Re:俺⁉︎   作:かみかみん

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第十三幕 寝かせて

――――関羽

 

 成程、柚登殿が昨日言っていた『明日』と言う言葉はこの事だったのか。 恐らく柚登殿が自身が公孫賛殿の下で客将をしていることを告げなかったのは我等の人となりを試したのであろう。

 

 仮にあの場で柚登殿が客将であることを告げたとしたら、我等は間違いなく公孫賛殿に取り次いでもらえるように頼み込んでいた事であろう。 あの時の我等はそれ程までに追い詰められていた。 ソレを柚登殿は見抜いたに違いない。

 だからこそ、我等を試したのだ。 我等のこの想いが本物であるのかを……だからこそ、あの場で柚登殿は自身の道を告げたのだ。

 

『自分はこの戦乱の世を変える……お前達にはその覚悟はあるのか?』

 

 もしかしたら柚登殿は内心ではこう思っていたのかもしれない。 そして、我等は柚登殿の想いに添えたのだ。 そうでもなければ、我らがこうして何の障害も無く公孫賛殿にお目通りをして頂ける筈がない。

 ……だが、あの時柚登殿が流した涙は……あの時は純粋に柚登殿の想いを理解したからこそ流した涙だと思っていた。 しかし、今考えると何故あの時に涙したのであろう? ……いや、柚登殿の事だ、きっと何かしらの理由があったに違いない。 でなければ、あのように綺麗な涙を流せる筈がない。

 

 柚登殿……私は誓いましょう。 桃香様、鈴々と共に貴方を支え、共にこの乱世に終止符を打つ事を!

 

 

――――凌統

 

 ……いま、何処かで誰かが俺に対するイメージで盛大に勘違いをしている様な気がする。

 

 やぁ、地デジ化の影響で盛大に電波が入り乱れている凌統だよ。

 俺が桃香さん、愛紗さん、鈴々ちゃんの三人を白蓮さんの所に連れてきたところ、何だか話が進みに進んで三人を迎え入れるという方向で話がまとまったんだ。 これでやっと俺もお役御免でクビにしてもらえて、これからの夢見る生活について想いを馳せていたんだが……

 

「柚登、三人の面倒はしっかりと見ろよ!」

 

 ――と、白蓮さんからお言葉を頂いちまったんだ。 ……驚き桃の木山椒の木だろ? 大丈夫だ、俺も一体何を言われたのかを理解するのに三刻位有したんだからよ。

 しっかし、あれだね? まさか無断で一泊してきたのに処罰も何も無しって事についてはマジで驚いたね。 だって、普通の軍だったら何かしらの罰があるって昔読んだ本に書いてあった気がする。 寧ろ、報奨は何が良いか聞かれてしまった。 ……周りの人は当然って顔をしていたが俺としてはある種の天国から地獄に落とされた瞬間だったけれどね。

 

 そんなこんなで俺は、迷惑をかけた白蓮さんへの謁見を済ませた後、別の意味で迷惑をかけた副長さん達の居る兵舎を訪れた。

 しかし、此方はまた別の意味で行きにくい。 だって、俺について行くって言ってくれていたのにソレを無理やり帰らせたんだから。 絶対的に『あぁん? 重役出勤ですなぁ上司のくせに。 それに、先に帰らせた割に何にもなかったじゃねぇか』とか言われた日にはマジで号泣してしまいそうだ。 きっと心が折れて、再起不能状態になることだろう。

 ……うわ、そういう事を考えたら段々と胃が痛くなってきたよ。 この時代って胃薬とかあったっけ?

 

 そんな感じで副長達に会いに行くのを少し躊躇しながらも俺は兵舎へと近づいて行った。 途中、鈴々ちゃんを未だに担いだままだという事に気が付いたが、まぁその辺は気にしないでおこう。 ……だってさ、今から俺の部屋に行って寝かせるのと兵舎に行くのって明らかに兵舎に行った方が近いんだもん!

 そんなこんなで俺は鈴々ちゃんを背負ったまま兵舎へと向かったんだ。

 

 

 人と言うのは不思議魔生き物だと思う。 つい先ほどまで不安いっぱいの俺だったが、いざ扉の前に立つと以外と震え諸々は収まり、何だか頭の中もさえている様な気がする。 ……さぁ、此処まできたら覚悟決めちまえよ! と自分では無い誰かが言っているかのような錯覚にさえ陥ってしまう感じがする。

 実際は誰もそんな事は言っていないんだけれど。 そして俺は震えの収まった手で扉に手をかけ…『バン!』―― るまえに扉が開いた。

 

「凌統様、お待ちしておりました!」

 

 そして、目の前にはすっごく良い笑顔で俺を出迎えている副長さんの姿が……。

 いや、騙されるなよ俺。 一見、凄く機嫌が良さそうに見えるが、これはきっと副長さんの罠に違いない。 少し優しくしておいて、後からねちっこく攻めてくるという寸法なんだな?

