先日ぎっくり腰になってしまい、パソコンの前に中々座れず長引いてしまいました。
何とか書き上げたのですが、次回も引き続き遅くなるかと思います。ご了承ください。
やぁ、呂奉先こと呂布によって虎牢関に連れていかれそうな凌統だよ。
まさかの事態だ。 まさか、飯を分け与えた腹ペコ少女が飛将軍こと呂布だったなんて……もしかして、捜していたっていうセキトっていう犬は正式名称が赤兎馬ってオチなのだろうか?
……ある意味で歴史が引っ繰り返る出来事だよな、馬じゃなくて犬だったなんて。
「……どうしたの?」
おっと、あんまりな現実に意識が少し反逆していたんだが呂布ちゃんの心配そうな声で無理やりリボーンしてきたぜ。
「何でも……ない」
「……うん」
「…………」
「…………」
あれだね、俺は極力無口な人と一緒にいないほうがいいかもしれないよね。 話が全くつづかねぇ~……ふぅ。
だけれど、本格的に困ったな。 俺ってば、一応現段階では呂布と敵対関係にある位置に属しているんだよね。 無理に断って下手に感づかれたりしたら……やめよ、どう考えてもバッドな終わり方しか見えてこないや。
……だったら、さっさと飯だけもらって何事も無かったかのように帰るのが吉かもしれないな。
この時の俺は敵地に乗り込むことに関して然程大きく考えてはいなかった。
だって、ご飯を御馳走になってその後にこっそりと帰れば問題ないと思っていたんだ。
目撃者だって目の前にいる呂布と、犬のセキトだけだし。 中に入っても呂布の客人として来たわけだから酷い扱いもされることは無いと思う。
だから、開かれた裏口へと俺はなんら疑問を抱く事なく入っていった。
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「――――お前は凌統やないか! 何時の間に虎牢関に侵入したんや!?」
――――そう思った時期が俺にもありました。しかし、俺の目論見は奇しくも崩れ去ってしまったのだ。
気が付けば俺の目の前には先日汜水関で会ったばかりの関西弁少女の張遼が現れたのだ。……いや、正しくは現れたではなくて、虎牢関に元々配備されていたみたいだ。
……よく考えれば思い付くことじゃないか俺。
軽く自己嫌悪に陥るも、所謂後のフェスティバルだ。 今更悔いても仕方がない。 そして、俺をココ(虎牢関)まで連れ出した呂布は何が何だかわかっていないみたいで、俺と張遼の顔を頻りに見比べている。
「霞……知ってるの?」
「何や恋、知らんで招き入れたんか? コイツには汜水関で苦渋を飲まされたんや!」
張遼さんの言葉を聞き、呂布が俺へと向き合い口を開いた。
「……敵なの?」
どことなく悲しげな表情を見て、一瞬だけ『イイエ味方です』と言ってしまいそうになったが、そばに張遼さんが居る以上、下手な嘘をついたとしても直ぐにばれてしまう。
しかし、敵だということを肯定してしまったら後々が怖いことになりそうだ。 だって、目の前にいるのは癒しオーラを持っているとはいえ、飛将軍こと呂布なのだ。 幾ら俺が力だけ人間離れしているとはいえ無事で済むとは思えない。
何も言わずに逃亡って言う手もあるけれど、いつの間にか周りは兵士に囲まれているし、ここは虎牢関の奥深くなんだ。 そう易々と逃げることも出来ないだろう。
……あれ?もしかしなくても詰んだのか?
弱った……ここに誰かがいてくれれば、連携して一次離脱を図ることができたかもしれない。……訂正だ『母以外の誰かが』居てくれればよかったのに。
あの人だったら、逃げるという選択肢の前に大暴れという選択肢を独自開拓して最終的に俺が尻拭いをするという光景が浮かぶもんな。
「……どうなの?」
おっと、考え込みすぎて呂布達を無視してしまっていた……って、ギャァァァ!? め、目の前に何だかごっつい刃があるんですが!?
