もしもフランちゃんが自分の能力を知り尽くしていて、先代巫女と知り合いだったら。
曲を聴きながらどうぞ。
フランちゃんは初めて戦ったEXボスなので思い入れ補正が超あります。
今でも彼女と戦うと、テンションが最高にハイってやつになるほどです。
先代巫女のモデルは皆様のご想像にお任せします。
最後に、この作品は妄想でできております。
もしもフランちゃんが自分の能力を知り尽くしていて、先代巫女と知り合いだったら。
紅霧異変より15年前
「ねえ、この話は一体何度目かしら?博麗の巫女。博麗の巫女としての貴女の権能と私の能力があれば、私たちはこの幻想郷を今すぐにでも支配できる。
だから、私のモノになりなさい。博麗の巫女」
「私は支配なんてものに興味がないのよ、フランドール。博麗の巫女は幻想郷を支配する為にいるのではなく、規律の為にいるのよ。それにね、何度も言うけれど」
紅く漲る眼光と、瞬きできない鋭い眼光。
「私は、子育てで忙しいの」
「…それは、つまり」
―――今回もあれか
「力ずくで、従わせてみせろってことよねえ?」
「あんたなんて眼中に無い。って言ってるのよ」
何度も何度もこの口論を繰り返し、激突を繰り返す日々。結果はいつも、二人とも疲れ果てて引き分け。痛みわけだ。
でも不思議とこの関係は悪くなかった。館でずっと引き篭もってただけの頃に比べれば、ずっと。
この人間はいつも吸血鬼の私を笑わせてくれるのだ。 ゲェーハーハーハァァァ!!
「・・・はあ、今日も決着は付かずじまいね。貴女、やっぱり人間にしては中々イイ奴よ。博麗の巫女」
「お褒め頂いてどうも。貴女も、妖怪にしてはまあまあイイ奴よ。吸血鬼」
「―――でも私は諦めないわ」
貴女を手に入れる為なら、
次の戦いも、次の次の戦いも、次の次の次の戦いも。
私は貴女を倒し、貴女を手に入れるまで、勝つまで諦めない。
「頼むから諦めて頂戴。…吸血鬼の貴女からしてみれば人間の私なんて、一瞬で通り過ぎる閃光みたいなものじゃない。何で私に拘るのかしら?」
「妖怪は人間を襲う。人間を襲って屠る事が本分であり存在意義よ。私はまだ貴女を屠ってない。私は私が生きる為に、あなたと戦っているの。
何度でも言うわ。例え、貴女の寿命が今日にでも尽きるとしても、私は諦めない」
「―――」
この時間よ、どうか続け。
この時間よ、どうか止まれ。
人間、お前は美しい。
「じゃあ、貴女以外の死因でもし私が死んだら」
例え、
「私の子供を、鍛えてあげて頂戴」
そんな奇跡が起きないのだとしても。
紅霧異変より10年前
「は?今なんて言ったの?お姉様」
「博麗の巫女が殺されたと言ったのよ、我が妹」
「…その冗談、笑えないわよ?」
「冗談は貴女だけよ、我が妹」
現在地は地下室。その地下室は、物質が融解するほどの高温にさらされている。
この空間で生きていられる生物がいるなら、それは生物ではない。
おそらく、不死と呼ばれる化物だけだろう。
「いいから黙ってろ。お姉様」
フランドールがその手に握るのは紅い杖。
「黙らないわ。フラン」
姉のレミリアがその手に握るのは赤い槍。
「博麗の巫女が、殺された? ハハ、嘘だ」
―――信じられるか。
「あいつがどれほど強い人間か、アンタは知らないでしょう?」
あいつのことを何も知らないくせに、よくもそんな嘘がつけたものだ。
あいつの拳は、蹴りは私の身体を幾度も幾度も破壊したんだぞ?
あいつは唯一私のモノにならなかったんだぞ? あいつは唯一私と対等に戦える存在なんだぞ?
そんな人間が、この幻想郷に2人といるか?
いないでしょう?
