楽しみにしていただいている皆様申し訳ありございませんでした。
やぁ、凌統だよ。 連合の総大将を決めるとか何とかの話し合いの後、俺達は自分たちの陣営に戻ってきたんだ。 その最中、別の陣営の方からジロジロと見られていたような気もしないでもないけれど、そこは敢えて気づかなかったことにしようと思う。
さて、そして俺達三人は話し合った内容を簡潔に自分たちの陣営の人間に話したんだ。
「な、何だそれは!?」
まぁ、当然のごとく不毛なやりとりに愛紗さんが憤怒の表情を浮かべている。
鈴々ちゃんは、よくわからないといった顔をし、星さんは何かツボに入ったのか『ククク…』と不適な笑みを浮かべ、雛里ちゃんは顎に手を当て、何かを考えるように目を閉じている。
今気が付いたんだけれど、この陣営って十人十色って言葉がピッタリ当てはまるくらい個性的な面々が揃っているよね?
――――俺? 俺はほら、モブキャラAの立ち位置で間違いないはずだ。 ……きっと。
「柚登さんの采配により、総大将は袁紹さんに決定しました。 袁紹さんが『立候補』したのですから、私達には何ら憂いはありません」
朱里ちゃんが愛紗さん達に決定したことを伝えた。
うんうん、偶々とはいえラッキーな展開になったよね。
ただ、間違いなく袁紹の中で俺の印象は最悪な部類に入ったと思うけれど。
「しか…し……風当たり…が……強くはな…る……スマナイ」
「い、いえいえ! あ、あの場では寧ろ最良な展開かと思いみゃッ――――か、噛んじゃいみゃした」
く、クソーー! 朱里ちゃんは俺を萌え殺す気なのか!?
そんなかみかみな台詞をはかれたら血を吐きながら果てる事だって俺は出来るぜ!
――――とかまぁ、軽い現実逃避を行ってみた凌統君だったりします。
そんなピリピリとしており、尚且つモエモエな空気を吹き飛ばすかのような来訪者が現われたんだ。
「失礼いたします! 連合軍総大将袁紹様より書状をお預かりしてまいりました」
突然の来訪者は全身金ぴかの鎧でコーディネートされた袁紹軍の兵士だった。 どうやら、軍議終了後に作戦を考えたのでその書状を渡しまわっているらしい。
……そう言えば、軍議が終了した時点でほとんどの諸侯がその場から立ち去ったんだよな。 しかも、その口火を切ったのが俺たちだって言うのだから、袁紹さんからの風当たりが余計に強くなるかもしれないな。
そんなことよりも袁紹さんはどういった作戦を思いついたのやら。 兵が持ってきた書状は雛里ちゃんが受け取り、持ってきた袁紹軍の兵は足早にその場を後にした。
そして、雛里ちゃんはその書状を開き軽く目を通す。 さてさて、どういった作戦が書かれているのやら。 そんでもってロリっ子ではあるけれど鳳雛って呼ばれた名軍師の龐統はどんな見解を俺たちに示してくれるのか……
期待が高まる中、雛里ちゃんは一通り内容を読んだ後、直ぐに表情を曇らせてたった今届いた書状の裏を見たりしている。 ってか、なんでそんな事をしているのかな?
突然な雛里ちゃんの奇行に対して俺を含めた一同が疑問に思っていると、雛里ちゃんがだんだんと困った顔から少し泣きそうな顔に……って涙が流れ始めたんだけれど!?
あわわ~! と、取りあえず落ち着かせないと。
「どう……した?」
俺はなるべく優しい口調で雛里ちゃんのマジカルハットの上から軽く手を当てた。
俺の心配している様子に気がついたのか、目尻に少し涙を浮かべた状態で雛里ちゃんは無言のまま俺にたった今届いた書状をさしだした。
どうやら、読んでみろって言いたいみたいだ。 俺はその書状を手に取り、内容を流し見てみた――――
――――え?
『連合軍は雄々しく、勇ましく、華麗に前進するべし』
俺は反射的にさっき雛里ちゃんがしたように書状を裏返してみた。 しかし、そこには何にも記されてはいない。
何かの間違いで表側に落書きをしてしまって本来の作戦内容は裏側に書かれていると思ったんだけれど……なるほど、雛里ちゃんが困惑していたのも無理は無いかもしれない。 だってこれって作戦内容じゃなくて、ただの激励じゃね?
「柚登さん、なんて書かれていたんですか?」
ずっとダンマリを決め込んでいる俺を不審に思ったのか桃香さんが代表として聞いてきた。
兎に角、ここは書かれている内容を答えておこう。
「連合軍…は……雄々し…く、勇まし…く、……華麗…に前進する…べし」
『…………』
まぁ、当然の反応だと思うよ。 俺の言葉に雛里ちゃん以外の面々は呆れかえったかのように口をあんぐりとあけている。
「そ、それ以外は書かれていないのですか?」
朱里ちゃんが慌てた様子で俺に確信してきた。 とはいっても、裏まで確認したけれど何にも書かれていないし……
「……あぁ…何も…ない」
「そ、それは作戦とは呼べぬではないですか! 総大将が聞いてあきれる!」
烈火のごとく愛紗さんが怒鳴り散らした。 まぁ、その怒りもわからないでもないけれど、ここで怒鳴っても仕方がない。
それに作戦が無い以上、俺達が下手に動くとある意味で危険かもしれないしね。
「……作戦はなし…だ」
「えぇ!? ゆ、柚登さん……それはいくらなんでも「――――失礼いたします!!」って貴方は?」
桃香さんが反対意見を出しているさなか、誰かが桃香さんの言葉をさえぎって軍議の場に乱入してきた。 ……って副長さんじゃないですか!?
