――――凌統
「――――――――――――私達と…私達と一緒に旅をしませんか?」
イキナリ初対面の女の子に受け取り方を間違えたら告白されている様なシチュエーションなう。そんな状況の凌統です。
な、何が起きたかわからねぇって? 大丈夫だ俺にも何がなんだかさっぱりな状況なんだから。理解も納得もするわけねぇ状況だ。
それに、後ろの二人を見てみんしゃいな。突然の劉備さんの言葉に眼をまん丸にしているよ。驚いているって事が他人とコミュニケーションを取るのが苦手な俺ですら容易に分かるよ。
そしてこの子………………すべっている!!
「……じゃあ…な」
「……はぅ!!? 早速振られた!?」
…え?告白だったの!?
いや、これもフリなのかもしれない。だったら、変に乗っかちまわない方が良いな。
「…桃香様、前置きをすっ飛ばして突然その様に言われては誰でも断るかと」
「お姉ちゃんは慌てんぼうさんなのだ~」
ほらみろ~関羽さんや張飛ちゃんもイキナリで呆れて居るじゃんか~…と言う訳で俺は帰る。
「でもね愛紗ちゃん。私達だって何時までも3人で旅をするなんて……って、凌統さん待ってくださいよ~!!」
え~…まだ何かあるの? って言うか、あんまり三国志の主要人物と関係を持ちたくないんですが…
まぁ、星さんや白蓮さんと知り合いになった時点で手遅れっぽい気もするけれど、俺は自負共に小市民で、前世では果たせなかった平穏無事な毎日をこの世界で送るって決めていて…
しかし、そんな俺の想いとは裏腹に劉備さんは捲し立てるように話を進めた。
「私達は変えたいと思っているんです!!」
「……変え…る?」
はて? 変えるとは一体何をでっしゃろう? 今のすべっているこの現状でっしゃろうか? ……はっ!!? 帰ろうと思っていたのに気が付いたら歩みを止めてしまっている自分が居る!!
くっそ~ 一度足を止めてしまったのなら、最後まで聞いてしまう性分な俺はこれでは帰れないではないか!
そして、劉備さんの言葉に付け足す様に張飛ちゃんが喋り出した。
「今の世の中の事なのだ。漢王朝が腐敗して弱い人達から沢山税金を取って、好き勝手しているのだ。それに、盗賊達も一杯一杯いて、弱い人達をいじめているのだ!」
…お兄さんはそれ以前に、張飛ちゃんの口から漢王朝っていう難しそうな言葉が出てきた事に驚きだよ。いやはや、人はみかけで判断してはいけないと言うか、何と言うか…
さらに、其処に関羽さんも加わった。
「そこで我等三人が立ちあがったのです。…ですが、どうすればよいのか方策を考えている所で管輅の占いと…」
「村の人達が話している『噂』を聞いたんです」
……これまた、占いと噂って……そんなものを現代で当てにしたら世の中を生きていくのは難しいというに…
しかし、占いと噂か……
「『この乱世に平和を誘う使者』…そして、『戦乱を凌ぎ全てを統める者』。前者は自称大陸一の占い師、管輅の言葉で、後者が最近実しやかに騒がれている者を示した言葉です」
なるへそ。何だかどちらも胡散臭いって言うことには変わりないと……あり? でもさっき関羽さんって俺の事を…
「それで、占いは何だかあやふやだけれど、農民の人達が言っていた噂ならまだ信憑性があるかなって思って……」
え……え?何その期待に満ち満ちと溢れかえってしまったその眼は!? ま、まさかその噂の人物って…
そこまでふられたら幾ら俺でも分かっちまったじゃねぇかよ!!
「……それが……俺…か?」
つまるところ、その噂って言うのが持っているカリスマ性を頼りにこの辺りまで来たって事なのでしょうか? ……何て言うか、凄い人達ですね。まさか、そんなものを頼ったなんて…しかし、こんな所までご足労戴いたのに申し訳ないが、俺はそんな危なさそうな事に関してはなるべく関わらないようにしようと決め込んでいる。
もう、これは決定事項だ。そういったものは他を当たってくれって感じだね。
「…それは……お前達の勝手だ……俺には……俺の進むべき道(平穏無事な日々)が…ある……」
「「「…………」」」
あ…あり?何だか黙っちまったんだが…なんか変なことを言ったか?
