おっすオラご……凌統! なんでも願いをかなえてくれるという竜の玉を探してオラは仲間の劉備、関羽、張飛、趙雲、孔明、鳳統と共に世界中を旅してんだ。
だけど、その道中、竜の玉を狙って悪い奴らがいっぺぇ襲ってきた。 金ぴか大将率いる『レンーゴー』との戦いは辛かったが、オラにはたくさんの仲間がいたんだ。
そうして、やっとの思いでそいつらを倒して竜の玉を全部そろえる事が出来たんだ!
さぁ、後は願いをかなえるだけだ――――――
――――――という夢を見た。
「柚登さん、どうしたんですか?」
「なんでも……ない」
桃香さんの戸惑いと心配が入り混じった声で少し悲しい気持ちになってしまった
気を取り直して……現実に舞い戻って来た柚登だよ。 え? 今のは昨日見た俺の夢だから全力で気にすんな!
さてさて、最近は俺も内政にだいぶ慣れてきた。 もっとも慣れたといっても仕事が山のようにあるのは変わらない。 町の警邏、財政状況、税収、作物の不作エトセトラエトセトラ……
簡単に言えば忙しい現状に慣れてしまったと言った方が正しいのかもしれない。 だが、大きな戦もなくほんの少しだが忙しくも平穏な毎日を過ごしていた。
しかしそんなある日、大陸全土を震撼させる事件が勃発してしまったんだ――――――
――――――漢の皇帝、霊帝って人が亡くなったのだ。
元日本人の俺からしてみたらピンとはなかなか来なかったのだが、現日本で言うところの不謹慎かもしれないが天皇が亡くなったのとほぼ同義だと判断した。
しかし、ここはあくまでも俺がいた日本とは違い、三国志の世で戦乱蔓延る世界なのだ。
この国の支配者である皇帝が死んだという事は、朝廷内ではびこっていた権力争いの始まりに過ぎない。
それだけを聞いていると俺たちに関係あるのか? と思ってしまうが、どうやら事はそんな単純な事ではないらしい。 最も、難しい言葉を並べられても俺には理解できないし、理解しようとも思わない。
つまるところ、至極簡単な言葉にまとめると……
「……戦乱が…始…まる……か」
さて、何故いきなり俺のシリアスっぽいセリフから始まったのかと言うと、ある日俺達のもとに三国一の名家と言われている袁紹って人から書簡が届けられたんだ。
さっき説明した権力争いがどうたらこうたら……そして、新しく皇帝になった人を董卓が傀儡のように扱って民に対して圧政を強いてるから反董卓連合を結成しましょうとかの檄文がどうたらこうたら……
それを見た瞬間俺の頭にピンと来たんだ。『これは間違いなく董卓のイベントだ!』ってね。
それを踏まえてでの発言でもあったりする。 そして、この袁紹から届いた書簡。 どうやら俺達のところだけではなくて各地で割拠する諸侯にも送られているとのことだ。
俺達もこの書簡を受け取って緊急会議をする事となった。 俺的には面倒事には参加したくないんだけれど……ってか、日々があまりにも忙しすぎて俺の夢である平穏無事な毎日の事をすっかり忘れていたぜ……え、なんだかすっげぇ遠ざかってないか今の生活って?
「当然参加だよね柚登さん! 董卓さんにはさっさと退場してもらわないと!」
「桃香様の仰る通りです。 正義の鉄槌を喰らわせなければ」
「お兄ちゃん、悪い奴は鈴々がぶっ飛ばしてやるのだ!」
……皆さん、何故俺に聞くのですか? 少なくともこの地を治めているのは桃香さんなんだから俺じゃなくて桃香さんに同意を求めるのが筋……いや、桃香さんは既に参加する気満々か。
……はぁ、気が進まねぇなぁ~何で態々自分から戦乱の中に飛び込まないといけないのやら。
しかし、やる気満々の彼女等をしり目に少し慎重な意見を持っている方々もいるようでして……
「柚登、お主も気になる事があるようだな?」
おふぅ、星さん何で急に変化急まっしぐらのキラーパスを俺に向けるのですか? 気になる事って……しいて言うなら何で俺に意見を求めるのかって言う事くらいなのですが?
「柚登殿と星は反対とでも言いたいようだな」
眉間にしわを寄せた愛紗さんが俺と星さんを鋭い目でみた。 や、やめて……俺みたいな小市民にそんな眼光を向けると問答無用で石化の効果が発動して動けなくなっちゃうから!
「私達はそうは言っておらん、ただ……」
何故、其処に俺を含めて二人の意見としているのかが果てしなく疑問ですよ星さん!?
