ヴァレオスの一件を解決したユイとシオンは伊吹からの伝言に従い、飛行機に乗って指定された場所、サマルカンド国際空港までやってきた。飛行機から降りて、空港の出口へと向かっていくと、出口のすぐ近くでクロノとトコハが待っていた。
「ヴァレオスを倒したんだってな」
「ああ。メガラニカのゼロスドラゴンを確保した」
「やるじゃない!」
「2人にも見せてあげたかったよ!フィデス復活の瞬間!」
トライフォー全員が揃ったことで4人は笑みを浮かびあっているが、すぐに気を引き締め直す。
「浮かれてる場合じゃねぇ。今のうちに、こっちも何とかしねぇと」
「奇跡の力を携えて、異なる世界から降臨した地・・・か」
異なる世界から降臨した地・・・この場所に行けばクロノのGゾーンを取り戻すことができるようなのだ。いや、正しく言えば、降臨の地を通じてクロノ・ドランとコンタクト・・・つまり接触できればの話だ。ノームが言うには、クロノが再び未来の可能性を取り戻すためには、ギアクロニクルの助けが必要だとのことだ。
「ギーゼを倒すために・・・Gゾーンを・・・俺の未来の可能性を取り戻す・・・ここで!」
ギーゼを倒すために、カズマを取り戻すために、クロノはここでやるべきことを果たすと、気合を入れるのであった。
TURN236「降臨の地」
普及協会本部の会議室にて、伊吹、マモル、キョウヤの3人に江西、及び北米支部からここに戻ってきたハイメから報告を受けた。
「本当!フィデスを復活させた時のシオンの勇姿ときたら!感動興奮雨アラーレ!見せてあげたかったよー!」
ハイメはフィデス復活の瞬間も語っており、少し興奮していた。それだけあのファイトは印象に残るものだったのだ。
「おかげで今のところ、あれ以上の異変は起きてないけど・・・」
「ああ。ギーゼがこの地に降臨している以上、嵐が起きるのも時間の問題だ」
ゼロスドラゴンを奪い、使徒たちの元から離れさせたとしても、ギーゼが存在する以上、クレイの幻影が見えているように、どのみち楽観視はできないようだ。
「メギドのカードは言われた通り、北米支部に届けたよ」
「ご苦労。あそこの設備は普及協会が所有する中でも、トップクラスを誇る。そこに最強の布陣を敷いた。メギドを餌に使い、使徒を向かい打ち、ファイトに勝って、奴らを惑星クレイに送り返す。後は奴らが、餌に食いつくのを待つだけだ」
奪取した絶海のゼロスドラゴンメギドをチームQ4率いる最強の陣営に護衛させ、取り戻しにやってくる使徒たちを倒し、惑星クレイに送り返す準備は万端だ。後は・・・その時を待つのみである。
☆
空港から出た後、トライフォーは降臨の地の指定された場所へと向かった。その場所は砂漠で、見渡す限りは、何もない。
「ここが降臨の地か・・・」
「ここで案内役の人を待てって」
「案内役って、誰なんだろう?」
トライフォーは降臨の地を案内する人物をここで待つことにする。すると・・・
「よく来たな」
「「「「!」」」」
奥の方からローブで身を隠している男がこちらに近づいてきた。男はトライフォーの元までたどり着くと、顔を隠していたローブを外した。
「!!!」
男の素顔を見て、クロノは驚愕に満ちた顔になる。なぜならクロノの前に現れた男は・・・クロノの実の父親である、新導ライブであったからなのだ。長きにわたって離れていた親と子が、再会した瞬間であった。
☆
「・・・そろそろかな、クロノと兄さん」
日本でクロノの帰りを待つミクルは今ちょうど、クロノがライブと会っている頃合いだと予想をしていた。
「・・・頑張れ、ダメ親父」
ミクルは遠くにいるライブに、ささやかなエールの言葉を送ったのであった。
☆
ライブと出会ったトライフォーは彼の案内の下で、降臨の地の奥へと進んでいく。
「この近くでは、15世紀頃、天文台が造られ、星々の運航を観測していた」