「…凌統さんの進むべき道は険しい道…ですか?」
ほへ? 俺の平穏無事な生活に興味があるのかな?
まぁ、確かに険しいかと聞かれたら今の状況から言うと険しいっちゃあけわしいかな。
「そう……だ…な……今の状態…で…は……程遠いかも…な……」
本当にこのままじゃ、憧れのスローライフは何時になることやら…
「なら……なら!私達に凌統さんの目指す道を共に歩いていくことを許してもらっても…いいですか?」
……………なんだろう?やっぱり告白されているのでしょうか?
いや、勘違いしちゃいけない!昔誰かに聞いたことがあるぞぉ~
女の子という人種は無自覚に男が『惚れてまうやろー』と言ってしまう言葉を言うって聞いたことがある…
つまり劉備さんは、純粋に俺のスローライフを手伝ってくれるというわけで…
そ、そういうことならば、純粋に嬉しいぞ!?
「……何…故…?」
「何故って…ソレが(世の為に)必要な事だと思ったからです!!」
な、成程…(俺にとって)必要な事だと思ってくれているのか………何故だろう? 果てしなく勘違いが何処かで起きている気もしないでもないが、劉備さんも必要な事だと思ってくれるんだな!?
あ、ヤベッ…嬉し過ぎて涙が少し出てきた…
「お兄ちゃん…泣いているのか?」
しかも見られてしまったではないか!?
「…あぁ……理解し…て……くれる人物に…会えたと思うと……な」
もう、見られちまったのなら、隠す必要なんて無いよな? 本当にこの世界の人達と来たら、俺の言いたい事を一ミクロンも理解してくれないんだぜ!?
それなのに、そんな中で俺のスローライフを応援、更には支援してくれるって人が現われたんだぜ?
泣くなって言う方が無理ってもんだろう。
「な、ならば我等も…!!」
「……そう…だな……共に……来てくれる…か?」
もう、寧ろ俺の方からお願いしますって感じだよ!! 俺の夢(スローライフ)達成の為に一緒に頑張ろうではないか!!
「喜んで!」
「宜しくお願い致します凌統殿」
「にゃはは~仲間が増えたのだ~」
やったぜ!何だかお仲間ゲットだぜみたいな感じだ!
…そうだな、仲間が出来たんだから手始めに白蓮さんの城から出て、何処でも良いから村に永住をして……
「貴方様の生きる道…この曇りなき眼にてしかと刻み込みましょう」
「……あし……た…………イヤ…何でもない」
あっぶねーーーーー!! って言うか、何で関羽さんは○の○け姫の名台詞をサラリと言っちゃうかな!?
危うく未だ映画という概念すらないこの世界で『アシタ○!?』って突っ込んじまう所だったじゃんかよ~
だけれど、変な所で切ったものだから、少し関羽さんが怪訝そうな顔をしているよ…まぁ、ソレについてはスルーしておこう。
「それじゃあ、凌統さんも私達の仲間になったって事で~あ、そう言えばこの近くに私のお友達が太守をしているって聞いたことがあるんだ。そこに行ってみようよ~」
……何故だろう? 果てしなく俺が思い描いているビジョンとは程遠い事をこの少女は言っている気がするのですが?
…いや、疑っちゃあいけねぇ。信じ続けることが重要だって昔の偉い人が言った気がする!!
……あれ? 信じる事…信じ続ける事…ソレが本当の強さだ。だったっけか?
………何故だろう? 果てしなく運命の物語弐って感じがしたんだけれど…
「それってどこなのだ?」
おぉっと…何だか一人ボケしている俺をサハラ砂漠に放置して話を進めちまっていやがるぜこの二人。
ねぇねぇ~よかったら俺も混z……
「えっとね、確か……………幽州啄郡…だったかな?」
……あり?ソレって今現在俺がお世話になっている所の様な気が……まぁいい………のか?
