「…………え?」
一誠はこれまでの教会の聖剣奪取の事で駒王町で起っている事をまとめてメールでオーディンに送った。
それからすぐに返事が帰ってきた。その内容は一誠の予想してものではなかった。
『今、ユグドラシルではお前さんの処遇について話しておる。流石に三大勢力の揉め事に首を突っ込んだのは不味かったのう。お前さんをよく想っていない神々が色々と文句を言ってきておるわ。』
と書かれていた。
(流石に問題になったか…………そしてやっぱり俺以外にも監視者がいるようだな。余程、俺の事が気に食わない神がいるらしいな)
メールを読んだ一誠は自分の行動を少し後悔した。そして自分以外にもユグドラシルの監視者がいる事を確信した。
ユグドラシルの神全てが一誠を受け入れている訳ではない。中には一誠を殺して『力』だけ自分達のものにしようと考えている神がいる。
一誠はバカではない。そんな考えの神がいるくらい知っていた。オーディンが受け入れたが、他が同じとは限らないのだ。
「……真神君。いいかな?」
「木場。どうした?」
メールを読み終わると佑斗が話しかけてきた。その顔は戦場に赴く戦士の顔をしていた。
「僕を駒王学園に送って欲しいんだ。頼めるかな?」
「行くのか?相手はコカビエルだぞ?お前がお仲間と束になったとて勝てる保証ないぞ」
「もちろんだよ。今更部長達が僕の事を受け入れてくれるかは分からない。でも僕は部長達を助けたと思うんだ。それにあの時、亡くなった仲間達の無念を晴らしておきたいんだ」
「……なるほどな。それがお前が見つけた答えか?」
「多分ね。そうだと思うよ」
(仲間か……俺にはないものだな。持っている者だけが、感じれるものか)
佑斗は自分なりの答えを見つけたようで満足とまでは言わないが、佑斗のどこかすっきりとした顔に一誠はどこか不満を感じていた。
一誠は『ウロボロス・ボーン』を佑斗に向けた。
「転送先は駒王学園でいいんだな?」
「うん。頼むよ」
「―――待ってくれ。私も送ってくれるか」
「ゼノヴィア。……教会の使徒も大変だな。勝てない相手にも挑まないといけないんだからな」
一誠が佑斗と話していると新しい戦闘服に着替えたゼノヴィアが話に加わってきた。
「だが、それが私達使徒の使命だ。それに奥の手は用意してある」
「奥の手?それで勝てるといいな。悪いが俺はこれ以上、関わる事は出来ない。ユグドラシルで俺の行動が問題になってな。待機していろとお達しが来たんだ」
「そうなのか?それならしかたないな。では送ってくれ」
「待って!ゼノヴィア!!わ、私も連れて行って!」
「イリナ!?」
一誠が佑斗とゼノヴィアを転送しそうとするとイリナがいつの間にかそこに立っていた。『クジャク・ボーン』で傷は塞いだが、それでも蓄積ダメージがまだ抜け切っていない。
それだと言うのにイリナは身体を無理矢理起こしたのだ。
「無茶をするなイリナ。まだ寝ていろ!」
「私だって、教会の使徒よ!こんな所で寝ていたら主への信仰を疑われるわ!」
「……分かった。だが、無茶はするなイリナ。それとこれを使ってくれ」
「うん。分かっているわ。ありがとゼノヴィア!」
ゼノヴィアはイリナに自分の聖剣の『破壊の聖剣』を渡した。イリナは受け取ると一誠の方を見た。その顔は覚悟を決めているかのように見えた。
「……転移・駒王学園!」
一誠は『ウロボロス・ボーン』で3人を駒王学園に飛ばした。急に静かになった部屋を見渡した一誠はそのまま仰向けに倒れて天井を見上げていた。
(急に静になると寂しいとか感じるんだな……)
一誠は込み上げてくる感情に戸惑っていた。その時、部屋に入ってくる人物―――いや人ではないく犬というより『狼』と言った方が正確だろう。
「……クロ?」
「ウォン!!」
