ガンバライダーロード   作:覇王ライダー

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VSカブト

GRZ社では引き続き消えたロードとブレイズの捜索が行われていた

来る日も来る日も彼らを探していよいよ三日が経とうとしている。レーダーにも感知されず生体反応すら見られない

死んだ、と考えるにはあまりに怪奇で生きている、と考えるにもどこか違うような現状が続く中、ドアが開く。そこに入ってきたのは九重だ。静かな部屋に松葉杖が地面に当たる音が響き渡る

「ロードたちは?」

九重の質問に皆が首を横に振る。まだ見つかっていないのか、と九重もまた頭を抱える。あまりに怪奇なことが起こったが故に彼もいてもたってもいられなかったのだろう

モニターに映るのは絶望的な状況でも戦い続けるトレーナーたち、そして天変地異により逃げ惑う人々だ。こんな中でも彼らはどこかで生き続けているのだろうか。生きていたとしたら何をしている。突然の消滅となるとどこかに消失した可能性もなくはない。様々な可能性が頭をよぎる中、九重はふと気づく

「・・・そういえば社長は?」

全員が後ろを再び向く。そこには檀の姿はなく周囲を見渡してもいる気配はない。全員はさあ?と首を傾げた。どうなっているのか、この会社もあの世界も

 

ヒガナたちと対抗していたガンバライダーたちはクロスの攻撃により一転攻勢、バクーダやサメハダーたちを一気に劣勢へと追い込んだ

ヒガナも他のポケモンたちを使い戦線へと立つがそれも少しずつ劣勢へと追い込まれていた

「ニンフィア!ハイパーボイスだ!」

ツルギとセイオウは音叉を響かせてハイパーボイスへと当てる。ハイパーボイスはその音叉に共鳴してか周囲を吹き飛ばすほどの一撃へと変わりヒガナのポケモンを一掃した

「ヌメルゴン!ヘドロウェーブだ!」

ヌメルゴンは決死の一撃をニンフィアへと放つがクロスは召喚したメタルシャフトにサイクロンメモリを装填、風を起こしてヘドロを薙ぎ払った。最後の体力を使い果たしたヌメルゴンは地に伏せてそのまま倒れた

「お前たちはどうしてこうもわたしの邪魔をする!」

「こっちをけしかけようとしたのはお前だろうよ!理由があるなら話せってんだ」

ジーナは一気にヒガナへと飛び込み押さえつける。ヒガナは暴れ回るがガンバライダーの力の強さにはどうにも勝てない

「往生しな。アンタの負けは」

その時だった。周囲に爆風が広がり光の弾がガンバライダーたちを襲う。攻撃を受けて回避する一同は敵の方向を見る

「今だ!」

ヒガナはモンスターボールを持ってすぐにボーマンダと共に飛翔する。待て!とジーナが追おうとすると光弾が襲いかかりジーナを吹き飛ばす

「ったく、誰だ誰だ?」

煙の先に現れたのは黒い仮面ライダーのような存在、足先にはシルバーのラインが入っており腰部にはベルトのようなものがついていた

「見たことないタイプの仮面ライダー・・・?」

男は名乗る"仮面ライダーゲンム"と

 

"Clock up"

閉鎖空間に閉じ込められた三人の戦士は時すらも操り森を駆ける

マボロシじま、ここがどこであるか何のために存在するのかさえ不明な場所だがここにもポケモンたちが生きて暮らしている。しかしクロックアップによって時が止まったこの空間では寿命がごく僅かの時しか進まない。本当に"生きている"と言えるのはカブト、ロード、ブレイズの三人なのかもしれない

外の世界では何日経っているのだろう、皆はどうなってしまっているのだろう、考えるだけ無駄だがどうしても頭をよぎる。体感では二週間はゆうにカブトを追い続けているが彼に全く追いつくことすらままならない。まずはカブトをどうにかしないと前には進ませてすらもらえないらしい

ロードはカブトに攻撃を仕掛けるがいなされてそのまま蹴りを喰らう。その隙にとチヒロとブレイズが攻撃を仕掛ける。二人の攻撃を避けながらカブトはゼクトクナイガンを構える

「それでは俺に攻撃を与えることすらままならないな」

ゼクトクナイガンから放たれた射撃は火花を散らして二人の装甲にダメージを与える。いくらガンバライダーといえどその攻撃には怯んでしまう

カブトはこの戦いが始まる前こう言ったのだ"俺に一撃でも与えれば合格だ"と。何の意味があって修行しているのかさえ分からない。しかしこいつを倒さない限り本当に前には進めないのだろう