り、呂布が持っているって言う事は、これがかの有名な方天画戟なのですか!
しっかし、見事なまでに敵視されまくりんぐだぜ。 ここで嘘言ったらバッサリで、本当の事を言ってもバッサリ……しゃあない、ここは一つ――――――
「…………さらば!」
三十六計逃げるに限るぜ! 俺は呂布と張遼へと背を向けて兵の集団へと島津義弘よろしくばりに突貫し始めた。
俺のまさかの行動に呂布と張遼はすぐに行動を起こしたみたいだが、俺の突撃は止まる事は無い。強引に兵たちの隙間をぬい、離脱を図る俺。
兵たちもただでは通さないと言わんばかりに隙間を詰めて俺の進路を塞ごうとしたり、槍や剣を突き立てて行く手を塞ごうとする。 しかし、そこは身体能力が反則レベルの俺だ。 そのわずかな隙間をぬって走ったり、三節棍で槍と剣の切先を僅かにずらし、出来た隙間を走り抜けり、時には兵士を踏み台にして飛び上がったりもした。 これくらいの事は今の俺には造作でもない!
…事もなく、微妙に穂先が上腕やら頬にかすってプチ流血っていたりしたし、人を踏むのは良い気がしなかったから飛び上がるのは直ぐにやめて普通に地面を走るようにシフトチェンジしたけれどね。
さて、流石に兵たちの隙間を走り続けても幾らかく乱できるとはいえ、逃げる事は出来たもんではない。 それに、後ろからは呂布と張遼が追ってきているんだ。 兵たちが邪魔で俺にはまだ届いていないけれど、兵たちが散り散りになってしまったら俺なんかはすぐにつかまってしまう。
俺の手元に使えそうな道具は……
・三節棍
・火付けセット
・松茸っぽい何か×大量
……何故だ、この現状を打破する方法が見つからない……だと!?
まぁ、堅実に行けば火打石でどこかに火をつけて混乱しているすきに逃げだすって言うのが定石だけれど。
「――――なぁ!? あ、アイツが持っているもんはここいら近隣に生えるっちゅう猛毒の茸や無いか!?」
「そう……なの?」
……そう言えば、聞いた事があるな。 松茸によく似た茸があってそれは猛毒を持っているって……成程、これは毒キノコだったのか。 それじゃ、かさばるだけだし捨てておこう。
「ぎゃーーーー!? こ、こっちに投げんなやーーーー!! って恋はそれを拾うんやない!!」
「でも……もしかしたら食べられ――――」
「食べられんから!今度ウチがもっとええ茸を食べさせてやるさかい、ポイしなさい!」
「……わかった」
もしかしなくても、今ってまさに逃げ出すのに絶好のタイミングなんじゃね?
張遼と呂布が漫才をやり始めたのを確認した俺は、二人に気付かれないように兵達の隙間をジグザグに走りだす。
別に直ぐ様見失うって事は期待していない。 ただ、一瞬だけでいいから二人の意識を俺から反らすことが出来ればいいのだ。幸いなことに兵達も呂布と張遼のやりとりを見て一瞬だけ俺から意識を外している。
我ながらほれぼれするけれど、その意識が外れた一瞬をつき俺は虎牢関の頑丈な壁へと向かって一気に跳躍した。
……以前、汜水関で似たような事をしたけれど、俺ってつくづく人をやめているよな。流石、あの親ありてこの子ありって感じだな……うん。
呂布と張遼は俺が飛び上がった事に気が付いたみたいだけれど、時すでに遅しというやつで、ロッククライミングばりに城壁へとしがみ付いている。 ……昔、母に修行と称して崖から突き落とされた事を不覚にも思い出しちまったぜ。
そんなことを考えながら俺は要塞の壁を四肢を駆使して攀じ登った。 途中で矢が何発か飛んできて、その内の一本が顔の真横に刺さった時は流石に死を覚悟したぜ。 しかし、悪運が強いのか矢が俺に刺さることはなかった。
そして、要塞の屋根へと上り切った俺は直ぐ様行動を起こした。
木造で出来た屋根の一部をひっぺ返し、持参していた火打ち石をかち合わせ、飛び散る火の粉を綿みたいな火口へとあてがい、火を点けた。
前世ではまず出来なかった動作ではあるが、この世界で母と旅をするにあたって習得したサバイバルスキルがこんな形で役に立つなんて……世のなか解んないね。
トントン拍子で火を起こし、剥がした屋根へと火を移すとすぐに火は焚き火並に大きく成長をした。
さてさて、後はこれをいろんな所に投げて、虎牢関内の兵達を混乱させてソレに乗じて俺は脱出するだけ! ……我ながら、素敵すぎるアイディアで恐ろしいわ!
