コードギアスlostcolors 優しさの色彩 作:オムロン
活動報告でアンケートを行っているので良かったらお答えください
「どう?動かせそう?」
「多分……しかしこれは凄いですね……」
ロイドの副官、セシル・クルーミーの問いにライはマニュアルを読みながらそう答えた
「当たり前だよ~まだ世界で一騎だけの第七世代型KMFだからね♪」
ランスロットの開発者ロイド・アスプルンドは当然のように自慢してきたが正直納得する物だった
今まで開発されたKMFとはコンセプトからにして違いすぎていた。
従来のコンセプトはより効率的な運用を目的として低コスト、操縦性、安全性を優先されていたがこれはまったく逆のコンセプトだ。
今ある技術で造れる物の限界を求めたような機体、サクラダイトを大量に使い機動力と反応速度を飛躍的に強化し、実験的に造られた武装や以前のKMFでは出力的に使用が出来ない武装を運用する事が大前提に設計されている。
そのために高コスト、高出力、機体自体が異常な迄にパイロットへ負荷をかけるようになり、必然的に乗れるものが一握りしかいない状態になってしまったようだ
こんなものを造るロイドの神経が知れない
技術的には重要な物だとは分かるが、運用的には実用性がない代物だ。
とても現状は量産化は見込めるような物ではないが、ロイドは恐らくそんな事を考えてはいないのだろう。
「無理だったらすぐに帰ってきてね。僕のランスロットが傷付いたら大変だから」
「ロイドさん!」
出撃の準備をしているライの身よりKMFを優先するロイドの態度に一瞬違和感を感じたが、ライが言うよりも先にセシルがロイドを叱責した。
「なに?僕、何か間違った事言った?」
「教えてあげましょうか?」
「いえ、遠慮します」
ロイドの表情から本気で遠慮しているのがうかがえる。
どうやらプライベートなヒエラルキーならセシルのほうが上ということが分かった。
セシルはライにモニタリングされているのを思いだし、咳払いをし、ランスロットのチェックを再開した
そしてついにその時が来た
ライは覚悟を決め操縦管を握りしめた
セシルからついにその言葉が発せられた
「ランスロット発進!」
「行きます!!」
ライはランスロットを全速力で走らせた。
先程のサザーランドの時よりも強いGの負荷を感じた。
マニュアルで理解していてもやはり実際乗ってみて改めてランスロットの異常さを目の当たりにした。
KMFとは思えないほどのスピードを出し、ランスロットはゲット―の道を走り抜けていく
ライの操作に即座に反応し動作をする
サザーランドが玩具に思えるほどに性能に格差を感じた。
ライは目的のポイントへ急いだ
「隊長!ブリタニアが例のKMFを出してきました!」
周辺を警戒していた無頼から連絡を受けた
「河口湖のヤツか!!丁度いい!向かってきた所を返り討ちにしてやる!!」
彼の乗るリニアカノン『電光改』は目的地を爆撃するために特定のポイントに向かっていた。
そしてすぐに爆撃するために砲身の角度を変えることが出来ない
つまり自ら攻撃をすることが出来ない
だから周りの護衛をしている無頼に攻撃の指示を出した
この道は一方通行だ。だから自分の前に無頼を並べ並列射撃をすることにした
部隊を並べた時、ついに対象のKMFが見えてきた
それを確認し、無頼は一斉射撃を始めた
無数の弾丸がたった一体のKMFに向かい飛んでいく
あらゆる場所に弾丸があたり破壊していく
ビルの壁、道路のアスファルト、街路樹、あらゆるものを破壊し、あたり一面を砂煙や爆煙で覆い隠した。
「殺ったか?」
「いえ!此方に向かってきます!」
まさか外したのか
頭の中にそんな考えが浮かんだ
「もう一度撃て!」
先程より多くの弾丸が飛んでいく
またあたりを爆煙などが覆い隠す
普通ならただ煙が晴れるだけだ。
ところが今回は煙が晴れる前に白色の物体が煙を突き破ってきた
「まだ生きてます!!」
「なんだと!?」
彼には理解できなかった
戦場に今の状況を理解できる人間はいなかった
だが、戦場から外れたところで今の状況を見ている人間の中には理解できる人間達がいた
「ロイドさん……これは……」
「うん。凄いねカレ。スザク君とは違う意味で異常だね」
状況を理解できる人間でもこの状況は理解を超えている物だった
「一秒間に13回もコマンドを入力しています。こんなこと普通はあり得ませんよ!!」