「あいつが、私以外に殺されるはずがねえんだよ」
私の部屋、地下室を姉ごと破壊し一瞬で館の正面玄関前廊下へと出る。
吸血鬼フランドール・スカーレット。
その能力は《ありとあらゆるものを破壊する程度の能力》
やろうと思えば現在地と他の地点の間、空間を破壊して穴を開け、擬似的なワープすら可能にする。
己の能力を十全に知り尽くしているからこその芸当である。
そうやってフランドールは博麗神社へと赴き、巫女と出会った。
唯一無二の人間に、出会えたのだ。
―――今やる事は一つ。
「何処へ行くの?フラン」
「・・・パチュリー、どいて」
「まさかとは思いますが、博麗神社に向かうおつもりですか?妹様」
「・・・美鈴」
神社へ行く?そんなわけないだろうが。
「神社になんて行かないわ。今日中にどこの馬鹿野郎が博麗の巫女を殺したとかいう笑えねえ嘘を流したのか突きとめるのよ」
「どうやって?」
―――方法?簡単だろうが。
「とりあえず、私と会った奴を片っ端から殺していく。そうすりゃいつかは嘘を流した奴を殺せるだろう?違うかい?」
「・・・・・」
何だよその顔。
「フラン。」
「おや?流石お姉様。弱っちい癖に生命力だけは吸血鬼並ね」
「・・・博麗の巫女と貴女との戦いなら巫女の勝ち逃げよ。
―――博麗の巫女はこの幻想郷を守る為に戦い、死んだ。それが全て。それが巫女の最期よ」
「笑わせるな!!!」
それがあいつの最期だと?この幻想郷を守っただと?
「私と何度も何度も死闘を繰り広げたあいつが、そんなクソッタレな最後を迎えるはずないだろうが!! あいつを殺すのは私なんだよ。あいつを手に入れるのは、私なんだよ!!!」
紅く漲る眼光。
「クソッタレとは言ってくれるわね、フラン」
色彩多様な魔力が迸る眼光。
「幻想郷を守って散ったあの巫女は敬意に値します、妹様」
虹色に満ちる眼光。
「貴女を、館の外に出すわけにはいかないわね」
赤く燃える眼光。
―――紅の蝙蝠が無限に広がり、虹が世界を覆い、風景が七曜に染まる。
後に、この戦いを見たとある大妖精は友の氷精にそう語ったという。
フランドール、パチュリー、美鈴、レミリア。 四者の戦いは紅魔館を半壊させるまでに及び、決着した。
フランドール・スカーレットは再度地下室に幽閉。
半壊した紅魔館を建て直す為、当主レミリア・スカーレットは新たに人間のメイドを館に招き入れた。
そして、博麗神社には次代の巫女が就任。幻想郷はスペルカードという新たなルールがしかれる事となる。
◇
「何故死んだの・・・博麗の巫女」
『博麗拳術秘奥義・夢想天生』
『魔杖・レーヴァテイン』
『いや吸血鬼、あんたのその剣?杖? 反則じゃないの?』
『こっちの台詞よ人間。あんたは存在自体が反則じゃない』
「何が次代の博麗の巫女・・・」
『あんた、いつも付けてる仮面はどうしたの?』
『もう必要なくなったのよ。…それと今日はね、ちょいと相談があるの』
「何がスペルカードルール・・・」
『もうちょっと効率的に戦いができないか、今検討中なのよ。こちらが疲れずに、相手を殴らずに殺さずに決着がつく決闘方法をね。何かアイデアはないかしら?』
『それは斬新な発想ね。中々興味があるわ。貴女とずっと戦っていられるじゃない。…個人の持つ美しさを競うってのはどう?』
『良いわね!私の娘にも教えてあげなくっちゃ』
「…全部、全部くだらないわ。この幻想郷は強者こそが、力こそが全て。最強である吸血鬼こそがこの世界の支配者なのよ。・・・見てなさい。
いずれ思い知らせてやる・・・」
◇
紅霧異変解決直後
「妹様が地下室を脱走した?」
「そうですメイド長! まずいです。ただでさえ先の異変が解決されたばかりで、皆疲労していると言うのに・・・。もしあのお方が館の外に出てしまったら・・・!」
幻想郷を紅い霧で覆い、日光を遮断して吸血鬼の活動範囲時間を伸ばす。それが紅霧異変。
―――生ぬるいのよ。
「ねえ子悪魔?」
―――日光なんて、壊せばいいじゃない。
