ーユム・キミルが倒れたー
そんな報せが男の耳に入ったのは今朝のことだ。男はそうか、と一言残して通話を切った。イマイチ現実味を帯びていないのか男は顎を拳に乗せて考えるようなそぶりを見せた。
とても優秀な部下だっただけに少しばかりショックではあるが受け入れざるをえまい。今できることはその敵を討ち墓に送ってやるくらいであろう。
「しかしあのユム・キミルがね・・・。」
男の端麗な顔は悩む表情で少し額にしわが寄る。強敵として送り込んだ相手をいとも簡単に破ってしまうほどの敵、奇跡的な勝利を仮定しても油断ならない相手ということは間違いないだろう。これから我々の前に立ち塞がることも考えれば抹殺、いやそれ以上の対価を払っていただいた方がよさそうだ。
そう考えていると、男の元にスーツを着た白髪の男性が話しかけてくる。
「侵入者がいらっしゃいました。」
「ふむ・・・ご苦労である。」
男はスーツの男とともにドアから外へと出た。先ほど連絡の入った敵ならば、死よりも重い罪を背負っていただこうと男のえくぼが不気味に上がった。
烈火たちの前に現れたのはアオギリ、マツブサと呼ばれた男たちだ。サファイアは立ち上がって二人を睨みつけた。ルビーも同じく戦闘態勢といったところ、それを見て少なくとも味方ではなさそうだと烈火も察した。
しかし何故敵もこの場所を察知できたのか。当然だがいろんなことは気になるがどうも今は気にしている状況ではなさそうだ。
「いけませんねぇ、そんな野蛮だと救世主の面目もありません。」
青服の男はそう言うと余裕ぶってかポケットに手を突っ込んだ。赤服の男は雅な笑みを浮かべて同じくポケットに手を突っ込んだ。
「いいじゃねぇか・・・それくらい悪態ついてもらわねぇと殺し甲斐がねぇからな。」
「何を!!」
ルビーとサファイアが同時に攻撃するためにモンスターボールを手に取ったその時だ。
“エボル・ブラックホール“
”ゲムデウス・クロノス”
二人の男から放たれたオーラは三人を壁に追いやり、その圧倒的な強さを一瞬にして見せつけた。その邪悪な黒いオーラの奥には人とは程遠い何とも形容しがたいモンスターの姿が映っている。肩からは角が生え、鋭い牙を生やしてこちらをあざ笑うように歯を見せている。ルビーとサファイアから見ればそれはこの世のものとはとても言えないだろう。嫌な予感がした烈火はすぐに立ち上がり、二人の怪人へと殴り掛かった。人間の攻撃などと高を括ったようなそぶりで怪人たちはそれを回避して烈火へと攻撃しようと膝を上げた。その時だった。
「・・・変身。」
「何!?」
炎は周囲の風と共に高く舞い上がり火柱を立てた。烈火の姿は変化して炎を渦巻いた中に黄色い複眼と烈火のような赤いボディが二人を睨みつける。戦士は包んでいた炎を振り払って攻撃を仕掛ける。油断したアオギリとマツブサは攻撃をしのぎ切れずに後ろにのけぞった。そのまま一転攻勢、更に追撃を与えていく。
烈火が姿を変えて赤い鎧を纏って戦っているそんな姿を目の当たりにしたルビーは状況を飲み込めるはずもなく茫然としていて、それを見たサファイアはルビーの手を引いて走り出す。
「ちょ・・・っ」
「こんなとこにいたら危険ったい!今はロードさんたちに連絡せんと!」
そう促されるままにルビーはサファイアに連れられて走った。ブレイズもそうしてくれると助かると視線を向ける。
その後ろではブレイズと謎の力を宿したエボル、クロノスは炎の中激しい攻防を繰り広げていた。
マツブサが変身したエボルは手の中に黒い物質を作り上げると、それをブレイズ目掛けて思い切り投げた。投げた物質は炎や小石、そして研究所の機材までも飲み込みながらブレイズのところへと飛んでいく。一瞬のうちに危機を察知して回避するが、ブレイズの後ろにはアオギリの変身したクロノスが立っていた。