いや、別に白蓮さんも将が増えることに関しては歓迎してくれるだろうし…
そんなこんなで俺達は俺がお世話になっている啄郡へと向かったのであった。
――――関羽
先の凌統殿が一瞬だけ見せた影…恐らく、旅を続けてきた中で自分のやるべき事を見つけ出し、その道に向かって愚直に歩き続けてきたのだろう。
だが不幸な事に、自分のやるべき事を今まで理解されないでいたに違いない。
――――――――――――――――――――――戦乱を凌ぎ全てを統べる者
誰が付けたのか分からないこの呼び名…恐らく『天の御使い』に並んでこの大陸にその名が轟いている名であろう。
しかし、唯一彼だけがそんな名を億尾に思わずにいるに違いない。
まるでその姿は『その様な名に踊らされてなるものか』という彼の心の叫びの様にも思える。
そして、周りの人間はそんな彼を崇め称える……その誰が付けたのか分からないような名に縋って…
気がつけば彼は縋ってきた人を助け今日まで生きてきたのだろう。
………………『凌統』と言う存在は民を助けるのが義務になっているかのように…
恐らく民達に悪気は無いのであろう。ソレが解っているからこそ凌統殿も苦言を申さずにいたのであろう。
しかし、そのせいで彼の進むべき道を誰もが誤解してしまっていたんだ。
彼はあくまでも『戦乱を凌ぎ全てを統べる者』だ…賊を討伐し、民を救うのも立派な事ではあるが、彼の行く先は遥か遠くに見える天下泰平…
そして、彼は嘆いた………自分の道を理解する人物がいない事に…
其処に我らが現われた。私も始めは彼の持つ名を頼りにした。恐らく桃香様も鈴々………はどうだろう?
し、しかし!今では違う。確かに彼の通り名は有用な力になり得るが、そんな事は今は良いのだ。
今は只………
「貴方様の生きる道…この曇りなき眼にてしかと刻み込みましょう」
「……あし……た…………イヤ…何でもない」
……?今何を言おうとされたのだ? あした?………明日?
明日何かが起きるとでも言うのでしょうか?
「それじゃあ、凌統さんも私達の仲間になったって事で~あ、そう言えばこの近くに私のお友達が太守をしているって聞いたことがあるんだ。そこに行ってみようよ~」
「それってどこなのだ?」
「えっとね、確か……………幽州啄郡…だったかな?」
……はぁ、凌統殿が何やら意味深な話をしてくださっているというのにこの二人ときたら…
桃香様も桃香様です。こんなご時世、幾ら友人とはいえ突然押し掛けてしまっては門前払いを食うか、足元を見られるだけですよ?
しかし、ソレを口に出来る程私は桃香様に対して非情にはなれない。
結局は私もその意見に同調する形となった。しかし、先程凌統殿が言われた『明日』という言葉……どのような意味が込められているのであろう?
そして、その意味を理解したのは凌統殿の言葉通り翌日の事であった。
「…そう言えば、此処からそのお友達の所にはどれくらいかかるのだ?」
「へ? う~ん………そうだね、野営をして明日にでも着くと思うよ」
その時の私は今まさに話に上がっている桃香様の御友人と、凌統殿が知り合いだという事は全く知らないでいたのであった。
―――――――― オマケ
「う~む…………」
俺は雪花! 柚登の母ちゃんだ!! 今俺は正に重大な局面を迎えている。
これを間違えたら恐らく一生辿り着けねぇかもしんねぇぜ……
…あん? 俺が何をしているのかって? ふふふ~聞いて驚くなよ!! 俺は今現在…
―――――――――――――――――――――ポテ…
「――――――――――――――――――― よっしゃあ!! 枝が倒れたこっちが西涼だな!!」
自分の行く道ってもんを占っていたんだ。 ……ンだよ?悪ぃか!? これはコレで以外と当たるんだよ!!
…まぁ、柚登と一緒にいる時はアイツが先行していたから腕が鈍っちまっているかもしんねぇけれど…
と、兎に角!何だか風の噂に聞いたんだが、西涼にいる馬騰って奴が昔貧乏だった頃に木を切って生活をしていたらしいんだ。
ソレが気が付いたら世に名を轟かせているような太守になっているって話じゃねえか。
距離はあるが、今からそいつの所に行ってちょいと出世のコツってもんを聞きに行こうと思ってんだ。
そして俺は、その辺で拾った棒が倒れた方角に向かって一直線に進む。
……だけれど、何でだろうな? 段々と磯臭せぇ感じがしているんだが………
まぁ、俺は地形には疎いが多分間違ってねぇだろうな!!
よっしゃぁーーーーーー!!!! これも柚登の出生街道まっしぐらを目指す為だ。頑張るぞーーーーー!!!
「おーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
俺は雲一つない快晴の大空へと両手を高く上げ、意気揚々と足取りも軽く進んでいくのであった…
……母の旅も続く
ありがとうございました。
また次回もお楽しみに〜( ̄▽ ̄)ノシ