「私の杖を知らないかしら。槍にも薙刀にも剣にもなる、自慢の杖」
「い、妹様・・・。いつ、こ、こちらにこられたので・・・」
「たった今よ。
…それと、お姉様が雇ったっていう人間はあんただね?」
「お初にお目にかかります、妹様。紅魔館メイド長、十六夜咲夜と申します」
「よろしく。
まあ、あんた達には悪いけどこの館は出ていかせて貰うわ。だってレミリアお姉様、人間に負けたそうじゃない?吸血鬼のくせにだらしが無いったらないわね。
他の皆も無様に負けちゃって・・・。紅魔館はいつからこんな腑抜け揃いになったのかしら?」
その言葉が終わるや否や、フランドールの周りには円状にナイフが展開される。
「メイド長! 駄目です!!お止めください!!!」
「いくらお嬢様の妹君といえど、我が主を侮辱する事は許されません。妹様は、私が食い止めます」
「だから駄目なんです!妹様がここにいる事自体が、もう手遅れなんです!!」
「・・・ふうーん」
―――食い止める?だから、生ぬるいっていうのよ。
「瀟洒なことねメイド長。・・・瀟洒すぎて、」
つまらないわ。
決着は一瞬。
ナイフはおろか空間の全てが壊され、立っているのは吸血鬼一匹のみ。
「今度は私が、生ぬるい今の幻想郷に本物の吸血鬼の恐さを見せてやるわ」
「な、なりません!妹様!!もう、時代は変わったのです!現在はスペルカードルールが」
「これのこと?」
――禁忌「レーヴァテイン」
誰も彼も逃がさない。消えて無くなれ。 フランドールの意思が凝縮された、目視してからでは回避不可能の一閃。
スペルカードを即興で作る事など、最強の吸血鬼である彼女にとっては造作も無い。
「あ・・・」
小悪魔と咲夜が最後に見たのは、紅く赤く光る妖怪の眼光と閃光だった。
「この世に、地獄を見せてやるわ。せいぜいあの世で見ていなさい、先代の巫女」
例えばこんな東方紅魔郷EX
『OVER LAP』
朝はひどく寝覚めが悪かった。
霧雨魔理沙は自分の魔道具を点検しながら回想する。悪夢を見たわけではない。強いて言うなら、虫の知らせと言うべきだろうか。
「紅魔館に行ってみるか」
虫の知らせは尊重すべきだ。
そう確信し、この間の異変の時のように準備を万端にして彼女は出かけた。
◇
朝はひどく寝覚めが悪かった。
博麗霊夢は気だるげに回想する。悪夢を見たわけではない。強いて言うなら、ご先祖様が枕元に立って何かを自身に伝えに来たと言うべきだろうか。
「紅魔館に行ってみようかしら」
何だかよく分からないが。
この間の異変の時のように準備を万端にして彼女は出かけた。
◇
外に出て紅魔館の方角を見てみると、その方角だけ雲行きが怪しい。
どうやら紅魔館の周りは雨が降っているらしい。
「おう?」
「あら?」
紅魔館の正門間近というところで、二人は合流した。そして、すぐさま紅魔館の内部に入る。
この紅魔館は真紅に塗装された美しい館だ。
元々は紅茶館と命名されるはずだったのだが、とある吸血鬼の反対によって紅魔館と名付けられた経緯がある。
―――妙だな。
エントランスホールを抜けながら、気付いたのははたしてどちらか。
外は長雨が降っている。雨に打たれ続けるのは苦痛だ。不快指数が高まる。不快指数が高まる事は、体に悪影響を及ぼす。
だから誰も好き好んで外出などしない。外には、誰もいないのが当たり前だ。妖怪も人も、誰もいないのが雨の日の普通なのだ。
「なあ」
「ねえ」
二人は同時に、無人の館内で声を上げた。
「何で外に門番が居ないんだ?」
「何で紅魔館の周りだけに雨が降っているのかしら?」
疑問が湧いたのは当然だろう。紅魔館の外には門番が常に立っていて、外敵から館を守っている。
しかし、その門番がいない。 何故?
紅魔館の主レミリア・スカーレットは水を嫌う。特に雨が身体に触れようものなら動くことすら叶わなくなってしまう。
まあ、大嫌いなだけで弱点ではないらしいが。
しかし、そんな大嫌いな雨が今は館の周りにだけ降っている。 何故?
