「はあっ!」
《霊符》を空亡に向けて放つ。だがその攻撃は難なく防がれた。次に多方面から霊符を放つ。だが此れも同じく防がれる。
「ちいっ!」
「どうした人間。その程度か?」
今の攻撃で霊符を用いた攻撃は無意味と分かり、即座に《封魔針》を空亡の周りに放つ。予め取り付けておいた霊糸に霊力を流す。
「うん?」
「《封魔陣》!」
封魔陣。その言葉が発動の
その衝撃で辺りに土埃が舞う。
妖怪にとって霊力とは《克服出来ない弱点》だ。目の前の妖怪も例外に漏れない。そこに、彼女の多大な霊力だ。倒せるとはいかなくとも、少なくないダメージが期待できる。筈、なのだが―――
「…糞っ!」
「………ふむ。少し、油断してしまったな。傷が付いてしまった」
土埃が晴れると、 其処に立っていたのは殆ど無傷の空亡だった。
(幾ら何でも硬すぎるでしょうが……!)
「ふふ、驚いている様だな、人間よ」
「おい妖怪、一体何をした。」
「我は何もしておらん」
「……な…!?」
「驚く事は無いだろう。唯、我とお主とで、地力に差が有るだけの事よ」
地力の差。それは文字通り、霊夢と空亡の実力の差を意味している。
確かに、力の差は理解していた。だが、此処まで差が有るとは……。
「幾ら霊力が弱点と言っても、対策は幾らでもある。妖力での相殺、能力による防御。だが、そんな事をしなくとも、地力の差で如何にでもなるものだ」
「っ……!?」
「どうした、来ないのか?ならば、此方から行くぞ。」
空亡が片腕を突き出すと、腕から闇が滲み出てくる。闇は段々と掌に集まって行き、ビー玉程の大きさに成った。
「ふむ。この程度で良いか。―――餌の時間だ。総て、喰らい尽くせ」
「―――ッ!!」
瞬間、闇が弾丸の如く飛び出す。霊夢は突然の事に驚くが、直ぐに其処から飛び退く。
闇は背後に有った木にグチャッと飛び散る。瞬間、飛び散った闇が広がり、木を黒に染め上げる。
闇が蠢く。その姿はまるで、餌を食い散らかす獣の様に。
すると、徐々に闇が萎んでゆく。萎みきった闇は、先程よりも肥大化しており、サッカーボール程の大きさに成っていた。
「なっ……!?」
「其れに触れれば、貴様も同じ運命を辿ることになるぞ?」
「糞っ!」
霊夢は直ぐに空へと逃げる。其れを追う様にして、闇は同色の羽を生やし、空へと羽ばたく。
「そうら、逃げろ逃げろ」
闇は霊夢の想像以上の速度で追いかけて来る。彼女も霊符を放ち迎撃を試みるが、闇にダメージは無く、それどころか霊札を吸収して更に速度を上げて来ている。
「ちいっ!」
「さて、測らせてもらおうか。今代博麗の実力を」
◼️◼️◼️◼️◼️
彼女は今、予期せぬ相手に苦戦していた。
一直線で自分に突撃して来る『ソレ』は、此方の攻撃が効かぬばかりか、攻撃を吸収して更に力を増すという、何とも厄介な奴だ。
だが、何も倒せないという相手ではない。
彼女を知る殆どの者が知らないことだが、彼女は生粋のスロースターターである。
詰まる所、彼女は『スイッチ』が入るのが遅いのだ。
彼女が闇に手こずっていたのは、其の面倒な性質が原因であると言える。というか、其れが無ければ、『この程度の相手』に遅れをとる事は先ず無いのだ。
一度スイッチが入ったら、余程強い妖怪でも無ければ彼女を倒す事は出来ないだろう。
其れは、目の前の敵も例外では無い。
◼️◼️◼️◼️◼️
カチリとした音と共に、全身の神経伝達が活性化し、視界がクリアになる。
其れと同時に、
――目の前の闇は何だ?
――妖怪、或いは其れに準ずるものである。
――了解、直ちに排除する。同時に解析を開始する。
――解析完了。結界術による断絶が有効であると考えられる。
――了解、直ちに実行する。
――結界術には重複結界を推奨。
――了解。霊力消費を抑える為、重複は二重とする。
霊夢は懐から霊符と封魔針を取り出すと、森へ急降下する。
「さあ、来なさい」
「◼️◼️◼️――――ッッッ!!!」
――霊力回路、異常無し――
――霊力循環、正常――
――霊力量、問題なし――
――霊符及び封魔針設置完了――
――霊力同期、完了――
――術式属性、断絶を選択――
――結界術式第弐番、重複結界を選択――
――重複数、二重を選択――
――結界陣、構築開始――
次回こそは、次回こそは……!