 ――フフフ、この凌統をなめて貰っちゃあ困るぜ。 こんな事もあろうかと俺は秘かにとある作戦を考えていたんだ。 さっきも言ったが、こう見えても俺は徹底的に言われるとガチでへこむ人間だ。

 つまり『俺を責める=ガチでへこむ』×『ガチでへこむ=仕事が手につかない』×『仕事が手につかない=サラリーマンとしては致命的』=ユーアー・ファイアー!って寸法だぜ!!

 フッ……我ながら完璧すぎる作戦に惚れぼれするぜ。 ……さぁ、副長さんよ! 朝帰りした俺の事を罵るんだ~! そうすれば俺の術中にはまったも同「お疲れさまでした凌統様!」…然?

 

 

 

 

 ……あり? 何だか副長さんがすっごく良い笑顔で『お手柄でした!』みたいな事を言いそうな顔をしているんだけれど?

 

 そして、副長さんの声に反応したのか凌統隊の面々が兵舎から外に出てきた。 ……つーか、別に皆さん方が出てこなくてもいいんじゃね? って、更に何にも言っていないのに俺の目の前で整列し始めたし。

 俺の背中に嫌な汗が流れるのが感覚で分かった気がする。 うわ~今からあれか? 一人ずつ俺に罵倒していくって言う寸法か? クッ……鬼畜すぎやしませんか皆さん!?

 

 そんな感じで俺が身構えていると、始めに副長が口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――申し訳ございませんでしたぁぁぁぁ!!!」

 

『申し訳ございませんでしたぁぁぁぁ!!!!』

 

 ……はい? い、一体何が起こったというのですか!?

 副長が口を開いたと思った瞬間、副長を含めた凌統隊の面々が地面に膝をつき、見事なまでに整った土下座をしだした。

 もう、この時点で俺には何がなんだかさっぱりな状況だ。 っていうか、俺なんか謝られるようなことしたか? ……いや、寧ろ俺が謝るべき事をした覚えはあるんだが。 おとと、何か急すぎて混乱してしまったけれど、流石に数十人の土下座をこのまま放置しておくわけにはいかないよね。

 

「顔を……上げて…くれ」

 

「いえ! 我等一同は、凌統様に申し訳が立ちません!!」

 

 代表して副長が頭を下げたまま話しだした。 って、皆さん一糸乱れずに地面に額を擦りつけているよ。 ……何だかこの場面だけ見ると俺が悪い事をしているように見えるな。

 

「……寧…ろ……俺が…謝らね…ば。 戻るの……が…遅れた。 すまな……い」

 

そう言って俺は土下座とまではいかないが、って言うか鈴々ちゃんを背負った状態で土下座するのは流石に難しいので、軽く頭を下げた

 

「か、顔をお上げください凌統様!! 私は…いえ、我々は恥ずかしいのです……きっと凌統様はまだ戦いに不慣れな我々を見て、賊軍に耐えうる力が無いと判断されたのでしょう。 そして、我等には何も告げずに御独りで賊軍との戦いに向かわれた」

 

 ……え、何その勘違い? 俺はただ単にもよおしただけだから先に帰らせたんだけれど。

 

「しかも、そこでは女性三名をお助けするという勇姿を披露されたとの事……ですが、そんな中我等は何も知らずに安全な地にて、のうのうとしていたことが……!!」

 

 ……二回目だけれど。 え、何その勘違い? その後も副長さんの独壇場であり、『凌統様御独りにお任せするなんて』とか『我等にもっと修練を』とか『我等一同、凌統様の為に命をはる』とか兎に角、謝ったり頼んだり、命をはったり等の話を永遠と続けていた。

 むしろ俺としては、どうしてこんな話になっているのかが疑問すぎて仕方がない。

 その状態が半刻(1時間)程過ぎたあたりであろうか。 幾ら時間がたっても副長の話が終わらないので、流石に土下座をキープさせておくのも可愛そうだと判断した俺は、こう切り出した。

 

「いや、これ…は(トイレに行くことを伝えなかった)俺の……せい…だ。 しか…し、それでも……お前達…の気が……晴れぬ…と言う…のなら…今後…(トイレに)行くとき…は伝え…よう」

 

「―――――――― ハッ! 畏まりました!!」

 

 ……何だか、ちゃんと理解したのかが気になるけれど、まぁいっかな。

 

「――――んにゃぁ…うるさいのだぁ」

 

 おっと、どうやらあまりにも周りがうるさすぎた様で背負っていた鈴々ちゃんが起きてしまったようだ。

 俺は鈴々ちゃんを背負ったまま軽く首を捻り、後ろの方を見た。 如何やらまだ眠気が取れていない様で頻りに目を擦っている。 ……あれだね。決してノータッチロリータ思考の俺だけれど、こういう仕草を見ると少しだけ心がときめいちゃったりするよね。 ……まぁ、顔には変化は見られないけれど。

 

「起きた…か?」

 

「うにゃぁ? 何で鈴々お兄ちゃんにおんぶしてもらっているのだ?」

 