ただ、ここで俺は失敗してしまったんだ。今現在俺が足場にしている屋根が木造だということを……更に、木造建築の上で焚き火をするなんてしたらどうなるかを……
火を起こして半刻も経っていないだろう。 火は俺の予想していた以上のスピードで燃え広がり、虎牢関要塞の屋根を覆いつくした。
俺は、火が屋根へと燃え移った瞬間に飛び降りたもんだから火傷とかはしなかったけれど……
「火を消せーーーー!」
「不味いぞ、兵舎へと広がっている!」
「逃げろーー!」
「……開いた」
「阿呆!そっちの城門を開けたら連合軍が……って恋、勝手に攻めるんやない!……あーーコナクソッ! しゃあない、張遼隊は右翼から攻めるで。呂布隊の援護に回るんや!」
……なんか、ラッキーな出来事が起きた。
そうして俺は、混乱に乗じて虎牢関からの脱出を試みたのであった。
――――一方その頃……
「伝令! 虎牢関要塞より出火を確認いたしました!」
凌統の安否を気にしていた劉備軍へと舞い降りた一つの伝令が皆の士気を高めた。 理由は言うまでもなく、凌統が極秘で行っていたであろう計略の合図が起きたからだ。
凌統の合図があるであろうと予見はしていたのだが、ソレは中々始まることがなく、彼女等に一抹の不安をもたらしていた。 だが、彼女等の心配も杞憂に終わった。
さらに混乱に乗じて虎牢関を防衛していた呂布、張遼が飛び出してきたのも確認した。
単独で火計を成し、さらに将達をも引き摺りだした凌統の手腕……それは正に神掛かりなものである。
単独行動はそれによりもたらされる損害により場合によっては死罪に当てられるほど重罪ではある。
だが、反対にそれによりもたらされる利益によっても変化する。
今回は難攻不落の虎牢関が相手だ、それを兵達を消耗する事なく引き摺りだしたのだ、きっと罪には問われる事はないであろう。
「流石は柚登さん、次は私たちの番だね。……朱里ちゃん、どう動こうか?」
「はい、ソレも考えてあります。 今の私達に呂布と張遼の二人を同時に相手するのは難しいでしょう。 なので、ここは一度大きく後退します。 幸いにも私達の後ろは袁紹さんと袁術さんという兵力がある方々が揃っています。 ですから……」
「……うむ、しかし敵に背を向け退却するのは武人として――――」
「愛紗よ、今はそんな事を言っている場合ではなかろう? それに、我等が軍師殿の話はまだ途中のようだ」
孔明の策を聞き、関羽が武人として苦言を呈した。 無理もないだろう、彼女は生粋の武人。 敵に背を向ける自分の姿など想像もつかない筈だ。
そんな彼女を宥めたのは常山の登り龍こと、趙雲だった。 彼女もまた関羽と同じく武人だ。 だが、趙雲は孔明の真意に気が付いていた。
我等が背を向けるのは反撃への伏線だということに……
「はい、呂布・張遼が袁紹・袁術と混戦した後、私達は全兵を反転させ、虎牢関へと一気に走り抜けます」
「成る程……柚登の単独火計の隠蔽と初めに虎牢関へと攻め入ったのは劉備・凌統であるとするためか……ならば、孫策殿は如何なされるのか?一時とは言え手を組むと交わしたのであろう?」
「それも問題ありません。袁術の兵力を削るだけで孫策さんには充分過ぎるほどの恩を売れるはずです」