「今は軍議の最中だ! 何かあるのならこの後に……」
「なん……だ?」
あ、やっべ。 愛紗さんと言葉が被っちまったよ。 確かに愛紗さんの言うとおり、軍議のさなかに乱入はよくは無いよね。 副長さんには悪いけれど少しの間退場してもらわないと……
「――――ハッ! 先ほど袁紹軍の使者と名乗るものが我等の陣へと赴き、先陣は凌統隊に決まったと報告に参りました」
――――――――――ハァ!?
「ちょ、ちょっと待ってくだしゃい! 袁紹軍ではなくて劉備軍でも無くて柚登さん率いる凌統軍なんでしゅか!?」
あまりの突然の出来事に俺は会いた口がふさがらないぜ……驚いたってことだ。 それに、ほら見ろ。 あまりの驚きようで朱里ちゃんがセリフを噛みまくっていることを気にしちゃいないんだぜ?
しかも、劉備軍じゃなくて敢えて凌統軍を名指ししてきたとあっちゃあ、悪意以外感じられないっていうのが怖いところだな。 しかも袁紹さんの奴、俺が劉備軍に正式に入っているわけではないところを突いてきやがったな。
今の俺はあくまでも客将であり、凌統軍も正式には劉備軍には属していない。 元々、白蓮さんのところで客将をやっていたてまえ、そのまま客将の身分として劉備軍に属しているにすぎないのだ。
この連合内ではどうやら俺は独立した勢力と認識されているのかもしれない。
しかし困った。 凌統軍は人が少ないんだよね。 白蓮さんのところから引っ張ってきた兵に、最近徴兵して入隊した人数を足すと……劉備軍の中では一番多いけれど、連合の中では明らかに少なすぎるな。
「あまりにも一方的すぎるではないか!」
「鈴々もお兄ちゃんと一緒に敵をぶっ飛ばすのだぁ!」
「……鈴々よ、それはいささか論点が違うのではないのか?」
これはちと俺が出来る事のキャパシティをオーバーランし過ぎ……いや、少し待てよ。 これは上手く活かせば……どのみち袁紹さんに交渉する必要があるかもしれない。
だったら、その間に時間があるから話を進めてもらうとしようかな。
「少し……出る……後は…任せる」
そう言い残して俺は副長さんと共に袁紹さんの陣へと向かうこととした。
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「兵…一万…兵糧……よこ…せ」
そしてやってまいりました、袁紹の陣営です。 正直言って周りからの視線が怖いくらいに刺さっているような感じがいたしますが、そこは副長を盾に頑張るぜ凌統君!
「あら~? 貴方は確か私が先陣という武人にとって栄誉ある持ち場を託した凌統さんじゃありません事。 ……それで、何かおっしゃいまして?」
うっわ、話を聞かなかったことにしようとしているよこの人。 全く、上司にしたくない人間ベスト十入りしそうな人種だね。
イキナリ申請した俺もどうかと思うけれど案の定、袁紹さんは俺が提示した二つを飲む気はさらさらないようだ。
元々、先陣を切るにしても戦の定石は相手よりも兵を集めることである。 あ、これは母の受け売りね。 そんでもって、俺の隊には兵が圧倒的に少ない。 それに、兵糧に至っては桃香さんのところと一緒になっているので、凌統隊だけの兵糧はほぼ無い。
おっと、ここで一つ誤解を与えているかもしれないけれど、俺は先陣という役割を断りに来たわけではない。 だって考えてみ? ここで俺が頑張って凌統っていう名前が大陸中に広まれば――――
『何!? 凌統だと! くぅ……アイツに手を出したら俺達の命が危ねぇぜ……野郎共撤退だ!』
ってな感じで今後、無用な戦いをする必要が無くなるかもしれないじゃんか。 ……ふっ、一見ピンチに見えてそれすらも利用しようとするなんて……我ながら恐ろしい奴だぜ。
「……先陣を切る為に必要……無理…ならば…別の者に…頼め」
「クッ……まぁいいですわ、兵糧なんて唸るほどありますもの。 恵んで差し上げましょう。 ですが何故、兵まで。 しかも一万なんてどうして私がそこまでしなければいけませんの!?」
よし、兵糧はゲットだぜ! しかし、兵は中々寄こさないか。 無理もないか、そこまでする義理も人情もあったもんじゃないしな。
だけれど困ったな、俺達の隊には兵が圧倒的に不足しているし。 流石に少数で汜水関、虎牢関を落とせとか鬼畜すぎる。 どうやって説得すればいいのやら……
俺が手を拱いていると、意外なところから助け船が出された。
「僭越ながら申し上げます。 私、凌統隊の副長をさせていただいているものであります。 まずはこの度、我等凌統隊に先陣と言う栄誉ある持ち場をいただき感謝いたします。 ――――ですが、我等はまだ袁紹様ほどの有名はございません。 確かにここで先陣を切らせていただきますと我らの名が大陸全土に広まることでしょう。 それも一重に袁紹様のお心遣いによるものでございましょう。 ですが、どうせならば我等はこの栄誉を凌統隊だけではなく、有名名立たる袁紹様と共に手にしたいのでございます。 仮にこの場で袁紹様より兵一万拝借したといたします。 そうすれば我等の名だけではなく、影の立役者として袁紹様の名も全土に広まる事でしょう!」
す、すげぇ……流石は副長。 ここまで口が立つ奴なんて俺は初めて見たぞ。 っていうか、口下手な俺にはもったいないくらい口が立つ副長だなおい。
だけれど、ここで袁紹が納得してくれなければ意味が――――
「――――良いでしょう、貸してさしあげますわ。 一万ですわね」
納得したよこの人!? しかも、結構吹っ掛けたつもりの一万を丸々寄こしてくれるなんて……もしかして、袁紹って良い人+少し馬鹿なのかな?
