Re:俺⁉︎   作:かみかみん

25 / 31
第ニ四幕 攻め込んだって

 やぁ、いつも厄介事に巻き込まれて不幸体質だと自負している凌統だよ。

 俺は今、正に絶体絶命の状態に陥っていたりする。 え、意味がわからないって?

 大丈夫だ、俺自身も何でこんなところにいるのかが訳が分からない。 取りあえずは状況が分からない人も多いだろうから、俺の目の前の状態を教えておこうと思う。

 

「たった二人で乗り込む……か。 その気合いは良しやけれど、たった二人で何ができるか分かってんのか?」

 

「張遼、その男はお前に任せる。 私はこっちの女を相手する!!」

 

 あはははは~……はぁ、今現在俺の目の前には眼の釣り上ったデフォルトで胸にサラシを捲いて袴をはいている女性と特に特徴もなく血気盛んっぽそうな印象の女性が立っている。

 そして気が付いた人もいると思う。 張遼と呼ばれたこの袴の女性は”二人で乗り込む”と言ったんだ。 まぁ、此処まで説明すればわかる人も多いと思う。 って言うか、わからないとおかしい。

 そうなのだ、俺は今現在――――――

 

「ケケケッ! 柚登、そっちの破廉恥な女は任せたぜ! 俺はこっちの女を相手してやる!」

 

「誰が破廉恥や! 喧嘩売ってんのか!? いやそもそも、たった二人でこの汜水関に乗り込んでくるってどんだけ阿呆な二人組やっちゅうねん!?」

 

 ――――――母と二人で汜水関内部で乱闘騒ぎを起こしていたりする。

 

 さて、此処に至るまでには色々と経緯があるのだが、説明しておこう……

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 

 俺はその時、袁紹軍一万人・孫策さん達と一緒に汜水関の眼の前に陣取っていた。

 

 なに、簡単に言えば汜水関の籠城戦の前線を任されただけだからさ~ あっはははは……はぁ、マジで溜息が下がる心境だぜこの野郎。

 

「どうしたの? 辛気臭い顔し……って凌統はそれが普通か」

 

 俺の傍には孫策さんがいた。 流石に美人さんを横にしてやる気が出ないなんて事は俺に限ってある筈がない。軽くディスられていてもそれすら気持ち良く感じるとは――――――

 そうか……これが男としての性(さが)か……

 

 

 さてさて、俺の横に孫策さんがいる事に対して急な事すぎて驚いた人もいると思う。簡単なことだ、俺は前に言われた孫策さんの提案を条件付きで受けたのだ。

 

 条件と言っても、難しい事じゃない。 反董卓連合が終わるまでは俺の手伝いをすること。

 孫策さんの元に行くのは良いけれど、その時期はこちらが決めること。 これは桃香さんのところに残した仕事を終わらせたり、引継ぎをすませたりしたいからだ。

 そして最後に……俺が孫策さんの元に着いた後でも桃香さん達とは仲良くし続けること。 これについては、これからお世話になるところと今までお世話になったところが争い合うのが嫌なだけな俺の自己満足だったりする。

 

 さて、俺が出した条件は以上の三点だ。 自分で言うのもあれだけれど、かなり我儘な内容だと思う。

 だって、これだけ条件を出しておきながら孫策さんのメリットが何一つ見当たらないからだ。

 唯一あるかもしれないのは、俺が孫策さんの元に着くという事だけ。

 

 しかし、それでも孫策さんは嬉しそうな顔をしながらか全ての項目を了承した。 ……マジで裏とか無いか不安になってきたぜ。

 もし裏が無いのなら、どんだけ孫策さんは優しいのだろうか?

 美人で優しくて王様でって……流石に俺には高嶺の花過ぎるぜ。

 

「それで、孫策さんはどのようにして汜水関を落とすおつもりなんですか?」

 

 そう言いながら桃香さんが俺の背後から近づいてきた。

 ……俺の邪念に反応したのであろうか、一瞬こちらを見たような気がする。

 

 さてさて、なんで桃香さんが汜水関の籠城戦の前線にいるのかと言うと、孫策さんに条件を突き付けたあと、桃香さん達も俺達と一緒に先陣をきると進言してくれたんだ。

 俺としては仲間は多いに越した事はないから、その申し出を有り難く受けることにした。

 そう言えば、孫策さんに提示した条件の事を皆に話したところ、何故か皆の顔が驚いた様な表情になり『信じていました!』みたいな事を言われたんだけれど……ナニについて信じていたのかが疑問すぎて怖かったぜ。

 だけれど、聞き返すわけにもいかないから俺も『これからもよろしく』的なニュアンスな事を返しておいた。

 

「そうね……華雄は昔、私の母にボロ負けしたって経歴があるのよ、そこを挑発すれば簡単に開城するんじゃないかしら?」

 