孔明の言葉に劉備と関羽は怪訝な表情を浮かべる。 一方の趙雲はその言葉に感じたものがあるのか、小さく『なるほど』と呟いたのだった。
「雛里、一体何を話しているのだ?」
「えっと……そ、それよりも早く動いたほうがいいんじゃ……」
鳳統の呟きが小さく響いたのだった。
――――その時母は……
何でか知らねぇが、虎っつう関所から火がゴウゴウと出ているんだが……
「雪蓮、どうやらあの炎は凌統の仕業のようだ」
「そう、何か仕掛けるとは踏んでいたけれど、まさか朝っぱらから単独で火計を仕掛けるなんてね」
雪蓮へ冥琳が報告している様へと俺は耳を傾けた。 ってありゃあ柚登がやったのか? 何だよぅ……俺も一緒に連れていってくれてもバチは当たらねぇのによ~
ここに居ない自分の倅へと愚痴をこぼしてみるが、よくよく考えたらアイツが人に頼る姿が想像できないな……俺の教育の賜物ってやつだな。 さすが一人前の男は違うぜ!
「雪花、アンタ一体どんな育て方をしたのよ? 朝っぱらからしかもたった一人の火計なんてほとんど聞かないわよ?普通、夜営に乗じて忍び込んで同時刻複数箇所でやるってのが定石なのに……」
「それと、風向きによっては味方の兵にも損大な被害を受けかねない。 まぁ、幸いなことに陣の展開は風上の為被害は少ないが」
「ん? そう言われてもなぁ……俺もそんな事を言った覚えはないんだよな。 まぁ、火計つっても見つからないようにやりゃ朝も昼も夜も人数も関係無いんじゃねぇのか?風のことだって柚登なら狙ってんだろ」
「……成程、アンタ等は似ていないようで根本的なものがソックリだって言う事が分かったわ」
おぉ、柚登に似ているって言われたぞ! 今までそんな事を言ってくれた奴らなんて一人もいなかったからなぁ~それはそれで嬉しい事だな、うん!
「今はそんな事を言っても始まらんな。 それに見ろ、劉備軍が後退を始めた。 このままでは我等が戦線にて孤立するぞ?」
ん?後退って……ありゃりゃ、本当に攻め込んでくる敵に後ろ向いて逃げていやがる。 まだ衝突もしてねぇのに逃げるなんて変な奴らだな。
そんな俺の考えをよそに雪蓮と冥琳は何か思い当たる節があるのか、口角をグイッと挙げて楽しそうな表情をした。
「なるほどね……劉備たちも考えるじゃない。 ――――――冥琳!」
「――――――了解した、我等も陣を引くぞ!」
って、俺達も引くのかよ!? 理由を聞こうにも、雪蓮と冥琳は各々の準備を始めちまって聞けなくなっちまった。
しゃあない、誰か別の奴に……お、あんなところに穏が居るじゃねぇか。 アイツは変な奴だが一応軍師だからな。 何か思い当たる節もあるかもしんねぇや。
「なぁなぁ穏、なんで俺達も引くんだ?」
「あれ、雪花さんじゃないですかぁ。 何で逃げるのかって? ……そうですねぇ~あんまり難しく考えなくても良いんです。 敵が攻める、私達は深手を負いたくないから逃げる。 ついでに嫌な方々が少しでも減れば嬉しいなぁ~って事ですよ」
……わかったようで全くわかんねぇや。
ありがとうございました。
前書きでも記述した通り次の更新日は未定ですのでご了承ください。
…まさかこの歳で腰をやるとは、皆様も注意して下さいね!
ではでは次回もお楽しみに〜( ̄▽ ̄)ノシ