GRZ社では精鋭を集めてホウエン地方で起きた時空転移を調査していた。そこに招集された朱崎たちは早速ロードたちとは違う時空のホウエン地方へとむかっていた。
「・・・ここか。」
朱崎たちがたどり着いたのは時空の歪みがあった地なのだが彼らがデータ上で知るホウエン地方の姿はなく、荒廃してまるで世界の終わりを見せつけられているかのようだった。
「ここでとりあえず何かが起こったってことは確かっぽいな。」
柳はそう呟きながら地面の砂を触る。ただの砂地なのだが、ザラザラしていて火山灰のようなガラスに近い感覚だった。火山灰が観測されている場所もあるがその地点とは明らかに遠く、ここの気象が乱れていることも明らかだろう。
ツルギと勇七も周囲を見渡すがポケモンというポケモンもおらず、荒廃した周囲と相まってまるでポケモンがいた世界じゃないかのようだ。
「何がどうなってるんだ?」
「君たち、想像力が足りないよ?」
四人は声の方向に振り向く。空高くにポケモンと共に現れた少女はそのまま話を続ける。
「誰かにとっての希望は誰かにとっての絶望。この意味、わかるかな?」
「君は一体何者だ・・・?」
少女は問いに応える
「わたしはヒガナ、崩壊を止めるために戦うものだ。」
荒廃したカイナシティ、再び戦火の犠牲となったこの街で火蓋が切られて周囲に爆煙が立ちこめる。
セレジオンとソルジャー・ハッピーチャイルドは互いの武器を振るいお互いの攻撃を弾き返す。一瞬の隙も許されないこの戦いは先程戦闘していたセレジオンの方が圧倒的に不利なものだ。チャイルドは挑発的、そして怪奇的なスピードでセレジオンへと攻撃を仕掛ける。
セレジオンはそのスピードに追いつくことに必死で次の攻撃に打ち出せずに文字通りの防戦一方だ。無双セイバーと大橙丸から飛び散る破片と火花は彼の横を通過して風とともに消える。その火花の奥には機械でよく分からないが確かに子供がほくそ笑むような顔で笑う敵の姿が映っていた。セレジオンはもう一撃を全力で振るうがその一撃は届かず弾き返されてしまう。
「どうしたの?」
チャイルドの挑発的な発言はセレジオンの怒りを募らせて彼の沸点が上がっていく。次第に攻撃は荒々しく粗雑に振るうようになっていく。しかし精密さを失ったその攻撃はチャイルドに弾かれるどころかその横を通り過ぎて届くことすらしない。
「・・・弱っちいの。」
「何を!!」
セレジオンの一撃がその横を通り過ぎた時だ。チャイルドの振るった剣の一撃がセレジオンのアーマーを傷つけ火花が飛ぶ。鉄と鉄がぶつかり合う音と共に鈍い衝撃がセレジオンを襲った。そのまま後ろへとよろめきながら倒されてしまう。
「ホントに期待外れだよ。」
セレジオンを踏みつけてその鎧を捻るようにさらに強く踏みにじる。セレジオンは無抵抗のまま踏みにじられてその痛みが直接胸へと刺さる。
「あぁ・・・かもな。」
思えばチヒロはずっと独りで戦ってきたわけじゃなかった。誰かと共に戦い生き抜き、そして何よりもう一人の人格であるロードがいたから戦ってこれた。彼がたった一人で戦えたことなど微塵もなければ守れたものなどこれ一つもなかったのかもしれない。力を持ちながら一人では何もできない弱小で愚かな存在だ。戦意が少しずつ欠け落ちてその手から力が抜けかけたその時だ。斬月の言葉が彼の頭を過ぎる。
「お前は全てを一人で背負い、戦い続けるつもりだったのか?」
あの時、彼の言う"光"はこれまで出会ってきた人たちのことばかりだと思っていた。しかしその答えが今ならわかる。
「俺は一人じゃない・・・俺は皆と世界を作り上げてきた。」
世界を作り上げられる力、彼はいつの間にか背負い知らず知らずのうちに自らが答えを持っていた。
「大切な人を守りたい・・・それだけだ!」
セレジオンの振るった無双セイバーの一撃はチャイルドの首を掻き切り、機械の体から破片と激しい火花の光が拡散した。後退したチャイルドの隙を見て後ろへと引き下がり傷跡を抑えた。正確かつ重い一撃を受けてチャイルドは抑えながら困惑の表情を浮かべる。
「どうして君がこんな攻撃を・・・?」
