突然激しい風が吹き煙や小石を巻き込んで烈火たちに降りかかる。それぞれ飛ばされぬよう踏ん張ったり近くのものにしがみついたりして留まろうとするが一瞬の出来事に混乱と動揺を隠せずにいたが烈火はすぐにガンバドライバーを取り出して変身、爆風の奥地へと斬り込んでいった。ルビーとサファイアが手すりに手をかけて耐える中、ミクリとナギも烈火の攻撃に続けとポケモンに指示を出す。
「チルタリス、りゅうのいぶき!」
「ミロカロス、ねっとうだ!」
二人の指示からくりだされる一撃は砂煙を割いてその奥の景色へと貫通する。その先に見えた景色は確かに明るい光だったがそこに二つ、いや三つほどの影が見えた気がした。一瞬の出来事でミクリとナギも視認するのにやっとだったが色から見ても烈火の変身した戦士でないことは明らかだろう。二人が思考を回しているそんな時だった。
「POPO!ウェザーボールだ!」
ルビーの手持ちであるポワルンは収束させた岩石を放ちミクリたちの眼前へと放った。天から降ってきた巨大な岩石はそのまままっすぐ落ちてその衝撃で床は崩れて周囲に地ならしを起こす。足がぐらつきながらも次に指示を出したのはサファイアだった。
「じらら、みずのはどう!」
サファイアの手持ちから放たれたポケモン、ジーランスは周囲に水のエネルギーを放って先ほどの大きな岩を奥の景色へと投げ飛ばした。地ならしが起こったのちに景色は晴れて、岩の前には奥で戦っていたブレイズが戦闘態勢をとっていた。その後ろ姿からも伝わる気迫でよほどの強敵であることを全員が瞬時に察した。
「烈火さん!」
「おう!いい無茶してくれたな若造二人。」
褒められたのかどうかは定かではないが烈火の声は落ち着いているようにも聞こえた。ありがとうとルビーが声をかけに行こうとした時だ。
”メタル マキシマムドライブ”
一撃で岩は砕かれてその奥から三体の怪人が姿を見せる。二人に見覚えはないが真ん中の白い戦士に見覚えがあった。エターナルと名乗りトウカの森でセンリとナナカマド博士を襲った張本人である。二人は一瞬で臨戦態勢に入りそれを見たナギとミクリもまた強敵であることを察する。ブレイズはガンバソードを召喚して構えなおす。
「ほお、あの時のガキどもか。」
エターナルはそう呟き背のマントをなびかせる。G4はそんな姿をに目もくれず再びギガントを構える。ナイトメアドーパントは威圧に押されてか一歩後ずさりした。
「G4に加えてエターナル、そしてナイトメアドーパント・・・か。」
厄介な敵がそろったもんだと呆れを持ちながら疑問を抱く。この三人の共通点は何だ?この裏には何がある?疑問がいくつか浮かぶが今はそんな場合ではないと戦いの火蓋を切った。
GRZ社ではホウエン地方起こった事件の背景、そして本来姿を見せてはならない姿を見せたロード、ブレイズの処理に社員、そして社長である檀黎斗までもが奔走していた。謝罪する者もいれば言い訳している者もいる。そんな状況を医務室から動けずに見ているのは九重だった。戦いの傷は癒えておらずまだ手足を動かすと痛みが軋んでくる、そんな状況が続いてもう随分と経っていた。
「・・・」
監視という仕事の元、ロード達と戦い旅をすることが当たり前になっていて気付かなかったが自分の知らない社員や様々なところに変化を感じる。知っている人間がここを去ってしまったのか定かではない。そう考えているうちに九重は黙って自分のそばに置いていたガンバドライバーを見つめた。
ロードが起こした事件でともに研究員として働いていたシルバはGRZ社を去りロードを助けようとした環は目の前で消えていった。自分の大切な人たちを傷つけた人間、そんな彼と旅をしていつの間にか許していた部分があるのかもしれない。しかしそんな人間を、自分の大切な人たちを奪った存在を心の底から許していいのだろうか。
ならば自分の職務とは何か、自分が今するべきこととは何なのだろうか、許すべき存在とは何か。彼の頭を右往左往する中環が最後に残した言葉を思い出す。
”あとはお願いね・・・九重くん、シルバくん。”