「15世紀って・・・」
「ざっくり言えば、室町時代だね」
「へえ~・・・そんなに長いんだね・・・」
「伊吹は以前この辺りで、ある遺跡に纏わる言い伝えを聞いたそうだ」
ライブはこの降臨の地にある遺跡の言い伝えをトライフォーに語った。
「"ある夜、空が歪んで、七色に光り、1人の光輝の騎士が降り立ち、6体の悪しき竜を封じるために旅をした"と」
「!!ということはそれが・・・」
光輝の騎士が降り立ったという言葉で真っ先に反応したのは、フィデスの継承者であるシオンであった。
「ああ。剣聖フィデスのことじゃないかと、伊吹も今回の一件で思い立ったようでな・・・調べてほしいと言われていたんだ。立凪との情報をすり合わせてみたが・・・どうやら当たりで間違いない。剣聖フィデスはメサイアの加護でこの地に降り立った」
「そして、各地にゼロスドラゴンのカードを封印した!」
「全て封印し、極東へ辿り着いた頃には、力尽きて、綺場の先祖に助けられたんだろう」
フィデスが綺場家に代々受け継がれてきていた経緯の根元を聞いたシオンには、フィデスの継承者として、思うところが多々あり、感慨深いであろう。
「そんな歴史があったなんて・・・やっぱりヴァンガードはすごいね・・・」
「・・・・・・」
「・・・クロノ?」
ユイが感慨深くなっていると、クロノが険しそうな顔になっているのに気づいた。クロノがこのような顔をするのも無理もない。幼き頃から今日まで離れていた父親と思わぬ形で再会したのだ。クロノ自身、父親とどう接すればいいのかと、何かと複雑な心境だろう。
「・・・もう少しだが、疲れたか?」
クロノのその様子に気づいていたライブはクロノにそう声をかけた。
「ああ・・・いや・・・まぁ・・・」
ライブに対して言葉を詰まらせるクロノにトコハは彼を小突く。
「飛行機の中で寝てたし、そんなには・・・」
「・・・そうか・・・」
ライブは問題ないと判断し、先へと進んでいく。親子の関係の間にぎこちない雰囲気が漂うも、トライフォーはライブについていき、目的地へと向かっていくのだった。
☆
数分ほどして、目的地の洞窟へとたどり着いた。洞窟の中は聖堂のような美しさがあり、神々しさが辺りを満たしている。
「わあ・・・すっごーい!」
「まるで聖堂だな」
「カメラ持ってくればよかったなー・・・。!ねぇ、あれって・・・」
この洞窟の風景に見惚れているトライフォーだったが、ユイが何かを見つけたようだ。その何かというのは何かの台座のようだ。ただ、この台座にはヴァンガードサークルの模様が出ていた。
「ヴァンガードサークル?」
「そうだ。ここにフィデスが来た時の時空の繋がりが僅かでも残っていれば、俺たちの声が惑星クレイへ届くかもしれん」
「でも、どうすればいいんですか?」
「俺が導く。クロノ、お前は強くイメージしろ」
「・・・わかった」
クロノは台座に乗り、ドランに呼び掛けようと強くイメージをする。ライブはドランへと導くために、イメージをクロノに送り込ませた。
☆
イメージ空間に立ったクロノはすぐにドランを呼び掛けようと試みる。
『ドラン!どこだ⁉返事をしてくれ!!』
だが、何もないこのイメージ空間の中に、ドランの声は聞こえないどころか、その姿も見えない。
『聞こえないのか、俺の声が⁉』
それでも必死になってドランに呼び掛けるクロノ。
『お願いだから答えてくれよ!ドラーーーン!!』
それでも呼び掛けようとするクロノの視界は、ここで暗くなっていく。
☆
「くっ・・・!」
クロノはイメージ空間から現実の空間に戻ってきた。
「・・・ダメだな」
「!!」
「焦るな。お前はレリクスでユニットたちの絆の力を蝕まれ、Gゾーンを失った。簡単にはいかない」
「くっ・・・」
ライブの言葉にクロノは悔しさを募らせている。
「夜、もう1度やるぞ。その前に飯にしよう」
