今回は主人公の個性が明らかに。
チートに見えますが、色々制限はあります。
私の世界は白かった。
生まれてから一度も出たことの無い施設。
毎日の様に連れてこられる同い年くらいの子供達。
そして、いつも私に微笑みかけながら近づいてくる大人達。
その全てが白い。
白々しい。
「今日の君達の生活は私達ヒーローあってのものだ。君達が生まれたのも、君達が生きていられるのも、君達の存在が許されるのも、全てヒーローあってのものだ。いいかい? 君達には義務がある。それはとても尊いものだ」
毎日のように聞かされ、教え込まれる言葉達。
彼らによると、私達は”ヒーロー”と言う存在の為だけに生きているらしい。
”個性”と呼ばれる力。
ある日突如として人間に宿ったそれは世代を跨ぐ事に研究され、第四世代と呼ばれる頃にはいくつかの法則がある事がわかった。
一つ、個性は遺伝する。
一つ、個性は生まれながらに原則として一人一つ。
一つ、親の個性は子に渡る際、極低確率でその両方の性質を持った複合個性が生まれる。
そこまでわかった際、私の知らない外の世界では”個性婚”と呼ばれる強い個性同士を組み合わせる為の結婚が流行ったのだそうだ。
しかし、人間の成長は早いようで遅い。
四つの世代を通してやっとわかったこの法則も、次の段階に進むには個性婚で生まれた子供達がある程度成長するのを待たないといけない。
個性を伸ばすにはいくつかの方法があるが、それを幼い子供にやらせる等とんでもない事だからだそうだ。人は自然に成長する事が望まれる。決して実験の為にそのルールを破ってはならない。
だから、私達が生まれた。
「君達の親はみんなヴィランだ。個性を悪用し、社会を混乱に陥れた犯罪者だ。……幸い、私達が食い止めらたから良いモノを本当ならば君達の存在は許されないものだ」
その中でも強力な個性を持つ者同士の遺伝子を組み合わせ、社会的にどう扱ってもいい実験動物を創りだす。
それが私達だった。
なら、実践しよう。今まで散々教えられてきたじゃないか。どれだけヴィランが醜悪で狡賢くて、厄介な存在だったかを。
「お、おい。何やってんだよ!?」
一通り仲間たちの身体を物色した私に声が掛けられる。
振り向くと信じられないものを見たかのように固まる三人の男たちが居た。彼らは世間一般的に言えばヒーローという職種で、正義の味方をやっているような人達だ。
因みに私はとある事情から現在彼らに命を狙われている。どうしてヒーローに狙われているかって? それは私がヴィランの子供だからだ。超常的な力である個性を悪用して犯罪を犯したヴィランの血を引く私達は彼ら的に言うとそれだけで悪であり、この平和な社会には不要な存在らしい。
ちょっと平和な社会作ったやつ出て来い。
それにしても、いくらなんでも驚きすぎだと思う。
たかだか、他人の
ここに注射器が無いから歯で噛み千切っているだけで、あれば私だって普通にやる。もしかして、彼らは私が死肉を貪っているとでも思ったのだろうか? それならそれでいい。戦いにおいて相手に恐怖心や忌避感を植え付ける事はとても重要だ。それだけで勝率が上がる。
「……ちょっと脅かしてみるか」
そう言って、私は今さっき手に入れたばかりの力を使う。
手のひらに浮かぶは可憐な火の玉。それを二個、三個とお手玉感覚で増やしていく。
またまた信じられないものでも見る様に男たちの視線が火の玉を追うように動く。
中でも一番衝撃を受けているのは私に耐熱用のグローブを噛み千切られ、指から血を流している男だ。
「な、なんで……」
私の手元と自分の手元を見比べ、意を決したように力んでみるが傷口が開いて指から血が流れ出る以外は変化が無い。
……何やってるの? もうそこには無いよ?
本当にわからないのかな?と、首を傾げていると数秒固まった後、ようやく自分の身に何が起こったか理解したように男から血の気がサッと引く。
「お、お前まさか、俺の―――」
「俺の? 違うよ、これは元々私の友達のモノだよ。一体どうやって奪ったか分からなかったけど、今なら分かる。あなたも分かるでしょ?」
そう、私の個性は火の玉を創りだすものじゃない。
ずっと無個性だと言われてきた自分の個性が今さっき分かった。わかって、少しへこむ。これじゃ本当に悪役だって呼ばれてもしょうがない。
「私の個性は――」
しょんぼりと下を向きながら不要になった火の玉を足元に落とし、新たに左手に電気を右手に冷気を発生させる。
基本的に個性は一人一つ、例外として複数の性質を持った複合個性と呼ばれるものがあるがそれは両親が持つ個性を半分ずつ遺伝する事で生まれるものだ。
でも、私の個性は空っぽだった。最初に器だけがあって肝心の中身が無い。だから、力を発揮しようにも今までは出来なかった。でも、今私はその空っぽの器に中身を注ぐ方法を得た。
一人が、みんなが、私なんかの為に手を差し伸べてくれた。いいや、違う。一人一人がみんなの為に力を貸し合い、助け合っていた。でも、その結果がこれだ。
器に入れた中身の中に『予測』という個性があった。これによれば、私をあの部屋から連れ出すために掛かった時間を脱出に費やせば恐らくみんな死なずに済んだであろうという結果が導き出された。これを元の持ち主が知らない筈がない。しかし、彼もしくは彼女はこうなる事を知っていながら私を助けようとしてくれたのだ。
彼らの行いが、
彼らが命懸けで救ってくれたこの命の為に、彼らみんなの力を使って私は生き残る。
そう、私の行為は、
「
「お、『オール・フォー・ワン』?」
「ッ、『ブースト』!!」
弾かれたように耐熱グローブの右側の男が動き出す。
身体強化の一種だろう。その動きはとても人間のモノとは思えないスピードで一直線に私に対して向かってくる。
……いいな、あの個性。
基本的に発育の遅い私には喉から手が出るほど欲しい個性だ。これでもどんな個性が欲しいか考えたことは有る。その中でもこういうタイプは五指に入るだろう。
でも、同時にその対処法もよくわかっている。
「…………『重圧』」
「っが!?」
勢いよく飛び出した男は直後に私の手の平から洩れた重力によってそのまま地面に激突する。
「クソ、何してる! 早く動け! こいつは逃がしたら駄目だ。危険すぎる!!」
「あ、ああ」
「俺の個性ッ!!」
地面にめり込みつつある『ブースト(仮)』の声を聴き、耐熱グローブともう一人が動き出す。
個性が無いとは言え、普通に接近戦を挑まれたら私じゃ大人には勝てない。いまだ個性を出していないもう一人は言わずもがな。
「そういえば、複合個性って言ってたっけ。―――これか」
ポトリ、と先程地面に落としたまま地面を彷徨い続けている火の玉に拳を絞る様に濁った液体を垂らす。
それが何なのか理解したのだろう。元々のその個性の持ち主である耐熱グローブの顔が面白いほど歪む。
「ば、馬鹿!?」
「っあ、失敗した」
次の瞬間、狭い室内を覆いつくすほどの大爆発が巻き起こった。
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