「遅いですねぇ。」
「お前も・・・な!!」
ブレイズの体は一瞬のうちに翻り、回転した足がクロノスの顔面を直撃した。クロノスはその一撃を受けて後退した。ブレイズはその一瞬のうちに立ち上がりガンバソードを呼び出した。どんな手を使ってでも彼らのために時間を稼がねばならない。そう”どんな手を使ってでも”
ーカイナシティー
浜辺から降りられるその町は大きく発展していて、見渡す限りでも市場や研究所のような大きな建物が並んでいて人が住むというよりは出稼ぎに来る大都市のような印象だ。
そんな街に降りたチヒロとカガリは街を散策するべく浜辺を歩いていく。靴に砂の入る感覚はどうも慣れないらしく何度かチヒロが立ち止まり靴から砂を落としていた。一方でカガリは慣れているのか我先にと歩いていく。チヒロたちも追いつくために早足で彼女に付いていく。
周囲の人々はよそ者が珍しいのか何か話している様子だが、そんなことは気にしまいと二人は堂々と歩いていく。
「何でここに来たのかって説明、まだ明確にされてないんだが。」
「ここはすてられ船から近いのもあるが研究施設が多いしなんか隠してるならここかなと思ったのさ。」
チヒロはなるほど。と納得したがロードは腑に落ちないらしくカガリに彼から問いかける。
「確かに財団Xが関わるなら妥当だけど明らかに向かってる方向が研究所だよね?」
こういう時は町長か誰かに許可をとってから行くものだと思っていた彼としては不思議でもあるし何かあるんじゃないかと彼女に問う。その問いに彼女が答えようとした時だ。
「おやおやおや、お見掛けしない方々だ。」
二人の後ろから歩いてきたのはロードより少し背丈の高い男だ。端正な顔立ちでそのスーツ姿からここで何かしらの役員なのだろうと二人は察した。
「他の街から来られた方ですか?それとも空から落ちてきた・・・とか?」
突然の質問に戸惑う二人だったがカガリがすぐに口を開いた。
「ああよそ者さ。五年前に変わった市長ってのはアンタかい?」
「五年前に変わった・・・?」
いかにも、と男は一礼して二人に歩み寄る。その姿は何かの魅力というやつなのか見ているだけで吸い込まれそうになる。その雰囲気を感じたのかカガリも一歩また一歩と後ろに引き下がる。
「ここに来たのが初めてなら御存じないかもしれませんが通行料をいただいてましてね・・・。」
ここまでは良かった。次の言葉に二人は絶句する。
「ここを通るには一億円いただいてるんですよ。」
二人は驚きのあまり開いた口が塞がらない。こいつひょっとして馬鹿なのか?それともそういう面白いと思って言ったやつか?しかし先ほどの笑みとは一転男の顔に朗らかな表情などどこにもありはしない。
「ッ!!」
一瞬で何を察知したカガリはキュウコンを呼び出して周囲に炎を纏わせた。それを見て何かを察したのかロードへと人格が変わりミカルゲを呼び出した。
男はため息をつくと一体のポケモンを呼び出して手を後ろに組んだ。
「フーディン・・・エスパータイプなら互角だね。」
男はほくそ笑むと指を鳴らす。指を鳴らした瞬間周囲に異変が起きる。先ほどまで穏やかだった住民がまるで何かの糸に引っ張られるようにこちらへと歩いてくる。その目の奥には光が入っておらず、まるで死んでいるものを引っ張っているかのようだ。
住民から逃げようと言ったって追い込まれている彼女たちに逃げ場はない。男はさらに二人を追い込むように近づく。
「では、こういうのはどうでしょう?」
「下がって!!」
ロードはそう言ってカガリを建物へと走らせた。男は彼らへ白い球を投げた。球はロードの眼前で煙をまき散らし視界を奪う。人ごみの影は見えるがおそらく劣勢であることは変わらないだろう。この煙の中で変身しても恐らくは気付かれない。今なら・・・