「体感だと二週間ほど動きっぱなしだぜ・・・。こんなのに何の意味が」

カブトは三人の攻撃を凌いでさらに奥地へと進む。三人も逃すまいと追い、様々な攻撃を仕掛ける

あるものは不意打ち、あるものは狙撃、あるものは真正面から攻撃を仕掛けるがカブトには一向に届かない。カブトは奥地でブレイズと対峙してゼクトクナイガンを向ける。ブレイズはそれに対してブレイラウザーを向ける

「聞きたいことがある。アナザークロノスとアナザーエボル、奴ら何だ?お前たちは知っているのか?」

「・・・奴らは"本来存在しない"仮面ライダーだ」

存在しない?意味がわからない。じゃあ奴らはますますなんだというのだ?無から急に生まれて急に出てきたとでもいうのか?カブトは話を続ける

「本来存在しないものを生んだことにより無から正を生み出した。俺が知るのはそれだけだ」

それだけ?あまりに意味不明すぎる。じゃあクロノスとエボルには勝てないという結論なのか?修行して勝てないならこんなことに意味はあるのか?二人の間に弾幕が放たれてブレイズは急に肩を掴まれる

「えっ?ちょっ」

「いいからこっち来て」

ロードの声だ。ロードに言われるまま奥地へと進んでいく。進んだ先には待っていたかのようにチヒロはライドブッカーを持って木にもたれていた

「アンタらこっちが真剣にやってるってのに何を」

「さっきの話、全部聞いたよ。無から正を生み出す、あれの意味を理解しろってのが恐らくアイツの言いたいことなんだろう」

物音がした瞬間、ブレイズとチヒロは咄嗟に別方向へと向かう。向き合ったのはこちらへと来たカブトとロードだ

「答えは出たようだな」

「あぁ。無から正を生み出す。このマボロシじまもそうなんだろう?だからアンタはここを選んだ」

カブトの攻撃を避けながらロードは奥地へと進んでいく。どこかは分からない。しかし勝つには恐らくこの方法しかないのだろう

カブトを引きつけたロードが去ったのを見てブレイズはすぐにとっ捕まえたチヒロの首を持ってブンブンと振り回す

「いいから教えてよ!アンタらが分かることって何さ!」

「あー、教えるからその剛力で首持って振り回すのやめろ」

「めんどくさがんな!やんなきゃ勝てないんでしょ!?」

ロードはさらに奥地へと進む。走りながらカブトへと問う

「さっきの話聞いてたんだけどさ、無から正を生み出したって話、正は本当にあの二人かい?」

「・・・何が言いたい?」

ロードはさらに加速して奥地へ進む。カブトもまたそれに追いつくよう走り続ける

「時間や空間といった"正"が生まれた時、同時に生まれるのは"虚"だ。君たちが使うクロックアップだって元々はタキオンという虚実の世界だろ?」

「そうだな。続けてくれ」

ロードはありがとう。とさらに話を続ける

「しかし正と虚が生まれた時、真実と嘘の世界には確認し得ない歪みが生まれる。時間や空間にだって歪みは存在する。あなたがマボロシじまをそうであると言ったようにね」

「それが奴ら。というのがお前の答えか?」

答えではない。確証だとロードは返す

「だからここにも歪みは存在する。実態として存在する正と実態として存在しない虚ではどうしようもなく僕らに見えることすらない一瞬の穴が」

その瞬間、カブトのクロックアップが突然解けて動きが鈍る。チヒロとブレイズは一気に飛びかかる

「ライダースティング!」

「ライダースラッシュ!」

「ライダーシューティング!」

三人の攻撃は止まった世界のカブトへと直撃してその瞬間全員のクロックアップが解けた。カブトは変身を解いて笑顔で三人を見る

「・・・合格だ。」

天道はゆっくりと立ち上がり変身を解いた三人を見る。三人はクッタクタになりながらも倒れずに何とか立っているといった感じだ

「"無から有を生み出す"そこには限りない智慧と知恵を要する。お前たちにはそれができる。そしてその行動がお前たち自身の未来を掴む」

三人の上から空間が開き、飛んできたのは三つのハイパーゼクターだ。三人は掴み取り腰に装填する

「サンキューな。天道」

三人はハイパーゼクターを起動させてその場から一瞬で消え去る。天道もまた歩き出そうとした時、後ろの気配に気づく。天道は微笑みながら彼を見る

「これでよかったのか?」

「俺はいつだって正しい。お前だってそうしてきたはずだ」

天道は彼にそう言う。男は笑みを浮かべてそうか、と去ろうとした

「俺はいつだって忘れない。未来は俺たちの手で作らねばならないとな」

彼の後ろを通る光の翼は時を超えてまた消えていく。いつかの危機をまた救い、自分たちの未来を作り上げるために

そして男は託す。未来を、世界を生きていく新たな力に

 