ロイドとセシルは目の前の情報に釘付けになった
枢木スザクの操縦はKMFが人間の形をしている一番のメリットを生かした戦い方。
武術や剣術、つまり操縦者本人の技量を生かした戦い方をしている
スザクの戦い方は相手を力でねじ伏せる戦い方
スザクのランスロットは一言で言えば『剛』のランスロット
だが、ライの操縦は違っていた
そういう技術的な戦い方に機械的な精密な操作、ライの戦い方はまさにKMF同士の戦闘では理論上の理想的な戦い方をしていた
そう。まさに理想的
つまり普通の人間では到底たどり着く事が出来ないレベルの技術
ライの戦い方は時には力を、時には技を使う戦い方
ライのランスロットは『柔』のランスロットだった
「……弾丸を全部避けているね。それもギリギリで」
弾丸が飛び交うなかにいるはずのランスロットは弾丸に当たることなく敵に向かっていく
ランスロットは正に縦横無尽に動いていた
それはスザクが操るときでも同じだか、ライの操縦はランスロットを乗りこなすという概念で言えばロイドが求めている物そのものだった
ロイドはライに興味津々になった
「彼は本当に人間なのかな?」
「ロイドさん!失礼ですよ!」
「でもさ。彼は一体どこでこんな技術を身に付けたんだろうね。どう見ても普通じゃあない。ラウンズクラスの技術だよコレは」
「そんな人間が無名で軍人ではないなんておかしな話だよね」
ラウンズはブリタニア最強の騎士の集まりだ
それと同格の技術を取得している学生……
「欲しいなぁ~カレ……」
「ロイドさん……」
セシルはロイドの悪い癖が出てきた事に気が付いたが今は彼の戦闘のアシストに専念することにした
「ライ君。敵の両翼の部隊がそちらに向かってきているわ」
「わかりました。例のポイントに誘導します。」
ライはランスロットの速度を落とし、出来るだけその場に残ることにした。
弾丸の回避をやめ、ブレイズルミナスを展開し弾丸を受け止め始めた
「隊長!敵が足を止めました!」
「よし!両翼の部隊が着き次第、一斉射撃で蜂の巣にしてやる!」
ライの策略に気が付かず敵は部隊を集結させた
何も知らない敵は指揮官の指示に従いランスロットの両脇に集まりだした
それがライが望んでいる状況とも知らず、敵はあっさりと作戦ポイントに集結した
「さあ!蜂の巣になれ!」
敵の指揮官が発砲命令を出した正にその時だった
「今です!ダールトンさん!」
「作戦開始!」
ダールトンの合図と共にゲット―全体に大きな地響きが響いた
そしてランスロットを倒すために集められた無頼達が突如姿を消した
足元に出来た溝に落ちていった
「応援の部隊が全滅しました!敵は地下鉄の基礎を破壊し地盤ごと沈めた模様です!」
「なんだと!?直ぐに周りの部隊を戻せ!」
「それが戦闘が広範囲でおこなわれていて直ぐに戻れる部隊がありません!それに今の爆発で我々の両脇に出来た大きな溝のせい合流が出来ません!」
両脇に出来た溝は完全にリニアカノンとその防衛にあっている部隊を孤立させていた
リニアカノン本体が道を塞いでいるため部隊を後退させることも出来ない
応援を呼んでも溝のせいでこちらに簡単には合流できない
ライの思惑通り敵戦力は混乱状態になった
「早く隊長の元に戻るぞ!この道を通れば……」
急遽迂回を余儀なくされた部隊は地図には乗っていない道を通り合流を急いだがその考えが裏目に出た
「な!?この迂回路は地図には載っていないはずなのに!?」
「情報通りにだな」
彼らの行く手をブリタニアのKMFが塞いだ
彼らが通っている道はゲットーに住む人間達が生活をするために無理やり造った道いわゆる『生活道路』だ
本来そこにはない道を造ったため道端がトラックがギリギリ通れる位しかない。
そこにKMF部隊が通行するには部隊を一列にするしかない
だが、今その道の出入り口をブリタニアのKMFが塞いでいる
このあと自分達を襲う悲劇は想像に固くない
彼らの意思はブリタニアのKMFが放つ弾丸に全て奪われた
「何故だ…何故……」
理解できなかった……
ここはゲットー……自分達のテリトリー……
地の利は此方にあるはずなのに何故自分達が追い込まれているんだ……
しかも今敵が戦闘を行っている場所はブリタニアが持っているデータには絶対に載っている筈などない……
なのにブリタニアは的確に此方の部隊を殲滅している
「隊長!護衛の部隊が……」
