バカとクウガと未確認   作:オファニム

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お待たせしました。
沢渡 桜子さんが登場しますが、少し性格に違和感を感じるかも知れません。
漫画版クウガの桜子さんと原作桜子さんを混ぜ混ぜしたような感じです。
仕様なので深くは突っ込まないで下さい。

それでは、本編をどうぞ。


桜子

 PM 5:46

 城南大学

 

「──初めまして、私が沢渡 桜子です。よろしくお願いします」

 

「初めまして。僕が4号こと吉井 明久です。こちらこそよろしくお願いします」

 

 学校も終わり、放課後。

 明久は一条に送ってもらい、城南大学まで来ていた。

 

 ソファーに腰掛ける明久の対面に座るのは、城南大学の学生で考古学を学んでいる沢渡 桜子。

 ぜひとも4号に会いたいという彼女の要望に答え、明久はここにいる。

 

 だが、ただ単に会うのではない。

 彼女は考古学を学ぶ者。

 彼女が今研究している古代文明に使われていた文字と、4号の身体に刻まれていた紋様……これらが似ていると一条が気付いた為、同じ文明文字なのか確かめる為に会っているのだ。

 

「いきなりで悪いんだけど、これを見て欲しいの。今日貴方に来てもらったのは、この文字についてに他ならないわ」

 

 早速、桜子は文明文字の資料を取り出し、明久と一条に提示する。

 

 出されたコピー用紙に塗られたインクは、明久や一条が知る限りどの言語にも当てはまらない、未知の文字を描いていた。

 

 だが、2人はこの文字に既視感を覚えている。

 そう、やはり4号──クウガの身体に刻まれているものと似ている……そう感じたのだ。

 

「うーん……確かに一条さんの言う通り、4号の身体の模様と似てますね」

 

「ああ、やはり気のせいではなかった」

 

「本当っ!?」

 

「うわっ」

 

 ダンッ、と机を両の手で平打ちし、勢い良く身体を乗り出させる桜子。

 その顔は、伝説のお宝を見つけた時のように輝いていた。

 

「ほ、本当に気のせいじゃないのよね? 間違いないのよね!?」

 

「たぶんそうです……って、ちょ、落ち着いて下さい近い近い!」

 

 思わずといった様子で明久に詰め寄る桜子。

 その顔はやはり輝いていた。

 

 彼女は、興奮冷めやらぬとばかりに言葉を次々と飛ばす。

 

「これが落ち着いていられますか! 古代文明の生きた証が目の前にいるのかも知れないのよ!? 考古学を学ぶ者として、これ以上幸せなことはないわ!」

 

「え、えぇ……? ……とりあえず釘を刺しておきますけど、たぶん同じ文字って程度で──」

 

 明久がそこまで言った所で、クワッと目を見開いて言葉をさえぎり、言う。

 

「たぶん!? たぶんじゃ分からないわ! そうね……なら、今から調べるわ!」

 

「今から、ですか?」

 

「ええ──」

 

 そして、明久の肩をがっしり掴み──

 

「変身してちょうだい!」

 

「えぇ……」

 

 突飛なことを言い出した。

 

 明久は初め、桜子に対して大人しそうな人だな、という印象を持っていたのだが……どうやらそんなことは無さそうだと、思い直す。

 

 そして、初対面の人の前で変身することに抵抗があった明久だが、結局彼女の熱意に根負けし、他の人に見られないようカーテンや入口のドアの施錠を徹底してから変身することにした。

 

 

 

「じゃあ、いきますよ」

 

「ええ!」

 

「…………」

 

 キラキラと瞳を輝かせながら食い入るように見つめてくる桜子に、明久はやりにくそうにしながら構えを取った。

 

 しかしそんなやりにくさなど、深呼吸と集中によって心から追いやる。

 すると、腹部にベルトが出現した。

 

 集中が最高潮にまで尖らせ、目を見開きワードを口にする。

 

「──変身!」

 

 そのワードを口にした瞬間、ベルトの宝玉が赤く光り始める。

 瞬く間に身体が戦闘用のものに作り替えられ、その姿は人ならざる者へと変化した。

 

「これが、4号……! すごい……」

 

「えっと……僕はどうすれば良いですか?」

 

「あっ、そのままで良いわ。資料用に写真撮らせてもらえるかしら?」

 

「写真ですか? ……まぁ、僕だと分からないようにだけしてもらえれば、構わないですけど……」

 