クロと呼ばれたこの黒色の狼は神を喰らいし牙を持つ狼―――フェンリルだ。と、言っても大きさは大型犬くらいしかない。
そのクロを一誠が二年ほど前にユグドラシル近くの森で傷付いているの発見して保護したのだ。
それ以来、一誠にいたく懐いて一誠以外の命令を一切聞かなくなった。そんなクロを一誠は真神家の番犬代わりに連れてきていた。
クロは自らの主人が寂びしいのがわかっているかのようにそっと一誠に近付き、枕になるかのように一誠の頭の辺りで伏せをして少し横に倒れた。
「……慰めてくるのか?」
「ウォン!!」
「……まったく、お前は忠犬……いや忠狼だよ」
一誠は寝転がっているクロの腹の上にそっと頭を乗せた。一誠は自分の意識を少しずつ沈んでいくのを感じていた。眠ろうとしているのだ。
その時だった。一誠のスマホが音を鳴らしながら振れるえた。
「うぉ?!……オーディンの爺さんから……」
一誠は驚きながらもメールの内容を確認した。
『ユグドラシルは今回の三大勢力の件に介入する事を決めた。お前さんはとりあえずコカビエルでも倒しておいてくれ。反対しておった神はなんとか説得したわ。三大勢力に貸しを作っておいてくれ。
オーディンより』
と書かれていた。
「『ウロボロス・ボーン』転移・駒王学園!」
それを読んだ一誠は立ち上がり『ウロボロス・ボーン』を身に纏った。そしてクロと一緒に駒王学園に転移した。
「ガァァァ!!」
「―――え?」
一誠が駒王学園に転移した瞬間、目の前に三つの首をもつ犬―――ケルベロスがいた。そして一誠の後ろにはイリナとアーシアがいた。
ケルベロスはイリナとアーシアを襲おうとしたのだが、一誠がそこに割って入って来たのだ。ケルベロスはそのまま一誠に噛みついた。
バキッ!!
「―――キャィィ?!」
「ふう……ビックリした。現れてすぐにケルベロスに噛みつかれるとはな」
一誠に噛みついたケルベロスはのた打ち回っていた。ケルベロスがのた打ち回っているのは自身の牙が粉々に砕けたからだ。
ケルベロス程度の魔獣の牙では『ボーン』に傷一つ付ける事は出来ない。
「……何者だ?貴様」
空中に浮いてるイスに座りふんぞり返っている堕天使―――コカビエルは一誠を見た。
(それにしてもあの鎧は一体?そして誰だ?)
コカビエルは目の前の鎧の人物が気になっていた。姿は違うが、少し前に現れた者と同系の存在である事は一目瞭然だからだ。
「貴様、一体何者だ?」
「コカビエル。お前と会うのはこれで2回目だ」
「……2回目、だと……?そうか。やはりお前はあの時の奴だったか。鎧は違えど中身は同じと言う事か」
「そう言うことだ。まあ、よろしく」
一誠は軽い感じでコカビエルと言葉を交わしていた。それを見ていた人物達は怒りを抑えておけなかった。
「何しに来た!一誠!!」
「そうよ!私達の邪魔をしに来たの?!」
「……どうやらまだ死んではいないようだな。今となってはどうでもいいか……」
一樹とリアスは一誠を怒鳴りつけたが、一誠は一樹の事など気にしない態度を取っていた。もやは眼中にすらなかった。
そして一誠はコカビエルに視線を向けた。『ボーン』を解除して素顔を見せた。
「……その顔は、そこの赤龍帝と同じだな」
「ああ、そこにいる奴とは『元』身内でな。だが、今は違うから」
「そうか。それで貴様の名はなんと言う?死ぬ前に聞いておいてやろう」
コカビエルは上から目線で一誠に名前を聞いてきた。自分の方が一誠より強いと思っているからだ。
だが、一誠はそんな事気にしないかのような態度をしていた。
「そう言えば、まだ名乗ってなかったな。俺の名は真神一誠。北欧はユグドラシルの主神、オーディンの私兵をしている。まあ、よろしく」
「……オーディンの私兵だと?お前のような餓鬼を私兵にするとはオーディンもついに頭が逝った様だな!ハハッハハッハ!!」
