元文科省職員が学園艦廃艦計画阻止のために奔走する話 作:単細胞
「よくこんな申請が通りましたね・・・」
目の前の光景を見てアッサムが呟いた。
「こんな言葉を知ってる?大胆に挑戦すれば世界は必ず譲歩する。確かに彼から連絡があったときは正直驚きましたわ。でもこれなら大洗を救うことができるかもしれないわね」
横にいたダージリンが答える。
港に集められていたのは黒森峰と聖グロ、プラウダの戦車であった。
ティーガーⅠとⅡ、パンター、チャーチル、クルセイダー、マチルダ、T-34、IS-2、KV2は船から降ろされ、これから連盟の輸送トレーラーで会場へと運ばれるところだ。
俺が考えた策、それは各高校の生徒を大洗に短期転校させ、戦車と共に試合に参戦させることであった。
必要な申請は知り合いを通して直接文科省へ、戦車に関しては連盟の方で何とかなる。辻さんの方に情報を一切明かさずに手を回したのだ。
「ホント!貴方って面白いことを思いつくのね!」
サンダースの隊長、ケイは俺に向かってサムズアップした。
「いろいろと考えた結果なんだ。まぁこれも大洗の隊長の人柄ってのもあるだろうがな」
俺の提案に各高校の隊長は皆快く引き受けてくれた。彼女と戦った相手は単なる相手校の隊長として以上の関係を持つ。ほかの高校ではこうはいかないだろう。
「このカチューシャ様が来たからには負けは有り得ないわ!ただ・・・この制服は何とかならなかったの?」
カチューシャはぶかぶかの制服に文句を言いつつもやる気は満々だ。
「すまん、一番小さいサイズがこれしかなかったんだ」
一応詫びを入れた。
実はプラウダ高校まで制服を届けに行ったとき、ノンナとクラーラにサイズが合わないことは話していた。
すぐに合うように仕立て直すと提案したとき、彼女たちはロシア語で何か話合った後
「これで構いません、むしろこちらの方がありがたいです」
となぜか感謝されてしまった。
「悪いがが時間がない、早速だが現地の方に向かってくれ」
選手たちは急いでバスに乗り込んだ。俺もシルビアに乗り込んで試合会場へと向かった。
現地に到着後、急いで戦車を下し、合流した知波単学園、アンツィオ高校、継続高校の隊長に向かう場所を告げた。
「相手を山岳地帯におびき寄せて分散させて、各個撃破を狙えば勝機が見える筈・・・でも相手は経験も実力も上、もしかしたら今回ばかりは・・・」
大洗女子学園、戦車道チームの隊長、西住みほは重い足取りで前に出た。
大学選抜チームを前にみほは逃げたしたいと思った。しかし会長が必死になって取り付けてきた試合、受ける以外の道はなかった。
隊長が揃ったのを見て蝶野が開会を宣言する。
「これより、大洗女子学園対大学選抜チームの試合を始めます。一同―――」
「待った―!」
背後から声が響いた。
みほはその声を聴いて驚いたのと同時に心の底から安心した。
結果この様なサプライズになってしまった訳だが会場は大いに盛り上がった。観客だって30対8の一方的な殲滅戦なんて見たくなかっただろう。
「遅くなりました」
俺は戦車道連盟の来賓席に座った。横には理事長、そして学園艦教育局の辻さんが居た。
辻さんと目が合った。
「どうも・・・」
辻さんは何も言わなかった。当たり前だ、8対30を30対30にしたのだ。しかも学園艦教育局を通さずに・・・
大画面液晶には戦車がどんどん追加されていく。
黒森峰女学院、聖グロリアーナ女学院、サンダース大学付属高校、プラウダ高校、そしてアンツィオ高校、継続高校まで、22両の戦車が揃った。
戦力的に互角になったとは決して言えない、もっとやろうと思えば様々な策があっただろうが今はこれが最善だったと思っている。
色々あったがやっとここまで来た。
全員が揃ったことを確認した蝶野が改めて開会を宣言する。
「それでは、これより大洗女子学園対大学選抜チームの試合を始めます。一同、礼!」
「よろしくお願いします!」
彼女達ならやってくれると信じている。