「御二人とも、この手紙の内容が気になるのですね?」
そう言って前に出たのは我らがチミッ娘軍師こと朱里ちゃんだ。 だが、その前に俺にもひとこと言わせてくれ。
「一方的……すぎ…る」
主に俺の意見を全く聞かない事に関して。 どうだ! 俺にも少しは意見を言わせてくれよ!!
「そうです、柚登さんの言うとおり敵対勢力について書かれているとは言え、あまりにも一方的すぎるんです」
「一方的~? ……どういうことなのだ?」
どうして、俺の話しが手紙の内容にすり替わっているんですか!? だ、誰か説明プリーズ!! 一字一句間違えないで俺に対しての説明を要求します!
そして、その後も俺を置き去りにして話し合いは続いていった。 話しの内容としては朱里ちゃんと雛里ちゃん曰く、『悪い奴がいる。 だから皆で倒そう! というほど単純な内容ではなく、諸侯の権力争いなのではないか』らしい。
星さん以外の面々はこの意見に対して少し考えすぎ~という意見もあるが慎重に事を進めた方がいいかもしれないという意見まで飛び出した。
何だか、俺って蚊帳の外状態じゃね? ……いいも~ん、俺ってば心の中で『の』の字を書きまくってやるんだから。おもに便箋いっぱいに書きまくって皆の枕もとに置いてやるんだからな!……妄想の中でって言う言葉がつくけれども
そんな事を考えながら俺は自分の中へ逃避する為に立ったまま眼を閉じた。
周りの方々は未だに『あーでもない』『こーでもない』と議論を続けている。 そんな中で一人だけ現実逃避をしていていいのかとも思うが、俺はやめる気なんて更々無いぜ!
しっかし、俺ってどこで選択肢を間違えて将紛いの事をやっているのだろう? そもそも、将をやるなら呉じゃないの? このまま桃香さん達と行動していると蜀に属することになるんじゃね?
――――いやいや、そもそも俺は戦うために生活しているわけじゃないし。 俺は戦いと無縁な毎日を送ろうとこんなにも努力しているのに……はて? 何だか周りの喧騒がしなくなったような気がする。
気がつくと、俺の耳には話声ひとつ聞こえてこなくなっていた。 もしかしたら、現実逃避している間に議論が終わったのかもしれない。 だったら、俺もさっさと自分の部屋に戻ろう。
そう判断した俺はゆっくりと眼を開いた。 そして、眼を開けて飛び込んできた光景に一瞬体が固まってしまった。
『……』
だって、皆が俺の顔を凝視しているんだぜ? 一瞬、俺が寝ていると思ったのかな? って思ったんだが、明らかに彼女らの眼が何かを期待しているかのようにキラキラしているんだ。
い、一体、小市民の俺に何を求めているんだろう? この子たちは……
しかし、この状態を続けていても現状は何も変化するわけではない。 仕方ないと俺は心の中で愚痴りながらとりあえず口を開いた。
「……行…く」
具体的には俺は自分の部屋に行きますので、後は任せますと続くわけだ。 俺の言葉を聞いて、その場にいた全員が息をのんだ気がする。
正しく皆に伝わったのかが果てしなく疑問だったが、俺はそう言い残して自分の部屋へと向かうべく部屋から出て行った。
――――孔明
流石は柚登さんです。 手紙の内容について疑問を持っているのは私のほかに雛里ちゃんと星さんだけだと思っていたのですが……ズバリ、言い当てられてしまいました。
……いえ、きっと柚登さんの中では私たちにとっての違和感をある種の確信として取っているのかもしれません。 だからこそ、一言『行く』と言い残して部屋を後にされたのだと思います。
そう、きっと柚登さんは『これ以上話し合うことは無い』と言いたかったのでしょう。
董卓が本当に圧政を敷いているのかが疑問視されているのですが、この戦いはきっと避けては通ることができない道。 それを柚登さんは感じ取ったに違いありません。
だからこそ、本当の悪かどうかも定かではない董卓の討伐を決意された後、自身に襲いかかる罪悪感、背徳感に苛まれ部屋を後にしたのでしょう。
そう、柚登さんはこの戦乱の世を生き抜くにはあまりにも優しすぎる……しかし、きっと柚登さん自身もそれを感じていることでしょう。 だからこその参加という意思を表明された……自分の心を固く閉ざして……