それはね、
「私が、ここに居るからよ」
このフランドール・スカーレットがね。
「はあい、おまたせ」
「…呼んでないぜ」
「…あんた誰よ?」
未警戒という訳ではなかったのだろう。急に現れた私に対して、紅白と黒白双方に驚愕の色が見てとれる。
「人に名前を聞く時は・・・」
「霧雨魔理沙。魔法使いよ」
「博麗霊夢。巫女だぜ」
紅白は魔法使いを名乗り、黒白は巫女を名乗る。
そうか、こいつが当代の。
「私はフランドール。紅白の貴女が博麗霊夢で、黒白の貴女が霧雨魔理沙ね?」
「やばいぜ。どうしてばれたんだ?」
「流石に無理があったかしら。・・・あんた何者よ?」
「私は、久しぶりに人間というものを見たくなった唯の吸血鬼よ」
そして、
「この幻想郷の、支配者だ」
口元が、夜空に浮かぶ三日月の形を作る。
刹那、まるで大輪の花のような弾幕が展開される。
「・・・っとお!いきなりかよ!!」
「弾幕ごっこがお望みってわけ?」
絶妙なタイミングで弾幕を避ける黒白と紅白。
「戦いにおいて、問答なんていつでも無用でしょう? ここ10年間お姉様すら私に会ってくれなかったから寂しくてね。
一緒に、遊んでくれるかしら」
「お姉様?あんたあのはた迷惑な吸血鬼の妹?」
「遊んでやってもいいが、いくら出す?」
「…最近の若いもんは質問ばかりね。いくら?コイン1個に決まってるでしょう」
「1個じゃ人命も買えないぜ」
笑わせてくれるわ。
「あんた達が、コンティニューできないのさ! ゲェーハーハーハァァァ!!」
◇
フランドール・スカーレットのスペルカードは計10枚。そのどれもが難攻不落。苛々が募る代物だ。
禁忌「クランベリートラップ」
視界の端から襲い掛かる果実のような丸い、まあるい弾幕の嵐。かわしても次が、それをかわしてもまた次の弾幕が襲う。
面倒だ。力技で突破するか?いやいやまだこれは小手調べ。こんな所で使うわけには。
油断すれば抱え落ち。
かわす為には、弾幕と弾幕の間隙を縫うしかない。
禁忌「レーヴァテイン」
剣のような杖のような紅い得物。それが、貴様ら全員逃がさんと言わんばかりに襲い掛かる。
古語に曰く、突けば槍 払えば薙刀 持たば太刀 杖はかくにも 外れざりけり。
ゆえに魔杖。即ち絶対必中、千変万化。だが落ち着こう、見極めれば簡単さ。
かわす為には、フランドールのゼロ距離まで近づくしかない。
禁忌「フォーオブアカインド」
4人に増える吸血鬼。その4人が4人とも、華々しくも毒々しい弾幕を繰り出してくる。
心惹き付けられる弾幕の光景だが真犯人は一人だけ。さあ謎解きだ。
かわす為には、真犯人の彼女1人に心惹き付けられていなければならない。
禁忌「カゴメカゴメ」
鉄格子のような、籠のような弾幕。それが崩れて雪崩のようにおそいかかる。
しかし気付けば己の後方に弾幕が展開し、無残という結果を叩きつけてくる。かわす為には前方ではなく後方注意。
うしろのしょうめん、だあれ?
禁忌「恋の迷路」
目に見える出口は一つだけ。この迷路を突破できるか?そう挑戦状を叩きつけられているかのような弾幕。
恋は盲目。即ち猪突。即ち猛進。一瞬でも動きを止めれば被弾する、迷惑きわまりないこの迷路。
かわす為には、まず冷静になろう。
禁弾「スターボウブレイク」
誰も逃がさないにげられない。空間そのものが敵となったかのような弾幕の矢がフランドールという弓から発射される。
しかし見極めよう。見誤るな。抜け道はちゃんとある。
かわす為には、匙を投げない事。
禁弾「カタディオプトリック」
弾幕をかわすと、その弾幕が壁に反射してこちらに向かう。十重二十重に反射する弾幕。恐るべきは弾と弾の速度差。
避けた筈じゃ?残念だったなトリックだよ。 こちらをあざ笑うかのような弾幕の嵐。
かわす為には、弾幕STGの初心に戻るしかない。
禁弾「過去を刻む時計」
2つの時計は未来と過去を刻む。誰も時間という概念からは逃げられない。過去があるから今がある。今があるから未来がある。
故に恐怖とは過去から、未来からやってくるもの。油断したら息の根を止めに来る。それがこの弾幕の正体だ。
かわす為には、恐怖を我が物とする勇気を見せつけなければならない。
秘弾「そして誰もいなくなるか?」
フランドールが消える。そして一条の弾がこちらに向かってくる。それはいくつも重なり、生者の存在をこの世に許さんとばかりに襲い掛かる。
空間の端から端へ、弾幕が奔る。彼女はユナ・ナンシィ・オーエン。誰も彼もこの世から消えろ。そして、誰もいなくなれ。
かわす為には、開き直って楽しむしかない。 結論:楽しいなぁ!弾幕!
…しかし誰もいない?
