックシードの力かもしくは・・・。だが今はそんな話をしている暇もなさそうなので後で聞くことにしよう。
檀はモニターをすぐ動かして映像を映した。
「これから二人に行ってもらうのは一年前に起こった高度な次元移動の捜査だ。」
「ちょっと待てよ、アクートの処罰が俺の動く目的だろ?」
「君に行ってもらう義務があるから私は君を選んだ。」
檀の一言に反論したロードは黙り込んだ。隣で座っていた烈火はふてぶてしそうにするロードをそっと見ていた。
「話を続けよう。この世界にあるホウエン地方という場所で高度な次元移動が観測されている。恐らくはその手の犯罪者か偶発的にそれほどのパワーが生み出されたと考えている。」
ふーん。とロードと烈火は分かったようなわかってないような顔で頷いた。ロードは受け流してケースへ指さす
「で、その横の戦極ドライバーはなんだ?」
あぁ、と檀はロードのもとへと戦極ドライバーを持って行った。そのベルトは貴重品であるかのように保存されていてた。
「今回の件で世界的にガンバライダーの株が下がってしまってね、さすがに普段から変身されると困るからこれを使ってくれ。あくまで人目のつかないところでガンバライダーを使用するように。」
ロードは頷いて戦極ドライバーを受け取った。烈火には何も渡されないのは考え物だが信頼あってのことだろう。
ロードが席を立って出ていくと、烈火もそれに続いて席を外した。
檀はゆっくり席に座ると、またドアのノックが鳴る。招き入れて入ってきたのは朱崎だった。
「随分と先客を怒らせてたみたいじゃないか。えらくふてぶてしく出て行ってたぞ。」
「彼はああいう人だからいいんだよ。それより」
あぁ、と朱崎は一つのUSBを渡すと檀はそれを受け取ってPCに差し込んだ。そこには人名の入ったファイルが三つ入れられていた。
「これが今回集められたチームだ。実力も指折りだし問題ないだろう。」
朱崎はそれだけを渡してそっと部屋を出た。檀も満足そうに笑いながら椅子へと座った。檀の目論見など朱崎にも知る由はない。
研究室へと入った烈火とロード基チヒロは転移装置へと足を踏み入れた。研究員たちの焦りようを見るに一刻を争う状況だということが伺える。
普段の冷たそうな研究員はどこにもおらず皆真剣に物事と向き合っている。そこでチヒロはココは違う世界の違うGRZ社なのだと自然に実感が沸いた。
チヒロは烈火の方を見て一つの疑問を抱く。
「何で顔にマスク付けてんだ?」
「顔がばれると色々厄介なんだよ。」
チヒロはふーん。とどこか納得しないような表情で頷いた。
キョロキョロしている烈火はチヒロへと近づいて小声で問いかけた。
「医務室に何しに行ってたんだ?」
チヒロは一枚のICカードを取り出した。烈火はほぉ、と少しほくそ笑んだ。恐らく九重のICカードを授かってきたのだろう。ロードは強く握りしめた。
「いざとなった時のお守りにこいつを持っていきたくてな。」
チヒロはどこか嬉しそうに呟いた。彼は恐らく誰かに守り守られながらここまで進んできたんだろう。それは九重でありこれまで出会った人々でもある。烈火はそう思うとチヒロにつられてか思わず笑みをこぼす。
「ねぇチヒロ。」
「どうした?」
ロードはチヒロに問いかけた。
「もしまたクリスタルみたいな被害者がもう一度出るような事態が起きたらどうする?」
「それは・・・。」
チヒロは答えを出せずにロードの問いかけに黙り込んで手を震わせた。だがロードの言う通りこれから絶対怒らない事態ではない。だが
「同じ轍は踏まない。それだけは誓うさ。」
研究員たちがハンドサインを出すと烈火もまたサインを返した。チヒロは一瞬の戸惑いを見せたが烈火を見て同じくハンドサインを返す。
「転移を開始します!!」
二人は一瞬の光に包まれると、研究室から消滅してモニターの奥、つまり転移したホウエン地方へと向かった。
転移したチヒロと烈火は森へと落とされ、烈火はきれいな着地で大地に降り立った。チヒロはというと
「ぐおふッ!!」
顔面から落ちて落ちた木の葉と土が顔じゅうに付いている。烈火はふとチヒロの方を見た。チヒロは何だと烈火の方を見た。
「・・・ふっ。」
「おい今笑ったろ。」
「うん、今のは絶対に笑った。」
チヒロとロードは顔に付いた泥を落としながら烈火へと言った。笑いながら烈火はチヒロへ指さした。
「だってその顔はズルいだろ!そんなので笑わない方が無理だって!」
チヒロは近づくが烈火は一向に顔を合わせようとしない。チヒロは何とか顔を合わせようとするが烈火は必死に避ける。
後ろの茂みから音がした。二人が構えを取り、一気に二人の表情が険しくなる。茂みから飛び出してきた大蛇は紺色に独特な模様、充血したような赤い目で二人を威嚇した。応戦しようと烈火がガンバドライバーを取り出そうとした時だった。
「待ってくれ!!」
烈火を止めたのは檀だった。烈火は首元のボイスチェンジャーの電源をつけて檀との通信を繋いだ。
「何だこんな時に!!」
「今GRZ社は信頼を失った状態にある!ガンバドライバーの使用は極力避けてくれ!!」
そんな厄介な社内事情をこんな時に持ち込まなくても・・・。烈火はすぐガンバドライバーを戻して構えをとりチヒロもまた同じく構えをとる。二人の額からは冷や汗が流れる。
「魔術回路で一気に」
「相手が何か分からない以上使用は避けた方がいい!!」
ロードの一喝にチヒロはむしゃくしゃする。どうやって敵と戦えっていうんだ。自分より背丈の大きい大蛇に素手で勝つなど超人のすることだ。どうすることも出来ず二人が後ずさりしたその時だった。
「何だ!!?」
烈火たちの前に突如として現れたのは青い図体に大きなヒレを頭と背に付けた大型のモンスターと全身が赤く特徴的な肌白い毛を持った人型のモンスターだ。どちらも二人はみたことないが少なくとも財団Xたちが作り出すような悪趣味な怪人でないことは確かなようだ。
「こんな大型のハブネークが人間を襲うなんて」
「何かあったに違いなか!」
二人は息のあったコンビネーションでハブネークを後退させる。今だと目を合わせて同時に指示を出す。
「ZUZU、マッドショットだ!」
「ちゃも、オーバーヒート!!」
放たれた二つの攻撃は大蛇を退けて茂みへと追い込んだ。一撃が重かったのか大蛇は咆哮を上げて森林の中へと帰っていく。声の主はチヒロと烈火へと近づく。
「SO danger.こんなとこに手持ちもなく来るなんて。」
「本当ばい。何より怪我がなくて何より。」
近づいた二人の少年少女は茂みをかき分けて二人のもとへ歩いた。
硬直する烈火と冷えたような顔で見つめるチヒロ、ロードも同じく二人の持っていたものに背が凍った。
「おい・・・それ。」
烈火はハッとして二人を見た。腰元に付いていた赤いボールで全てを察した。少年と少女はそんな二人に疑問を抱きつつも何食わぬ顔で二人へと手を伸ばした。
「僕はルビー、そして彼は僕の相棒のZUZUだ。」
「私はサファイア、この子は私の相棒のちゃも!」
そして二人は名乗る-ポケモントレーナー-と