何をどうしろっていうんだよ・・・。彼の頭にはさらなる疑問が飛び交う。本当に抗うべきもの、戦わなければならない存在を何かしらの形でそれを確かめなければならないのかもしれない。
様々なところに声をかけ続けたエメラルドとムクゲは一通りの作業を終えてカナズミシティへと戻ってきていた。戦闘もあった上にこれだけ動き回ったエメラルドの体力はすでに限界を超えていた。隣でずっと見ていたムクゲやジュカインも彼の体力の限界は見えていて見た目も心なしかげっそりしているように見える。
「エメラルドくん・・・。」
ムクゲは心配そうにエメラルドに話しかけようとするが心配無用とエメラルドは視線を外されてりゆっくりと歩き出す。ジュカインも止めようとするが彼の歩みが止まるとはとても思えない。その足はヒワマキシティの方を向いていた。
「皆が待ってるんだ・・・俺が足を止めるわけにはいかない。」
「エメラルドくん!」
ムクゲは怒鳴るような声でエメラルドを呼び止める。その声に少し驚いたのか足を止めて振り向いてムクゲの方を見た。
「そんな状態の君が行ってどうなる!?弱った君を見て皆が心配するだけじゃないか!」
エメラルドは俯いて後ろを向いた。彼だってどこかで分かっているはずだとムクゲはさらに話を続ける。
「ボロボロの君が今行ってもやられるだけだ。もう少し冷静になったらどうだ?」
エメラルドはその言葉を聞いて心苦しそうに口を開く。
「何もしないなんて俺には出来ない。大切な人が傷ついて倒れているのを、それを他者が味わうのももうごめんなんだ!」
エメラルドの口調はこれまで以上に強く大きく心の底の叫びのような乾いた声だった。その威圧に押されてムクゲは後ずさりするがそれでもと話そうとするその時だ。
「じゃあ二人で行けば解決しますね。」
現れた少年の一言は一瞬にして会話の風を切り一瞬にして場の状況を一転させた。
一方、ジェットスライガーを使って天気研究所へと向かうロードはなかなか着かないことに焦りと少しばかりの動揺を見せていた。
「あまりにも遠すぎません!?」
カガリはそうかな。と風船ガムを膨らませながら助手席でのんびりしていた。ロードの感覚では結構走ったつもりなのだがそうでもないらしく見える様子もない。地図を間違えているか自分の方向感覚を疑うくらい疑心暗鬼になっていた。見かねたカガリがロードへと提案を持ちかけるがそれは突拍子もないものだった。
「それもっと飛ばせるんだろ?マックスで行けば間に合うんじゃないのかい?」
「・・・は?」
時速一三〇〇kmを誇るスピードを出せるジェットスライガーだが無論そんな速度で人間が乗れば死に至ることはほぼ確実と言えるだろう。今は人間に合わせたスピードなのであってその何百倍のスピードなど出せば命はないだろう。それを伝えようとした時、カガリはロードの手を握る。
「危険も承知だが今は命を考えてる場合じゃないだろ?それに私も一人じゃないからね。あんたが隣にいりゃあいけるさ。」
正気かこの人?ロードはスピードを上げたがそれでカガリが臆する素振りもなく風船ガムを加えていて愕然とした。
「スピードには耐えられる?」
「あぁ、もっと飛ばしてもいいくらいだ。」
この人もうどうなっても知らないからな・・・。ロードはメーターを振り切りヒワマキタウンへと足を急がせた。
雨が降りしきる天気研究所の屋上で繰り広げられる攻防は激しさを増して火花が散っていた。
”ジョーカー マキシマムドライブ”
”サイクロン マキシマムドライブ”
ブレイズのライダーキックはエターナルが起こした風を切り裂き一撃が風ごとエターナルを押し返す。そのまま蹴飛ばしてG4を睨みつける。向けられた弾丸を回避して空へと飛びあがり
ストームハルバードを召喚する。同時にナギはチルタリスと共に空へ飛び新たなポケモンを呼び出す。
「ドンカラス、こごえるかぜ!」
ドンカラスが放った風は雨を凍てつかせてあられのような固形の粒へと変換させた。氷の粒は弾丸を凌ぎブレイズへの攻撃を阻む。その一撃の隙がブレイズの攻撃の糸口となる。
”クリアベント”