「ええ、分かったわ。それじゃあ撮るわね」

 

 カシャリ、カシャリと様々な角度から写真を撮られる4号──及び、クウガ。

 

 ひとしきり写真を撮られた後は、もう元に戻って良いと告げられたので直ぐに変身を解いた。

 

 元の人の姿に戻った明久と成り行きを見守っていた一条に、桜子は席を奨め直して追加の資料を取り出した。

 

 その資料にもやはり、古代文字が写されている。

 ただ先ほど出された資料と違う所は、一つ一つの文字に日本語が振ってあることか。

 

 全部で2行に分けられた古代文字を見て、明久は桜子に質問する。

 

「これは?」

 

「私がこの古代文字を解読した物よ。一つ一つ説明していくわね」

 

 桜子は一番上の行の古代文字から指を差し、日本語が振られたそれを人指し指でなぞりながら音読していく。

 

「まずはこれ。──『心清く体健やかなる者にこれを身に付けよ。さらば戦士クウガとならん。ひとたび身に付ければ、永遠に汝と共にありてその力となるべし』」

 

「戦士……クウガ」

 

 明久は反芻するようにそう呟く。

 『クウガ』──それは、未確認生命体と交戦した際に知った、戦士としての自分の名だ。

 

 その名が桜子の読み解いた古代文字に出たということは、『クウガ』は恐らく彼女の研究している古代文明の戦士に違いないだろう。

 

 思い詰めた表情の明久には気付かず、桜子は説明……というより、独白をこぼす。

 

「この『戦士クウガ』が何なのか分からないのよね。恐らく吉井君が変身した4号の姿を指すとは思うのだけれど……まだ確証はないわ。それに、心清く体健やかなる者にこれを身に付けよ──『これ』って一体何なのかしら?」

 

 ひとりで考え込み始めた桜子。

 そんな彼女に明久は、

 

「その答えを知っているかも知れません」

 

 と、そう声を掛けた。

 

 当然、桜子は驚いて明久を見る。

 

「本当なの?」

 

「ええ。まず、『戦士クウガ』が誰を指すのか……それは、やっぱり僕──4号のことだと思います」

 

「その根拠は?」

 

 そう聞かれて、未確認との戦闘中のことを思い浮かべる。

 

「僕が未確認生命体第3号と戦った時です。3号は、確かに僕──4号を指差して、『クウガ』と言ったんです」

 

「3号が……ということは、未確認生命体達も同じ文明に生きていたということ──彼らが『グロンギ』かしら?」

 

 何やら別の方向に話が反れそうなので、明久は続きを切り出す。

 

「続けます。──もう1つの根拠は、『これ』を指す物……このベルトの存在です」

 

 そう言って明久は、ベルトを出現させて見せた。

 ベルトをコンコンと軽く叩きつつ、話を続ける。

 

「このベルトを手に入れて装着したら、僕は『クウガ』に変身しました。そして変身する時はこのベルトを出現させる必要があります。つまり、ベルトこそが力の源だと思います」

 

 桜子は口元に手をやり、「なるほど……」とこぼす。

 そして結論を出した。

 

「……うん。状況から見て4号が『戦士クウガ』で間違いなさそうね」

 

 うんうんと頷きながら、桜子はそう結論付ける。

 そして「これからは4号=戦士クウガで話を進めるわね」と言い、再度資料を指差し次の説明に移ろうとする。

 

 移ろうとして、はたと指を止めた。

 

「そういえば、そのベルトはどうやって手に入れたの?」

 

 そう問われて、明久はベルトを手に入れた経緯を説明する。

 謎の女性に手渡された、と言うと桜子は難しい顔をした。

 

「……その女の人、凄まじく怪しいわね」

 

「ですよねー」

 

「とりあえず、その女の人には気を付けた方が良いわね」

 

「そうします」

 

 そこでその話題は一旦終了し、再度説明の続きに入る。

 残る下の行を指差し、なぞっていく。

 

「あともう1つ解読した物があるわ。──『邪悪なる者あらば、希望の霊石を身に付け、炎の如く邪悪を打ち倒す戦士あり』。これは吉井君が変身した姿を見て、何となく分かったわ」

 

「え、そうなんですか?」

 

 今度は明久が驚く番である。

 彼女は一体何を理解したのかと、明久は言葉の続きが気になった。

 

「希望の霊石は恐らくベルトのこと。そして炎……炎と言えば赤を連想するわ。そして赤い姿をした戦士と言えば──」

 

