森で出会った少年"ルビー"と一緒にいた少女"サファイア"に連れられてある場所と向かっていた。烈火から彼らが来た経緯と二人の目的についての粗方、そしてチヒロたちが何故赤いボール"モンスターボール"を見て目の色を変えたかということまでここに来るまでに話していた。
「なるほど・・・烈火さんたちはここに極秘の調査を行うためにここに来たということですね。」
「まぁそんなとこかな。私たちはとある企業にやとわれてて、極秘の調査については言えないわけだけど。」
ルビーはなるほどと相槌を打つ。サファイアはチヒロへと寄って歩く。
「クリスタルさんが大けがを負ったことは知ってたけど、どうしてロードが関わったかが分からんのよ。」
「・・・悪い、それについては極秘なんだ。」
ロードはバツが悪そうにそう答える。サファイアはそれ以上聞こうとしたが咄嗟に何かを感じたのかそれ以上の追及を避けた。ルビーも何かを察したのか頷いてそのまま沈黙することを選んだ。
「チヒロ・・・。」
「悪いな。今はお前とも話せそうにもねえや。」
ロードもまたチヒロの何かを察したのか彼もまた周りと同じく沈黙することを選んだ。
数分ほど静かな空間が続いていた。あまりに静かなものだからポケモンの鳴き声や木々のさざめきが聞こえる。そんな中を歩いて四人の前に見えてきたのは木々に囲まれた小さな町だった。
「あそこが私の故郷のミシロタウン、長閑でいい町なんよ。」
四人はゆっくりと道なりに降りていく。ロードはふと後ろを向いた。微かに大きな影と木々の間から動く音がしたような気がしたが気のせいだろう。皆を追うようにロードもまた前へと歩き出した。
ルビーの家に入るとそこには椅子に座る少年の姿があった。背丈はルビーたちより低くその髪型は独特という言葉が似合うものだった。
「エメラルド、今戻った。」
あぁ、とエメラルドは会釈して立ち上がった。チヒロのバツの悪そうな顔を見てすこし不思議そうにルビーたちに話しかける。
「この二人は?」
「あぁ、この二人は」
話そうとしたサファイアを止めたのはチヒロだった。一歩前に出てエメラルドの前に出る。黙ってみていた烈火の表情は少し曇り、止められたサファイアは困惑の表情を浮かべていた。
「チヒロ!!」
止めようとしたロードの声など聞こえていない。そしてこれまでのことやクリスタルを傷つけたことを話し始めた。話を聞くエメラルドの拳は強く握りしめられていた。
話が終わると、エメラルドは頷きながらチヒロを睨みつけた。
「クリスタルさんが傷ついて帰ってきた背景でアンタが関わっていて、その事件の所為だって解釈でいい?」
「それは」
誤解だと言おうとした烈火を止めたチヒロは頷いて翳った表情を変えない。エメラルドはチヒロの横を通り過ぎていく。
「クリスタルさんは俺の大切な人なんだ。その人を危険な目に遭わせたアンタを俺は許さない。」
それは違うことは一番チヒロとロードが分かっていた筈だった。しかし彼は否定することもなくその一言を残して出ていくエメラルドを見過ごした。サファイアが止めようとしたが間に合わずドアの閉まる音が静かな部屋に響いた。
「ロード・・・。」
烈火は声をかけようと言葉を考えるが言葉が浮かばない。誤解もいいところだがクリスタルを巻き込んだ事実、そして事情を知らないエメラルドを責めることなどロードにも烈火にもできない。
「悪い・・・。一人にしてくれ。」
そう言ってチヒロも外へと出ていった。沈黙が続く中口を開いたのは烈火だった。
「この世界とそのポケモンとやらについて教えてくれないか?」
「それならルビーのお父さんに聞くといいったい!」
次にバツの悪い顔をしたのはルビーだった。サファイアのその発言、果たしてわざとなのか。サファイアは悪知恵を考えた子供のように少しわざとらしくもどこか純粋な表情でルビーと烈火に笑顔を向けた。
外へと出て歩いていたエメラルドは一人空を見上げる。
「分かってるんだよ・・・。」
頭ではあの青年が悪くないことは承知の上なのだが、どうしても彼自身許せないのだ。憧れの人が傷つけられてそれがそれを救ってくれたのがたとえ彼だとしても怒りのやり場が見つからない。ため息をついて座り込んだ時だ。
「・・・何だ?」
何かの音がするがその音は明らかにポケモンの足音ではない。緊張感を高めて腰元のモンスターボールを構える。出てきたのはエメラルドの目の前だ。
「何だ・・・ただの人間か。」
そこにいたのは人の形をした何かだ。黒い鎧をまとい、青い複眼の奥には殺意のようなまがまがしいオーラすら感じた。
「いけジュカイン!!」
エメラルドはトカゲのようなポケモンのジュカインをモンスターボールから呼び出す。ジュカインと戦士は睨みあいその場から一歩も動かない。
「ジュカイン、リーフブレードだ!!」
ジュカインは鋭利な肘の剣をふるい襲い掛かるが戦士はそれを鮮やかにかわす。ジュカインも力の限り振るうが一撃も届かない。