その声を聞いて現実に戻った
だが、戻った現実の方が夢のようだった
目の前でたった一機のKMFが此方の部隊十数機のKMFをまるで赤子の手を捻るように潰していく
ハーケンを突き刺し、突き刺した機体を他の機体にぶつけ、手刀で両断する
一機、また一機と撃墜されていく
「何故だ!?こんな筈では……」
本当なら今頃目標だった政庁を爆撃出来たはずなのに今の現状は全く真逆の状況だ
政庁を爆撃するどころか此方の部隊はほぼ壊滅
自分達を護衛する部隊はたった一機のKMFに全滅させられた
最早手段を選んでいる場合ではない
「……砲撃だ」
「は!?ですが……」
「砲撃だ!!この際、租界に当たれば何処でもいい!!」
隊長の指示に従い隊員は発射の準備を始める
機体にあるエネルギーを全て発射する為に砲身へ集める
その反応をライが乗るランスロットが見逃さなかった
「砲身に熱源反応……しまった!?」
ライは直ぐ様リニアカノンに向かって突撃した
だが、すでに発射準備を済ませている以上突撃しても意味がない。
どう考えても発射を止めることなど出来ない
「間に合わない……なら!!」
ライはランスロットの腕部にあるスラッシュ・ハーケンを地面に刺し、その反動でランスロット本体を宙へ浮かべ、リニアカノンの弾道上にランスロットをおいた。
「アイツが弾道上に!!」
「なら!アイツもろとも爆撃してやれ!!」
どのみちもう此方に勝ち目は無い。
ならせめてこの先邪魔になるであろうKMFを道連れにする
その言葉を聞き、隊員はリニアカノンの砲弾を発射した。
弾丸は以前のリニアカノンに搭載されていた散弾ではなく、着弾した時に威力を発揮する爆撃用の弾丸を使用した
いくら最新型のランスロットであったとしても直撃すれば跡形も無くなるだろう
だが今よけたら租界にいる罪もない人達が傷つく
絶体絶命の状況にライは覚悟し、賭けにでる事にした
コックピットの両脇に装備した剣、MVSに手を伸ばしそれを引き抜いた。
剣の刃は独特の振動音を発し、その身を赤く輝かせた
そしてランスロットの全機能を反応速度に集中させた
「これなら……これでどうだ!!」
ライは反応速度が最大になったランスロットて敵の弾丸を見据え、そしてMVSで両断してみせた
両断させた弾丸はランスロットの後方で爆散し、跡形も無くなる
「そんな……砲弾を切り裂くなど……」
普通あの状況で弾丸を切り落とすなどやろうとは思わない
思っていても成功するはずなんてなかった……
だが、目の前で成功させたKMFを見てその機体とパイロットに恐怖を抱いた
(うまくいった……あとはあの砲身を!)
ライはハーケンをリニアカノン上部に突き刺し、ランスロットを引き寄せた
敵の上に乗るとライは装備していたMVSでリニアカノンの砲身を切り落とした。
砲身はまるでゼリーのように簡単に斬れる……
MVSはライの想像した以上の切れ味を見せた
「取り付かれました……砲身も……切り落とされました……」
最早成す術はない……
たった1つを残して……
「投降してください!!貴方たちに戦う力は無いはずです!!」
敵のKMFがオープンチャンネルで投降を求めてきた
その言葉遣いと声には何処か幼さが残っていた
「あまいな……」
自分達より年下の人間に負け、さらには情けをかけられる
最早大義の無い行動だが生き恥をさらすよりはましだ
「日本……」
「まさか!?」
返ってきた言葉は返事としては最悪の物だ……
その言葉が意味する事を瞬時に理解し行動にうつした
近くのビルにハーケンを突き刺し、すぐにランスロットをビルに引き寄せた
「万歳!!」
リニアカノンは内部から爆発した
彼らは自爆した
爆発し散弾のように飛んでくる装甲をランスロットのブレイズルミナスで防ぎながらライは爆発したリニアカノンの残骸を見ていた
「そんな……自爆なんて……」
彼らは生きるより死ぬことを選んだ……
その行動になんの意味があるのか分からなかった……
「一体それの何処に大義があるんだ!!」
今さら死んだ人間に問い掛けても意味がないがライは問いかけずにはいられなかった……
生きていれば必ずやり直せるのに……
彼らは生きることから逃げた……
ライは理解できなかった……
「聞こえるか。貴様は下がれ!残りは我々に任せろ!」
「……わかりました」
通信機から聞こえたダールトンの声にライは現状を思い出した
まだ戦闘は続いているのだ
