――デンライナー車内――
テディが子供達を誘導し、映司は幸太郎の肩を借りながら、客席のソファーに座る。
「ありがとう。助かったよ」
「礼には及ばない。……でも、君が見た通り歴史は大きく変わってしまった」
「あのトサカ野郎のせいだよ」
幸太郎の表情は暗く、それを見たモモタロスは不機嫌そうに呟く。
「……一体、何が起こったの?」
映司は幸太郎達へ素直に疑問をぶつける。
「オーナーの話によれば40年前、ショッカーは独自に手に入れたコアメダルを改造し、ショッカーメダルを作った」
「コアメダルを?」
「ああ。しかし、それだけでは何も起きないはずだった」
「お前らがセルメダルを落とすまではな」
テディの説明の途中で、今の今までデンライナーに我が物顔で乗車していた士が口を挟む。
「コアメダルとセルメダル。この2つがあって始めてグリードは誕生する」
「そう。そして、ショッカー戦闘員の手によりセルメダルは首領の本へ渡り、コアメダルと融合して、究極の怪人"ショッカーグリード"が誕生した」
ショッカーグリード。本来生まれるはずのない怪人が生まれ、それによって歴史は大きく捻じ曲がってしまった。
「そして、その圧倒的なパワーの前に1号、2号は倒され、洗脳h手術により悪の怪人となってしまった。それから40年もの間、ショッカーによる支配が続いている。当然、新たなライダーも生まれることはなかった」
始まりのライダーが居なくなれば、当然後に続く者も生まれない。1号2号の敗北は、すなわちライダーの消滅、ショッカーの繁栄を意味する。
「……全部、俺とアンクのせいだったんだな」
「お前のせいじゃねぇよ、トサカ野郎だよトサカ野郎!一発ガツンと言っとけ!」
「とにかく、俺は今から40年前に飛んで時間を修復してくる」
「!それなら、俺も行くよ!」
余程、今回の件に負い目を感じているのか、幸太郎の言葉に映司が食い付く。
「いや、それは出来ない。歴史を修復出来るのは電王だけなんだ」
しかし、幸太郎は映司の申し出を断る。
「幸太郎は特異点といって、歴史の介入による影響を受けない」
「オーズが存在出来ているのも、俺と一緒に居るからだ。大丈夫、俺達に任せとけって」
「そ、そうなのか……」
気落ちする映司に、幸太郎は大丈夫だ、と自信に満ちた言葉を掛ける。
「……なあ、歴史が戻ったらショッカーは居なくなるのか?」
すると、今まで大人しく話を聞いていたミツルがテディに話しかける。
「ああ。正しい歴史では、仮面ライダーがショッカーを倒しているからな」
テディのその言葉を聞いたミツルとナオキは、お互いの顔を見て何か決心したように頷く。
「そういう訳だから、夏美ちゃん達も子供達と一緒に降りてね」
「あ、はい。分かりました。」
「……」
ウラタロスの言葉に夏美は返事をする。しかし、士はそっぽを向き、無言のまま何か考えるようにデンライナーの窓の外を見ていた。
――現代――
デンライナーから降りた映司達は、子供たちが拠点としている第2アジトの近くに居た。
「シゲル君!」
すると、向こうからシゲルを呼ぶ女性の声が聞こえてきた。
「あ、比奈さん!」
シゲルが走っていく先を見ると、そこにはアンクが借りている身体の持ち主の妹、比奈が居た。
「比奈ちゃん!?」
「え?どうして私の名前を?」
「?……あっ、もしかして歴史が変わったせいで、俺と比奈ちゃんは会ってないことに……」
歴史改変の影響か、比奈と映司は出会っていないことになっているようだ。
「比奈さんは、このアジトで俺達の世話をしてくれてるんだ」
「私、光夏美と言います。よろしくお願いします」
「あっ、これはご丁寧に……」
呆ける映司をよそに、自己紹介をする夏美達。
「あっ!ショッカーの飛行船だ!」
すると、比奈と一緒にアジトから出てきた子供の1人が、飛んできた飛行船を指差す。
『我々は遂に立ち上がった。全世界に派遣されたショッカーの、平和を乱す愚かな人間どもを根刮ぎ排除する―――』
「もうすぐ嵐がくる。頼んだぞ、幸太郎」
ショッカーの放送を聞いて、映司は今その場に居ない仲間に望みを託す。
「シゲル君、ミツル君達は?」
「あれ?一緒に降りたはずなんだけど……」
「あ!士君もいません!」
「まさか……」
――デンライナー車内――
「あーっ!さっきのガキどもだッ!」
モモタロスが、さっきまで子供達が座っていたソファーの方を見て叫ぶと、皆一斉に駆け寄る。すると、机の下から隠れていたであろうナオキとミツルが出てきた。
「俺達にも手伝わせてよ!」
「俺の父ちゃんはショッカーに拐われたんだ!父ちゃんを拐った憎いショッカーに復讐してやりたいんだ!」
「お前ぇ……馬鹿言ってんじゃねぇ!」
ナオキとミツルの言葉を聞き、モモタロスはそんな2人を怒鳴り散らす。
「あーっ!手のお化けはっけーん!」
そんな中、リュウタロスがソファーの後ろにあったものを掴み上げる。
『おいっコラ!離せ!』
「うわっ!」
