――――趙雲
我等が村に着いたときには粗方終わった後であった。
……いや、この表現は正しくあるまい。
正確に示すとしたら、我等が村に着いた瞬間に黄巾党の一軍を束ねていた輩が討ち取られたのだ。
討ち取ったのは髪を後ろで結った青年…
まだまだ荒削りな方法ではあるが、研けば間違いなく将として開花する…
それ程迄に鮮やかな手並みであった。
まさか、背後から自らを襲わんとする投槍を紙一重で回避したのち、自分の得物を投擲。
恐らく殺された黄巾党の頭は自分の仲間が槍を投げたことに気が付いたのだろう。
その為内心では、あの青年は既に亡き者として扱っていたに違いない。
そしてあの青年は、その敵の満身した隙をついて一瞬でかたをつけた。
……成る程、私も白蓮殿も不安を感じぬ訳だな。
あれほどの手慣れがいるのだからな。
「なぁ、星…」
「なんですかな白蓮殿?」
どうやら、二人揃って見入ってしまっていたようだ。
白蓮殿の声で我に返った私は何食わぬ顔で白蓮殿の問い掛けに答える。
「私らが来る必要ってあったのか?」
ふむ、確かに白蓮殿の言うことも解らないわけではないが…
「どうでしょうな……ですが、あれ程の逸材を見つけることが出来た。…それだけでも来た甲斐があったと言うものではありませぬか?」
「確かに…お? 私等に気が付いたみたいだぞ」
頭が討ち取られたことにより、取り残された数百名の賊は統率を失い、有象無象の集団に成り下がる。
敵前逃亡をはかるもの、無謀にも挑んでくるもの…それらを駆逐するのに差程、時を有することはなかった。
――――凌統
何とか生き残る事が出来た凌統君です。
なんか感動している母を置いておき、俺は無くしてしまった相棒(と言う名の三節棍)を探し始めた。
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…………うん、まぁわりと簡単に発見することは出来ましたよ。
因みに、第一発見者は俺ではなくて黄巾党討伐に来たであろう赤っぽい髪をした女の人だ。
「お前凄いなぁ。この武器頭にめり込んでるぞ?」
……いや、少しどころの驚きではありませんです。
だって考えられますかな?
無くした物が人の頭から生まれ出ている状況なんだぜ?
まるで脳ミソと三節棍が入れ替わったかのように頭から三節棍が生えている…と言うか額から後頭部にかけて貫通している状態だぜ?
下手なB級ホラー映画以上にグロっぽい映像が生中継だぜ?
しかし、流石にそのまま放置しておくには忍びないし…具体的にはさっさと武器を回収したいです。
意を決して俺は黄巾党と頭に刺さっている三節棍に手を伸ばし…
―――――――――――――――ズリュ
生々しい音を響かせながら三節棍を力一杯引いた。
途端、頭部の大穴から勢いよく流れだす血と血ではない灰色に似たような固形物…
…………ま、まぁコレが何かと言うことは考えないようにしよう。
ソレよりも今は、この血も滴る三節棍をどうにかしなければ………………お?良いもん発見~
俺は地面に落ちていた黄色い布を手に取り三節棍を汚している血を拭った。
恐らく、そこら辺で死んでいるか寝ている奴らが頭に巻いていたものだが、今はそんな事お構いなしだぜ!
「フッ…中々度胸がある御武人のようだな…まだそこら中に黄巾党の残党が居る中で奴等の黄巾を血で赤く染め抜くとは…」
そう言いながら何やら露出の多い白い服を着た女性がニヤニヤ意地悪そうな笑みを浮かべて先程の赤毛の女性同様に近づいてきた。
しかしながら、言っている内容が気になる。
えっと…俺は今、奴等の黄巾で血を拭っているわけなんだけど…
…………た、確かにそう言われてみれば自分達の掲げている色を血で染め抜くってかなり挑発している感じが…
「チッ…頭がやられた!皆散れーーーーーー!!そして我等、黄巾を侮辱した奴の顔を忘れるなーーーーー!!!!」
……………何か、ヤベェ事になっている!!?
慌てて訂正しようとしたが、時既に遅く黄巾党の大部分が退いていってしまったとさ…マル
な、何だかとんでもねぇ事をしちまった気がするぜ!
「ところで、テメェ等誰だぁ?」
いつの間にか俺の背後に移動していた母が何時もの調子の傍若無人な話し口調で今し方俺に近づいてきた女性に問う。
「ん、あぁスマナイ。私は公孫賛。この地の太守をしている者だ。そしてこっちが客将の…」
「趙雲、字を子龍と申す」
はぁ、どうしよう~黄巾党相手に喧嘩吹っかけちまったよ~………………………………………………あり? 何だか今、俺が黄巾党に喧嘩吹っかけた並みにビックリな事が…具体的には女性の口から意外な名前が飛び出した感じがしたけれど…
「公孫賛に趙雲だな。………………よし、覚え……てたら良いなぁ~」
母も聞いていたということは間違いないのだろう。
だけれど……
「って忘れる事前提かよ!?」
「相手に飲まれてますぞ。さて、我等は名乗ったのだ。おぬし等の名をお聞かせ願おうか?」
――――――――――――なんで趙雲が女性なのーーー!!!
