とある超次元の金属生命   作:GAIAGUL

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ちょっと投下


第五話 電子攻防戦

と金6

 

 

行きつけのお店で新作のパフェが発売されるとの速報を見て誰もいない支部内で狂喜していた初春飾利。

そんな彼女の元に届いた報せは未だかつて扱ったことのない大事だった。

 

「学園都市の…書庫(バンク)の防衛?」

『そうだ、至急始めてもらいたい』

 

ディスプレイに映っているのは明らかにお偉いさんな人。自分の通っている中学校の校長とは比べものにならない雰囲気を纏ったおじさんであった。

 

「ええええ!?わた、私が!?無理ですよそんな大件!私ジャッジメントになってまだ一ヶ月くらいしか経ってないんですよ!?」

『頼む!君しかいないんだ、やってくれ!』

「そんな、こんな新人の素人に…」

『そんな事はない。君は聞いたところによると自作のセキュリティをその支部のサーバーに施しているそうじゃないか。君の実力はジャッジメント試験の情報処理から十分わかる!』

「で、でも…」

『書庫にはこの学園都市の全てのデータが詰まっていると言ってもいい。最後のセキュリティが突破されるということはつまりこの学園都市全ての人間の情報が盗まれるということだ』

「…」

 

初春の脳裏によぎったのは少し前に巻き込まれた銀行強盗事件。

あの時、私の憧れとなった少女なら、同僚なら、友人ならば、どのような行動をとっただろうか。

…迷うことすら無かっただろう。

 

樹形図の設計者(ツリーダイヤグラム)は申請しても間に合わない。頼む、君しかいないんだ!我々ではもう手が付けられない』

「…わかりました、やってみます」

『!本当か、ありがとう!』

「アンチスキルの方々は犯人の居場所を探ってください、見つかり次第其処に人員を送って確保してください」

『ああ、了解…「ザザザ」した。至急防衛に「ザザザザザ」…移ってくれ』

「これは…?」

 

唐突にパソコン画面に映る人物の映像が荒れ、音声にも砂嵐がはいる。

 

『悔しいことにウイルスを撃ち込まれてしまってね、恐らくもうすぐ此処(アンチスキル本部)の通信回線は全て使い物にならなくなるだろう』

 

恐らく限界近かったのだろう。瞬く間に映像が不鮮明になっていく。

 

『協力、本当に感謝する』

「いえ、ジャッジメントとして当然のことをするまでです」

 

そこで通信は途切れた、少女はキーボードを操作し画面を即座に切り替える。

「さて…やりますか!」

 

柵川中学一年生、新米ジャッジメント初春飾利。彼女の初任務は規模がおかしかった。

 

 

 

 

クリシスゴーストがランクAのセキュリティにハッキングをかけ始めて早6分。

 

流石に学園都市最高ランクのセキュリティというべきか、なかなか突破できずにいた。しかし半分程度は消化できていたのであと4分程度あればたどり着けるだろう。

隔壁(セキュリティ)を破壊しつつそう考えていた時だった。

 

ガキィッ

 

突然手応えが変わった。

殴り続けていた手を止め、何事かと分析する。

どうやら隔壁(セキュリティ)が現在進行形で強化されているようだ。

アンチスキル本部からではない、先程撃ち込んだウイルスで通信機器類は軒並みおかしくなっているはずだ。

念のためカメラを通して本部を監視して見たが誰も通信機器類には手をつけていなかった。

そう、誰一人(・・・)として。

その光景に違和感を覚えるが、それよりも対処すべきなのは今も硬度を増している隔壁の方。

 

逆探知をかけ数秒で出処を察知、その場所は風紀委員(ジャッジメント)第一七七支部。電子世界内部で具現化されたその形は何故か花瓶だった。

妨害のためウイルスを構築、右手を槍のような形状に変えセキュリティの穴(弱点)を探し撃ち込む。

こちらもアンチスキル本部のように一度では入り込めなかった。解析し直しウイルスも再構築、右手が変化した槍をミサイルの如く飛ばす、連射。

 

しかし、入らない。

ウイルスの侵入は、許可されない。

ウイルスは相手のサーバーに侵入する前に新たに現れたセキュリティに阻まれる。

 