 とまぁ、こんな流れで特に危険な事もなく汜水関を落とす予定だったんだけれど……

 

「んなまどろっこしい事する必要なんてねぇよ! あんな所、俺と柚登にかかればスグだゼ!!」

 

 何故か一介の将である筈の母が会話に流れ込んできた事によって話がややこしくなってしまったんだ。 事なかれ主義の俺にとって母の発言は俺に危害を加える事以外全くないので即座にその母の発言をもみ消そうと思ったんだが……

 

「ですが母上殿、流石にお二人でもあの堅固な水関を落とすとなると……」

 

「んだよ黒髪~さっきとは態度が偉く違うじゃねぇかよ? ってか、俺と柚登だぜ? あんなの簡単に落とせるっての!」

 

「いえ、それについては先ほど謝罪を……」

 

 救世主愛紗さん現る!! そうだ愛紗さん、もっとこの常識知らずな母に言ってやれ!まったく、母も母だぜ。 あれだけ常識は身につけておけって言ったのに……勉学をサボっていやがったな。 ……今度、孫策さんのところに行ったらみっちりと教え込んでやろう。

 

「あのね雪花、いくらアンタ等が強くても、根本的にあの門を開けない事にはだれも中には入れないの。 しかも左右は崖に面している特殊な地形だから、正面または裏手しか侵入は不可能。 城壁の上には兵たちが弓を持って待機しているからよじ登るのも不可能。 もう一度言うわよ、絶対にム・リなのよ!」

 

 流石に母の発言を聞いていられないと思ったのか、孫策さんも母を止めるような発言をした。 確かに汜水関は孫策さんの言うとおり左右を崖に囲まれると言う特殊な地形で正面と裏しか入れない。

 恐らく母の頭の中では内部に入るという工程を考えずに董卓軍兵士相手に無双を開いている姿しか考えていない事だろう。

 孫策さんの言葉に流石の母も身を引くと俺は思ったんだが――――――

 

「んだよぉ、皆して無理無理言いやがって……みてろよぉ!」

 

 母がそう発言すると自身の腰に差していた三節棍をおもむろに手に取り……

 

――――カシャン、カシャン

 

 三節棍の連結部がそれぞれを嵌め込まれて一本の棒を形成した。 連結していた鎖は嵌め込む際、棍内部へと収納されていった。

 ……ってか、三節棍って繋げて棍としても使えるんだ。

 

「――――よっしゃ、行くぜ!!」

 

 母はそう意気込み、単騎で水関へと突撃していった。

 

 

 って、半ば感心している場合じゃねぇ! 母を早く連れ戻さないと俺の考えが正しければマジで単騎で水関内に突貫しかねないぞあの人!?

 あまりにも一瞬の出来事で周りの皆はポカーンとしていたが、直ぐ正気に戻った。

 

「あの馬鹿! なに、本当にやってんのよ!? 祭、雪花を連れ戻しに行くわよ!」

 

「了解じゃ策殿! ……しかし、あの速さでは追いつけるかどうかもわからぬぞ」

 

 いち早く行動に移したのは孫策さんであった。 孫策さんは孫策さんと同じく褐色肌の妙齢の女性と共に母を連れ戻しに行こうとしているようだが、無駄に身体能力が高い母にはきっと追いつくことができないってのを知っていると思う。

 ――――いや、あの母を連れ戻すことのできるスピードを持っている人物がたった一人いるではないか。 しかし……

 俺はたった一人、突貫していき小さくなっていく母へと眼を向けた。

 

 あの人が負けるとは到底思えないが、万が一って言うこともある。 しかし、そのたった一人、連れ戻すことのできるスピードを持っているのが『俺』って時点で色々とつんでいる気がするよ。

 

 俺は内心で大きくため息をつくと、誰にもなにも告げず地面を思いっきり蹴り母が向かって言った方向へと足を急がせた。

 後ろの方で桃香さんや孫策さん達が何かを叫んでいたような気もするけれど、俺はそれを気にする事無く母を追いかけた。

 だが、どうやら俺が事を起こすのが少し遅れてしまったようだ。 確かに母との距離は徐々にだが縮まってはいるものの、俺が追いつくよりも早く母が水関の城壁にたどりついてしまったのだ。

 そして、単騎突貫してきている母に董卓軍も気がついたのであろう。 矢がまるで雨のように俺に向かって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――って、俺狙いかよ!? ……あ、母はあまりにも城壁に近づいているもんだから死角になっているのか~

 内心で、そ~なのか~と呟きながらも持って生まれた身体能力と反射神経で雨のごとく降り注いでくる矢を避けたり時には三節棍を駆使して凌ぎ続けた。

 その間にも母は態勢を低くして高飛び選手見たく足をバネのように縮めた。 その一拍後、母は高飛び選手もビックリな跳躍を見せた。

 しかし、城壁の高さは正確にはわからないが、20メートル近くある様に見える。 いくら母が常識破れの人とはいえ流石に中腹辺りで失速しているのがわかった。

 母もそれを感じたのであろう、突然手にしていた棍を石垣で構成された城壁に突き刺したのだ。

 ……俺はいいとして、母は本当に生身の人間なのかが疑問だぜ。

 そして母は突き刺した棍を足場にして、先程高飛びをしたように身を屈めて同じように……まるで天に落ちているかのような錯覚に陥るほどの速度で飛び上がった。

 そのまま母は、一気に城壁のてっぺんまで行き姿が見えなくなった。

 

 

 

 ――――――えっ!? や、やばい! このままじゃ見失う!