ライブはクロノを気遣い、手を触れようとするが、クロノが悔しさや焦りからかそれを払いのけるようなしぐさを取る。
「・・・準備してくる。お前たちは少し休め」
「はい」
ライブは夕飯の準備をしに洞窟の外へと出る。3人もクロノを連れて洞窟の外へと出る。
☆
洞窟から出たクロノは焦燥感に駆られており、感情のままに洞窟の壁に拳を叩きつける。
「くっそぉ!!こうしてる間にも・・・カズマは・・・!」
そんなクロノをなだめようとするシオン、ユイ、トコハの3人。
「気持ちはわかるけど・・・少し落ち着いた方がいい」
「そうだよ。焦ったっていい結果は生まないよ」
「せっかくだし、お父さんと話して来たら?」
「そんなことのために来たんじゃない・・・!」
クロノの言葉にムッとしたトコハはクロノの耳を強く引っ張る。
「いててててて!!いてぇよ!!」
「家族とコミュニケーションできない奴にユニットとの絆を結び直せるとは思えないけど?」
「だって・・・今更何話したらいいか・・・わかんねぇし・・・」
「無理に話さなくたっていいさ」
「そうそう。こういう時にこそ・・・でしょ?」
「!!」
シオンとユイのアドバイスにクロノははっとし、自分がライブと何をすべきかに気づいた。やることをするために夕飯の支度をしているライブに近づく。
「どうした?」
「・・・ん」
クロノは自分のデッキをライブに見せる。どうやら言葉ではダメならば、ファイトで語るようだ。その意図に気づいたライブは笑みを浮かべる。
「・・・やるか」
「!ああ」
ファイトすることになり、先ほどまでのクロノの顔もだいぶ柔らかくなった。その様子にユイたちはお互いに笑みを浮かべる。ライブはファイトの準備のために、シーツを引き、自身のデッキを広げる。そしてライブはクロノを気を使って自身のGゾーンのカードを取り除いた。ライブのたちかぜデッキを見てクロノは子供の頃の記憶を思い出し、ほんの少し笑みを浮かべた。
「よし・・・いいぞ」
「ああ!」
「「スタンドアップ・ヴァンガード!!」」
お互いに準備が整い、クロノとライブはファイトをスタートさせた。
「これでどうだ!」
「そうはさせん!」
「よぉし!ヴァンガードにアタック!」
「ノーガードだ!」
「よし!このドライブチェックで決めてやるぜ!」
「甘い!」
「おお!そう来るか!」
親子仲睦まじいファイトによって、クロノとライブとのわだかまりはなくなったようだ。
「まったく、世話が焼けるんだから」
「お節介だったかな」
「本当だね。でも、せっかくここまで来たんだし、クロノのために、力になってあげたいじゃん?」
「そうだね」
親子のファイトを3人は微笑ましそうに見ているのだった。
☆
ファイトが終わり、夕飯を食べ終えたところで、洞窟の中に戻り、クロノのGゾーンを取り戻すための行程を再開させる。
「用意はいいか?」
「ああ」
「よし、始めよう」
「私たちも手伝います!」
早速始めようとしたところに、トコハ、ユイ、シオンの3人が手伝いを申し出てきた。
「惑星クレイの繋がりが少しでも強くなるように、僕たちもイメージする」
「あんたがドランに会えるようにね」
「私たち4人が揃えば、きっとできるよ!」
3人の申し出にはライブは賛成する。
「試す価値はあるな。3人とも頼む」
「「「はい!」」」
3人はクロノが乗っているヴァンガードサークルに乗り、クロノと共にイメージをする。
「イメージしろ。心に思い描くんだ。2つの世界の間にトンネルができて、お前たちはそこを通って、ユニットに会いに行く、長い長いトンネルだ」
(お願い・・・私たちの声が聞こえたら、答えて!)
(惑星クレイと、僕たちの世界のために!)
(全て守るために・・・あなたたちの力を貸して!)
(俺とお前の未来を取り戻したいんだ・・・ドラン!)