「──クウガ」

 

「そうね。私が解読した文は2つ共『戦士クウガ』に関するものだったようね。これが分かっただけでも大きな収穫だわ」

 

 と、そこで桜子は腕を頭上に上げて伸びをする。

 そして目頭を揉んで目の閉じ開きを繰り返した。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、ごめんなさい。ついみっともない所を……。大丈夫よ、私徹夜が趣味でね」

 

「徹夜が趣味……?」

 

 何とも変な趣味だと明久は思うが、言葉には出さず心の内で留めておいた。

 ついでに追及も止めておく。

 

「え、ええと。大丈夫なら良いです。他には何か分かってることはないですか?」

 

「細々としたことは多少分かってるけど、まだまとめてないのよ。分かりやすくまとめてから、また教えるわね」

 

「そうですか……分かりました」

 

 そう言って明久はカーテンの掛かった窓に顔を向ける。

 カーテンの隙間から覗く空は、鮮やかな朱色から深い蒼へと変わる途中であった。

 

「もう良い時間ね。そろそろ解散にしましょうか」

 

「そうですね。今日はありがとうございました」

 

「いえいえ、私の方こそありがとうございました。無理を言って会って貰って、ごめんなさいね」

 

「僕は僕のことを知りたかったんです、無理ではありませんよ。むしろ、色々知れて良かったです。これからもよろしくお願いしますね」

 

「こちらこそ」

 

 互いに何度も礼を言い、部屋を後にする。

 

 明久はその後、一条に送って貰って自宅へと帰宅した。

 

 

 

△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 数日前

 都内某廃屋

 

 そこには、女と数人の男女がいた。

 彼女らは総じて、ウェディングドレスや包帯だらけのミイラ、ひと昔前のデスメタルなトゲ付き服といった奇抜な格好をしている。

 

 女は額に薔薇のタトゥーを入れており、周囲の男女達と何やら話している。

 その言語は、日本語ではない不気味な言葉であった。

 

『【ズ】の男が2人、勝手に【ゲゲル】を開始したらしい』

 

 その女の通達に、周囲の男女達は様々な反応を返した。

 驚く者、頭を抱える者、怒る者。

 

 その内の1人が、女に問いを投げ掛ける。

 

『バルバ、そいつらはどうなったんだ。まさか【ゲゲル】を成功させたのか?』

 

 バルバと呼ばれた女は、その問いを予想していたのかすぐに答えた。

 

『失敗した。【クウガ】に殺されてな』

 

『なっ!? 【クウガ】だとっ!?』

 

 周囲の男女達は誰ひとり余さずに驚愕した。

 そして、誰ひとり余さず、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。

 

『面白い! この俺が【クウガ】を倒してやる!』

 

『いや、【クウガ】を倒すのは私だ!』

 

『焦るな。その内順番が来る』

 

『…………』

 

 バルバはざわめき立つ男女を一言で黙らせる。

 そして彼らを1つ見据えてから、もう1つの連絡事項を口にした。

 

『ダグバからのお達しだ。【ベ】の【ゲゲル】を繰り越し、【ズ】の【ゲゲル】から開始せよ……とな』

 

『はぁ!?』

 

 バルバの通達に、一部の者達から悲鳴のような声が上がる。

 その者達は、バルバに食って掛かった。

 

『おい! どういうことだ!』

 

 だがバルバは、必死の形相で迫る彼らに表情ひとつ変えず、淡々と答える。

 

『言っただろう、ダグバからのお達しだと。大方、長くは待てないのだろうよ』

 

 バルバの返しに食って掛かった者達は『そんな……』とへたり込んだ。

 バルバはそんな彼らに目もくれず、ひとりの女を指差して宣言する。

 

『これより5日後、準備が済み次第【ゲゲル】を開始する。最初の【ムセギジャジャ】は──ズ・メビオ・ダ』

 

『私か!』

 

 ズ・メビオ・ダと呼ばれた女は歓喜し、狂喜に笑った。

 

 そして──人ならざる姿へと、変化した。

 鋭い爪、発達した脚部。

 そしてその黒い皮膚に覆われた、どこかヒョウを連想させる顔面には、やはり好戦的な笑みが浮かんでいた。

 

『待っていろ……【リント】共!!』

 

 5日後、事態は動き始める。

 




最近、一条さんがタクシーと化しつつある気がします。
それもトライチェイサーを出すまでや……!

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