いやいや、あなたの真正面に。
QED「495年の波紋」
彼女が生きた495年。彼女が生きた年月。彼女が生きた歴史。生者にとって年月、歴史とは誇りでもあり枷でもある。
それを彼女は叩きつけてくる。これは彼女らしい可憐な弾幕、可憐な波紋。
ここまで来たなら、己の粋を魅せつけて、後は気合でかわすのみ。
激突は終わった。
黒白は己の粋を魅せつけ、紅白は己の気合を魅せつけた。
勝者は二人。敗者は吸血鬼一人だけ。
「…私の負けか」
「そうよ、あんたの負けよ」
「いや、ぶっちゃけ私達2人がかりでやっとだったぜ?」
「魔理沙、余計な事言わない」
そう言って笑い合う紅白と黒白。何がそんなに楽しいのか。
「何がそんなに可笑しいの。私はスペルカードルールに則っていたけれど、どれも必殺の意思をこめていたわ。
あんた達は唯の人間でしょう?下手したら死んでたかもしれないのよ」
「あんたこそ何言ってるの?」
「そうだぜ」
怪訝な表情。だけど心底、
「楽しかったからに決まってるじゃない」
「お前の弾幕、キラキラしてて星みたいだったぜ!すんげえ綺麗だった!」
屈託の無い笑顔。賞賛。
弾幕ごっこがこんなにも楽しいと感じたことは無い。
「個人の持つ美しさをカードとして、弾幕として表現して競う。それがこのスペルカードルールよ」
「斬新な発想だろう?でも奥が深いんだぜ!霊夢が作ったんだ!」
「・・・私じゃないわ。先代が既に原案を作っていたんだもの。作ったのは先代よ」
―――あの撲殺巫女め。
「あの人間・・・いつの間にこんなものを」
つまり私は、ついにあの人間に負けたということか。
「先代を知っているの?」
「…よく知っているわ。何度も戦ったし、何度も壊された。人間にしては、中々イイ奴だったからね」
「じゃあこれは貴女にあてたものだったのかしら」
そう言うと、紅白は一枚の紙を取り出した。
「何よ、それ」
「スペルカードルールの原案よ。ここにちょっとした文言が書いてあってね」
「霊夢、何でそんなもの持ってるんだ?あ!先代の忘れ形見だからか!ツンデ霊夢だぜ!」
「魔理沙、お願いだから余計な事言わないで黙ってて。読むわよ?」
―――あの女が私に?
遺言だろうか。いや、あの人間にかぎってそんな殊勝なことをするわけが無い。
では一体…
「貴女以外の死因でもし私が死んだら、巫女を鍛えてあげて頂戴」
――――――何?
「これだけよ」
「意味不明だぜ」
『じゃあ、貴女以外の死因でもし私が死んだら、私の子供を鍛えてあげて頂戴』
『それはできない相談ね。貴女以外の人間に興味なんて無いわ』
『あら、じゃあ聞くけど貴女私以外に遊び相手いるの?』
『・・・いないわよ』
『独り遊びはつまらないわよ?フランドール』
「・・・どこまでいっても、私は貴女にとって遊び相手だったわけか」
二言目には娘娘子供、馬鹿じゃないの。こんな文言ですら、我が子を想っているなんて。
「どこまで子煩悩なのよあいつ・・・。 でもそうね、『約束』 したものね」
『分かった分かった。奇跡でもおきて本当に貴女が勝手に死んだら、その約束果たしてあげるわよ』
彼女、フランドールはゆっくりと静かに立ち上がる。
記憶の彼方、蜃気楼のように霞むあの人間は、何が起きても負けはしないという覚悟をいつも身に纏っていた。
どんな強敵にも怯まない。 全てを倒す。
かつて先代巫女は鋭い眼光を燃やし、瞬きせずにフランドールを見つめていた。
それはフランドールも同じ。
紅く漲る眼光で、先代巫女を瞬きせずに鋭く見つめていた。
そして現在は、
「奇跡はおきたわけね。…じゃあ仕切り直しよ、当代博麗の巫女」
目の前の博麗の巫女を、鋭く。
「私のモノになりなさい。博麗の巫女としての貴女の権能と私の能力があれば、私達はこの幻想郷を今すぐにでも支配できる」
「いやよ。
あんたなんて、眼中に無いわ」
博麗霊夢はそう言って、鋭い眼光を燃やす。
鋭い眼光達は重なり合う。
「奇遇ね。私も、あんたなんて眼中に無いわ」
―――だから、せいぜいあんたを鍛えてやるとするわ。
この日を境に、フランドール・スカーレットは支配者ではなくなった。博麗の巫女の師として、遊び相手として、これから彼女は奮闘を繰り広げる事となる。
博麗の巫女を己のモノにする、永遠にこないその日まで。
何処かで、イイ奴が微笑んだ気がした。