強くイメージを働かせるトライフォー。ライブはドランの元へ向かうためのトンネルのイメージをトライフォーに送り込む。すると・・・トライフォーの足元にあるヴァンガードサークルは輝きだし、光がトライフォーを包み込み、空高くまで放たれた。すると、トライフォーの意識は光に沿って登っていった。
☆
トライフォーの意識は現在、何もない宇宙空間のような場所にいる。これがライブの言う地球と惑星クレイを繋ぐトンネルなのだろう。
「ここって・・・?」
「ドランが来た道だ」
「じゃあこの道を行けば、ドランに会えるんだね!」
「ああ!」
「でも、まだ惑星クレイにたどり着いたわけじゃない」
「そうよね・・・。ここから、どっちに行けばいいのよ?」
「あの時は俺が・・・迷ってるドランを呼んで、俺たちの世界へ導いたけど・・・」
「今度は、自力であちらにたどり着かなきゃ行けないってわけだ」
「だったら前に進むだけじゃないの!てええい・・・と・・・わああ!」
トコハが先行して前に出ようと無重力を泳ごうとしたが、水と無重力とは違うので、やはり無重力に流されてしまうトコハ。
「ちょっとトコハー!何やってるのさー!」
「どうなってるの、これー⁉」
「あんまり離れるなよー!」
「上下もないのか、この世界は・・・」
トライフォーは今無重力空間にいるため、上下がなく、浮いている状態である。
「せめて床があればねー・・・」
トコハがそう口にしていると・・・
トンッ
「・・・ん?おおー」
なんと、トコハの足元に透明の床がなぜか現れ、彼女の足はこの床に地が付く。つまりはこの空間に重力ができたということになる。ということは上に浮いていたクロノ、シオン、ユイは当然・・・
ドサッ!×3
「うわっ!」
「痛っ!」
「いてっ!」
重力に従って落ちてきて、透明の床にしりもちをついてしまう。
「え?ええ⁉」
「いたた・・・どうなってるのー?」
「どうやらここは、イメージすれば何でもできる世界のようだね」
そう、この空間はイメージできれば本人のイメージした者が文字通りに出てくるようなのだ。
「へえー!じゃあそれって、頭の中で考えたことが全部形になって現れるってことだよね!」
「そういうことだね。だから3人とも、うっかり変なことを考えないでくれよ。ユイは特にね」
「むぅ~・・・わかってるってば・・・」
ユイならやりかねないと思ったのか、シオンはそう忠告する。一応はユイは自重はしているようだが、納得いかない様子だ。
「いやぁ・・・そんなこと言われても俺・・・今、何か出そうだなここって・・・思っちまった・・・」
「「えっ?」」
「あ・・・」
ところがクロノの方が何か出るとイメージしてしまったようで・・・それはすぐにでも形になった。
『メガーー!!!!』
「メガーー!!!!」
クロノがイメージしてしまった存在というのは、メガコロニー戦闘員Aであった。
「ええ!!?メガコロニー戦闘員!!?」
「ちょっと!なんでこれ!!?」
「しょうがねぇだろ!頭に浮かんじまったんだから・・・」
「もう・・・わけわかんないよ・・・」
クロノが浮かんでしまったイメージにトコハとユイは呆れてしまう。
「メガコロ!!」
バシュンッ!
「「「「わあ!!?」」」」
そんなトライフォーをよそにメガコロニー戦闘員Aは容赦なくビーム銃を取り出し、4人めがけて放った。トライフォーはそのビームをよけたために、被害はなかった。
「ま、マジ!!?」
「こ・・・ここは・・・」
トライフォーはお互いに顔を合わせて・・・メガコロニー戦闘員Aから逃げ出す。メガコロニー戦闘員Aは逃がさずに、トライフォーを追いかけながらビーム銃を撃ってくる。
「きゃああああ!」
「うわあっ!」
「ひゃああ!」
容赦なく撃ってくるメガコロニー戦闘員Aの攻撃に太刀打ちできないトライフォーは逃げるしかできなかった。
「!そうか!!」
すると何かに気が付いたシオンは振り返り、追ってくるメガコロニー戦闘員Aに立ち向かう。
「ちょっ⁉」
「何やってんだ、シオン⁉」
「危ないよ!戻ってきて!」
そんなシオンにユイたちは戻ってくるように声をかけた。