邪魔にならないようにライはダールトンの指示に従う事にした。
まだ燃えているリニアカノンを見てライはエリア11の……日本の抱える闇を垣間見た様に思えた
「良くやった!貴公の協力で被害は最小限で押さえられた!」
「……ありがとうございます」
誉められているのは分かるが素直に喜べない
目の前で死んだ人間が居ると思うと……
その内心を読み取ったダールトンは今は話をするときではないと考えた
「念のために病院に行き、精密検査を受けろ。特派。丁重に扱え」
ライは何も言わずにそこを後にした
ライが特派の人間と一緒に出ていくのを確認し、ダールトンはユーフェミアの元へ向かった
皇族専用の部屋のソファーにユーフェミアは座っていた
何処か儚い顔をして外を眺めていた
誰の事を考えているのか一目瞭然だった
ダールトンはライがが気になりユーフェミアに探りを入れてみる事にした。
「ユーフェミア様。良い騎士を見つけられましたな。一体何処の家の者ですか彼は」
ライの話題が出てユーフェミアは嬉しそうにダールトンの方に視線を向けたが直ぐにうつ向いてしまった
「それが、彼は記憶を無くしているようで……捜索願いが出ていない所を見るとエリア11の出身ではないか……天涯孤独かもしれませんね……」
ユーフェミアはライの居場所を知らない
今回も偶然彼に出会しただけだ
彼に会いたくても会えない……
そう思うと胸が苦しくなった……
分かっているのは彼がアッシュフォード学園の学生という事だけだった
「では、ユーフェミア様こういうのはいかがでしょう……」
ダールトンはユーフェミアに少し要り知恵をすることにした。
ユーフェミアのためにも
そして自分のためにも
ライは手放すには惜しい人材だ
彼は近い将来必ず良い騎士になるとダールトンは自信を持っていた。
「それは良いアイディアですね!直ぐに手配しましょう!」
ダールトンのアイディアを直ぐに実行することに決めた
そうすればライと一緒にいる事ができ、彼の役にもたてる。
ユーフェミアにとっては願ってもいない状況だ
「姫様には私から伝えておきましょう」
ユーフェミアの返事を聞き、ダールトンはユーフェミアの想いに確信を持った
ダールトンはライがやはりユーフェミアにとって必要だと考え、協力することにした。
知力と武力、文武両道の騎士……
ライは正に姫を守護する者に相応しい人間だった
(彼ならユーフェミア様を支える事が出来る……問題はコーネリア様だけだな……)
「ライ!!大丈夫!?」
病院について真っ先に部屋に飛び込んだミレイはそこにいるライの様子に絶句した……
頭に何重にも巻かれた包帯にライが負った傷が軽いものではないのは簡単に分かった
そのミレイを見てライは声をかけた
「大丈夫ですよ。単なる精密検査ですから……頭の傷は……まぁ色々ありまして……」
「色々じゃあないでしょ!ゲットーに一人で行ってテロに巻き込まれて!!挙げ句のはてにKMFに乗っただなんて!!」
かつての自分なら何で彼女がそんなにも怒っているのか分からなかっただろうが、ユーフェミアに出逢い、彼女のお陰で何でミレイが怒っているのか分かった
彼女は……自分を心配してくれている
「ミレイさん……ごめんなさい。それと……ありがとう」
ライは素直に自分の気持ちを伝えた
今の自分に出来る精一杯の誠意だった
その誠意はミレイに伝わったようだ
ミレイはただ一言「もう……心配させないでよ……」その言葉が意味する事をライは理解出来た
もうミレイは怒っていなかった
「……疲れた」
精密検査で異常なしと診断され病院から出たときには回りはもう闇に包まれていた
ミレイがルルーシュに事情を説明しておいてくれたお陰でクラブハウスに帰ってくると明かりはついていなかった
ナナリーに怪我の事を知られるのは心苦しいものがあったため皆が眠りについていてくれて助かった
自分の部屋に着くとライは服を脱ぐのも忘れベッドに倒れこんだ。
疲労感がライの体を支配し、睡魔を誘った……
ライは泥のように深い眠りについていった……
今回の部分はユフィのSSを書くのに一番苦労したところです。
最初はブルームーン編のifとして書こうと思いましたが、あれはユフィにギアスを使って好意を抱いて貰っていたのでなんか違うと感じ、カレン編の戦闘をアレンジして書くことにしました。
皆さんにこれからも楽しんで頂けるように頑張りたいと思います