「キュウコン!!待てって言ってるだろ!!!!」
カガリの声が聞こえる。後ろを見るとそこには九つのしっぽを持つポケモンがこちらに構えをとっていた。恐らくあれはカガリのキュウコンだ。しかしこちらに攻撃態勢をとっていることから異常なのは明らかだ。ロードが逃げようとした時だ。
「グルルル・・・ウォォォォォォン!!!!」
激しく放った炎は煙と化学反応を起こし大きな爆発を生んだ。爆発は建物を巻き込んで瓦礫と人々を吹き飛ばした。爆発に巻き込まれたロード、そしてカガリは吹き飛んで爆破で削れた大地へと倒れた。
「何だあれ・・・。」
明らかにただの爆薬じゃないことは明らかだ。黒煙の中立ち上がりカガリが吹き飛ばされた施設の方へと向かう。後ろから歩いてくる音をすぐに察知した。
「いやぁ・・・さすがはユム・キミルを倒しただけある。彼もこれを受けて死んだのだから大したものです。」
「・・・何を言っているんだ?」
ユム・キミルが爆薬で死んだ?彼にその言葉の意味をくみ取るのは不可能だった。
「えぇ、ユム・キミル、否「前カイナ市長」は我々財団の実験を受けて誕生した生命体、心は不要だったので抹殺しましたがね。」
「なん・・・だと?」
かつてこの街を救ったヒーロー、それが彼だとするならこいつらはまさか全てを殺したというのか?男はほくそ笑んでポケットからガイアメモリを取り出した。
”ナイトメア”
首筋に差し込んで男の姿は一変、禍々しい化け物へ変身した。
「アイツだけは俺たちがぶっ潰す!!」
チヒロへと人格が変わりガンバドライバーを取り出そうとしたその時だ。
「・・・けて・・・くれ。」
目を向けた先には先ほどの爆発に巻き込まれたのか老人が倒れていた。助けに行くことと同時に檀の言葉が過る。
”人目のつかないところで変身するように”
今はそんなことを考えてる場合じゃないと老人へと駆け寄った。
「だいじょう」
助けようとした瞬間老人はチヒロの腕と首を取り押さえて身動きを封じた。ナイトメア・ドーパントは高笑いしながら近づいてくる。
「見ず知らずの人間を信じるなんてお人よしもいいところです。そうやって損をしながらあなたは生きていくのだ!」
「さっきからごちゃごちゃうるせえんだよ!!!」
振り払い一気に加速をつけてナイトメア・ドーパントに殴り掛かる。あと数ミリで攻撃が当たるというところだった。
「キュウコン、焼き払え。」
瞬間、獄炎がチヒロたちを襲い、そのまま炎とともに襲った風圧で壁へと叩きつけられた。チヒロの目の前にはフーディンとキュウコン、そしてカガリの姿があった。彼女の目からは光が消えていて、先ほどの街人同様屍のようになっていた。
「情けねぇな・・・。」
クリスタルの時だってそうだった。フェイトを死の直前に追いやってから戦い続けてきた。様々な世界を回ってきた彼が守れたものなど何一つなかった。彼女のような犠牲を出したくないと言っていても結局何も守れていなかった。
「俺の力は結局なんも守れてねぇ・・・誰も救えてねぇじゃねぇか。」
弱くてちっぽけな力じゃいけない。もっと高い力がなければ守れない。過去も未来もすべてを守れるだけの力が欲しい。
「強くなってアイツを・・・すべての敵をぶっ潰す!!」
その時黄金のロックシードは輝きを増して彼の周囲に光を纏う。それに呼応して戦極ドライバーが腰に巻き付いた。
「な・・・何だ!?」
これがガンバライダーの最終地点”仮面ライダー”なのだ。
「変身。」
昇華したその力はリンゴロックシードに力を与えて変身する。
”リンゴアームズ!デザイア・フォビドゥン・フルーツ”
少年が姿を変えて戦士は名乗る
”仮面ライダーセレジオン”