「我に力を!!」
そう言ったシオンが手を掲げると、なんとレイピアが突然現れ、それがシオンの手に渡った。
「「「おお!!」」」
3人が感心している間にも、シオンは追ってきたメガコロニー戦闘員Aをレイピアで切り倒していった。
「そうか!イメージすればなんでも・・・」
「あ!その手があったんだね!」
「おもしろーい!私もやる!」
そう、ここはイメージすれば何でもできる世界。つまり、イメージさえすれば望む武器も手に入れることができるというわけだ。
「よし!いっくぜぇ!!おりゃあ!!」
「メガあ!!?」
太刀打ちする手段を得たクロノは早速イメージでボクシンググローブをはめ、メガコロニー戦闘員Aたちを次々となぎ倒していった。
「そっこだぁ!!」
「メガあ!!!」
ユイはイメージで弓を装備して、メガコロニー戦闘員Aに向かって複数の矢を同時に放ち、射貫いて倒していく。
「どすこーーーい!!」
「メガーーーーー!!!」
トコハはイメージでなぜかハンマーを装備して、メガコロニー戦闘員Aを遠くへ飛ばしていく。これでメガコロニー戦闘員Aを全員倒し終えた。
「へへ」
「やったね!」
「ここ面白いね!」
「遊んでる場合じゃないだろ・・・」
倒し終えて得意げな顔になっている3人にシオンは呆れたような顔になっている。
「そ、そうだった・・・」
「ごめんごめん、楽しくってつい・・・」
「でもどうすればいいのか、わかってきたぜ」
どうすればドランに会えるのか・・・答えは簡単だ。先ほどやったように、強く、強くイメージすればいいのだ。それを理解したトライフォーはクロノ・ドラン・Gのカードを掲げ、強くイメージしていく。すると、カードが光だし、光がヴァンガードサークル変化をさせた。光が辺りを照らすと、この世界はダークゾーンにある、古代遺跡へと変わっていった。この場所は、クロノが初めてファイトをした時に選んだフィールドでもあった。
「ここは・・・」
「惑星クレイ?」
「ついたのかな?」
トライフォーが遺跡を見回してみると、クロノはギアクロニクルのユニットの像をじっと見つめる。すると、像の後ろからひょっこりと小さなユニットが現れた。
「!!ドラン!!」
そう、現れたのはクロノにとってかけがえのない最愛の友、クロノ・ドランであった。
「ドラーーン!!」
「クロノーー!!」
ようやく再会を果たすことができたクロノとドランは笑みを浮かべてお互いに駆け寄ってきた。
「やっと会えた!!」
「君なら絶対に来てくれると思ってた!」
「親父と、それとこいつらが手伝ってくれたんだ!」
「こんにちは」
「3人ともありがとう!」
「えへへ、どういたしまして♪」
クロノとドランが再会できて、ユイたち3人も喜ばしい笑みを浮かべている。
「君たちが今こうして4人でいるのは、きっと僕たちと君たちを結ぶ絆の2つの世界に流れる運命力の導きだ」
「運命力?」
「うん」
「こっちの・・・惑星クレイの状況は?」
喜びもつかの間、シオンは惑星クレイで起こっている状況をドランに確認をする。
「すでに各地でギーゼ軍と激しい決戦が繰り広げられている」
「「「!!」」」
「ジェネシスのアマルーダと、バミューダのティルア、そして、味方になった忍竜シラヌイが、急報を告げてくれたおかげで、奇襲は免れた。でも状況はよろしくない。ギーゼ軍の他に、グランブルーのおばけ集団と、イフディエルの同志のユニットたちの同盟軍による三つ巴の戦いが始まった。この三つ巴の戦いを終わらせるには、ギーゼを倒すしかない。そのためにも、今対抗策をうっているところだ」
クロノたちの世界が大変なように、惑星クレイもまた、ギーゼ軍とイフディエル陣営、そしてメサイアの陣営による激しい激戦によって、混乱を招いているようだ。
「僕たちは全力で戦う。ただ・・・今回はかつての大災厄のようにはいかない。何しろギーゼは君たちの世界に肉体を得た実体として復活してしまっているからね。こちらも実体を得て、ギーゼに対抗しなければならない時が来るかもしれない」
「どういうことだ?」
「それって、私たちもディフライドするってこと?」
