やぁ、みんなの凌統くんの出現だ!
よい子わるい子ふつうの子集ま……
「普通って言うなぁ!――――ってあれ? 私はいったい誰に……?」
……こほん、やぁ凌統だよ。
今俺たちはとある場所に来ている。 そう、反董卓連合本拠地さ。
そこには、俺達以外にも召集された方々で溢れかえっている。
しかも、この場には階級の上の人しか集まっていないので、各国の将や兵の数をあわせたら、とんでもなく恐ろしい人数になる事だろう。
そして、我が国からは代表である桃香さん、軍師に朱里ちゃん……で終わればよかったのに+俺もいたりする。
全く持って意味不明な状況だと思う。
コミュニケーション能力が皆無の俺を参加させるなんて……
俺は静かに横に位置しているチミッ娘軍師こと朱里ちゃんをジト目で見た。
見下ろす感じとなったのだが、相も変わらず背の低い彼女の帽子の天辺しか見えない。 その状態で俺は胸中で大きくため息をついた。
そんな俺に気が付いたのか、朱里ちゃんは顔を上げて俺を見上げながら静かに微笑んだ。 太陽のように輝くその顔を直視しづらく、反射的に目を逸らしてしまった俺は悪くないと思う。
さてさて話を戻すが、何を隠そう、俺をこの場に連れてきたのは半分以上、朱里ちゃんの采配なのである。
俺は始め、問答無用で留守番をするつもりだったんだ。 前述したとおり、俺にはコミュニケーション能力が皆無と言ってもいい。
更には冗談一つ言うだけでその場の空気を一瞬にして瘴気へと変貌させるほどだ。
これだけで、着いていっても足手纏いにしかならないと容易に理解できる事だろう。
しかし、何故だかその場で彼女は――――
『柚登さんもお願いします。 恐らく、会議には柚登さんにも出席していただいたほうがいいと思うんです』
しかも何故か、この根拠の無い内容に対して俺以外の全員がGOサインを出したものだから大変だ。 気が付いたら逃げ場ゼロなんだぜ?
絶望した! 誰も俺の意見を聞こうとしない世の中に絶望した!
……ふぅ、そんなこんなで俺は今ここにいる。
さてさて、後ろ向きに考えても仕方が無い。 ここに来てしまった以上、俺も腹を括らないといけない。
要は俺が目立つような事をしなければいいだけだしな、うん。
「柚登さん、柚登さん」
おっと、桃香さんが何か俺に言いたげな表情をしているぜ。 ……だけれど、何だろう? 果てしなく嫌な予感しかしないんだが。
「袁紹さんが何か言っていますよ?」
はて、袁紹とな? おかしいな、少なくとも俺は何か変な事をした記憶が無いんだが……ってか、袁紹って名前はわかるけれど、誰かなんてわからないんだが?
俺の記憶の中の袁紹さんは『おのれ~名族にたてつきおって~』とか言っちゃう印象しかないんだが。 まぁ、あれはゲームの中のキャラだし実際の袁紹って人は凄く名君だって言うし、多分この世界の袁紹だって凄まじいオーラがバリバリの人の事を――――
「そこのブ男、私の話しを聞いておりますの!?」
……うん、前言撤回したいと思う。 ってか、数秒前の俺に全力でO☆HA☆NA☆SHIしたいぜ。
俺の目の前に現れた人物……金ぴかの衣装を身に纏って天元突破と言いたくなるくらいのクルクルダブルドリルヘアーを風にたなびかせ、俺の事を微妙に睨んでいる少女。
口調はまるでゲームの袁紹を女にしたらこうなりますとでも言いたい位、上から口調である。
っていうか、サラリとブ男って言われている俺のピュアハートに罅が入りまくりんぐダゼ! ……泣いてもいいかな?
「ふん、何で貴方のようなブ男が此処にいるのかは理解できませんが、一つ聞いて差し上げますわ。 兵力、軍資金、そして装備……全てにおいて完璧な我ら連合軍。 而してただ一つ足りないもの。 ……さて、それは何でしょう~?」
……この子、俺に軽く喧嘩吹っ掛けてないかな? っていうか、貶すか聞くのかどちらかにしてほしいものだぜ全く。
心の中でぶつぶつ愚痴を垂れてみるが、状況は全く変わるわけではない。 しかたなく俺は、袁紹のいう足りない物と言うのを答えてみた。
何でわかったのかって? そんなのは簡単さ~だって……さっき、こっそりと桃香さんや朱里ちゃんと話したからね~
「総大…将……これだけ…の……人材を殺さ…ず……一つ…に纏める…事のでき…る……大将」
「あら~正解ですわ。 ブ男の割には中々見所がありますわね~ ならば付け加えましょう。 貴方ならば誰がふさわしいとお考えですの?」
おっと、こいつは面倒くさい質問がきたぜ。 明らかに袁紹は自分がふさわしいって言いたい筈だ。
しかし、それを安易に言ってしまうと何かあった際、全責任が袁紹に降りかかってしまう。 そこで、だれでもいい。 自分の陣営以外の人物から推薦さえしてもらえば『貴方が私を推薦したんだから、責任とってよね!』とでも言ってくるに違いない。…何となく頭の中でツンデレ変換してみたけれど、キャラ性が全くもって違うベクトル過ぎてやらなきゃよかったと後悔のバーストストーム状態だよ。
それに、此方が推薦したとしても俺達に特別な援助等はしてくれる事は無いだろう。 ここは、慎重に答えないとな……
俺はもしかしたら助言をしてもらえるかもしれないと朱里ちゃんの方をチラリと見た。 この子だって、こう言った事態の想定くらいしていることだろう。
朱里ちゃんが俺の方を見上げてくる。 さぁ、伏龍と言われるその実力を遺憾なく発揮して俺に助言をプリ~ズだぜ朱里ちゃん!