リュウタロスに掴まれていた
「あっ!てめぇ!」
『俺はメダルの持ち主だ。メダルは返してもらおうか』
「もとはと言えばお前のせいやで!」
「言葉の裏には針千本。君には、何か他の目的があるんじゃない?」
イマジンの皆が文句を言うな中、ウラタロスが探るようにアンクに問いかける。
『無い。俺を信じろ』
しかし、アンクは何の迷いも無く言い切った。
「今さら信じられるか!」
そう言うと、モモタロスはアンクに飛びかかる。
『ふんっ』
「ぬぉっ!」
だが、アンクは余裕な様子でかわす。
「いてて……野郎ども、やっちまえ!」
『ちっ』
モモタロスの言葉に他のメンバーも反応し、アンクを捕らえにかかる。流石のアンクもこのままではまずいと、一旦ドアの方へ飛んでいく。
「いけませんねぇ」
すると、ドアの向こうからオーナーが入ってきた。
「では、こうしましょう」
『なぁっ!』
オーナーは目にも止まらぬ早業で、持ってきた鎖付きの手錠でアンクを拘束する。
「モモタロス君が、アンク君のお目付け役となるのです」
そして、オーナーはモモタロスに鎖を渡す。
『くっ!俺を犬扱いするつもりか!?」
「はい。君はまた、40年前に戻ってメダルを探すつもりだったんですよねぇ?」
『はっ、悪いか!』
オーナーの核心を突いた言葉に、アンクは悪びれもなく自白した。
「よ~し、俺は犬は苦手だけどお前なら大丈夫なんだよ。よしお手だ!お手!」
『ふんっ』
「いでっ!……てめぇ、それがご主人様に対する態度か!?コラァ!」
生意気な態度をとるアンクに腹を立てたモモタロスは、そのままアンクに掴みかかり取っ組み合いを始める。
「まったく、少しは静かにしろ」
「うるせぇ!……って、ん?」
アンクとの格闘中に空気の読めない言葉を掛けられ、モモタロスはイライラしながら振り返る。すると、そこにはまた1人、不正乗車犯がいた。
「あーっ!てめぇまだ乗ってたのか!」
その声の主は、客席にふんぞり返っている士だった。
「俺も手伝ってやる。頭数は多い方が良いからな」
「余計なお世話だ!大体、特異点でもねぇお前がそんなこと出来る訳ねぇだろ!」
「お前こそ忘れたのか?電王の世界に行った時、一緒に過去に戻ってイマジンを倒しただろ」
「……あり?そうだっけ?」
そう。士は以前電王の世界で敵と戦った際に、自前のパスを使って過去に飛び、イマジンを倒したのだ。
「だが今回はメダルの回収だ。我々だけでも十分だと思うのだが……」
「さて、どうかな」
「?」
士は意味深な返事をすると、再び沈黙してしまった。
「それでは、最初に行った40年前の更に1分前に、レッツゴー」
話が一段落したのを確認し、オーナーの指示により、デンライナーは再び40年前を目指して走り出した。
――1971年11月11日――
「幸太郎、見つけたぞ」
「ああ」
幸太郎とテディは、モールイマジンとそれを倒した過去の自分達を見つけた。
『うわぁぁぁッ!』
すると、過去のアンクと映司が吹き飛ばされ、アンクがメダルを落とした。
「あれだな」
幸太郎は過去の自分達に見つからないように、メダルを回収する。
「よし、これで一件落着だな」
「ああ」
そして2人はデンライナーに戻っていった。
――――――
――――
――
――デンライナー車内――
帰ってきた幸太郎達はカウンターに腰掛ける。
「しっかし、メダル1枚のせいでこんなことになるなんてな」
幸太郎はメダルを眺めながら呟く。
『俺のメダルだ!返せ!』
「うおっ!」
その光景を見たアンクが、メダルを取り返そうと暴れ出す。急にアンクが動き出した為、モモタロスが持っていた手錠が引っ張られ、手錠が外れてしまった。
「うわっ!」
アンクが飛び込んできたせいで、幸太郎が持っていたメダルは弾かれ、宙を舞う。
『よし!もらった!』
「させるかよ!」
「くそっ!」
我先にとアンク、モモタロス、幸太郎がメダルに手を伸ばす。
『取った!』
そして、そのメダルを手にしたのはアンクだった。
「てめぇ、この野郎!そいつをよこせ!」
しかし、モモタロスは再びアンクを捕まえる。
『離せ!』
「暴れんな!コラ!」
アンクはモモタロスから逃れようと、上下左右に激しく動きだす。
『おらっ!』
「うぉっ!?」
力いっぱい暴れたせいで、アンクはデンライナーの窓ガラスにぶつかり、ガラスが割れてしまった。
『ぐっ!』
「あぁーっ!メダルがぁーっ!」
そして、ぶつかった衝撃でアンクは再びメダルを落としてしまった。
『俺のメダル!』
「おい!ちょっと待てギャーッ!」
アンクはメダルを追いかけて客車の出口から外へ飛び出す。アンクを掴んでいたモモタロスも、つられて一緒に飛び降りてしまった。
「メダルが!」
「行くぞ!幸太郎!」
「ああ!」
2人の後を追って幸太郎とテディが飛び降りる。
「……ナオキ」
「うん」
それを見て、ナオキ達も外へ飛び出した。
「……嫌な予感がするな。俺も行くか」
そして、最後に士もその後を追うのだった。