実体を得て戦うというドランの考えにユイは真っ先にディフライドが浮かんだが、ドランはそれを否定する。
「ディフライドでは僕たちは本来の力を発揮できない。そのもう一段階上の方法で、君たちの世界で実際に働く力を持った存在として、降り立つんだ」
「そんなことができるのか?」
「難しいけど、やるしかない。その時はクロノ・・・君が持っている特異点の力を使わせてもらうよ。そしてメサイアと、ギアクロニクルの全ユニットの総力を挙げて、僕たちをそちらの世界へ送り込む」
ドランはトライフォーそれぞれに顔を合わせる。
ギアクロニクルの特異点、新導クロノ。
フィデスの継承者、綺場シオン。
ユニットと死してなお失われなき絆を結んだ、稀有な先導者、安城トコハ。
ユニットとの絆によってレリクスの力を討ち消した奇跡の体現者、佐倉ユイ。
「君たちは事の発端となったストライドゲートに、ギーゼにディフライドした東海枝カズマとも深く関わっている。運命の導き手として、僕たちと共にギーゼと決着をつけてほしい!それが、ギアクロニクルの、十二支刻獣の託宣であり、総意だ!」
惑星クレイのために、共に戦ってほしいというドランの頼みに、トライフォーの答えは、言われなくとも、もう答えは出ている。
「最初からそのつもりだ!ギーゼを倒して、カズマを取り戻す!」
「指をくわえてみてなくて済むってことでしょ!上等だわ!」
「私たちにできることはなんだってするよ!ギーゼを倒すために!」
「うん。僕らも黙って滅ぼされる気はないよ」
「ありがとう」
ギーゼと戦うトライフォーの強い意志を聞いて、ドランは感謝を述べる。
「君たちの世界と、僕たちの世界。2つの世界の間に流れる運命力のことは知っているよね」
「運命力・・・」
「うん。誤解している人もいるようだけど、どちらかの一方的な思いで運命力は決して生まれない。誰かが誰かを思う時、自分でも思いもよらない力が発揮できることがあるように、誰かが強い意志で前へ進もうとするとき、それを見た誰かもまた、励まされるように、絆を結んだファイターとユニットの強いイメージが呼応し、共鳴した時、互いの思いが響きあう。リンクして、宇宙の真理を揺るがす強烈なパワーを生み出す。それがヴァンガードの導き手が齎す奇跡。どちらの歯が欠けても2つの世界で回り続ける運命の歯車は止まってしまう。その運命の歯車の動きを、未来永劫見守るように見定められたのが、ギアクロニクル・・・時を司る僕たち、十二支刻獣。ここに至る運命を見守ってきた僕たちは、感じたんだ」
運命を見守ってきた十二支刻獣の1体であるドランは感じ取ってきたことを話す。
「全てを無に帰そうとするギーゼに、圧倒的な虚無に対抗しうるには、ごくごく当たり前な生命の営みから生まれる、喜びや希望・・・前へ進もうとする思い、絆でないかって。僕たちは、君たちの運命力を信じる。それに賭ける!」
ギーゼの戦いにトライフォーの持つ運命力を賭けたドランはクロノに手を差し伸べる。
「さあクロノ!もう1度僕たちの未来を取り戻そう!!」
「でも・・・どうやって・・・」
「運命力だよ。君と僕のイメージを共鳴させればいい」
やるべきことを理解したクロノはドランが差し伸べた手を握った。
「イメージして・・・僕たちの未来を」
「俺の掴みたい未来を・・・」
クロノとドランは己たちの掴みたい未来の可能性を、強くイメージして、共鳴するように試みる。すると・・・遺跡にヴァンガードサークルが現れ、クロノジェット・ドラゴンが現れる。いや・・・クロノジェットだけではない。クロノがこれまで共に戦ってきた、未来の可能性・・・Gユニットたちも姿を現したのだ。その壮観な光景にクロノだけでない、ユイたち3人も感動していた。そして・・・ドラン自身の姿も・・・姿が変わった。
「おお!」
「ドランが・・・」
「白くなった!」
「じゃあ、僕たちが、君たちの世界で戦うための契りを交わそう」
ドランはそう言って道をあけると、その先で、シオンたちにとって、名残り深いユニットたちが、こちらに近づいてきた。
「えっ!!?」
「あれは・・・」