そして突如現れたミサイル(ワクチンプログラム)がクリシスゴーストに突き刺さり、爆発する。

本体のクリシスゴーストには大してダメージは無く、除去されることはなかったが、作成しておいた(ウイルス)が消滅してしまった。

 

クリシスゴーストが即席で作り上げたウイルス、それは既存しているどのウイルスとも異なるもの。それに対し有効なワクチンを撃ち込んで来るということは即座に解析し作り上げたということ。

 

余程いいコンピュータでかなりのプログラムを用いているのだろうが、もし人間の手で行われたものなら只者ではない。

 

更に高度なウイルスを構築し花瓶を守っている隔壁(セキュリティ)に狙い定める。

しかし次の瞬間、大量の(ダミーデータ)がクリシスゴーストの手足に絡みつき、拘束(セキュリティ解読の妨害)する。

 

これには感情を持たないクリシスゴーストも流石に驚くという現象に近いナニカを抱かざるを得なかった。

 

隔壁(セキュリティ)破ろう(解析しよう)にも鎖が手足を拘束して(ダミーデータが多くて)動けない(解析出来ない)

完全に手が出せなくなった。出処を解析してみると先程から邪魔してきている花瓶。まずは此方の動きを止めてから仕留めようというわけか。

他の作業を辞めて拘束の解除に全力を注げばすぐ解除出来るだろうが、その間にセキュリティは手が出せない程に強化されてしまうだろう。

 

淡々と状況を分析しているクリシスゴーストだが、実はかなりまずい事になっている。

現在クリシスゴーストは謎のハッカーとして扱われているが、このまま解析されるとデータの中に存在する意思を持つコンピューターウイルスだと発覚されるかもしれない。

そうなるといくら異質な存在だといえ所詮ウイルス、高度なワクチンを構築されれば消滅されかねない。

しかも相手は此方より上手の腕を持っている。拘束されつつも自身を偽るダミーデータを流しているがそう長くは持たないだろう。

 

なんとか他の作業と並行して拘束を解除しようと鎖の破壊(ダミーデータの解析と削除)を続けていたクリシスゴーストに更にここで凶報が届く。

ハッキングを続けつつも監視し続けていたアンチスキル本部の監視カメラから流れてきた情報に『ハッキング犯の位置の特定完了』というものがあった。

 

マズい、かなりマズい。

やっとのこと鎖の破壊に成功し自由になった右手の能力を全て情報収集に回す。

 

通信系統のおかしくなった本部からは他の支部に連絡は行かないはず、どうやって連携し(金属生命体の居場所)を絞った?

 

クリシスゴーストは疑問を抱き、それは直ぐに解消されることになる。答えは監視カメラから出た。

クリシスゴーストがウイルスを撃ち込んだ少し後、本部から走り出す車、そして人。

通信ではなく自分達の足を用いて連絡を取り合っていた。

 

クリシスゴーストは改めて自身の置かれている状況を確認する。

 

書庫(バンク)に対する情報収集の為のハッキングはセキュリティランクAにて停止。ダミーデータの妨害とセキュリティの強化により続行はほぼ不可能。

・相手は上手、解析を続けられた場合自らがワクチンにて浄化される危険あり。

・根城にしている金属生命体の位置が特定されている。攻撃された場合無防備なので撤去される可能性も高い。

 

これらの情報の統計による結論。

・書庫へのハッキングの続行は無意味、金属生命体に戻り逃走、街に潜伏しまたの機会を待つべし。

 

クリシスゴーストは電子生命体、人間のような意地もなければ拘りもない。

次回にしよう。と、引き際は速攻で決まった。

 

鎖の破壊と並行して続けていた他の作業を全て中止、鎖の破壊のみに集中する。

鋼の腕を奮い鎖を叩く、叩き続ける。

 

叩く、叩く叩く、叩く叩く叩く、

叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く叩く。

 

 

数十秒後、身体に留められた鎖は全て壊れ、クリシスゴーストは拘束を解いていた。集中して一つの作業に専念すれば大抵の問題は何とかなるのである。

 

しかしハッキングを中断しているということは、防衛している側にとってはその間に書庫の前に更に強力なセキュリティを敷くチャンスができてしまうということ。そちらの妨害も並列してやっていたが先程拘束を解く際に中止してしまった。