「無駄だ。」
ジュカインの首に直撃した裏拳の一撃はジュカインの巨体を一撃で打ち崩した。その一撃の強さでジュカインは倒れ込む。次のポケモンを出して抵抗しようとしたその時だ。
「!?」
エメラルドの真横に弾丸が放たれた。地に埋まった弾丸からは煙が舞い、エメラルドの恐怖心を一層あおった。あおられた恐怖心からかエメラルドはモンスターボールを持つことができないほど震えていた。
「ジュカイン・・・。」
倒れ込むジュカインにエメラルドは擦り寄る。殺意の目をした戦士は少年へと一歩、また一歩と歩みを進める。今度こそとどめを刺そうというのだろう。エメラルドにはジュカインを庇うことしかできない。どうにも出来ない自分を情けなく思い力が入る。戦士がとどめを刺そうともう一歩踏み込もうとしたその時だ。
「待ちな。」
黒い戦士に近づいてきたのはチヒロだった。黒い戦士は標的を変えたかのようにチヒロへと歩き出した。
「貴様が標的か。」
「仮面ライダーG4・・・死のシステムか。」
G4はチヒロ目掛けて殴り掛かるが、攻撃を捌き蹴りを躱した。ジュカインの時以上に圧倒していた。
「遅い。」
チヒロはG4の脳天目掛けて後ろ回し蹴りをぶつける。ぶつけた踵は鈍い音を立ててG4をぐらつかせた。
「いいか。俺はお前に許してもらおうだなんて思ってない。」
「!?」
エメラルドはチヒロの方を向いた。チヒロは再び構えをとるとエメラルドを庇うようにG4の前に立つ。
「許せないならそれでも構わない。俺を殺すことがお前にとって戦いならお前の戦いを貫け!」
「俺の・・・戦い?」
G4はゆっくり立ち上がると、チヒロへとゆっくり離れる。そして手から光を呼び出した。
「どういうことだ・・・?」
「どうして・・・?」
G4が手に持ったのはフレイムソード、仮面ライダーアギトの武器である。フレイムソードをチヒロへと振るうが間一髪躱されてチヒロの後ろでおぼつかない動きを見せた。
「どうだ?未知との戦いは恐ろしいか?」
G4はそう言って何回もチヒロへと剣をふるうがそれは間一髪で避けられる。
GR粒子でもない限り武器の精製など不可能なはず・・・、疑問は残るが今それどころでもないのが事実。チヒロがガンバドライバーを取り出そうとしたその時だ。
「チヒロ待って!!」
「んだよこんな時に!!」
チヒロを止めたのはロードだ。
「僕らは監視されてる!今ここで変身すれば僕らがいられるか分からなくなるぞ。」
ロードの言い分もわかるが今打開策があるわけでもない故にどうにもできない。チヒロはフレイムセイバーを蹴りではじき飛ばして剣先を木へと突き刺した。G4が抜こうにも簡単には抜くことができない。
チヒロはガンバドライバーを取り出して腰部に巻いた。二人の戦いを唖然として見守るエメラルドをよそに姿を変える。
"Ganba rider stand by ready"
「変身!!」
殴り掛かったG4を吹き飛ばして変身したロードはタイタンソードを召喚する。赤い鎧を纏ったガンバライダーはG4の一撃を寄せ付けずにタイタンソードをの刃をG4へと叩きつける。黒い鎧からは火花が飛び散り、ダメージからか足がよろめいていた。
「あれが・・・。」
あれがクリスタルを救おうとしたチヒロの本当の姿、何も知らずに言葉にしたことが真っ白に消えていく。ジュカインはゆっくり立ち上がりG$を睨みつけた。
「ジュカイン・・・。」
そうだ、彼らだけが戦えるわけじゃない。自分たちだってこの世界を守るものとして戦える。ジュカインがいなければこのことにすら気づけなかっただろう。
エメラルドは深呼吸した後大きな声でジュカインに指示を出す。
「ジュカイン!リーフブレードだ!!」
G4の背後から切りかかった一撃はG4のバックパックに攻撃を与え、火花を散らした。G4が背後の攻撃に気付き攻撃しようとしたその時だ。
「ッ!!?」
G4の腹にはタイタンソードが突き刺さり腹部から血と火花が飛び散った。ゆっくり抜くとG4は倒れてそのまま沈黙していった。
チヒロはエメラルドへと近づき、右手を前に差し出した。
「ありがとな。あの時攻撃してなかったら俺も危なかった。」
エメラルドはそのまま握手せずに背もむけると、照れくさそうに頭を掻いた。
「アンタがクリスタルさんを傷つけたことを許すつもりはないけど、いまするべきことはアンタと喧嘩することじゃない・・・それが今俺がやるべき戦いだ。」
そう行って歩き出した。チヒロもまたその背を追うように歩いた。
「いいのかい?」
「いいんだよ。きっと。」
チヒロもどこか吹っ切れたようにロードにそう言った。過ちは消せない・・・だから。
チヒロたちがミシロタウンへと歩き出してから数分が経った頃、倒れ込んだG4は無言で立ち上がった。血に染まったその体を起き上がらせたのはまるで亡霊に取りつかれた魔物のようだ。
G4は無言で灰色のオーロラへと消えていく。そう
”代わり”などいくらでもいる。