そう、そのユニットとは、トコハの分身である、幻蒼のラナンキュラスアーシャ。次に、シオンの分身である神明の騎士アルトマイルであった。
「アーシャ!」
「アルトマイル」
己の分身であるユニット、そして、自分を導いてくれる先導者と会うことができて、両者ともに笑みを浮かべている。
「すごい・・・」
関心を浮かべるユイに、そっと優しく差し伸べる巨大な機械の手が現れた。それを見たユイは差しだされた手をじっと見ると、ユイにとって馴染み深い双翼の片割れがいた。
「わあ・・・グランギャロップ!」
その巨大な手を出していたのは、
「僕たちは共に戦うことを我らは誓う」
「イメージを越えた未来をこの手に!」
「「「「ディメンショナル・オーバー・ストライド!!!!」」」」
トライフォーの掲げていた手に、互いが使用するクランマークが浮かび上がった。これによって、契りはここに成立し、トライフォーはユニットたちの本来の力が発揮できる力、ディメンショナル・オーバー・ディフライドを手に入れたのであった。
☆
トライフォーの意識が惑星クレイに行っている間、ライブは洞窟の外で待っていた。ライブが焚火をして待っていると、洞窟からトライフォーが出てきた。クロノの手には、Gゾーンのカードがあった。クロノのGゾーンを取り戻すことができて、ライブは笑みを浮かべた。トライフォーはドランの変わった姿のカードを見つめる。
「これは?」
「もしかして、ドラン?」
「ああ。クロノ・ドラン・Z」
「へぇー・・・すごいや・・・」
「驚くことはない。お前たちは改めて強い絆を結んだんだからな」
ディメンショナル・オーバー・ディフライドの力を手に入れたのだ、ライブの言うとおりである。クロノはドランの変わった姿、クロノ・ドラン・Zを見つめ、カズマを取り戻す決意がより一層強くなったのだった。
☆
夜が明け、用意してくれたトラックで空港まで戻る時間が迫ってきた。トライフォーはここに残るライブとここで分かれる。
「俺はここに残る。万が一ことが起こった時には、ここを守る人間も必要だろう」
ライブはユイたち3人に視線を向ける。
「君たちにも世話になった」
「こちらこそ、ありがとうございました!」
「ライブさんに会えて、嬉しかったです!」
「ライブさんも、気を付けてください」
「じゃあ・・・」
「クロノ」
そろそろクロノたちがトラックの荷台に乗ろうとした時、ライブがクロノを呼び止める。
「全部片付いたら、またファイトするか」
「そん時は帰って来いよ。ちゃんとミクルさんに会って謝れ」
「・・・ふ、そうだな」
親子同士が笑いあい、トライフォーは今度こそ荷台に乗って、空港へ戻っていく。
「ふふ、成長したじゃない」
「ああ」
「なんだよ・・・」
「ははは、照れない照れない」
父親とちゃんと面を向かって話せたクロノに3人は笑みを浮かべ、クロノは若干ながら照れくさそうにしている。
「またファイトをするためにも、必ずギーゼを倒そう」
「ああ!」
「そうだね!」
「うん!」
ライブと再びファイトをする・・・クロノのその願いを果たすためにも、トライフォーはギーゼを倒そうと改めて誓い合ったのだった。
☆
ヴァンガード普及協会北米支部・・・この場所の離れた場所に使徒たちは集まってきている。奪われた絶海のゼロスドラゴンメギドを取り戻すために・・・ギーゼの真なる覚醒を果たすために。黒いローブを纏ったギーゼにアガレスとダークフェイスは膝を折って平服する。そんなギーゼの瞳は・・・金色になっていたのだった。
to be continued…
トコハ「まさかあんな風にアーシャに会える日が来るなんてね」
シオン「驚いたけど・・・でも、アルトマイルを見た時、必然を感じたよ」
ユイ「私もそう思ったよ!グランギャロップに会えた時、やっぱり来てくれたんだってね!」
クロノ「導いたんだ。ドランが言ってたみたいに、俺たちとユニットの絆が」
トコハ「運命力、か」
ユイ「私たちが紡いできた絆は、無駄じゃなかったね」
シオン「この絆が、最終決戦の切り札になるかもしれない」
クロノ「ああ!待ってろよ・・・カズマ!」
TURN237「決戦の幕開け」