コカビエルはオーディンの事を完全にバカにしていた。その瞬間、一誠の中にで何かに火が灯った。
「……黙れ!」
「がはっ?!」
一誠はコカビエルの目の前に跳躍して、踵落しでコカビエルを地面に叩きつけた。あまりの威力に地面は大きく陥没した。
「ぐっ!?」
それだけに終わらず、一誠はコカビエルの背中に勢いをつけて落ちた。
その衝撃で地面は更に陥没してしまった。一誠はコカビエルと距離を取った。
「堕天したとはいえ神を……オーディンの爺さんをバカにするなどと身の程を弁えろ。バカにした事を後悔させてやるよ。コカビエル!!」
「く、クソ餓鬼が!!調子に乗るなよ!!」
コカビエルは光を集めて槍のような形へ変えて、一誠に投げた。一誠は『ウロボロス・ボーン』を身に纏っただけで動こうとせず、手を前につき出し魔法陣を展開した。
光の槍は魔法陣に飲み込まれて、そのまま消えた。
「何?―――ぐうっ?!」
コカビエルは自分の足に痛みが走ったを感じて、足を見てみるとそのには光の槍が刺さっていた。先程、コカビエル自身が投げた光の槍だ。
「な、何故?俺の槍が……」
コカビエルは自分の足に先程投げた槍が刺さっているのが理解出来ないでいた。コカビエルは一誠を見た。
「な、何をした?!答えろ!!」
「お前はバカか?敵に自分の能力を話す奴がいると思っているのか?悪魔もそうだが、堕天使も存外、マヌケなんだな」
「な!?……クソが!!ケルベロスども!!そこの鎧の奴を食い殺せ!!」
『ガァァァァ!!』
コカビエルの指示でグラウンドにいるケルベロスが一誠に向かって走り出した。
「クロ、巨大化(フルサイズ)。ケルベロスどもを食い散らかせ!」
「ウォォォォォン!!!」
一誠の指示を受けてクロは嬉しそうに遠吠えで答えた。そして次の瞬間、クロの身体が光だし大きくなっていった。
ある程度の大きさになると光は消え、クロの本来の大きさになった。大きさはケルベロスより一回り小さいくらいだ。
「グルルルル!!!」
『ッ?!?』
クロの威嚇にケルベロス達は動きを止めた。完全にクロにビビっていた。
「どうした?!さっさと食い殺せ!!」
「無駄だ。ケルベロスどもは完全にクロにビビったからな」
「何?!たかが、犬にビビリおって!!」
コカビエルは言う事を聞かないケルベロスに怒りをぶつけていた。それでもケルベロスは微動だにしなかった。
それだけクロを本能的に恐れているからだ。
そして次の瞬間、リアス達がクロが消えたと思ったと同時に数匹のケルベロスの首が飛んだ。クロによって噛み千切られたのだ。
(((((み、見えなかった!?)))))
一誠を除いた誰もが思った。クロと呼ばれる狼は誰の目にも止まらない速度で移動しケルベロスを一撃で絶命させてしまうほどの実力があると。
「さあ、コカビエル。そろそろ終わらせてやるよ、お前の人生を!」
(あいつは『バケモノ』なのか……!!)
この時、コカビエルの目には一誠はこの世の何者よりも恐ろしく感じていた。
決着の時が刻一刻と近付いていた。
駒王学園に近付く影が一つあった。それは白い龍を模した鎧だった。
「まったく、コカビエルにも困ったものだな」
『その割りには楽しそうに聞こえるが?』
実際に少年は楽しみしていた。自分のライバルと出会えるのだから。
「そうだな。赤龍帝がいるからかもしれないな。噂では今代の赤龍帝は上級悪魔のフェニックスを倒したそうだからな。期待が持てる」
『そうだな―――何だ?この気配は?!』
「どうした?何を感じたんだ?」
『今までに感じた事がないが、強力な波動だ』
「それならまずはこの目で確かめないとな」
白き龍を身に宿した少年は速度を上げて駒王学園に向かった。
次回更新は来年1月3日です。