一瞬にして姿が消えたブレイズを探して辺りを見渡すがそれも見当たらない。G4がそうして周りを見て後ろを向いたその時だ。
「ZUZU!ハイドロポンプだ!」
「ミロカロス、れいとうビームだ!」
ミロカロスとラグラージの同時攻撃が直撃してG4の動きをさらに止める。押され気味になったその時目の前に炎を纏ったブレイズが姿を現した。
「ちゃも、ブレイズキック!」
「バーニングライダーパンチ!」
二人の同時攻撃はG4のアーマーに直撃して地に伏せさせた。エターナルが攻撃を仕掛けようとしたその時だ。
「俺がお前の攻撃を読んでないとでも思ったか?」
「何ッ!?」
エターナルの頭上から風と炎が降り注いで生み出された熱風の中にもまれていく。空中のドラグランザーとダークレイダーによる同時攻撃でエターナルは苦しみの中熱風の渦に閉じ込められる。悶え苦しんだエターナルは倒れて地に伏せる。やったかと思われたが烈火は異変を察知してG4とエターナルから離れる。
「どういうことだ・・・?」
ゆっくりと人形やゾンビのように何かに吊り上げられるように立ち上がり、再び何もなかったかのようにこちらに攻撃態勢を向けた。
「何が起こっとるの・・・?」
「冗談だろ・・・?」
一瞬の不気味な動きで呆気に取られたブレイズは一瞬の隙を突かれてG4に蹴飛ばされる。よろめいたところにエターナルの攻撃が襲い掛かる。
”ファング マキシマムドライブ”
エターナルエッジから放たれる獣の牙はブレイズを嚙み砕き一撃で地にたたきつける。油断したとはいえ先ほどの二人とは比べ物にならないほどの強さになっており、威力と動きともにまるで別人のようだ。ナイトメアドーパントはそれを好機とみたのかブレイズに光弾を放ち周囲を炎に包んだ。
「いやあ楽に仕留められてよかったですよ。さあ・・・あなたも夢の中に連れて行ってあげましょう。」
しくじった・・・。体を動かそうにもここから逃げる術が見つからない。術を失ったブレイズに触れようと近づいたそのときだ。
「ZUZU!」
「ちゃも!」
二体のポケモンの攻撃がナイトメアドーパントに直撃する。よろめいたナイトメアドーパントに追い打ちをかけようとするがナイトメアドーパントの攻撃が周囲に爆撃として広がる。燃え盛る周囲の中さらに足を進める。
「邪魔が入りましたが次こそは夢へと・・・」
「借りは返す。それがアタシのやり方だよ。」
”Rider Shoting”
声のする方から放たれた攻撃はルビーとサファイアの背を通り過ぎてナイトメアドーパントとエターナルに直撃して吹き飛ばした。ブレイズはその隙と同時にG4の顔面を足裏で蹴り上げて立ち上がる。ブレイズは半笑いで吐き捨てるような声をあげて後ろを向いた。
「ったく・・・遅いんだよ!」
後ろにいたのはロードとカガリだ。ロードはブレイズの肩を担いで後ろへと退く。
「こっちも色々あってくるのが遅れたわけさ。それよりかなり厄介な客が来てるじゃないか。」
「あぁ・・・厄介も厄介さ。」
ロードはファイズブラスターを召喚して構えながら砲撃するがG4のギガントと相殺してかき消されてしまう。砂煙の中余裕の素振りでこちらを待ち構える敵の姿がロードとにははっきりと見えた。
「僕一人じゃ勝てなさそうだしカガリさん、援護たの」
「やあ久しぶりじゃないかルビー。まったく言葉じゃなく文面で私に頼るとは思ってもいなかったよ。」
「カガリさんのところまで行く時間がなかったんですし仕方ないですよ。」
後ろを見たらこの光景だったのでロードは絶句した。そしてその横を見るとサファイアが二人が話しているのを怪訝な顔で見ていた。それを見て二人の入りにくい間に入ってロードが声をかける。
「あのー・・・誠に申し上げにくいのですがこちらのお手伝いをしていただきたくですね。」
わかったよとカガリは感動の再開を後にしてロードと並んで戦地に立つ。それに続くようにルビー、サファイア、ミクリ、ナギ、ブレイズも並んだ。
「ロード、片割れがいなくても戦えるのかい?」
もちろん、とロードは答える。
「僕は一人じゃないので。」
それでいいとカガリは背を押して二人そろって走りだし、炎の中戦いが始まった。