…いや、ちょっと待て。確か無双に公孫賛って言うモブキャラも居たよな?
しかも、太守の位置付けで。……つまり、こっちの女性も?
「おう名前だな?………って、どうしたんだ?ボケーーーーっとして…悪ぃもんでも食ったか?」
母は一体俺を何だと思って…おとと、いけない。自己紹介の真っ只中だったんだな。
「…………いや……俺は……凌…統……」
「…そうか?まぁいっか。さてさて、俺はコイツの母ちゃんだ!!名前は…捨てたからねぇ!」
…………なんか今日一日だけで色々と知りすぎていっぱいいっぱいだってのに、また一つ新たな謎が…………え? 母って名前捨てていたの? 確かに名前って父と同じで聞いたことは無かったけれど、名無しだったんですか!!?
「まぁあえて言うなら…『雪花』って呼んでくれ」
……母、それは真名ではないのか?
「…それは真名では?」
ほら見ろ、自称趙雲さんも言ってんだろ~
「まぁ今となっては誰もその名じゃあ呼ばねえから気にすんな!」
そんなもんなのかー
「まぁいいか…それじゃあ改めて……我が国にて発生せし黄巾党の討伐、感謝いたします」
って、え~何で急に公孫賛は頭下げて敬語で話すの?
しかも、後ろに控えている兵隊さんは片膝付いているし…唯一立っている俺と母と趙雲さんが変な人みたいじゃね?
「まぁ、気にすんな。俺達は偶々居合わせただけだしよ~」
母の言う通りだった為、俺は軽く首を縦に振った。
「しかしな、それでは色々と示しが付かないんだよな。何か欲しいものとか無いか?」
まぁ、さっき太守って言っていたしな~太守って要は王様みたいなものなんだろ? やっぱり、恩を受けっぱなしっていうのは不味いんだな。
「そうか?なら…」
「………飯…」
「「…………は?」」
あ、やっべ母と被った!
訂正しないと。今回の功績だって殆どが母の活躍によるものなんだし。
……でも、少しくらいは御飯を恵んで頂けたら嬉しいなぁって思ったりする俺はイケナイ子…なんでしょうか?
「――――――ハッハッハ! 開口一番が飯とは…良いではないですか白蓮殿! この御人等には色々と聞きたい事もあるのですから」
いや、訂正しますから! 成るべく母の意見を参考にしてくださいな!
「私は全然いいんだが…」
そう言いながら公孫賛さんは母の方を見た。
母よ自分の欲しいものを言うんだ~…でも、少しだけ俺の意見を取り入れて頂けると嬉しいかなぁ~
そして、渦中の母は…―――――――――――――――俯きながら肩を震わせていた…
うわ、うわ~無視して俺が先に意見を言ったからキレてんのか!?
やっべ~よ、さっきのバーサーク母になっちまったら止められる自身なんか無いんですが!!
良い具合にテンパっていると母は口を開いた。
「―――――――――ッッッツ!! …ハハハハハ!!! いいなそれ! よっしゃ、柚登の言うとおり飯を頼むわ~!」
うわ~い、何だかハイテンションな母が再来したぜ…
「まぁ…わかったよ」
「おっと、一言……食料庫に気を付けなよ~」
――――公孫賛
そんなこんなで気が付いたら私のところには客が二人来ている。
あの後私たちは直ぐ様来た道程を戻り城を目指した。
他でもない今回の一件の功労者である二人を招待するためだ。
その最中に二人から……じゃなくて雪花から二人が旅をしている理由を知った。
何でも…『柚登を強くする為だ!』……至極簡単な理由であった。
って言うか、息子の真名をホイホイ他人の前で言っていいものなのか疑問なんだが…
そして、私が雪花から話を聞いている最中星は…
「凌統殿は幾つから母君と旅を?」
「……………………」
「ふむ…10歳から旅をしていると?」
「――――――――(コクン)」
「おぉ!旅に出てからは賊を討伐しながら暮らしていたと!」
「――――――――(コクン)」
なぜあっちは会話が成立しているんだ?
見た感じ正反対そうな性格なんだが……いや、同じ武人として何か通じるものがあったんだろう……多分。
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そして、啄郡に着いた私なんだが、絶賛後悔の嵐に苛みえている。
最後に雪花から聞いた一言をもっと真面目に聞いておけば~!と思ったのは既に過去の出来事だ。
何が起きているのか気になるのか?
あぁ、いいよ。穴が開くまで見てくれよこの状況を!
「ほ~ら柚登、コレも美味いぞ~」
「あいや待たれよ凌統、このメンマも中々のものだ」
「………………………(コクコクコク)」
凌統がこんな大食漢なんて聞いてないぞーーーーーーーー!!!!
しかも、他の二人は凌統の食べる姿に惚れ込み後から後から追加するなーーーーー!!!
「……………美味…い」
「そうかそうか~ほら、俺の肉まんもやるから食え」
「おぉ? ならば、私の餃子を…」
「二人共いい加減にしてくれーーーーーー!!!」
私にしては珍しく泣きながら怒った日であった…
ありがとうございました。
また次回もお楽しみに〜( ̄▽ ̄)ノシ