大橙丸と合体した無双セイバーは薙刀へと変化、セレジオンの両手から振り抜かれる一撃は徐々にチャイルドを追い込み、後退させる。チャイルドがその隙をついて一撃を加えようとしたその時だ。
"魔術回路-高速化-"
その攻撃届かず彼の視認できない速さで動く薙刀の攻撃がチャイルドを翻弄、一気に膝をつくまでのダメージを与えた。
「これで最後だ!」
「僕がこんなところでェェェ!!!!」
セレジオンが振り抜く一瞬の隙にチャイルドは腕の剣を振るい薙刀の攻撃を攻撃をすり抜けて直撃させる。二人の間には火花は散りセレジオンはそのまま後退して倒れ込む。すぐに受け身を取ったがそのスピードはチャイルドが勝った。
「これでサヨナラだ!!!!」
防御は間に合わない。一瞬で終わりを察知したセレジオンは目を瞑る。
「メタグロス、サイコキネシス。」
「ライコウ、かみなりだ!」
二人の間に飛び散った雷鳴はチャイルドを襲い、鉄の体を麻痺させる。何が起こったかわからないまま後ろへ後転、チャイルドとの距離を取った。彼の背には白銀の髪の男と紫の髪の中性的な少女がいた。
「エメラルドくんから要請があったときはどうかと思ったが間に合ってよかったよ。」
「まったくだ。僕らもギリギリセーフってところだね。」
少女は男の言葉に肯定しつつセレジオンへと手を差し伸べる。伸ばされた手を取り立ち上がると再びセレジオンは剣を構える。彼の前にはこれもまたポケモンであろう生物が二体彼を守るように塞がる。片方は四本足でその体は鍵爪のついた足で支えられた石のドームに見える。もう片方は黄色いボディに背中には雲を背負う獣のようなポケモンだった。
「話は後だ。まずは目の前のアイツを片付けよう。」
「そう簡単にやられると思わないほうがいいんじゃないかな!?」
猟奇的なスピードで一気にこちらまで距離を詰めて剣を振るう。それをセレジオンは弾き返して腹に蹴りを入れた。のけぞった時にはリラとダイゴは新たなポケモンを出して攻撃を繰り出した。
「ボスコドラ、みずのはどう!」
「フーディン!サイコウェーブだ!」
ふたつのポケモンの攻撃は直撃して、チャイルドの動きを封じる。異変に気づいたのは立ち上がった時だった。
「なん・・・だ。体と脳が・・・。」
「みずのはどうのこんらんじょうたい、そしてかみなりで麻痺している。一気に決めようじゃないか!」
銀髪の男に促されると無言で頷き、戦極ドライバーのナイフ部分を三回作動させる。そうすると右足に橙の光が宿りそれを宿したまま一気に走り抜けていく。
「メタグロス、ラスターカノンだ!」
「ライコウ!はかいこうせん!」
二体のポケモンの光線はチャイルドへと直撃してそのまま瓦礫へと叩きつける。避ける間もなくセレジオンの一撃が彼の胸部を貫く。
「グレイシアル・エンド!」
空中で縦回転に捻った体は蹴りの勢いを強めて敵の脳天を直撃、鉄の体を脳天から胴体を足の刃が切り裂いた。
電撃と火花が散り、後ろでもがくチャイルドの姿があった。
「覚えていてよ・・・僕は必ず君を殺す。」
フラフラとチャイルドはその場を去り、空中へと逃げていった。
チヒロは変身を解いて二人へと歩み寄る。傷だらけのその姿を見て男は安堵の表情を浮かべる。
「自己紹介がまだだったね。僕はツワブキ・ダイゴ。そして彼女はリラ。ホウエン地方では名の知れたトレーナーさ。」
リラと紹介された少女はよろしくと手を振る。リラはライコウと呼ばれた雲をつけたポケモンを撫でながら話を続ける。
「エメラルドがホウエン地方で名の知れたトレーナーたちを招集して対処に向かわせているし君の仲間とルビー、サファイアが救出もされている頃だろう。」
そう話しているとダイゴの端末が起動して通話を始める。
「ミクリか?そちらも終了を確認した。」
「あぁ、しかしブラッド・スタークなるものが介入していたらしくそちらの調査も必要のようだ。あ・・・ス・・・」
「すまない、回線が乱れていて通信が取れていない。もう一度」
そう言った時、通信は途切れた。ダイゴ、リラ、チヒロは目を合わせる。
「何かあったみたいだな。」
「あぁ、僕らが向かう必要がありそうだ。」
チヒロはライコウの背に乗り、ダイゴはメタグロスの上に乗りヒワマキシティへと足を運んだ。