「感謝す…る」
「感謝いたします袁紹様」
そうして俺は釈然としない思いを持ちながらも自陣へと戻るのであった。
――――一方その頃
「あんだとぉ! 柚登が先陣を切るだぁ!?」
俺は雪花。 今現在、孫策こと雪蓮に連れられて董卓連合って言うところに参加させられている。 そして、今まで軍議が行われていたらしいんだが……何だって柚登が先陣になっちまってんだよ?
確か、冥琳の話しによると連合軍は東の汜水関っていうところから進軍するだろうって事だが……
しかし解せねぇぜ。 何だって柚登が先陣なんだ? 其処まで巨大な勢力の筈じゃないんだが……ってか、影の薄い奴の所にいたんじゃないのかよ?
「軍議でのお前の息子の様子……あれは見ものであったぞ。 結果的に総大将は袁紹が務める事となったが、アヤツが就いていれば逆に我等は動きにくくなっていたであろうな」
「あら? ならここは総大将に『立候補』してくれた袁紹に感謝しないといけないわね♪」
俺の言葉を無視するかのように冥琳と雪蓮が柚登について話し始めた。 冥琳の話しによると、軍議の場で柚登が上手いこと袁ナンチャラを丸めこんで総大将に立候補させたとのことだ。
しかし、一歩間違えていたら柚登が総大将となっていた可能性もあったらしい。 まぁ、自分の息子だがポッと出の柚登が総大将になろうものならば諸侯から反対の意見が出ていたとは思うんだがな。
まぁ、袁紹が総大将となったもんだから俺達が自由に動けるってのはわかる。 だけどな……明らかに柚登に先陣を切らせるのは猿……あり? 何だか名前が違う気がするんだが……まぁいいや。 兎に角、そいつの思念が混じりに混じってんだろうが!
「――――でもまぁ、ここで恩を売っておくのも一考かもしれないわね」
「ほぉ、雪花の息子を我等孫呉に引き入れる為の餌とするのか?」
あん? こいつ等、なに小声で話していやがるんだ? 全く、柚登が危ねぇ言うのにこいつ等は……あ、そういや冥琳以外は柚登に会った事もねぇんだったな。
しっかし、どうしたもんかねぇ。 俺は雪蓮に使われている以上、下手に動くわけにはいかねぇ。 幾ら愛する一人息子の一大事だからと言って雪蓮達に迷惑をかけらんねぇぜ。 ……ぶっちゃけ、下手に恩を受けて借金が増えるのはごめんだぜ。
……いや、冷静になって考えろよ俺。 柚登が先陣を切るって話しが出ているんだ。 あの柚登が黙って行動に移るものなんか?
俺の知っている柚登ならば、これ見よがしに自分に有利になるように状況を変化させていくのじゃないか? 俺が言うのも変だが、あいつは将と軍師を併せ持っていやがる。 戦(いくさ)は生き物みてぇに状況が変わりやすい。 あいつならば戦況を見抜き、それに見合った行動に移る事は容易い筈だ。
だったら、きっと柚登は想定しうる事柄には対処できるように何かしらの行動を取っている筈だ!
間違いねぇ!! アイツは……柚登はそういう奴だ! きっと今頃……
「それじゃあ、少し劉備の所に『挨拶』にでも行きましょうか……雪花も行く?」
「おうさ、もちのろんだぜ!」
なんでぇ、雪蓮たちも何だかんだ言って柚登を助ける気満々じゃねぇか。 いしし~待ってろよ柚登! 母ちゃんが助けに行くかんな!!
ありがとうございました。
徐々にストックがなくなってきましたが引き続き宜しくお願いいたします。
ではでは次回もお楽しみに〜( ̄▽ ̄)ノシ