マボロシじまを出た三人は時空の狭間を進んでいく。宇宙空間のような真っ暗な世界の中で様々な光景が周囲に広がる。過去と未来の光景がこんなにもはっきり見えるものかと困惑していると先に進み始めたのは烈火だ

「私はアオギリたちの過去に向かって変身アイテムを渡す前に向かう。二人は皆の元へと向かって!」

わかった。とチヒロとロードもまた自らの道を進み始める

烈火は更に奥地へと進んでいく。周囲を見て進んでいくと、アオギリとマツブサ、そして謎の男が一緒に光の空間から出てきているのが見えた。その奥へと少し進むと衝撃的な光景を目にする

「アオギリたちの歴史が存在しない・・・?いやそれどころかこの世界の記憶も途切れている」

どういうことなのか。時の流れをそこまで進んだはずではないのだが行き止まりが見えてその遥か先は闇のように真っ暗となっている。この世界の歴史が浅い、なんてことはあり得ない。ならばどうして

「いやあ、邪魔されちゃあ困るんですよ。せっかくの計画が台無しじゃないですか」

烈火は後ろをすぐに振り向く。そこにいたのはナイトメア・ドーパントだ。後ろの男の姿はまさかコイツ?この空間にどうやって入ってきた?疑問が飛び交う中、ナイトメア・ドーパントは更にアイテムを取り出す

「お前がアオギリたちにあの力を与えたのか?」

「御明察、まあここで気付いたところであなたに待つのはただ一つの答え、死のみですが」

"アマゾンネオ"

禍々しいオーラを纏ってドーパントの姿から更に強大な化け物へと姿を変貌させる。青いボディに身体中には触手がまとわりつき、目は赤い光を放っている

「お前・・・誰だ?」

男は答える"タイムジャッカー スタシス"そして"アナザーアマゾンネオ"と

 

時は遡ること二週間ほど前

アオギリとマツブサは海底にある洞窟で青い光の球と赤い光の球を祠のようなところへと置こうとしていた。ここに眠るのはグラードンとカイオーガ、かつて陸と海を作り上げたという伝承を持つ伝説のポケモンである。陸と海を作り上げた力を持つポケモン、その力を合わせれば更なる力を得て世界を我らのものに出来るはず。そしてこの二つの球"藍色の球"と"紅色の球"はグラードンとカイオーガを操る力を持つ。これさえあればあんな子供たちに邪魔されずにすべてを我が物にできる。封印を解こうとしたその時だ

「やめときな。アンタらが行おうとしてるのは創造じゃなく破滅だ」

「まさか・・・時を戻したってのか!?」

アオギリとマツブサは後ろを振り向く。そこには赤い鎧を纏ったガンバライダーが立っていた。またこんな子供に邪魔されてたまるかとアナザーライドウォッチを取り出す

“エボル ブラックホール"

"クロノス"

二人は禍々しい化け物へと変身してロードへと襲い掛かる。二人の攻撃をいなしながら後ろへと引いていく。バーニアを展開して下がりながら銃撃するがエボルたちには全く効いていない

「一筋縄じゃ行かなそうだなぁおい!」

一気に飛び込んでクロノスに掴みかかるがそのまま投げ飛ばされる。海の近くまで追い詰められてもう半歩も進めば落ちてしまうだろう

「ここまでよくやりました。しかしここまでです」

「・・・これを待ってた」

「何!?」

"コズミック リミットブレイク"

クロノスとエボルの後ろには大きな穴が開き、吸い込まれていく。その穴へとロードも進んでいく。穴が閉じるとそこは天気研究所の真上だ。見下ろすと皆が慌てふためいている。時を遡った結果困惑しているのだろう。

「いくぜ・・・ツインバースト!」

ロードとチヒロは一気に二体の怪人へ立ち向かうべく加速する。強まった雨と共に空で火花が散った


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