 

極めて少ない希望であるが、一応バンクのセキュリティを確認しておく。

そこには数分前には無かった巨大な壁がそびえ建っていた。

それはこれから短時間での侵入は容易にはいかない、というか実質不可能だろうということを悠然と語っているようだった。

 

もたついていては身体(金属生命体)が見つかってしまう。

速攻で諦め身体の向きを180度変更。元の居場所(金属生命体)へ駆け出す。

逃しはしないと言わんばかりに新たな鎖が足場から飛び出てくるが、それらを全てはたき落としクリシスゴーストは自らの住処へ戻って行った。

 

 

____________

 

路地裏のビルとビルの僅かな隙間、抜け殻同然だった金属生命体にクリシスゴーストの意識が戻る。すぐさま周囲の様子を探る。

 

『…の辺り…の様だ…』

『逃げられ…早…捕まえ…』

 

人間の声が聴こえた、どうやらアンチスキルは既にそばまで来ているらしい。

所持している携帯電話に発信機と同じ機能を持つGPSが内蔵してあるのだ、当然見つかる。と、そこで所持している携帯電話の様子がおかしいことに気付き、状態をチェックする。

携帯電話は回路が焼け焦げていた、どうやら長時間のハッキングの負荷に耐えきれなかったようだ。これではもう電子戦では使い物にならない。

もはや只の発信機としての役割しか持たなくなった携帯をその場に放棄し建物の隙間から側に置いておいた掃除ロボットに移動する。

 

…金属生命体の大部分は入りきらず、見えてしまっている。まるでツメタガイのようにグロテスクな姿へとなってしまっているがアンチスキルが迫りつつある現在、気にしている暇は無い。

 

明らかに生物に見えない、かと言って機械にも見えない異様な形をした物体へと変貌した掃除ロボはより人気の無い方向へ滑る様に移動して行った。

 

これが、クリシスゴースト初の書庫侵入の失敗の話。

 

 

 

 

 

同時刻、

 

「…っ!反応消失…逃げられましたか…」

初春飾利は支部にて侵入者を取り逃がしたことを悔しがっていた。

しかしパソコンのキーボードを叩く指の動きはまだ動いており、アンチスキル本部に打ち込まれたウイルスを除去していた。

数十秒後、ウイルスは全て消え去り本部の通信回線は全て復旧し、初春は結果を報告すべく回線を開いた。

 

「すいません…犯人を取り逃が『よくやったァ!!』『『うおおおーーーーッ!!』』な、何事ですか!?」

突然響いた大音量の歓声、初春は完全に萎縮してしまった。

そして続いて来るのは大量の賛辞。

 

『ありがとう!』

『よくやってくれた!』

『すごいな君!』

といった言葉が画面越しに大量に映るアンチスキルの面々から雪崩のように掛けられる。

 

「え!?え!?えええ!?」

『こら、いい加減にせんか貴様ら!まだ作業は残っているんだ、それが終わってからにせんか!』

「あ、さっきのおじさん…」

『ああ、驚かしてしまってすまないね。皆が功労者に礼を言いたいと口々に言うものだから』

「あ、いえ、大丈夫です。それに結果的には取り逃がしてしまいましたし…」

『…ふむ、そうか。此方も現場からは犯人は見つからなかった』

「すいません…」

『謝る事は無い、むしろお礼を言わせてくれ。』

「しかし…」

『君は我々には到底対処しようがない相手を撃退に持ち込んでくれたのだ。これで君に文句を言わせようものなら罰が当たる』

「は、はぁ…」

『ハッキング犯の真の目的は不明なまま、また書庫が狙われるかもしれん。そこで情けないがまた頼みたい事があるのだが…』

「書庫のセキュリティの強化ですね」

『そうだ、それと君の支部に今現在入っている反ウイルスプログラムを貰えるだろうか?悔しい事に我々のものではまるで歯が立たなかった。学生の君には申し訳無く思う』

「…いえ、先ほども申し上げましたが私はこの街を守る者の一人として、ジャッジメントとして当然の事をするまでです」

 

…初春飾利はその情報処理能力を高く買われ、公には知らされないが公式に書庫の守護神となった。

 

 




私は生きてるぞォォ
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