 そのように決断した俺は早かった。 絶えず矢が降り注ぐ中を真っすぐ城壁へと向かい、母が城壁に突き刺した棍目指して地面を思いっきり蹴り跳躍した。 ふと、気がつくと先ほどまでの矢の雨が嘘のように消え去っていた。

 多分、母が乱入した事によってそれどころではなくなったのだろう。 その辺についてはあまり深く考えずに真っ直ぐ、寸分の狂いもなく棍へ向かった。

 

 まるで、天に向かって全力疾走しているかのような錯覚に教われ、自身が矢のような速度でみるみるうちに地が遠ざかる。 そして、あっという間に俺の手の中に母の棍が治まった。

 よし、後はこれを足場にして俺も母みたいに城内に入って首根っこでもなんでも掴んで母を連れ帰れば終わりだ。

 

だが、そこで何時もの如く予想外な事が起きてしまった。

 俺が思いのほか力強く地面を蹴ってしまい、棍を掴んだ程度ではその勢いを殺す事が出来なかったのだ。 しかも、刺さっていた棍が抜けてしまうというビックリドッキリハプニングまでもが発生したのだ。

 ……ぶっちゃけ、呪われていないか俺って?

 そして、俺は母の棍を手にした状態で文字通り天へと登って行ったのだった。

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 とまぁそんな事があり、よりにもよって着地した地点が董卓軍の将二人と母が混線していた場所に乱入してしまい、気が付いたら槍の刃先をこちらに向けた張遼さんと対峙しているわけなのさ。

 

「構える事もせえへんなんて、随分と余裕かましとるやないか」

 

 余裕じゃなくて、少し混乱しているだけなんだけれどね……おっと、流石に刃先を向けられた状態で余裕ぶっこいていたら危ないか。 俺は手にしていた母の棍を地面へと捨て、自身の腰にさしてある三節棍を構えた。

 その様子を見て張遼さんの口角が少しだけ上がった気がしたんだが、気のせいかな?

 

「そうや自己紹介が遅れたわ。 ウチは張遼、字は文遠やアンタは?」

 

「……凌…統……公積」

 

「へぇ~アンタが『戦乱を凌ぎ全てを統める者』か。 まさか、こんなところで御目にかかれるやなんて夢にも思わなかったわ」

 

 張遼さんは俺の名前を知るとケラケラと無邪気に目を細めて笑い出した。 ……何て言うか、こうやって笑顔を見せられるとただの美人さんで通るのに、手にしている槍が全てを台無しにしている気がするのは決して俺だけではないと信じたい!

 

「黙りか……折角、名だたる凌統と手合わせできる機会やけれど、さっさと決めさせてもらうで」

 

 そう言うや否や、張遼さんは無双のスキルにある神速並みのスピードで斬り掛かってきた。

 俺は咄嗟に身体を反転させて避けた。 しかし張遼さんは刃の軌道から俺の身体がずれたと判断するとすかさず槍の軌道を修正して回避した俺を捉えようとした。

 急な事で驚いたが、俺も半端ないくらいの反射神経を有しているんだ、その後も何合か張遼さんの槍を避け続ける。 時には上段から、そこから薙ぎ払いも加えてフェイントを織り交ぜた下段……

 

 って言うかこの人……強くないかな!? いや、強さもさる事ながらそれ以上にこの張遼さんの槍が半端ないスピードなんだ。

 なんとか避けることは可能だけれど、チート気味な身体能力を有している俺でさえギリギリで回避をしているなんて……このスピードは少し洒落になっていないかもしれない。 だって、槍の軌道で残像が沢山見えるんだもん。

 

 って言うか、三節棍を構えておきながら未だに使っていないという現状に少しだけ驚いたな。 あり?そう言えば母って持っていた三節棍を城壁にさしたまま突入して、その三節棍は俺の足元にあるんだけれど……

 

 

 ――――――母って今、どうやって戦っているんだろう?

 

 

 至極どうでもいい事を考えながら俺は張遼さんの攻撃を避け続けたのであった。

 




ありがとうございました。

また次回もお楽しみに〜( ̄▽ ̄)ノシ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。