そんなこと視線の中に匂わせながら俺は彼女の眼を見て軽くうなずいた。
しかし、どうだろう? 俺の合図が通じなかったのか、朱里ちゃんは俺の目を見たまま軽く頬笑み、何やら『頑張ってください』とでも言いたげな視線を送った後に俺から視線を外したのだ。
あ、ありのまま今起こった事を話すぜ! 俺が聡明な軍師殿にアドバイスをもらおうとアイコンタクトを飛ばしたらシカトしやがった。
な、何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……ハブられたとか、イジメだとか、そんなチャチなもんじゃ断じてねえ。 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……
「あら、答えられないのですか? 所詮はブ男……」
――――うん、逃避行動はこれ位にしておこう。 さっさと返事をした方がよさそうだ。 ここで答えないとなると、連合に参加する気がないと認識されてしまう可能性があるしな。
でも、弱ったな~どう答えればいいのやら。
「さあ……な……案外近く…に……いるかも…な」
「ええ、そうでしょう。 そうでしょうとも。 おーっほっほっほっ♪」
何だか高笑いを始めた袁紹……本当にこれが英傑とされた袁紹なのだろうか? その部分が果てしなく疑問だが、如何にかこの場は切り抜けなければならないな。
「ねえ柚登さん……このままじゃまずいんじゃないかな?」
「そうだ……な……」
確かに、このままでは果てしなくまずい。軍議が全く進まないうえに、他の諸侯たちは自らが関わるのを避けようとしている。
このままでは話しが進まないうえに、俺の胃へのダメージが半端ないことになり、最終的にコル……ゲフンゲフン、金髪縦巻きロールにむかって盛大な何かを吐いてしまいそうな気がする。
仕方ない、此処は一つ腹をくくって立候補をしてみようかな。それに前世でもクラスの学級委員とかやってみたくて立候補した事がある位、積極性を持っていると自負しているくらいなのだから! ……ただ、何故だか俺が立候補をするときに限って2〜3人ライバルがいて、みんなの前で演説する際に持ち前の小市民を遺憾なく発揮して言いたい事を言えずに落選するっていうパターンが主だけれども。
「そもそ…も……俺…は…この場…の……殆どを…知ら…ん……誰…も……やりたく…なければ……俺が…やろ…う」
「ちょ、柚登さ「――――ちょーーっとお待ちになりなさい!」……へ?」
「貴方ごとき、どこの馬の骨ともわからない輩に任せるくらいでしたら、この気高く、誇り高く、そして優雅に敵を殲滅できるこの私、袁本初こそ連合の総大将に相応しいですわ!! ……ハッ!?」
「なら……任せ…た…」
正直、この某ダチョウさんが使っているギャグみたいな結果を出すとは予想外過ぎますね。って言うかさらりと馬の骨扱いされている事に悲しみを覚えたのはこの際忘れておこう。
「なら、決まりね。 『立候補』した袁紹が総大将になりなさい」
そう言ったのは、金髪の覇王っぽい空気を纏った人。
「我らも異論は無い」
更に付け加えたのは褐色肌のお姉さま……どこの国の人だろう?
「妾も問題ないぞよ」
しめたのはのは金髪妾口調のロリっ娘……この世界、ロリっ娘率高くね!?
「くっ……ならば決定ですわね!では、この私が連合軍の総大将になって差し上げますわ!」
どこか憎々しげな目で俺の方を睨んでくるが、俺は知ったこっちゃあないぜ。
だって、『立候補』したのは袁紹なんだからさ~
袁紹の宣言に少し苦笑いをしている諸侯の方々。 そして、何故か俺の方をみて微妙な視線を投げかけてくる諸侯の方々……え? 俺って何か変な事をしたかな? まぁいっかな。 後は袁紹に任せようと。
「戻る…ぞ……二人…とも」
「え? あ、はい」
「それではいきましょう桃香様、柚登さん。 あ、作戦内容は後で通達してください。 それでは失礼します」
朱里ちゃんがぺこりと袁紹へと頭を下げて俺達はその場を後にした。
それに続いて他の諸侯の方々も自陣へと戻って行ったのであった。
――――周瑜
あれが雪花の言っていた倅の凌統……か。 なるほど中々見どころはあるな。
あの場で袁紹を推すことは簡単だが、間違いなく袁紹はそれを逆手にとり駒にするつもりだったのだろう。
しかし、そこで凌統が自らが総大将にと名乗りを上げるか……流石の私もそこまでは予想できていなかったが、それに袁紹が釣られるとはな。 ……いや、おそらく凌統には確信があったのだろう。
そうでもなければ、あそこまで大胆な行動には移れまい。 そして、袁紹は自分で総大将になると発言してしまった。
後は簡単だ、全て袁紹に任せてしまえばいいのだからな。 そうなると、凌統たちには危険な仕事をする手間が省ける…か。
まさか雪花の子供があそこまでの逸材だったとはな……あれができるのは大がつくほどの馬鹿者か人の腹を探るのに長けている策士にしか無理であろう。 これならば、雪花があそこまで自身の息子をべた褒めするのもわからなくはないな。
「……私は陣に戻る。 決定事項は後ほど伝えてくれればいいわ」
「私も自陣に戻らせてもらう。 曹操殿、劉備殿と同様、作戦は後ほど通達してくれればそれでよい」
さて、私は今起きた出来事を雪蓮に伝えることとしよう。 奴のことだ、間違いなく凌統に興味を持つことだろうな。
さて、この連合……どう動くことになるのか、見ものではあるな。
ありがとうございました。
また次回もお楽しみに〜( ̄▽ ̄)ノシ