それはすごく悲しいことだと思います。 でも、柚登さんには私たちがいる。 私と雛里ちゃんには愛紗さんみたいな武もなければ桃香様のような人を引き付ける才もない。そんな私達でも水鏡先生の元で学んだ知があります。
それを使い、柚登さんを支えていかないと……この時の私はそう感じていた。
――――一方その頃……
「……なぁ、何だか場内が重々しい空気になった気がするんだが俺の気のせいか?」
よぉ、俺は雪花。 柚登の母ちゃんで今は孫策こと雪蓮の下で扱き使われている。
此処で働き始めて早くも数カ月が経過した。 その間に色々とあったもんだぜ……皇帝が死んだり、以前会った趙雲こと星が訪ねてきたり……うん、色々あったなぁ~
そういや星の奴、前は……か……影……『最初の一文字すらあってないぞ!?』――――ッ!? い、今、誰かの声が聞こえた気がした気が……まぁいいや。
取りあえず、誰かの下についていた気がしたんだが、そいつの事はもうよくなったのか? まぁ俺は星じゃないからどうでもいいことだがな。
さてさて、話しを戻すとしよう。 今は日の光がてっぺんに位置する所謂昼時だ。 そんな折、何故だか兵たちが忙しなく動き回り、場内が騒がしくなってきたんだ。
「貴方は知らなかったの雪花? 私達は近いうちに反董卓連合に参加するらしいわ」
俺の疑問にいち早く答えてくれた雪蓮に似た容姿を持つこの女は孫権、真名は蓮華。 雪蓮の妹だ。
こいつ等は姉妹だというのに性格が真逆で雪蓮はちゃらんぽらんなのに対して蓮華はドが付く程の超真面目な嬢ちゃんだ。
今現在は俺とこの蓮華、そして甘寧こと思春の三人で雑談をしていたんだ。 と言っても、話しているのは俺と蓮華だけで思春が話に入ってくることは無いが。
しかし、反董卓連合か……俺は全く聞いていないんだが?
「……貴方、今変なこと考えなかった?」
「お、おう! そんな事はこれっぽっちも考えているわけね、ねぇじゃねえですかいな!」
「……どもり過ぎよ。 それに、その様子だと姉さまから何も聞いていないみたいね」
そ、そうだよ! 今は雪蓮と蓮華の事よりも反董卓なんとかって言う奴の方が重要だぜ。
「諸侯に檄文が飛んだみたいよ。 皇帝死去、新たに皇帝に即位した者を拘束し、民に圧政を強いている董卓の討伐を目的とした連合を編成すると」
ふぅん……俺には全く関係ないみたいだが、参加するって事はあの雪蓮の事だ。 何か狙いがあるんだろう。
最も、俺には全く関係のない……ん?
「なぁ蓮華、今『諸侯に檄文が飛んだ』って言ったか?」
「えぇ、言ったけれど……何か気になる事でもあるの?」
……おいおい、これはもしかすると来たんじゃねぇのか!?
「も、もしかしてよぉ……その中に西凉の馬騰って奴も入ってんのか?」
「そうね……参加するかどうかは分からないけれど、西凉の馬騰殿の事だから参加するんじゃないかしら。 でも、何で貴方がそんな事を気に……」
よっしゃあぁぁぁ!! ひょんな事だが、俺にも運が向いてきやがったぜ!! 元々、俺の旅の終着は西凉の馬騰に出世のコツを聞きに行ってそれを柚登に教えて柚登の出世街道を明るくする事が目的なんだ。
それに、諸侯への檄文が飛んだって事はもしかすると久しぶりに柚登の野郎に会えるかもしれねぇじゃねぇか。 コイツは一石二鳥って奴じゃねぇのか!?
柚登の奴はこういった戦乱の匂いがする場所には必ず現れるからな。
それにしてもアイツ、成長したかな~? 数ヶ月会っていないだけだが子供ってのは少し目を話すだけで立派に成長するって言うしよぉ~
そんでもって柚登は俺の自慢の息子だ。 そん所其処らのガキとは違って成長は凄まじい勢いに決まってるぜ。 まぁ、柚登はガキとも呼べる歳じゃなくなったけれどな。
あぁ~今からでも楽しみになって来たぜその反なんたらかんたらって奴がよぉ~
「ちょ、ちょっと……雪花?」
「ゆ~と~」
「……蓮華様、コヤツは連れて行かないほうがよろしいかと」
「思春……でも、何だか凄く楽しそうに見えるんだけれど……」
「――――よっしゃあぁぁぁぁ!! み・な・ぎってきたぜ!!」
――――よし、待ってろよ柚登! 母ちゃん頑張るからな!!
昨日はおやすみいただきすみませんでした。
ではでは、また次回もお楽しみに〜( ̄▽ ̄)ノシ