 如何やら少しずつ自分が置かれている状況を理解してきたようだ。 まぁ、さっきまで街中でに括っていた記憶しかないから無理も無いよね。

 脳内で少し笑いながらも俺は鈴々ちゃんの問いかけに答えることにした。

 

「道端……で寝た…ら風邪引…く……桃香、愛紗の所…に行く…か?」

 

 しかし、如何やら自分の仲間の所に行くよりも今の鈴々ちゃんには眠気が勝っていたようで…

 

「……いぃのだぁ……ふぁ~…おやすみなさい…」

 

 そのまま再び夢の住人に……って、ホントに寝ちゃったよこの子。 おっと、そう言えばこの子を寝かせようとしたんだったな。

 

「あの凌統様、その方は? 先程から気にはなっていたのですが…」

 

 如何やら鈴々ちゃんの事には気が付いていたようだが、聞くタイミングを逃していたようだ。 副長以外の面々も俺の背中で寝ている鈴々ちゃんの方を見ている。 そういえば、まだ彼女の紹介をしていなかったな。

 

「彼女は…張飛、いずれ……は将にも…なれ…る器だ。 客人……だから……丁重にもてな…せ」

 

 ……何やら凌統隊の面々が息を飲んだのが凄く気になる今日この頃であった。 あ、勿論その後は鈴々ちゃんを彼女に割り振られた部屋の寝台までちゃんと運びましたよ?

 

 

 

――――一方その頃…

 

 この日、曹操の屋敷は朝から騒がしかった。 理由は言うまでも無く今朝進入したとされる女の捜索だ。 女の目撃者は二名。 一人は女に食事を用意したという侍女、もう一人は『戦乱を凌ぎ全てを統べる者』について徹夜で調べ物をしている最中、小腹を満たすために調理場を訪れた旬彧だ。

 現在玉座にはこの屋敷の主である曹操、楽進、そして目撃者の一人である旬彧がいる。

 

「華琳様、桂花様の言う女の姿はどこにも見当たりません」

 

「そう、ご苦労様凪。 ……それで桂花、その者は何をしていたの?」

 

「ハッ! 侍女に問いただしたところ、調理場で腹ごしらえをと。 侍女もその堂々とした態度から華琳様のお客人だと判断したらしく……」

 

「そう……黒髪を後ろで束ねた…ね?」

 

「華琳さま~!!」

 

 そんな折だ、けたたましい音と共に夏候惇が入室してきた。

 

「春蘭、何か分かったのかしら?」

 

「いえ、それが桂花の言う女は分からなかったのですが、こんなモノが……」

 

 そう言いながら夏候惇が右手を掲げた。その右手に握られていたのは……

 

「ちょ!? 華琳様の御前に生首持ってくるなんてアンタ頭相当おかしいんじゃないの!?」

 

 悲壮な顔をした中年男の生首であった。

 

「し、仕方ないだろう! こんなモノが城内に放置されていたのだ。 私だって一瞬目を疑ったんだからな!」

 

 その生首は最近切り取られたものなのだろうか。 肌の色は血が抜け切り白くなっているが所々腐敗が進みかけてはいるが、未だに腐敗していない個所も見受けられた。 流石の夏候惇も素手で持つのは少し抵抗があったのだろうか、自身の手に布を巻きその手で首を持っている。

 

「……あれ?」

 

「どうかしたの凪?」

 

 そんな折、生首を見ていた楽進が何かに気が付いたようである。

 

「いえ、この人物もしかしたら以前謎の人物が討ち取った者ではないかと……」

 

 楽進は少し自信なさそうに、自身の記憶を辿るかのように少し瞼を閉じながら答えた。

 

「謎の人物と言うと……秋蘭が言っていた三節棍で賊軍をなぎ倒したって言う『アレ』かしら?」

 

「はい。 私断言はできないのですが、この顔はそこで見た様な気が……」

 

「……確か貴女もその人物を見ていたわよね?」

 

「あ、はい。遠目ではありますが確認はしています」

 

「その人物は黒髪で髪を後ろで束ねていた女性だったわね?」

 

「はい……もしや今朝の人物は!?」

 

「……えぇ、その可能性が高いわね。 桂花、捜査範囲をさらに広げなさい! 今朝の事だからまださほど遠くへはいっていない筈よ!!」

 

「御意!」

 

「凪、貴女は真桜・沙和と共に警備を強化。 該当しそうな人物を見掛けた場合は全員城に招きなさい」

 

「――ハッ!!」

 

「……あのぉ華琳様?」

 

「何かしら春蘭?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局のところどうなったんですか?」

 

 一人話について行けなかった夏候惇は真顔で曹操に事の進み具合を聞いていたりする。

 

「…………はぁ、貴女はその手に持っているものを処分なさい」

 

「……何だかわかりませんが、わっかりました!」

 

 ……最も、説明した所で確実に話には着いて行けないと判断した主人によって違う任を言い渡されたのは御愛嬌だったりもする。

 




ありがとうございました。

また次回もお楽しみに〜( ̄▽ ̄)ノシ
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